日本透析医学会雑誌
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27 巻, 2 号
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  • 秋葉 隆, 川口 良人, 黒田 満彦, 二瓶 宏, 日台 英雄, 山川 真, 山崎 親雄, 丸茂 文昭
    1994 年 27 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    日本透析療法学会総務委員会感染対策小委員会は日本の慢性透析患者のHCV感染の実態を把握しようとした. 1993年2月, 施設会員2,309施設にアンケートを発送し, 61.0%の施設, 血液透析患者の57.7%, CAPD患者の52.1%の回答を得て, これらを解析した. 7地区別の回答率に差がなく, 回答された私的診療所の割合は母集団と有意差がなかった.
    第2世代HCV抗体陽性率血液透析患者の23.9%, CAPD患者の11.2%で, 陽性率は有意に血液透析が高値だった. 陽性率は血液透析で東京地区の19.6%から中国四国地区の26.7%まで, CAPDで北海道・東北地区の7.6%から九州沖縄地区の14.0%まで分布していた.
    最近3年間に経験したHCV陽性肝硬変症はHCV陽性透析患者1,000人1年当たり8.57人, HCV陽性の肝癌はHCV陽性患者1,000人1年当たり3.87人だった.
    最近3年の透析従事者のHCV陽性患者の用いた針による針刺事故は透析従事者1,000人当たり15.2人/年だった. 入職後の透析従事者のHCV抗体陽性化は透析従事者1,000人当たり1.14人/年だった.
    HCV陽性患者の取扱いマニュアル, HCV陽性患者に使用した針による針刺事故時のマニュアルを持っていると回答したのは各21%, 25%のみであった.
    以上の調査結果から慢性透析療法を受けている患者とそのスタッフはHCVウイルス感染罹患率が一般人口より高いことが定量的に明らかとなった. 今後その対策を明らかにすることが感染対策小委員会に求められている.
  • 中村 英一, 生間 敬博, 豊田 高彰, 岡本 峰夫, 諫見 康弘, 藤井 正博, 中島 義文, 宮野 竜一
    1994 年 27 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析終了後, 血中尿素濃度は急速に再上昇し, いわゆる, 尿素のリバウンド現象がみられる. 慢性維持透析患者23名を対象に計92回の血液透析を行い, リバウンドの時間経過, 原因, および, 至適透析の指標である標準化透析量 (Kt/V), 時間的に平均した血中尿素窒素濃度 (TACurea), 蛋白異化率 (pcr) の算出に及ぼす影響について検討した.
    週3回, 4時間, 血流量200ml/minの通常透析においても, リバウンドがみられ, 尿素濃度は約30分後には平衡状態に達するものと思われた. 透析直後から30分までのリバウンド率は約16%にも達した.
    透析後の急速な血中尿素濃度の再上昇は, pcrとは全く相関せず, 蛋白異化亢進によるよりも, むしろKt/Vと相関することより, 尿素濃度の細胞内・外液間の不均衡に依存すると思われた.
    透析終了直後と30分後の血中尿素濃度を用いてKt/V, TACurea, pcrを比較すると, それぞれ, 約0.15 (15.6%) の過大, 2.0mg/dl (4.0%) の過小, 0.08g/kg/day (8.5%) の過大評価を認めた. 従って, リバウンドを考慮せずに, 透析終了直後の血中尿素濃度を用いて, Kt/V, TACurea, pcrを算出すると, これら至適透析の指標を誤って良い方向へ過大評価する危険性がある.
  • 安村 忠樹, 大坂 芳夫, 中井 一郎, 吉村 了勇, 鈴木 茂敏, 大森 吉弘, 岡 隆宏
    1994 年 27 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    腎移植後, 慢性拒絶反応などにより移植腎機能が廃絶した患者では, 腎不全状態に加え長期にわたる免疫抑制療法により, 一般透析導入患者と異なった合併症を発症する. そこで, 腎移植後機能廃絶した89例を対象として, 透析再導入後の合併症, 予後について検討した. 透析再導入後の累積生存率は, 1年92%, 5年83%, 10年77%であった. 現在まで21例が死亡したが, このうち6例が再導入後3か月目までの死亡であり, 原因は肺感染症, 消化管出血, 穿孔などで, 再透析直前まで行われていた免疫抑制療法が重大な要因となった. また1年目以降は心不全, 脳出血, 消化管穿孔など透析の合併症で死亡した. 透析再導入後は免疫抑制剤の投与量を減量するが, この経過中に急性拒絶反応様の症状が出現し15例に移植腎摘出が行われた.
