脳と発達
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26 巻, 4 号
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  • 洲鎌 盛一, 厚川 清美, 草野 薫, 赤塚 章, 落合 幸勝, 廿楽 重信, 前川 喜平
    1994 年 26 巻 4 号 p. 295-301
    発行日: 1994/07/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    低酸素性虚血性脳障害による新生児両側基底核視床障害児 (BBTL) 7例の臨床症状, 臨床経過, 脳障害度を検討した. 7例とも固縮を伴った痙性四肢麻痺で大島分類1に相当した. 追視, 固視はある程度保たれており, 嚥下障害がみられた. 筋緊張亢進, 嘔吐, 吐血, 閉塞型呼吸障害は経年的に悪化する傾向がみられた. 頭部CT-scanでは大脳は比較的保たれているが, MRIでは広範な脳障害が示唆され, 聴性脳幹反応も施行した全例で異常であった. 妊娠分娩歴では出生時仮死と生直後哺乳力低下を持つものが高率であり, 分娩時の脳侵襲もその発生に重要かと思われたが, 広範な脳障害からは更に長期, 重篤な脳侵襲の存在が予想された. BBTLは脳幹を含めた広範な脳障害を伴っており, 発症時期, 発症機構を明らかにすることが重要である
  • 田 悦, 安原 昭博, 荒木 敦, 小林 陽之助
    1994 年 26 巻 4 号 p. 302-307
    発行日: 1994/07/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    中枢伝導時間 (CCT) の新生児から成人までの発達的変化について検討した. 中枢伝導時間の測定には, 聴性脳幹反応 (ABR) と短潜時体性感覚誘発電位 (SSEP) を用い, それぞれ吻側と尾側に二分して検討した. ABRは307例, SSEPは148例から記録した-ABRとSSEPのCCTは発達にともなって全て短縮し, 特に新生児期から乳児期にかけて短縮が早かった. ABRのIII-V波間潜時は3歳で成熟したが, I-III波間潜時は2歳とより早く成熟した. SSEPのCCTは9歳で成人値と差がなくなった. SSEPのCCTは身長の影響を受けることが考えられた. ABRのIII-V波間潜時およびSSEPのP14-N17間潜時は末梢の影響を受けず脳幹機能の良い指標となると考えられた.
  • 田山 正伸, 橋本 俊顕, 森 健治, 宮崎 雅仁, 吉本 勉, 黒田 泰弘
    1994 年 26 巻 4 号 p. 308-312
    発行日: 1994/07/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    例のmigration disorder (MD) の中枢神経機能を各種の誘発電位を用いて検討した. その結果, 短潜時体性感覚誘発電位では全例に異常がみられ, 脳幹機能障害 (P3の振幅の低下あるいはP3以降の成分欠如) を4例, 大脳皮質障害 (N1以降の成分欠如) を2例に認めた. 聴性脳幹反応では脳幹機能障害 (V波の振幅の低下) を3例, 末梢障害 (1波の潜時の延長) と全成分の振幅の低下を1例に認めた. 視覚誘発電位は全成分の振幅の低下を2例に認めた. その他, 体性感覚誘発電位にて2例に, 中間潜時反応にて3例に大脳皮質成分の出現が不良であった. 腓骨神経刺激による脊髄誘発電位は5例において正常であり, 脊髄機能は異常がなかった. 以上より, MDの病態生理を電気生理学的に検討すると, 知覚路の異常が高率に認められ, しかも, 大脳皮質障害のみならず, 脳幹部あるいは末梢部にも機能障害を認め, 病態生理の多様性が示唆された.
  • 早川 文雄, 奥村 彰久, 夏目 淳, 久野 邦義, 渡辺 一功
    1994 年 26 巻 4 号 p. 313-317
    発行日: 1994/07/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    早期産出生の痙性両麻痺児で, MRIにより脳室周囲白質軟化症が責任病巣と考えられた17例の, 新生児期超音波所見について検討した. 全例に脳室周囲高輝度部位が確認され, 14例に嚢胞性変化が認められた. これらの範囲と両麻痺児の運動機能, および年長に達した時点でのMRI所見との関係を検討した. その結果, 新生児期超音波の脳室周囲高輝度部位はMRIの脳室周囲高信号域 (T2強調像) と, 嚢胞性変化の広がりはMRIの白質容量減少と範囲が一致した. 超音波所見の重症度はMRI所見の重症度と同等に, 両麻痺児の運動機能予後と関連した. 新生児期超音波像は, 脳室周囲白質軟化症の重症度判定に有効であると考えられた.
