食品衛生学雑誌
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58 巻, 4 号
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報文
  • 藤川 浩
    2017 年 58 巻 4 号 p. 173-179
    発行日: 2017/08/25
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    市販食品においてサンプル中の微生物濃度は一般に対数正規分布に従うとこれまで仮定されてきたが,この分布は濃度がゼロに対しては対応できない.本研究では第一に,対象微生物濃度が低い(あるいはゼロ)の市販食品について,最確数法による確率論的な検討を行なった.すなわち,定性的微生物試験によって得た全サンプル中の対象病原菌が存在するサンプル数から,その微生物濃度を最確数法によって推定した.また,この最確数法に関してサンプル量と全サンプル数の与える影響を解析した.第二に,製品中の対象微生物濃度がポアソン分布に従うという仮定の基に,製品中の微生物濃度に対する検査特性(OC)曲線を作成した.さらに,乳幼児用粉ミルクにおけるSalmonellaCronobacter sakazakiiについても同様にOC曲線を作成できた.これらの結果から最確数法およびポアソン分布は対象微生物の濃度が低い場合,定性的微生物試験の解析に有効であろうと示唆された.

  • 坂井 隆敏, 根本 了, 手島 玲子, 穐山 浩
    2017 年 58 巻 4 号 p. 180-187
    発行日: 2017/08/25
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    畜水産食品中のニトロイミダゾール類(イプロニダゾール(IPZ),ジメトリダゾール(DMZ),メトロニダゾール(MNZ)およびロニダゾール(RNZ))およびこれらの主要代謝物(イプロニダゾール-ヒドロキシ体(IPZ-OH),メトロニダゾール-ヒドロキシ体(MNZ-OH)および2-ヒドロキシメチル-1-メチル-5-ニトロイミダゾール(HMMNI))の7化合物について,高感度かつ高精度な分析法を開発した.試料から酢酸酸性下アセトンで抽出し,アセトニトリル/ヘキサン分配による脱脂後,スルホン酸塩修飾ジビニルベンゼン-N-ビニルピロリドン共重合体ミニカラムを用いて精製した.ミニカラム溶出液中の各化合物を硫酸アンモニウム存在下酢酸エチルで抽出し,抽出液を濃縮・溶媒除去後,残留物を0.1vol%ギ酸に溶解し,試験溶液とした.測定はLC-MS/MSを用い,ESIによるポジティブモードで行った.開発した分析法を用い,畜水産物10食品について添加回収試験(各食品n=5)を実施したところ,真度74.6~111.1%,併行精度0.5~8.3RSD%の良好な結果が得られた.また,定量下限値は,IPZ,IPZ-OH,MNZおよびMNZ-OHについては0.0001 mg/kg,DMZ,RNZおよびHMMNIについては0.0002 mg/kgに設定可能と考えられた.

ノート
  • 上田 祐子, 本田 克久
    2017 年 58 巻 4 号 p. 188-194
    発行日: 2017/08/25
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    茶中残留農薬分析の妨害成分であるカテキンやカフェインが除去できる迅速な精製法を確立するため,筆者らが開発した2種類の精製材料(S-NH2とS-Si)を用いて精製法の検討を行った.本法は,6種類の茶(番茶,煎茶,玉露,ほうじ茶,玄米茶,烏龍茶)の精製においてカテキンおよびカフェインをほぼ100%除去することが可能であった.また,試料中濃度が0.1 μg/gとなるよう番茶抽出液に61成分の農薬を添加した時の回収率は,44成分が70~120%を示し,その変動係数はすべて10%未満であった.S-NH2とS-Siを用いた精製法は,煩雑な分析操作を必要とせず,短時間(1検体あたり2時間)での処理が可能であった.

  • 朝倉 敬行, 北村 真理子, 関 亘, 飯田 智成, 中里 光男, 安田 和男, 根本 了
    2017 年 58 巻 4 号 p. 195-200
    発行日: 2017/08/25
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    LC-MS/MSを用いた農産物および畜水産物中のジニコナゾールの分析法を開発した.農産物は,アセトンで抽出し,n-ヘキサンに転溶後,必要に応じてアセトニトリル/n-ヘキサン分配により脱脂し,フロリジルおよびグラファイトカーボンミニカラムによる精製を行い,LC-MS/MSにて測定した.また,畜水産物については,アセトン–n-ヘキサン(1 : 2, v/v)混液で抽出し,アセトニトリル/ヘキサン分配で脱脂し(はちみつを除く),フロリジルミニカラムで精製した後,LC-MS/MSにて測定した.農産物および畜水産物計16食品に0.01 mg/kg添加して回収試験を行ったところ,真度88.3~108%,併行精度0.5~5.1%であった.本分析法における定量限界値は,0.01 mg/kgであった.

調査・資料
  • 宗村 佳子, 木本 佳那, 小田 真悠子, 永野 美由紀, 奥津 雄太, 森 功次, 秋場 哲哉, 貞升 健志
    2017 年 58 巻 4 号 p. 201-204
    発行日: 2017/08/25
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    2015~16年に都内で発生した食中毒疑い259事例の拭き取り1,726検体についてノロウイルス(NoV)の検出状況を調査した.41事例から得られた65検体(3.8%)が陽性となったが,陽性検体はすべてNoV検出事例由来であった.拭き取り由来32検体の塩基配列は同一事例内の患者検体などから得られた塩基配列とすべての検体で100%一致した.拭き取り検査が,病因物質や感染ルートの特定に有用な事例もあったが,単独で食中毒の原因究明につながった例はなく,拭き取り検査の結果は疫学調査や臨床検体などの検査結果と併せて解釈する必要があると考える.さらに,拭き取りが行われるのは事例発生後数日を経ていることから,消毒の影響などを考慮すべきである.NoV検出事例における場所別陽性率は,トイレが8.6%(55/640)で最も高く,調理室では1.0%(6/618)であった.トイレで最も陽性率が高かった部位は便器(43.6%)であり,便座(14.5%)が次いだ.さらに,ドアノブや床などトイレ内の広範囲からNoVが検出された.拭き取り検査陽性は,衛生管理が適切でないことを示唆しており,その結果は衛生指導に活用できると考える.

妥当性評価
  • 八津川 洋一, 楠野 大輔, 松田 高博, 小林 和浩, 大羽 哲郎
    2017 年 58 巻 4 号 p. 205-219
    発行日: 2017/08/25
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    動物用医薬品分析などの前処理を自動化できる新規装置FASVED(Food Automatic Analytical Systems for Veterinary Drugs)を開発した.FASVEDには一般的な分析法の前処理に必要なユニット(試薬分注機,ホモジナイザー,容器搬送ハンド,蓋開閉装置,遠心機,ピペッター,振とう機,カラム精製機,遠心エバポレーター,冷却保管ラック)が組み込まれており,これらユニットによる操作を自由に組み合わせることが可能である.本研究では,試料に豚の筋肉,鶏卵およびえびを用い,動物用医薬品など全178物質について2種類の分析法でFASVEDを用いた前処理を実施し,妥当性確認を行った.その結果,豚の筋肉中の148物質,鶏卵中の160物質およびえび中の151物質を分析した場合の性能が妥当性評価ガイドラインの目標値に適合した.

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