食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
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51 巻, 5 号
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総説
報文
  • 多田 敦子, 高橋 加奈, 杉本 直樹, 末松 孝子, 有福 和紀, 齋藤 剛, 井原 俊英, 吉田 雄一, 石附 京子, 西村 哲治, 山 ...
    2010 年 51 巻 5 号 p. 205-212
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/06
    ジャーナル フリー
    われわれは,国際単位系(SI)にトレーサブルな有機化合物の絶対定量法として,定量NMR (quantitative NMR: qNMR) の開発を行っている.本研究ではqNMRを応用し,既存添加物ルチン(抽出物),ルチン酵素分解物およびクエルセチンの各添加物製品中のルチン,イソクエルシトリンおよびクエルセチンや,これら化合物の市販試薬の絶対定量を行った.今回新たに,計量学的に正確に値付けされた 1,4-ビストリメチルシリルベンゼン-d4 (1,4-BTMSB-d4)をqNMR基準物質として用い,そのメチル基と測定化合物の各2' 位プロトンとのシグナル積分値比から含量を算出し,より簡便な1段階のqNMR測定を行った.その結果,qNMRを用いることにより,分離操作を行うことなく,かつ,測定対象化合物と同一の標準品を必要とせずに,ルチン,イソクエルシトリンおよびクエルセチンの定量が可能であることを見いだした.
  • 中村 宗知, 野田 聡子, 小杉 正樹, 石塚 訓子, 水越 一史, 谷口 誠, 根本 了
    2010 年 51 巻 5 号 p. 213-219
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/06
    ジャーナル フリー
    食品中のジチオカルバメートおよびミルネブの高感度なGC-MS分析法を開発した.ジチオカルバメートおよびミルネブを農作物および畜水産物からシステイン-EDTA溶液でナトリウム塩として抽出し,ヨウ化メチルでメチル化した.ジチオカルバメートおよびミルネブのメチル化物を中性アルミナを用いて精製した後,GC-MSで測定した.メチラムを除くジチオカルバメートおよびミルネブの平均回収率は 72~120% の範囲であった.食品における定量限界は二硫化炭素として0.01 mg/kgであった(茶は0.1 mg/kg).今回開発した方法は10物質(ジメチルジチオカルバメート4物質,エチレンビスジチオカルバメート3物質,ポリカーバメート,プロピネブおよびミルネブ)に適用可能であった.
  • 尾崎 麻子, 大嶋 智子, 大垣 寿美子, 河村 葉子
    2010 年 51 巻 5 号 p. 220-227
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/06
    ジャーナル フリー
    ポリ乳酸製器具・容器包装7検体について食品衛生法における規格試験を実施した.さらに,その他の含有物質や溶出物質の検討をICP-AESおよびGC/MSを用いて行い,溶出液について2種類の変異原性試験を実施した.その結果,すべての試料が食品衛生法における規格基準を満たしており,金属の溶出もほとんど見られなかった.溶出液のGC/MSによるピーク検索の結果,大きなピークは見られず,レックアッセイおよびumu-テストの両方の試験においてすべての試料が陰性を示した.umu-テストにおいて汁椀の溶出液がβ-ガラクトシダーゼ活性を若干増加させたが,素地であるポリ乳酸からの溶出物によるものではなく,塗装面のポリウレタンによるものと推測された.
  • 六鹿 元雄, 山口 未来, 大野 浩之, 河村 葉子
    2010 年 51 巻 5 号 p. 228-236
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/06
    ジャーナル フリー
    おたま,フライ返し,ラップフィルムなどナイロン製品21試料について,熱分解ガスクロマトグラフィー(Py-GC/MS)を用いてそのナイロンの種類を判別するとともに,モノマー2種類および芳香族第一級アミン類(PAAs) 21種類の溶出量をLC/MS/MSにより測定した.試料の材質はナイロン6が1検体,ナイロン66が15検体,ナイロン6/66共重合体が3検体,ナイロンとPE,PPのラミネートが2検体であった.ただし,ナイロン66製品はナイロン6のモノマーであるε-カプロラクタム(CPL)も含有していた.また,20%エタノール60℃ 30分間でのモノマーおよびPAAsの溶出量は,ラップフィルム1検体を除くすべての検体からCPLが0.015~38 μg/mL,すべてのナイロン66製品とナイロン6/66製品1検体から1,6-ヘキサメチレンジアミンが0.002~0.013 μg/mL検出された.また,4,4'-ジアミノジフェニルメタンが3検体から0.006~4.3 μg/mL,アニリンが4検体から0.032~0.23 μg/mL,その他4-クロロアニリンが2検体から各0.001 μg/mL,2-トルイジンおよび1-ナフチルアミンがそれぞれ1検体ずつから0.002および0.066 μg/mL検出された.さらに,95℃ および121℃ 30分間では各溶出量が 95℃ では 60℃ の約3倍,121℃ では約10倍に増加した.
ノート
  • 秋場 哲哉, 田中 達也, 永野 美由紀, 森 功次, 林 志直, 尾畑 浩魅, 千葉 隆司, 幾田 泰久, 神谷 順子, 仲真 晶子, 保 ...
    2010 年 51 巻 5 号 p. 237-241
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/06
    ジャーナル フリー
    RT-PCRやリアルタイムPCRなどの高感度な遺伝子検査法を用いても,食品からノロウイルス(NV)が検出される事例は非常に少ない.われわれは,食品成分由来の夾雑物が検査に与える影響に着目し,その除去方法として細菌を利用した処理方法(A3T法)を考案した.今回,実際の食品検査における同法の有用性を検証することに加え,二枚貝のNV汚染状況をより明らかにするため,市場に流通する二枚貝やNVを原因とする食中毒事件との関連が疑われた生食用カキを対象にNV検出を試みた.二枚貝111検体の検査では,A3T法では20検体(18.0%)からNVが検出されたが,厚生労働省通知による検査法でNVが検出されたのは1検体(0.9%)のみであった.また,食中毒事件関連の生食用カキ35検体を用いた検査では,A3T法により10検体がNV陽性となったが,通知法では検出されなかった.A3T法は簡易な操作を加えるだけでNV検出率の向上が図れることから,日常検査に適した手法と考えられた.