  • 山本 敏晴, 岩澤 京子, 所 敏治, 衛藤 義勝, 前川 喜平
    1994 年 26 巻 4 号 p. 318-322
    発行日: 1994/07/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    諸臓器に様々な脂質が蓄積し細胞内コレステロールのエステル化障害を認めるヒトNiemann-Pick病タイプC (NPC) のモデルと考えられる異なった2系統のマウスが紹介されてきた. われわれはこれらNPCモデルマウスであるSPMマウスとNCTR-BALB/cマウスのヘテロ接合体を用いた交配実験を行い, 得られた42匹のF1の内25%にあたる11匹のF1で, SPMおよびNCTR-BALB/cマウスに見られるものと同様な脂質蓄積およびコレステロールのエステル化障害が存在することを確認した. このことは二種類のNPCモデルマウスの病因にかかわる遺伝子変異が, 同一遺伝子上に存在することを強く示唆するものである.
  • 糀 敏彦, 熊田 聡子, 神山 潤, 下平 雅之, 岩川 善英
    1994 年 26 巻 4 号 p. 323-328
    発行日: 1994/07/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    群色素性乾皮症患児12名 (10カ月から25歳, 平均9歳4カ月) に終夜睡眠ポリグラフィーと同時に, respiratory inductive plethysmographyを施行し睡眠時呼吸障害について検討した. 12歳以上の症例全例 (4例) に, 睡眠時無呼吸あるいは, 睡眠中の動脈血酸素飽和度の低下を認めた. このうち3例に日中の傾眠傾向, 頻回の夜間中途覚醒がみられ, これらの症状と睡眠時呼吸障害の関連が推測された. 睡眠ポリグラフィー, 臨床経過から, 睡眠時呼吸障害の発現に脳幹部障害, 末梢神経障害が関与している可能性が示唆された. 今後, 12歳以上の症例では睡眠時呼吸障害に対する対応も必要であると考えられた.
  • 小林 治, 岩崎 裕治, 山内 秀雄, 須貝 研司
    1994 年 26 巻 4 号 p. 329-334
    発行日: 1994/07/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    脳内に迷入した硬膜下シャントチューブによる不応性痙攣重積を経験した. 痙攣重積は難治性であり, pentobarbital (PTB) の持続静注により止まったが, PTBを漸減すると再び重積状態となった. 発作時脳波では全誘導から同時に発作波が開始されており, てんかん焦点が不明であった. しかし, lidocaine静注により発作は完全には抑制されなかったが, 脳波上発作がシャントチューブの迷入していた右前側頭部を起始として二次性全般化していることが明らかになった. 通常の脳波所見からは原発全般発作と考えられる痙攣重積の中には二次性全般化によるものが含まれている可能性があり, その鑑別検査としてlidocaineの投与が有用であると思われた.
  • 重症心身障害児 (者) における致死的合併症として
    山田 和孝, 笛木 昇, 伊藤 昌弘, 平澤 恭子, 鈴木 典子, 倉田 清子, 高田 邦安, 佐藤 順一, 森松 義雄
    1994 年 26 巻 4 号 p. 335-339
    発行日: 1994/07/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    食道裂孔ヘルニア (HH) あるいは胃食道逆流現象 (GER) は重症心身障害児 (者) に稀ならず認められる合併症である. これらの症状を示した3症例のうち, 剖検によって, 2例ではそれぞれ, 食道潰瘍の胸部大動脈への穿通, 胃潰瘍の左心室への穿通による大量出血が死因となったことが確認され, 他の1例では直接死因は肺炎であったが, 食道潰瘍底はすでに腕頭動脈に達していて, さらに進めば同様に大量出血をきたした可能性が示された. HHやGERを合併する重症心身障害児 (者) においては全身状態のまだ比較的良好な早期のうちに外科的治療を含む最善の対策を検討する必要がある.
  • 石川 丹, 田中 志保子, 小川 泰弘, 福島 直樹, 高瀬 愛子, 我妻 義則, 後藤 雄一, 杉江 秀夫, 梶井 直文
    1994 年 26 巻 4 号 p. 340-344
    発行日: 1994/07/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    痙直型脳性麻痺の幼児が, 発熱に伴い急激な横紋筋融解を起こして腎不全に陥ったが, 腹膜灌流および交換輸血により救命しえた. 血清CPK値, ミオグロビン値はそれぞれ最高値568,000U/L, 150,000ng/mlに達し, また血清カルニチン値は低値を示した. 1カ月後, 再び横紋筋融解を来したが早期のアルカリ療法が奏効した. 筋生検より基礎疾患としてネマリンミオパチーがあることが判明した.
