食品衛生学雑誌
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49 巻, 3 号
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報文
  • 寺田 久屋, 野口 昭一郎, 丸山 吉正, 加藤 陽康, 田村 征男, 岡 尚男
    2008 年 49 巻 3 号 p. 125-135
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    LC/MS/MSを用いた加工食品中29種類のカルバメート系農薬の迅速な一斉分析法を検討した.各農薬は微粉末状の香辛料を除き,高速溶媒抽出装置を用いてアセトニトリルで抽出した.香辛料は超音波洗浄器中で抽出した.抽出液を水・有機溶媒両用GPCに注入し,13~18分の保持時間の溶出液を捕集して窒素ガスで濃縮し,アセトニトリルーギ酸アンモニウム緩衝液に溶解した後,LC/MS/MSに注入した.
    乾燥果実および香辛料に29種類の農薬を各0.1および0.01 μg/g添加した回収率は,ほとんどが50~150%であり,みそおよびしょう油に各0.01 μg/g添加した回収率は,4種類の農薬を除いて46.9~122.6%(変動係数3.8~37.6%)であった.定量限界(S/N=10)は,赤トウガラシにおいて0.05~0.001 μg/gであった.
  • 多田 裕之, 永井 宏幸, 白木 康一, 出屋敷 喜宏
    2008 年 49 巻 3 号 p. 136-140
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    植物成長調整剤であるベンジルアミノプリンの分析法について検討し良好な結果を得た.試料よりアセトンで抽出し,アセトン留去後酢酸エチルへ転溶を行い,さらに酢酸エチル留去後アセトン-n-ヘキサン(1 : 1)に溶解し,SAX/PSAカラムで精製を行った.アセトンを留去した溶液から酢酸エチルへの転溶時には,pH 9.0の緩衝液を添加した.SAX/PSAカラム精製における洗浄はアセトン-n-ヘキサン(1 : 1)で行い,溶出は同溶液に水を1%含有させたものを用いた.測定にLC/MSを用いたところ,マトリックスの影響も少なく,添加回収試験の結果も良好であった.
  • 坂 真智子, 飯島 和昭, 西田 真由美, 狛 由紀子, 長谷川 直美, 佐藤 清, 加藤 保博
    2008 年 49 巻 3 号 p. 141-149
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    米の加工および調理による計11種の農薬の残留濃度変化に伴う調理加工品への移行率(玄米に残留する農薬量に対する生成試料中の残留農薬量の比率,%)について,プレハーベスト処理試料(Pre, 9薬剤)とポストハーベスト処理試料(Post, 4薬剤)を調製して調査した.また,玄米に残留する農薬の濃度に対する生成試料中の残留農薬濃度の比(以下,本報告では加工係数と称する)も求めた.Preの結果は以下のとおりであった.精米工程において,玄米に残留していた農薬のうち40~106%が糠とともに除去され,白米に残っていたのは10~65%の範囲であった.白米の加工係数は0.11~0.73を示した.これらの数値は,薬剤間の差が大きかった.加水分解性,水溶解性,蒸気圧,log Powなど各農薬の物理化学的性状の一要因と移行率との間に相関は認められなかった.調理加工における農薬の残留濃度変化を調査することは,基準値設定に役立つばかりでなく,食品における農薬の残留実態を認識する上で重要である.
  • 坂 真智子, 飯島 和昭, 西田 真由美, 狛 由紀子, 長谷川 直美, 佐藤 清, 加藤 保博
    2008 年 49 巻 3 号 p. 150-159
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    小麦の加工および調理による計13種の農薬の残留濃度変化に伴う調理加工品への移行率(玄麦に残留する農薬の絶対重量に対する生成試料中の残留農薬重量の比率,%) について,プレハーベスト処理試料(Pre, 9薬剤)とポストハーベスト処理試料(Post, 6薬剤)を調製して調査した.また,玄麦中に残留する農薬の濃度に対する生成試料中の残留農薬濃度の比(以下,加工係数と称する)も求めた.製粉工程において,玄麦に残留していた農薬のうちPreでは70%以上,Postでは80%以上がふすまとともに除去され,60%粉に残っていたのはPre 1.7~23%, Post 4.0~11%の範囲であった.60%粉の加工係数はPre 0.030~0.40, Post 0.069~0.18を示した.これらの数値は,PreのほうがPostよりも高い値を示した.移行率の薬剤間での値の差は少なかった.調理加工における農薬の残留濃度変化を調査することは,基準値設定に役立つばかりでなく,農産物に残留する農薬が食品に移行する量を把握する上で重要である.
