小児神経学の臨床に長期間にわたり関わってきた経験をまとめ, 次世代の先生方へ向けての提言を述べた. 30年以上勤務した国立精神・神経医療研究センター小児神経科では, ①希少小児神経疾患の診断, ②難治性てんかんの診断と治療, ③小児神経筋疾患の診断と治療などを行ってきた. 特に小児交互性片麻痺については, 原因遺伝子ATP1A3の解明から遺伝子変異型と重症度との相関, ATP1A3関連疾患の拡大などを報告できた. 一人ひとりの患児をよく診察し, 記載ないことを論文報告することの重要性を強調したい. 若い先生方には, 専門医を取得し, 進歩した診断法・治療法を実践し, 医療水準向上と環境改善を図ることによって患児を守り, 小児神経学会を支えてほしい.
急性弛緩性脊髄炎 (acute flaccid myelitis ; AFM) では, 約半数で抗糖脂質抗体が検出されるが, その意義は不明である. 同抗体はGuillain-Barré syndrome (GBS) の約6割で検出され, GBSの病態や臨床病型との関連が指摘されている. 今回我々は抗GM1抗体を含む複数の抗糖脂質抗体が検出されたAFMを経験した. その臨床像には抗GM1抗体陽性のGBSと類似点を認めた. 抗GM1抗体陽性のAFMの報告はないが, 今後AFMの病態を検討する上で重要な1例と考えられた.
48,XXYYは稀な性染色体異常症で, 約15%でてんかんを発症する. てんかん発作を契機に48,XXYYの診断に至った14歳男子例を報告する. 3歳時に睡眠中の発作で発症. Sodium valproateで発作は抑制されたが, 12歳時に両側強直間代発作が再燃. 脳波検査で頻回の欠神発作を捕捉し, continuous spikes and waves during sleepを呈していた. 染色体G分染法で48,XXYYが確認された. Ethosuximideを追加投与し, てんかん発作は改善した.