  • 住谷 晋, 亀田 桂司, 曽根 滋巳, 南 良二
    1994 年 26 巻 4 号 p. 345-348
    発行日: 1994/07/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    頸髄圧迫症状を呈したLarsen症候群の女児例を報告した. 扁平な顔貌, 両側内反足, 両側肘, 膝, 股関節脱臼, 円筒状の指, 口蓋垂裂を認めた. 四肢の低緊張を呈し, その後痙性となり, 呼吸障害が出現した. 髄液中の総蛋白の増加があり, 筋電図で静止時のfibrillationを認め, 短潜時体性感覚誘発電位 (SSEP) でN20以降は導出されず, MRIで頸椎の著明な変形による頸髄の圧迫を証明した. 本症候群において脊椎の異常を伴う報告は多いが, 脊髄の圧迫をMRIにおいて証明した報告は稀で, 本症候群の重要な合併症と思われた.
  • 小谷 裕実, 平井 清, 西機 哲夫, 山添 一郎, 岡野 創造, 竹内 義博, 吉岡 博, 澤田 淳
    1994 年 26 巻 4 号 p. 349-354
    発行日: 1994/07/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    臨床上欠神発作と考えられた症例に, zonisamideの単剤投与を試み, 有効であった2症例を経験した. 発作分類ではいずれも単純型であったが, 1例は数日に1回と頻度が少なく, 他の1例は投与開始6カ月後に発作の再発を認め増量により再び消失した. 治療前の脳波では, 1例に3Hz全般性棘徐波複合と右後頭部主体の3Hz高振幅徐波群発を認め, 他の1例には3.5~4Hzの全般性棘徐波複合と左前頭部から中心部にかけての局在性棘徐波複合を認めた. 前者では, 過呼吸賦活時の全般性棘徐波複合で6秒間にわたり右側優位の後頭部に3Hz徐波群発の先行を1カ所認めた. また後者では, 治療開始4カ月後に両側後頭部の鋭徐波が先行する全般性棘徐波複合を1カ所に認めた. このように脳波所見で発作性局在性異常波を認める欠神発作には, zonisamideが単剤で有効の可能性があると考えられた.
  • 勝盛 宏, 永木 茂, 松崎 美保子, 舟塚 真, 福山 幸夫
    1994 年 26 巻 4 号 p. 355-356
    発行日: 1994/07/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    意識障害を主訴に入院加療となったバルプロ酸ナトリウム (VPA) 徐放錠大量服用による急性中毒の1例を報告した. 免疫測定法による迅速血中濃度検査にて最高血中濃度は716.4μg/mlで, 直ちに胃洗浄, 活性炭・下剤投与を行い, 速やかに血中濃度は低下し意識状態も軽快した. 同時に採血保存された検体をガスクロマトグラフィー法により, total VPA・free VPAの血中濃度を検討したところ, 半減期は各々8.7時間, 4.6時間であった. これは従来報告されている徐放錠単回投与後の半減期より短く, むしろ通常錠の半減期に相当する. 早期胃洗浄, 吸着剤・下剤投与により錠剤中の徐放成分 (マトリックス部位) が除去され, 遅発吸収が進まなかったためと考えられる. また, total VPAの血中濃度とfree fraction (free VPA/total VPA) の関係は, 相関係数0.95と強い相関がみられた. 経時的に同時採血した肝機能検査値は正常範囲内にあったが, 一過性に高アンモニア血症 (113μg/dl), 高ナトリウム血症 (147mEq/l) を認めた.
  • 横山 里佳, 河原 仁志, 石井 尚吾
    1994 年 26 巻 4 号 p. 357-358
    発行日: 1994/07/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    我々はスコポラミン混合軟膏を調製し, 経皮的投与により, 重症心身障害児・者の口腔内唾液量の減量を試みた。
    スコポラミン混合軟膏使用後, 重症心身障害児・者の口腔内唾液量は75%程度に減少し, また副作用も特にみられなかった. スコポラミン混合軟膏は, 唾液分泌抑制に効果があり, 重症心身障害児・者の流涎のコントロールに有用であると考えられた.
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