  • 坂 真智子, 飯島 和昭, 西田 真由美, 狛 由紀子, 長谷川 直美, 佐藤 清, 加藤 保博
    2008 年 49 巻 3 号 p. 160-167
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    乾燥大豆 (大豆) の加工および調理による計14種の農薬の残留濃度変化に伴う調理加工品への移行率(大豆に残留する農薬量に対する生成試料中の残留農薬量の比率,%)について,圃場で大豆試料を調製して調査した.また,大豆中に残留する農薬の濃度に対する生成試料中の残留農薬濃度の比(以下,加工係数と称する)も求めた.水浸漬工程において,調査したほとんどの薬剤で大豆中の残留農薬量の約60%以上が水浸漬大豆に残っていた.豆乳および豆腐製造工程においては,薬剤間での差が大きかった.豆乳への移行率は37~92%,豆腐には7~63%であった.豆腐の加工係数は0.026~0.28であった.各農薬の豆腐への移行率とlog Powとの間に相関が認められた.本報告で実施したモデル試験は,農産物に残留する農薬が調理工程で食品に移行する量の把握をする上で重要な手段であると考える.
  • 堀江 正一, 小林 晴美, 石井 里枝, 井部 明広, 藤田 和弘, 丹野 憲二, 中澤 裕之
    2008 年 49 巻 3 号 p. 168-176
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    畜産食品中に残留するペニシリン系抗生物質(PCs),セファロスポリン系抗生物質(CEs),テトラサイクリン系抗生物質(TCs),マクロライド系抗生物質(MLs),キノロン系抗菌剤(QNs)などを中心とした,より多くの抗菌性物質を同時に検出できる微生物学的試験法を検討した.食肉からメタノールでホモジナイズ抽出し,10分間遠心分離後,その上清を微生物学的試験法に供した.市販芽胞菌を含めた4種の検査用平板培地(Bacillus subtilis BGA(AM8培地,AM5培地),Micrococcus luteus ATCC 9341およびGeobacillus stearothermophilus)を用いることにより,代表的な抗菌性物質(ペニシルンG,アンピシリン,セファピリン,セファレキシン,エリスロマイシン,スピラマイシン,オキシテロラサイクリン,クロルテトラサイクリン,エンロフロキサシン,オキソリン酸)を感度よく(0.005~2.5 μg/g)検出できた.本法は,動物用医薬品として汎用され,畜産食品中に残留する可能性の高いPCs, CEs, MLs, TCs, QNsなどを簡易かつ迅速に検出することが可能であると思われる.
  • 野口 昭一郎, 寺田 久屋, 田村 征男
    2008 年 49 巻 3 号 p. 177-188
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    LC/MS/MSを用いた畜水産物中の残留動物用医薬品の一斉分析法を検討した.畜水産物中の動物用医薬品を95%アセトニトリルで抽出し,フロリジルカラムを通過させた後,リン酸緩衝液に溶媒を置換してSep-Pak Plus C18に負荷し,40%メタノールおよび70%アセトニトリルで溶出して精製2画分を得た.試験溶液をグラジエント溶離法によりLC/MS/MSを用いて分析した.本法の適用により,牛筋肉,鶏卵,魚介類において37品目の動物用医薬品が回収率60%以上であり,定量可能であった.本法は28品目の動物用医薬品で適用不可であり,その他の42品目の動物用医薬品は,定量はできないがスクリーニングが可能であった.本法の定量下限は暫定基準値をおおむね下回ることから,動物用医薬品の残留分析におけるスクリーニング法として有用である.
  • 梶田 弘子, 阿久津 千寿子, 畠山 えり子, 小向 隆志
    2008 年 49 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    LC/MS/MSを用いた乳中のアミノグリコシド系抗生物質9種類の一斉分析法を検討した.試料を2%トリクロロ酢酸含有リン酸溶液で除タンパク後,抽出液をOasis WCXおよびMCXで精製した.LC条件はカラムにTSK-gel VMpak25を,移動相は0.1%ギ酸-アセトニトリルを用いた.各薬剤を0.01 μg/gおよび0.1 μg/g添加した場合の回収率は66.1~110.8%,変動係数は17.1%以下で,本法による各薬剤の定量下限値は0.001~0.01 μg/gであった.この方法を用いてカナマイシン製剤を乳房内注入された乳房炎罹患牛の乳汁について継時的に分析した.乳中のカナマイシン濃度は指数関数的に減少し,投与後60時間目には基準値以下となり,休薬期間経過後は0.01 μg/gであった.
