脳性麻痺の早期介入・支援に向けて, 早期診断の重要性が増している. 乳児期早期に行える脳性麻痺の予測に有用な神経学的評価の文献をレビューすると, general movements (GMs) 評価が最も多く報告されている. 本稿では, 月齢3〜4までの新生児期・乳児期早期に実施できる発達評価法について紹介し, GMs評価法について詳述する. 脳性麻痺の予測には予定日から3〜4か月時のfidgety運動の欠如が最も重要な所見である. GMsに関する知識は小児神経医にとって重要であるが, 本邦ではGMsの評価者が少なく評価能力の研修, 維持が困難なことが普及への課題である.
重篤な神経疾患を抱えるこどもの診療において, こどもの基礎疾患の診断や根治的な治療を目指すところであるが, 小児緩和ケアのかかわりも重要となる. 小児緩和ケアは小児神経医が主治医になる疾患の割合が多い. 小児緩和ケアの内容として症状緩和を積極的に行うことがあげられる. その中でも呼吸障害は重要な要素である. 重篤な神経疾患がある小児における呼吸障害にまつわる方針決定の場面において, 家族や周囲の人の意見調整に苦慮した事例と気管切開・気管喉頭分離術施行の状況と予後の関係についての検討を提示し, 呼吸障害にまつわる方針決定と症状緩和の課題について言及する.
成人の神経難病における呼吸障害に対する臨床倫理的議論は, 重篤な神経難病を抱えるこどもの緩和ケアにおける方針を考える上で有益である可能性がある. 呼吸障害を呈する代表的な成人の神経難病である筋萎縮性側索硬化症や多系統萎縮症では, 臨床倫理的問題として①告知のあり方, ②治療の自己決定の支え方, ③人工呼吸器の装着, ④人工呼吸器の離脱が議論されている. 成人神経難病をもとに小児神経難病を議論する場合, 「小児において自己決定能力, 意思表示能力をどう判断し, 対処するのか? それは成人と同じか異なるか?」 「小児における生きる権利と死ぬ権利の議論は, 成人と同じか異なるか?」 という論点が重要になると考えられる.
「生命は人生を支える土台である」 1) との視点に立つと, 技術的に生命をつなぐだけではなく, 子どもたちの幸せな人生を支えるために私たちはどのように医療やケアの方針を決めることができるのか考えなければならない. 本稿では, 子どものいのちにかかわる方針決定という価値的議論の前に, まず客観的事実として, 病態の軌跡・障害・苦痛症状緩和について整理し, 倫理的な意思決定の方向性を見出す. その上で, 自己決定を基盤とした 「状態の価値」 が求められる社会の風の中で, 私たちはいかに子どものいのちを守り, 慈しみ, 最善の方針を捉えることができるか, 考察する.
神経疾患は状態悪化時に呼吸障害をきたしやすい. 呼吸困難は 「息が苦しい」 という主観的症状であり, 評価のゴールドスタンダードも患者の主観的な評価であるが, 小児領域や神経領域においては自分で症状を訴えられない患者も少なくない. バイタルサイン, 血液ガス所見と合わせて, こどもが不快症状を体験した際に起こす行動変化や生理学的反応に着目し評価することが, 呼吸困難の評価では重要になる. 呼吸困難への対応としては, 非侵襲的陽圧換気などの呼吸サポート, 薬物療法, 非薬物療法等がある. 介入を行う前に, 今の病状が病気の軌跡のどこにあたるのか, 治療の目標をどこに置くのかについて共有した上で介入を開始することが重要である.
医療・研究活動の国際化が進む中で, 国内学会の学術集会において英語を取り入れる動きがみられている. そこで各学会の国際化の現状を把握する目的で, 定例学術集会における英語使用状況についてアンケート調査を行った. 国内主要学会 (149学会) の事務局へアンケート回答依頼をしたところ, 109学会から回答を得た. 英語発表は, シンポジウム87学会, 教育講演64学会, 一般口演71学会, ポスター発表72学会で行われていた. 印刷物の英語表記は, 抄録集77学会, チラシ41学会, 学術集会のホームページ56学会で行われていた. 反面, 心身医学など母国語での理解が重要な分野もあり, 学会ごとの多様性も認められた.