    一方, 移植腎を温存している50例のうち, 24例48%は免疫抑制療法から完全に離脱しており, 18例 (36%) はプレドニゾロン5mg/日の投与が行われている. 移植腎温存例では移植腎からのある程度の尿の排泄があり, 摘出例では週3回の透析が必要であるのに対し, 温存例では再導入後4年までは週2回透析例が認められた. また摘出例と温存例との生存率を比較すると, 温存例では3か月以内の死亡があるため, 2年目まで有意差を認めるが, これ以降では両群に差は認められなかった. このように移植腎拒絶後は早期から免疫抑制剤の減量を行い, 免疫抑制療法に基づく合併症を予防することが予後を改善する上で重要であり, これ以降は移植腎摘出の有無に拘わらず, 一般の透析患者と比べ予後には差は認めなかった.
  • 北村 真, 平賀 聖悟, 飛田 美穂, 佐藤 威
    1994 年 27 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    当院において過去8年8か月間に経験した1,164名の透析患者のうち52名 (4.5%) に悪性腫瘍の合併が認められた. これら腫瘍合併例の臨床的特徴を明らかにする目的で, 年齢, 透析期間, 腫瘍発見の契機, 腫瘍の発生部位, 腫瘍の発生頻度, 予後などについて検討を加えた.
    腫瘍発生時年齢は一般の透析導入時平均年齢に近く, また透析導入前から腫瘍発生の頻度が高いことが推測された. 腫瘍発見の契機としては出血および定期検査によるものが多く認められた. 腫瘍の発生部位としては, 第一に消化器系で, 次いで泌尿器系の悪性腫瘍が多かった. 全体の生存率は44.2%であった. 外科的手術が可能であったものは61.5%であり, このうち71.9%の生存が認められている. 一方手術不能例は38.5%で, その死因の分析については今後の課題となった.
    末期腎不全患者における悪性腫瘍の発生頻度は高く, 患者生存における大きなrisk factorsの一つであるが, 腫瘍の早期発見に努め, 積極的に外科治療を行うことによって良好な予後を得ることが可能と考えられた.
  • 藤森 明, 内藤 秀宗, 宮崎 哲夫, 長坂 肇, 吾妻 眞幸, 橋本 幸枝, 堀川 聖三郎
    1994 年 27 巻 2 号 p. 101-104
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    GE社製HiLight Advantage型CTを用いて3次元立体画像による透析患者の骨病変の検討を行った. このシステムでは3次元立体画像を回転させたり不要部分を削除することが可能で, 股関節や脊椎等の複雑な部分の骨病変診断には特に有用であると思われた. 実際, 大腿骨頭および骨盤へのアミロイド沈着や, 骨盤の小骨折を非常に分かり易く描出することが可能であった. また, 骨量減少のため骨表面が不整になっている様子も明瞭に描出された. 透析患者には腎性骨異栄養症やアミロイドの骨沈着といった骨合併症が問題となることが多く, 3D-CTを応用することでより正確な骨病変の診断が可能になるものと考えられた.
  • 田中 方士, 渡辺 隆, 宮内 義浩, 伊良部 徳次, 村上 信乃
    1994 年 27 巻 2 号 p. 105-107
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全で内シャントによる血液透析を受けている356例571手術につき, そのシャント閉塞の危険因子につき検討を行った. 検討した因子は, 手術時年齢, 性別, 原疾患, Ht値である.
    全体での5年開存率は68%, 10年では57%であった. 性別, Ht値は, シャント開存に関係なかったが, 原疾患 (糖尿病), 手術時年齢はシャント開存に影響を与えた.