  • 藤田 和弘, 伊藤 裕信, 石原 三知代, 犬飼 沙知, 田中 廣行, 谷口 誠
    2008 年 49 巻 3 号 p. 196-203
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    濃厚色蜂蜜中のテトラサイクリン系抗生物質(TCs)の残留分析法を開発した.試料中から0.01 mol/L EDTA-2Na含有マキルベン緩衝液(pH 4.0)によりTCsを抽出し,ポリマー系カートリッジ(GL-Pak PLS-2)および銅イオンを介した金属キレートアフィニティークロマトグラフィーにより精製を行った後,蛍光検出器を装着した高速液体クロマトグラフにより測定した.分析法の評価のために,最も濃厚色であるそば由来の蜂蜜を用いて,オキシテトラサイクリン(OTC),テトラサイクリン(TC)およびクロルテトラサイクリン(CTC)について,各3濃度による添加回収実験を行った.その結果,すべての添加区において70%以上の回収率が得られ,また,相対標準偏差は,10%未満であった.また,定量下限値は,OTC 0.015 mg/kg, TC 0.019 mg/kg, CTC 0.024 mg/kgであった.
  • 堀江 正一, 田原 弥生, 石井 里枝, 橋本 和明, 山岸 陽子
    2008 年 49 巻 3 号 p. 204-210
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC-MS/MS)による食肉,鶏卵,魚介類中に残留するニトロフラゾンの定量法を検討した.前処理は,0.2%メタリン酸-メタノール(6 : 4)混液で抽出し,Oasis HLB (200 mg)カートリッジを用いたクリーンアップにより試験溶液を調製した.LC-MS/MS条件は,マトリックスの影響の少ないネガティブモードを採用した.移動相にはギ酸(0.01%)とアセトニトリル系を用い,グラジエント溶出とした.本法による1および10 ng/g添加時の回収率はいずれの試料ともおおむね80%以上,定量限界は0.2 ng/gであった.
ノート
  • 松本 苗緒, 吉川 真弓, 江田 邦章, 小林 あゆみ, 横島 真澄, 村上 正人, 金来 広文
    2008 年 49 巻 3 号 p. 211-222
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    簡易に加工された農産物中残留農薬分析における簡易前処理法を検討した.試料をペースト状に細切均質化しガラス遠心管中でアセトニトリル抽出および塩析後,アセトニトリル/ヘキサン分配し,ミニカラム(グラファイトカーボン/NH2およびシリカゲル)で精製した.分析はGC/MSおよびLC/MS/MSを用いた.試験溶液のマトリックス効果を調べた結果,正負の両方で影響が見られたことから,マトリックス効果を排除するためにマトリックス検量線を用いた.試料8種(にんにくペースト,青ピーマンカット,グリーンピースペースト,セロリーペースト,さつまいもペースト,あずき(乾),たけのこ水煮,トマトペースト)について235農薬の添加回収試験を行った結果,いずれの試料とも214農薬で回収率は50~100%,変動係数は20%未満であった.本法は食品中残留農薬のスクリーニング方法として活用できると考える.
  • 田村 康宏, 高野 伊知郎, 小林 麻紀, 富澤 早苗, 立石 恭也, 酒井 奈穂子, 上條 恭子, 井部 明広, 永山 敏廣
    2008 年 49 巻 3 号 p. 223-227
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    ヒメキサゾールを試料からアセトニトリルで抽出し,塩析後,水層部分に一部移行したヒメキサゾールを固相カラムに負荷して酢酸エチルで溶出した.アセトニトリル層および酢酸エチル溶出液の両液を合わせることにより,ヒメキサゾールの回収率を向上させた.測定はDB-FFAPを装着したGC-NPDで測定した.また,GCの試料注入口における吸着防止のため高度不活化処理を施したガラスインサートを使用し,さらにC18ミニカラムによる精製を加えることにより,測定を妨害するような夾雑ピークがなく定量することが可能となった.試料にヒメキサゾールを0.1 μg/gとなるように添加し,30分放置後,本法に従い試験を行った.3回試行による回収率は65.0~84.7%であった.本法の定量限界は0.02 μg/gであった.
