食品衛生学雑誌
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55 巻, 3 号
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報文
  • 千葉 隆司, 高橋 由美, 貞升 健志, 仲真 晶子, 甲斐 明美
    原稿種別: 報文
    2014 年 55 巻 3 号 p. 135-141
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    アフラトキシン(AF)産生菌を含むAspergillus flavusグループの簡易な識別方法を構築するために,A. flavusグループ45株について分子生物学的な解析を行った.最初に,A. flavusグループ20株についてITS 1-5.8S-ITS 2(ITS-1/2)領域とaflR-aflJ intergenic spacer(aflR/J-IGS)領域の分子系統樹を比較した.その結果,aflR/J-IGS領域に基づいた解析ではITS-1/2領域の解析で識別できなかったA. flavus(AF産生株)とA. oryzae/A. flavus(AF非産生株)の識別が可能であった.また,A. flavusグループ45株を用いてaflR/J-IGS領域の分子系統樹解析と培養法によるアフラトキシン産生性を比較した.その結果,aflR/J-IGS領域の分子系統樹解析で推定されたアフラトキシン産生性と培養法で得られた結果が一致した.これら分子系統樹解析の結果に基づき設計したプライマーを用いてA. flavusを中心とした49株のAspergillus属菌を対象にマルチプレックPCR法による識別を試みた.その結果,供試41株でaflR/J-IGSの分子系統樹解析と同様の結果が得られた.
  • 志田(齊藤) 静夏, 根本 了, 松田 りえ子
    原稿種別: 報文
    2014 年 55 巻 3 号 p. 142-151
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    電子付録
    超臨界流体抽出(SFE)およびLC-MS/MSを用いた野菜・果実中の残留農薬一斉分析法を開発した.LC測定が可能な中~高極性農薬を対象として,SFE試料の調製方法やSFE条件を最適化した.SFE試料として試料–セライト–無水硫酸マグネシウム(1 : 1 : 1)の混合比率,モディファイヤーとしてメタノール,超臨界二酸化炭素流体を用いて,抽出圧力16.4 MPa,抽出温度40℃,抽出時間30分でSFEを行うことにより,検討農薬の大部分で高回収率が得られた.117農薬について添加濃度0.01 ppmで添加回収試験を行ったところ,トマトで112農薬,きゅうりで103農薬で,真度70~120%,併行精度25%未満の良好な結果が得られた.農薬が残留した市販の野菜・果実を用いて,本法と通知法を比較したところ,ほぼ同等の結果が得られた.アセフェートやメタミドホスのような高極性農薬は,開発したSFE法のほうが,有機溶媒抽出法(厚生労働省通知一斉試験法)よりも高回収率が得られた.
  • 辰野 竜平, 反町 太樹, 谷山 茂人, 大城 直雅, 久保 弘文, 高谷 智裕, 荒川 修
    原稿種別: 報文
    2014 年 55 巻 3 号 p. 152-156
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    腐肉食性小型巻貝のテトロドトキシン(TTX)蓄積能・蓄積機構解明に資するため,ムシロガイ科のコブムシロとアラムシロを用いて毒化モデル実験を行った.両種にTTX含有餌料を投与すると,ともに内臓と筋肉が僅かに毒化した.組織中のTTX量の最高値は,コブムシロ内臓で2.85 MU/g,筋肉0.86 MU/g,アラムシロ内臓0.80 MU/g,筋肉0.81 MU/gで,コブムシロ内臓で毒が最も多く残存する傾向が見られた.TTX残存率(推定TTX摂取量に対する総残存TTX量の割合)は,おおむねコブムシロで4%未満,アラムシロで2%未満と非常に低く,これら2種が食品衛生上問題となるほど高毒化する可能性は低いものと推察された.
調査・資料
  • 小川 吉夫, 広瀬 大, 秋山 綾乃, 一戸 正勝
    原稿種別: 調査・資料
    2014 年 55 巻 3 号 p. 157-161
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    Penicillium roquefortiがブルーチーズの生産に用いられることはよく知られている.このP. roquefortiには,極めて近縁な2種,すなわち,P. carneumP. paneumが存在し,これらはかつてP. roquefortiの変種として分類されていた.Penicillum roquefortiは,有害なパツリンを産生しないが,P. carneumP. paenumはこのカビ毒を産生する.したがって,ブルーチーズの生産にP. carneumP. paneumが使用されていないことを確認することは食品衛生上重要である.この研究では,ブルーチーズから分離された28株のPenicillium属菌について,β-チューブリンの部分塩基配列に基づいて,それらの分類学的位置を検討した.その結果,分離されたすべての菌株は,P. roqueforutiに属していることが明らかになり,ブルーチーズの生産に用いられているPenicillium属菌は健康上問題ないと考えられた.
    *日本大学薬学部
  • 加藤 友香里, 寺田 久屋
    原稿種別: 調査・資料
    2014 年 55 巻 3 号 p. 162-166
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    超高速液体クロマトグラフ–タンデム型質量分析法を用いたキャッサバ製品およびシアン化合物を含有した豆類中のリナマリンの迅速で簡便な定量法を開発した.リナマリンをアセトニトリル–水(3 : 1)で抽出後,アミノ固相抽出カラムで精製し,超高速液体クロマトグラフ–タンデム型質量分析計により定量した.キャッサバに,リナマリンを10 μg/gおよび100 μg/g添加したところ,回収率は96.1%(RSD: 2.6%)および95.3%(RSD: 1.4%)であった.また,タピオカにリナマリンを1 μg/g,10 μg/gおよび100 μg/g添加したところ,回収率は81.1%(RSD: 3.3%),91.9%(RSD: 5.4%)および97.1%(RSD: 2.1%)であった.本法を適用してキャッサバ14検体,タピオカ9検体およびシアン豆4検体について実態調査を行ったところ,キャッサバは11検体から0.1~245 μg/g,タピオカは5検体から0.1~0.5 μg/g,シアン豆は全検体から4,950~5,590 μg/gのリナマリンが検出された.本法による定量下限値は0.1 μg/g,検出限界値は0.03 μg/gであった.
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