  • 高須 伸治, 高津 成子, 岡 良成, 国米 欣明
    1994 年 27 巻 2 号 p. 109-112
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    長期透析に伴う合併症のうちで, 手指の痛み, しびれ, 運動制限などの症状を呈する手根管症候群の頻度は高い. その原因として, アミロイドとの関連が示唆されているが, 一方ではアミロイド沈着部位周囲へのマクロファージの浸潤や, 結合織の増生もみられており, その詳細についてはまだ不明な点が多い. 今回我々は, 慢性透析患者の血清サイトカインを測定し, 手根管症候群との関連について検討した. 特別な感染症, リウマチ, 肝疾患, 癌などを持たない慢性維持透析患者71名を対象とした. これを, 手根管症候群をもたないコントロール群 (n=40) と, 手根管症候群をもつCTS群 (n=31) の2群に分類した. 生化学的検査として, 血清β2マイクログロブリン (β2-MG) を, また血清中のサイトカインとして, interleukin-6 (IL-6), macrophage colony-stimulating factor (M-CSF) を測定した. 血清β2-MGは, 両群間に有意差を認めなかった. 血清IL-6についてみると, コントロール群では6.2±2.5pg/ml, CTS群では12.8±20.0pg/mlであり, CTS群において有意に高かった (p<0.05). 次に血清M-CSFについてみると, コントロール群では3.82±0.83ng/ml, CTS群では4.43±0.73ng/mlであり, CTS群において有意に高かった (p<0.01). また, 血清IL-6とM-CSFは有意な正の相関が認められた (r=0.282, p<0.05). 以上より, CTS発症の一因にIL-6とM-CSFの上昇が関与している可能性が示唆された.
  • 西岡 加津子, 市原 信子, 太田 めぐみ, 江戸 稚香子, 山田 和美, 山下 由美子, 藤田 恵子, 永原 芳江, 丸岡 直子, 近田 ...
    1994 年 27 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    CAPD導入時には積極的適応の基準を満たし, 導入後は良好な経過が期待されると考えられた15例のうち, 心不全・溢水および腹膜炎を繰り返した6例をI群, 経過が良好であった9例をII群として, 生活環境およびその変化から受けるストレスに対処する能力について検討した.
    性・年齢・職業および生活環境についてみると, I群は独身男性, 自営業 (各2名) と幼児をもつ若年女性, 会社社長 (各1名) であった. またII群では, 30-40代の働き盛りの男性 (3名) と血液透析から移行した男性 (1名) と中年の専業主婦 (5名) であった.
    ストレス度は, 導入後の安定した状況下では, I群が53-159点, 平均73±17点, II群が53-212点, 平均110±12であった. しかしI群では合併症のおきる直前に118-480点, 平均295±48点に上昇した (p<0.005). ストレス増大の原因として, CAPDにおける最大の支援者である家族の入院, 転職, 職場の配置転換, 退職, 住居の新築, 育児および経済的困難などのさまざまなケースがみられた.
    食事管理能力は, II群の中年の専業主婦で高く, これは子供がすでに成長しており食事療法に対して専念できるためと考えられた. 一方, I群の独身男性や育児に追われている若年女性では劣っていた. これらの症例では, 麺類を多く摂ったために, 蛋白質の摂取が少なかったり, 外食の頻度も高く, 塩分制限も守られなかった.
    家族支援については, I群に比べてII群でより協力的であった (p<0.05).
    今回の研究により, 永続的な自己管理が必要なCAPD療法が, 患者に大きな精神的負担となっており, これに生活環境の変化から受ける新たなストレスが加わると, 食事管理・バッグ操作に集中できなくなり, 溢水・腹膜炎などの合併症を誘発する可能性が示された.
  • 岡田 一義, 高橋 進, 樋口 輝美, 奥田 直裕, 柴原 宏
    1994 年 27 巻 2 号 p. 119-121
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    市販されている静注用遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤 (rHuEPO) の最小単位は1,500IUであるため, 血液透析 (HD) 患者において1,500IUより少ない量のrHuEPOの経静脈的投与の必要性について進行性の腎性貧血を認める4名のHD患者を対象として検討を行った. rHuEPO投与前の進行性のヘマトクリット値 (Ht) 低下は500IU週3回投与により消失した. また, Htは500IU, 750IU, 1,000IUとrHuEPO投与量が増加するにつれ, 用量依存性に増加し, 総投与量が同じ場合には, 1回投与量よりも投与回数を多く (投与間隔を短く) した場合に増加した. 貧血の進行を予防することが患者のquality of lifeの面から重要であり, rHuEPOによる造血反応に関与する因子を配慮することによって, 低用量 (500IU, 750IU, 1,000IU) のrHuEPO投与は腎性貧血の治療薬として有効である.