  • 斎藤 瑞恵, 小堤 大介, 川崎 道子, 神橋 美保, 中村 瑠花, 佐藤 吉朗, 遠藤 光春
    2008 年 49 巻 3 号 p. 228-238
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    牛乳の残留農薬および残留動物用医薬品のスクリーニング分析法を開発した.対象はポジティブリスト制度で乳に基準値が設定された農薬および動物用医薬品342化合物とした.牛乳をアセトニトリル抽出後,塩析して分析試料とした.一部の農薬分析用にはさらにヘキサン洗浄およびPSAカートリッジカラム精製を加えた.検出にはGC/MS-EI, -NCIおよびLC/MS/MS-ESIを用いた.基準値濃度における添加回収試験の結果,回収率は化合物によりさまざまであったが,RSD(%)は28%以内であった.本法は牛乳の残留スクリーニング分析法として有用と考えられた.
  • 八津川 洋一, 藤田 和弘, 中村 宗知, 渡井 正俊, 村山 三徳, 米谷 民雄
    2008 年 49 巻 3 号 p. 239-243
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    LC/MSを用いたセデカマイシン(SCM)およびテルデカマイシン(TDM)の同時分析法を開発した.SCMおよびTDMをアセトニトリルで抽出し,n-ヘキサンで脱脂後,試料溶液を調製した.MSはESI,ポジティブモードで,LCの移動相には炭酸-アンモニア緩衝液(pH 10.0)-アセトニトリル系を用い,塩基耐性の分析カラムで分析を行った.添加回収実験の添加濃度は豚試料が0.01と0.05 μg/g,鶏試料が0.01と0.3 μg/gとし,SCMは回収率80~93%,相対標準偏差3.0~9.0%,TDMは回収率77~90%,相対標準偏差2.7~7.8%と良好な結果が得られた.SCMとTDMの定量限界値はそれぞれ0.008 μg/gおよび0.005 μg/gであった.
  • 長南 隆夫, 藤本 啓, 井上 真紀, 田沢 悌二郎, 小川 廣
    2008 年 49 巻 3 号 p. 244-248
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    畜水産食品(筋肉,肝臓,鶏卵,牛乳,エビ,ニジマス)に残留するキノロン剤12種の簡便・迅速な一斉分析法を検討した.食品中のキノロン剤を95%アセトニトリルで抽出し,C18ミニカラムで精製し,試験溶液を調製した.キノロン剤は,カラムにInertsil ODS-3Vを用い,アセトニトリル-0.1%リン酸系のリニアグラジエント溶離法による蛍光検出器付きHPLCで分析した.本法で調製した試験溶液には牛乳(キノロン剤2種の分析が困難)を除き測定妨害物質が認められず,キノロン剤12種の回収率(添加濃度0.1 μg/g)は60%以上,定量限界値は0.005 μg/gであった.本法は,各種畜水産食品に適用でき,簡便かつ迅速で,残留基準値を確認できることから,これらキノロン剤の実用的なスクリーニング法と考えられた.
調査・資料
  • 小林 麻紀, 高野 伊知郎, 田村 康宏, 富澤 早苗, 立石 恭也, 酒井 奈穂子, 上條 恭子, 井部 明広, 永山 敏廣
    2008 年 49 巻 3 号 p. 249-260
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    1994年4月から2006年3月にかけて東京都内で市販されていた輸入穀類加工品490検体について農薬の残留調査を行った.その結果,91検体から8種類の有機リン系農薬(クロルピリホス,クロルピリホスメチル,ジクロルボス(DDVP),ダイアジノン,エトリムホス,マラチオン,フェニトロチオン(MEP)およびピリミホスメチル) が痕跡値(0.01 ppm未満)~0.82 ppmの範囲で検出された.検出された農薬のうちクロルピリホスメチルおよびマラチオンはアメリカ地域産の製品から,ピリミホスメチルはヨーロッパ地域産の製品から,MEPはオセアニア地域産の製品からの検出例が多く,地域により違いが見られた.農薬を検出した穀類加工品について,各農薬の推定摂取量を算出したところ,各ADI値の0.08~13.2%であった.このことから通常の喫食状況で特に問題はないと考えられた.
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