食品衛生学雑誌
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55 巻, 1 号
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報文
  • 田口 大夢, 永富 靖章, 菊池 亮, 平尾 宜司
    原稿種別: 報文
    2014 年 55 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
    えびやかにを含む旨の表示がなされている原料および加工食品46試料について,スクリーニング検査および確認検査を実施し,えび/かにPCR確認検査法の適用性を評価した.46試料のうち,「ELISA値10 ppm以上」かつ「PCRにより検知可能」と判定された27試料において,すべての試料が「えび/かにPCR:陽性」であった.スクリーニング検査と確認検査で共に陽性の結果が得られたことから,「ELISA値10 ppm以上」であれば,パウダーやエキス原料,調味料,冷凍食品,菓子,レトルト食品,缶詰など,異なる食品形態において,えび/かにPCRが適用可能であると判断した.なお,「ELISA値1 ppm以上,10 ppm未満」かつ「PCRにより検知可能」であった試料は2試料と少なく,さらに確認検査で陰性の結果が得られた試料はそのうち1試料のみであったことから,確認検査の適用が困難な食品共通の形態,加工条件などは評価できなかった.
  • 田原 正一, 藤原 卓士, 安井 明子, 早藤 知惠子, 小林 千種, 植松 洋子
    原稿種別: 報文
    2014 年 55 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
    食品に添加された甘味料(サッカリンナトリウム(Sa),アセスルファムカリウム(AK),アスパルテーム(APM),ズルチン(Du))分析で行う,簡便で迅速な改良透析法を開発した.従来法では,透析が48時間必要とされる穀物調製品のクッキーに,甘味料をそれぞれ0.1 g/kg添加して種々の検討を行った.その結果,従来法では,長さが約15 cmだった透析膜チューブを55 cmとして膜面積を増やし,転倒混和を30分ごとに行って,透析時間を4時間に短縮した.Sa,AK,APM,Duの回収率(%)は,それぞれ従来法の72.5,82.0,80.5,65.5から,93.3,98.3,103.2,88.9に改善した.種々の食品を検体とすると,Sa,AK,APM,Duの回収率(%)は,それぞれ91.6~100.1,93.9~100.1,86.7~100.0,88.7~104.7と良好だった.本改良透析法は,甘味料試験検査の迅速化に寄与することが示された.
ノート
  • 田村 昌義, 中川 博之, 宇山 敦生, 望月 直樹
    原稿種別: ノート
    2014 年 55 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
    トリコテセン系カビ毒9種(ニバレノール,デオキシニバレノール,フザレノン-X,ネオソラニオール,3-アセチルデオキシニバレノール,15-アセチルデオキシニバレノール,ジアセトキシスシルペノール,HT-2トキシン,T-2トキシン)の一斉分析法を検討した.その結果,試料中のカビ毒をアセトニトリル–水(1 : 1)を用いて抽出し,QuEChERSキットおよび多機能カートリッジによる精製後,内部標準法を用いたLC-MS/MSにより定量する方法を確立した.LC分離にはペンタフルオロフェニルカラムとメタノールを含む移動相を用い,各カビ毒の完全分離と高感度定量を実現した.粉末コーンスープを用いた分析妥当性試験では,直線性0.99以上,真度95~111%,日内再現性0.9~6.6%,日間再現性0.6~11.6%,検出限界0.01~0.75 μg/kg,定量下限0.04~2.50 μg/kgという良好な結果を得た.本法を用いて市販粉末コーンスープ15試料を分析したところ,2試料よりデオキシニバレノール(20.7,22.5 μg/kg)を検出し,そのうち1試料は3-アセチルデオキシニバレノール(13.5 μg/kg)との共汚染であった.