  • 高畠 令王奈, 大西 真理, 小岩 智宏, 布籐 聡, 峯岸 恭孝, 穐山 浩, 手島 玲子, 古井 聡, 橘田 和美
    2010 年 51 巻 5 号 p. 242-246
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/06
    ジャーナル フリー
    GMダイズ新系統MON89788の系統特異的定量分析法を開発し,その性能指標を評価した.内標比とは,各GM系統に固有であり,混入率算出の際に必要となる係数であるが,本研究によってMON89788の内標比が実験的に決定された.さらに,さまざまな濃度のMON89788を含む疑似混入試料を調製し,単一試験室あるいは複数試験室において性能指標を明らかにしたところ,本分析法の定量下限値は 0.1%以下と見積もられ,偏差,室間再現性ともに 20%を下回る結果が得られた.以上の結果から,本分析法は検査に適用可能であることが示された.
  • 峰松 和彦, 中村 公亮, 穐山 浩, 張替 直輝, 中島 治, 橘田 和美, 手島 玲子, 飯塚 太由
    2010 年 51 巻 5 号 p. 247-252
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/06
    ジャーナル フリー
    安全性未承認の遺伝子組換え(GM)コメの試験法として,polymerase chain reaction (PCR) を用いたGMコメDNAの検知法が厚生労働省から通知されている.コメ加工品として中国から輸入されるコンニャク製粉含有コメ粉のDNA検査は,コンニャク多糖成分の妨害によってDNA抽出液の調製が困難であったため,これまで「検知不能」の判定結果となる場合が多かった.本研究では,DNA抽出操作前にコンニャク多糖を分離し,その後,コメ粉のDNAを精製する方法を確立した.本法で得られたコメDNA試料は,定性PCRおよびリアルタイムPCR法による検査が可能であることが確認された.
  • 起橋 雅浩, 小阪田 正和, 内田 耕太郎, 永吉 晴奈, 山口 貴弘, 柿本 健作, 中山 裕紀子, 尾花 裕孝
    2010 年 51 巻 5 号 p. 253-257
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/06
    ジャーナル フリー
    加工食品中の農薬分析を対象とした,技能試験の試料調製方法を検討した.検討用試料としてレトルトカレーとパンケーキを用い,農薬を添加した試料の均一性を評価した.レトルトカレーは調製時と採取時に加温して均一化することが必要であった.有機リン系農薬およびカーバメート系農薬を中心に,15種類の農薬を添加したところ,14種類の農薬濃度で試料の均一性が確認された.パンケーキは生地に10種類の農薬を添加した.生地は農薬添加後に加熱調理したが,調製したパンケーキ中の農薬濃度はほとんど影響を受けず,添加したすべての農薬濃度で試料の均一性が確認された.また,-20℃ で保存した場合,約2 か月間は農薬濃度の大きな変化はなかった.以上の結果よりこれらの調製試料は,技能試験用試料として使用可能と考えられた.
調査・資料
  • 川上 宏之, 天倉 吉章, 堤 智昭, 佐々木 久美子, 池津 鮎美, 稲崎 端恵, 久保田 恵美, 豊田 正武
    2010 年 51 巻 5 号 p. 258-263
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/06
    ジャーナル フリー
    天然/畜養クロマグロおよび畜養ミナミマグロの赤身,中トロおよび大トロのダイオキシン類および総水銀を分析し,部位,畜養/天然および種差について検討した.検討の結果,ダイオキシン類濃度は,脂質含有量との間に正の相関が見られ,部位別濃度は赤身<中トロ<大トロであった.クロマグロは,畜養と天然産で差がなく,畜養ミナミマグロに対して約2~10倍ほど高い値を示した.総水銀濃度は,脂質含有量との間に負の相関を示し,部位別濃度は赤身>中トロ>大トロであった.畜養クロマグロの総水銀濃度は,天然産と同レベルの蓄積であったが,畜養ミナミマグロの約2~3倍高い値を示した.
  • 秋山 卓美, 林 歩美, 山崎 壮, 多田 敦子, 杉本 直樹, 尹 永淑, 功刀 彰, 棚元 憲一, 河村 葉子
    2010 年 51 巻 5 号 p. 264-272
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/06
    ジャーナル フリー
    既存添加物名簿に収載もしくはかつて収載されていたガムベースのうち,トリテルペノイドを多く含有するとされている樹脂であるマスチック,ダンマル樹脂,ニュウコウ,ベンゾインガムおよびエレミ樹脂と,ジテルペノイドを多く含有するとされている樹脂であるロシンおよびコーパル樹脂について,簡便なクロマトグラフィー手法による識別法を検討した.TLCでは品目ごとに互いに異なる特徴的なパターンを示したことから,品目の識別が可能であった.次に,試料をメチルエステル化した誘導体をGC/MSで分析した.TICクロマトグラムは品目ごとに互いに異なる特徴的なパターンを示し,明らかな差異が見られた.また,各品目の主要構成成分を検出することができ,品目ごとに特徴的な,判別の指標成分となりうる化合物が存在した.今回検討したTLC分析法は簡便な確認試験法として,GC/MS分析法は含有成分の確認試験法として利用できることから,テルペノイド系ガムベースの体系的分析法としても品目間の判別法としても有用な試験法である.
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