  • 安森 亮吉, 渡部 純郎, 明石 光伸, 加賀 明彦, 友 雅司, 柴田 哲雄, 那須 勝, 大園 恵幸, 原田 孝司, 原 耕平
    1994 年 27 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    脳出血を合併した血液透析患者2例にCT定位血腫吸引除去術を施行した. 症例1は, 63歳男性, 意識レベル3, III-a型左被殼出血で発症2日目に手術を施行した. 症例2は, 59歳男性, 意識レベル3, III-b型左視床出血で発症7時間後に手術を施行した.
    2症例とも, 急性期には抗凝固剤としてNafamostat mesilateを使用し, 頻回短時間血液濾過透析を施行し, 脳圧亢進予防のためグリセオールを使用し, 特に重篤な合併症を起こさず経過を観察し得た.
    透析患者の脳外科手術に際しては, 持続的血液濾過透析や腹膜透析が推奨されているが, CT定位血腫吸引術に際しては, 手術侵襲が少ないことから, 術後も頻回短時間血液濾過透析にてコントロール可能と考えられた.
    血液透析患者の脳出血に対してCT定位血腫吸引除去術の有用性, および, 今後手術適応の拡大等が示唆された.
  • 小笠原 英幸, 木山 茂, 副島 秀久, 松下 和孝
    1994 年 27 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    高度の好酸球増加を伴った間質性腎炎による急性腎不全の1例を経験した. 症例は54歳男性で, 1990年9月6日に頭蓋骨骨折で某脳外科病院で保存的治療を受けていた. 9月6日から9月15日までにジクロフェナクナトリウム坐薬50mgを9回, 9月15日から9月19日までピペラシリン1日4g投与される. 経過良好であったが, 10月7日夕方, 同室者からもらった刺身を食べ, 10月8日未明より悪寒, 下痢, 発熱とともに, 好酸球18%と好酸球増加を認めた. 10月9日, 下痢, 腹痛の増悪, 嘔吐, 高熱を認め乏尿傾向となり, 10月11日無尿となったため当院紹介入院となった. この間, 10月9日より, ピペラシリン2gを5回投与されていた.
    胃内視鏡検査では, アニサキスが胃壁に侵入した痕跡が認められた. 腎機能は好酸球の減少に平行して回復したが, 2週間に7回の血液透析を要した.
    開放腎生検では間質の浮腫と好酸球, リンパ球の浸潤, 尿細管の破壊像が認められ, 間質性腎炎と診断した.
    薬剤性間質性腎炎や寄生虫症では好酸球が増加することが報告されているが, 過去の報告では, 末梢血好酸球は少なくとも20%以下であった. 自験例では, 経過中に末梢血好酸球は78%まで増加した.
    本症例では, 発症時にすでに好酸球増加が認められており胃アニサキス症が好酸球増加および急性腎不全の誘因として疑われた. しかしながらピペラシリンはDLST陽性であり, 脳外科入院初期の投与時に感作された可能性もあり, 発症後の再投与による過敏反応と嘔吐, 下痢による脱水が増悪因子となったことも考えられた.