  • 真野 潤一, 波田野 修子, 布藤 聡, 峯岸 恭孝, 二宮 健二, 中村 公亮, 近藤 一成, 手島 玲子, 高畠 令王奈, 橘田 和美
    原稿種別: ノート
    2014 年 55 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
    食品および農産物のDNA分析をより簡易なものとするため,分析試料の粗抽出液からDNAを直接PCRで増幅し,それをリアルタイムPCR装置でモニタリングするダイレクトリアルタイムPCRについて検討を行った.既定の組織溶解液による前処理と開発したマスターミックスによるリアルタイムPCRを組み合わせてダイレクトリアルタイムPCRシステムとした.50種類の食品および農産物試料の分析を行ったところ,いずれの試料においてもPCRの阻害は認められず,開発した手法が多様な試料に適用可能であることが確認された.次に,DNAの一塩基置換を判別するモデル評価系を構築し,ダイレクトリアルタイムPCRの反応特異性を評価した.その結果,ダイレクトリアルタイムPCRにおけるプライマーの選択性は,精製DNAを用いる通常のPCRと同等であった.最後に,遺伝子組換え農産物を一定の濃度で含む試料を用いてダイレクトリアルタイムPCRの検出感度および定量性について評価を行った.分析の結果から,ダイレクトリアルタイムPCRによって標的の高感度な検出と高精度な定量が可能であることが明らかとなった.
調査・資料
  • 田上 貴臣, 青山 愛倫, 武田 章弘, 淺田 安紀子, 土井 崇広, 梶村 計志, 沢辺 善之
    原稿種別: 調査・資料
    2014 年 55 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
    強壮効果を標榜したいわゆる健康食品からは,医薬品成分が検出された事例がある.近年では摘発を逃れるために,強壮効果のある医薬品成分の構造の一部を変えた医薬品成分類似体が検出される事例がしばしば見受けられる.健康食品中の多数の成分を効率的に分析するためには,一斉分析法が必要である.そこで,LC/MSを用い,強壮効果を標榜する健康食品に添加される恐れのある18種類の化合物の一斉分析法について検討した.その結果,今回検討した分析法は,強壮効果を標榜する健康食品に添加される恐れのある18種類の化合物を分析することが可能であると考えられた.このことから,今回検討した分析法は,健康食品中の医薬品成分の効率的な検査法の1つとして有用であると考える.
  • 渡邊 裕子, 濟田 清隆, 赤星 千絵, 大澤 伸彦, 橋口 成喜, 宮澤 眞紀
    原稿種別: 調査・資料
    2014 年 55 巻 1 号 p. 41-54
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
    捕食や混獲によると考えられる魚介類加工食品へのえび・かに混入の調査(2009~2012)を行った.アレルギー表示制度施行後の2010~2012年の煮干や佃煮などの小魚を含む加工食品の甲殻類タンパク質の検出率は63%であった.また,甲殻類タンパク質が1 μg/g以下であった加工食品の割合は,注意喚起表記ありが36%,なしが58%となり,約6割の表示が妥当であった.一方,甲殻類タンパク質量がアレルギー表示における基準値である10 μg/gを超える加工食品の検出率は9%で,このうち約6割に注意喚起表記がなかった.えび・かにを含む加工食品のあきあみ検出用プライマーによる検出率は73%と高く,えびPCR法ではあきあみも実施する必要があると考えられた.かにPCR法では共にしゃこDNAも8%検出され,かにの混入を確認できなかった.
  • 登田 美桜, 畝山 智香子, 春日 文子
    原稿種別: 調査・資料
    2014 年 55 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
    厚労省監修の「全国食中毒事件録」をもとに,昭和36年~平成22年の高等植物による食中毒事例の傾向を分析した.食中毒発生件数の合計は,チョウセンアサガオ類,バイケイソウ類およびトリカブト類で多かった.月別発生件数では4,5月に多いものの,チョウセンアサガオ類など年中発生しているものもあった.主な原因施設は「家庭」であり,多くは患者が自ら原因植物を採取していた.最近10年間に顕著な増加が見られたのは,バイケイソウ類,スイセン,ジャガイモおよびクワズイモであった.近年の主な特徴は,園芸植物による事例が目立つようになったこと,小学校等の授業の一環で採取・調理されたジャガイモによる事例が増加していることである.今後,園芸植物の中にも有毒なものが存在するという消費者向け注意喚起を徹底し,教育現場では教師と子どもが自然毒の危険性への理解を深める取り組みが必要であると考えられた.
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