pH 6.0ベロナール緩衝液中に5ppmのニトロフラン系防腐剤AF 2を含むmodel systemを用い, これに亜硝酸ナトリウム, アスコルビン酸ナトリウム, システイン, 金属イオンなどを添加し, また4°で72時間保存, 75°で1時間加熱などの処理を施して, これらの各種添加剤や処理法がAF 2の抗菌力にどのような影響を及ぼすものであるかを,
Escherichia coli NIHJ株を試験微生物とする比濁法を用いて調査した.
得られた結果の要点はつぎのとおりである.
(1) AF 2は, pH 6.0においては加熱しても安定で, その抗菌力は全く変化しなかった.
(2) 亜硝酸ナトリウムを添加し, さらにこれを加熱しても, AF 2の抗菌力は全く変化しなかった. したがって, 亜硝酸ナトリウムはAF 2の抗菌力に対して直接にはなんらの影響も及ぼさなかった.
(3) 亜硝酸ナトリウムとともにアスコルビン酸ナトリウムまたはシステインを加え, 4°で72時間保存したところ, アスコルビン酸ナトリウムを添加した場合にはAF 2の失活は全く起こらなかったが, システインを添加した場合には, この低温保存中にかなりの失活が認められた. これを加熱すると, いずれの還元性物質を加えた場合も明らかな失活が起こり, この際アスコルビン酸ナトリウムよりもシステインの方がその失活作用が著しく大であった.
なお, 亜硝酸塩は, この低温保存中に共存する還元性物質を酸化するので, 保存後に加熱すると, 加熱の際におけるAF 2の還元失活をある程度抑制する作用を示した.
(4) Ca
2+, Mg
2+, Zn
2+は, ともにAF 2の抗菌力をわずかに低下させた.
(5) Fe
2+, Fe
3+はいずれもAF 2の抗菌力を低下させ, とくにFe
2+を加えて加熱するとAF 2の抗菌力は完全に失われた.
(6) Fe
3+がアスコルビン酸ナトリウムと共存すると, 加熱によりAF 2の失活が促進された.
(7) システインがFe
2+あるいはFe
3+と共存すると, Fe
2+またはFe
3+がそれぞれ単独に存在する場合よりも, さらにAF 2の失活を促進し, またこれを加熱すると, いずれの鉄イオンの場合においてもAF 2は完全に失活した.
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