  • 伊東 賢二, 北村 公博, 小室 保尚, 内田 均, 山口 脩, 白岩 康夫
    1994 年 27 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    CAPD施行中の患者に膵炎と脊髄腫瘍と脊椎分離すべり症を合併した1症例を経験した. 症例は51歳, 男性で2回の腹膜炎の既往がある. 急激に上腹部痛と嘔気をきたし発症, 血清アミラーゼ値は937U/lと高値で, 腹部エコー, CTにて膵炎を疑いgabexate mesilate, PIPCの投与を行った. 上腹部痛は23日目に改善したが, 下痢と腰痛が続き排液白血球数が100/mm3以上あり, カテーテルによる腹膜炎も考えられるため30日目にCAPDカテーテルを抜去し血液透析に移行した. 下痢は改善したが腰痛は依然として続くためMRI, mylographyを施行したところ, 第3腰髄腫瘍 (neurinoma) と第4腰椎分離すべり症が合併しており, 164日目に手術を行い著明に改善した. 今回の膵炎の発症原因は1) 腹膜炎と2) ブドウ糖吸収による高血糖の2つが考えられる. 膵炎はgabexate mesilate, PlPC投与により改善したが腹膜炎は遷延し, カテーテル抜去後にようやく改善がみられた. カテ-テル先端の培養は陰性で腹膜炎の原因は明らかでないが, 抜去後に症状が改善したことよりカテーテル自体が感染源になっていた可能性がある. CAPDカテーテルの抜去時期, CAPD中止の判断が重要と思われた. また腰痛は, CAPDの合併症の1つであるが, 今回のように脊椎疾患を合併している可能性もあるので, MRI, mylography等の検査が必要と考えられた.
  • 佐内 透, 木村 玄次郎, 稲永 隆, 河野 雄平, 最上 和夫, 品川 亮, 唐川 真二, 公文 啓二, 松岡 博昭, 鬼頭 義次, 尾前 ...
    1994 年 27 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    重症心疾患を伴う慢性腎不全患者4例にCAPD療法を施行した. 年齢は39-65歳. 心疾患は, 不安定狭心症 (三枝病変), チアノーゼ性先天性心疾患, 右冠動脈-右室瘻に合併した感染性心内膜炎, および心筋症である. CAPD導入理由は, 心機能低下, 不整脈, 貧血, 出血傾向, 敗血症, 多血症などで, 追跡期間は2年1か月-3年4か月である. 心筋症例は2年11か月で突然死したが, 死因は不整脈によると推察された. それまでは順調に経過していた. 不安定狭心症と感染性心内膜炎の2例は冠動脈バイパス術あるいは大動脈弁置換術・瘻孔閉鎖術を受け, 先天性心疾患の1例も順調に経過している.
    以上の4症例の経験から, CAPDは貧血が改善しやすく, A-V fistulaや体外循環の必要がなく, 循環血漿量や電解質の急激な変化もないので, 循環動態の安定が得られ, 重症心疾患を有する慢性腎不全患者に適した血液浄化法であるといえる.
  • 滝下 佳寛, 高橋 弘子, 樋口 和彦, 浜田 信一, 高野 尚之
    1994 年 27 巻 2 号 p. 141-144
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP), 特に妊娠に伴ったTTPの予後は非常に悪いことが知られている. しかし近年, 血液浄化法なかでもplasma exchange (PE) によりTTPの予後は著しく改善されている. しかし, まだTTP患者での出産成功例はごくわずかである. 今回, 我々はPEを行うことにより無事出産し得た1例を経験したので報告した.
    症例は31歳, 1986年, 25歳の時初回妊娠22週で胎児死亡を機にTTPを発症. 人工流産, PEおよび摘脾にて軽快していた. その後しばしば血小板減少をきたすことがあったが新鮮凍結血漿 (FFP) の輸注で改善し, さらにその後は血小板数は安定し, しばらく来院していなかった. 1991年, 30歳, 来院時に妊娠6週で本人の強い希望もあり妊娠を継続. 1992年, 妊娠35週で血小板減少をきたし緊急入院となる. 入院時, 血小板数3.2万, Hb 10.4g/dl, LDH 2,330IU/l. FFPおよび新鮮血輸血にも拘わらず血小板数の増加がなく, Hb 8.6g/dlと貧血も増強のため, 血小板輸血とともにPEを施行した後, 帝王切開を行った. PEはFFP 40単位 (約3,200ml) を用い, 抗凝固剤にメシル酸ナファモスタットを使用, 血液透析も併用, さらに翌日および翌々日と合計3回行った. その結果, 血小板数は速やかに増加し, また新生児も健康で, 母子ともに順調に経過している.
    今回の症例の経験からもPEを用いることにより, TTP患者においても無事出産し得ることが示された.
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