脳と発達
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31 巻, 6 号
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  • 藤井 達哉, 宮嶋 智子, 伊藤 正利, 奥野 武彦, 光吉 出
    1999 年 31 巻 6 号 p. 505-510
    発行日: 1999/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    6家系7例の脊髄性筋萎縮症 (SMA) 患者の遺伝子診断を目的に, poiymerase chain reaction (PCR) 法によりneuronal apoptosis inhibitory protein (NAIP) 遺伝子のエクソン5とsurvival motor neuron (SMN) 遺伝子のエクソン7および8の欠失の有無を検査した.I型患者2名およびII型患者2名は全例SMN遺伝子の欠失を認めたのに対し, III型患者3例中2例では, SMN遺伝子, NAIP遺伝子ともに欠失を認めなかった.従って, III型SMAを確定診断する目的では, この方法での遺伝子検査は今回の症例ではあまり有用でなかった.さらにSMNエクソン7, 8の欠失を認めた兄弟例では, 弟はII型, 兄は斑型であった. このように同胞間で同一の遺伝子異常を持ちながら重症度に差が見られることは, SMA患者の出生前診断や遺伝相談をしていく上で重要な問題を提起している.
  • 事象関連電位N130, N180, P250による検討
    小野 智佳子, 相原 正男, 畠山 和男, 神谷 裕子, 金村 英秋, 佐田 佳美, 中澤 眞平
    1999 年 31 巻 6 号 p. 511-518
    発行日: 1999/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    事象関連電位のP300以前に出現する陰性成分の振幅と潜時を経時的に測定することで, 小児の情報処理過程における注意の発達的評価を行った.N130は, 受動的注意課題 (P課題), 能動的注意課題 (A課題) とも7歳未満では施行毎の振幅の減衰は認めないが, 7歳以上では振幅が減衰した.N180は年長児以上のA課題で出現し, 成人では経時的な振幅の減衰は認めなかった.P250は, P課題の7歳以上で施行毎に振幅が低下したが, A課題の成人では経時的な振幅の減衰は認めなかった.7歳未満ではN130に代表される定位反射の成分は減衰されにくく, これが年齢とともに減衰することで適度な覚醒が保障され, N180で示される能動的注意すなわちアウェアネスの持続が可能になってくると思われる.
  • 金村 英秋, 相原 正男, 青木 茂樹, 畠山 和男, 神谷 裕子, 小野 智佳子, 佐田 佳美, 中澤 眞平
    1999 年 31 巻 6 号 p. 519-524
    発行日: 1999/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    前頭葉とくに前頭前野の成長過程を形態的に明らかにする目的で, 小児13名, 成人3名を対象に三次元MRIを用いて定量的に脳体積測定を行った.標本脳を用いた比較検討で本法の信頼性を, 測定間隔をおいた検討で再現性の確認をした.前頭葉と前頭前野の体積は, 年齢とともに増大し, 前頭前野が前頭葉に占める比率は思春期前後で急激に増大していた.この時期は, 電気生理学的, 神経心理学的に想定されている前頭前野の機能的成熟の時期と一致していた.このことから, 前頭前野の機能的成熟臨界期に形態的な成長が平行して進行しているものと考えられる.三次元MRIを用いた体積測定法は, 小児の生体脳の成長過程の客観的評価とそれに基づいた臨床応用が今後期待される.
  • 蝸牛神経腹側核と内側上オリーブ核を中心に
    奈良 隆寛, 後藤 昇, 浜野 晋一郎
    1999 年 31 巻 6 号 p. 525-530
    発行日: 1999/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    ヒト胎児の聴覚系神経核のニューロンの形態学的な発達について, 蝸牛神経腹側核と内側上オリーブ核を選んで計測学的に検討した.対象は16, 18, 21, 23, 27, 30, 33, 34, 35, 40胎週齢の10例の胎児脳および新生児脳と, 2カ月の乳児脳と63歳の成人脳の計12例である.神経核柱の長さや体積・神経細胞の大きさ・真円率・neuropil indexで神経核の発達について検討すると, 同じ聴覚系の核であるのに形態学的には異なる性状を示したが, 発達の様式としては18胎週齢と21胎週齢の間で核柱の体積・神経細胞の大きさ・真円率に大きな変化がみられた.
  • 加藤 徹, 早川 文雄, 奥村 彰久, 久野 邦義, 渡辺 一功
    1999 年 31 巻 6 号 p. 531-534
    発行日: 1999/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は9歳時に突然左上肢にジストニア様異常運動が出現し, 頭部MRIにて右視床と右尾状核頭部に小梗塞巣を認めた. 10歳時には頭痛, めまい, 複視, 歩行時のふらつきを症状とする一過性脳虚血発作を認めた.白血球を用いたDNA解析の結果からヘテロの先天性プラスミノーゲン異常症と診断した. 反復する脳血管発作の原因として先天性プラスミノーゲン異常症の関与が疑われた.
  • 林 万リ, 有薗 祐子
    1999 年 31 巻 6 号 p. 535-541
    発行日: 1999/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    画像上病変の明らかな出産時の重症低酸素性脳症の2例に, 1-2カ月の超早期から新生児医療と連携し, Vojta法による治療を実施した. 自発運動, 姿勢反応, 神経学的所見および画像所見の経過を観察したところ, 初診時認められたアテトーゼ型脳性麻痺や発達遅滞 (萎縮) のリスク所見が各々の症例で消失した. 画像上異常所見のある出産時障害で超早期治療が可能な症例の中には, 治療効果が期待できる可能性があり, 病的な臨床症状が明瞭化する以前に, 早期から治療開始した方がよいと考える.
  • 犬塚 幹, 和田 雅臣, 後藤 一也, 拝郷 敦彦, 泉 達郎
    1999 年 31 巻 6 号 p. 543-548
    発行日: 1999/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    アレルギー性鼻炎, 汎副鼻腔炎を基礎に持つ, 前頭洞炎の急性増悪による波及性の大脳半球間硬膜下膿瘍の10歳男児例を報告した. 発熱, 痙攣, 右半身不全麻痺, 意識障害を呈し, 画像所見より左前頭洞炎の波及による大脳半球間硬膜下膿瘍と診断した. 緊急開頭ドレナージ術を施行し, 合併症や神経学的後遺症を全く残さず回復, 治癒した. 頭部CT, MRIにて, 硬膜下膿瘍は2層性の液貯留像を示し, 早期診断に有用であった. 基礎疾患の治療は抗アレルギー剤投与とmacrolidesの少量継続投与が有効であった.
  • 村上 貴孝
    1999 年 31 巻 6 号 p. 549-552
    発行日: 1999/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    急性期に動眼神経麻痺を伴った遅発型B群溶連菌 (GBS) 感染による細菌性髄膜炎の1例を経験した.
    症例は生後25日目の男児で, 来院当日の朝から活力, 哺乳力の低下を認めた. 体温は37℃で, 呼吸は浅表性. 頭部CTで出血は認めず. 髄液は混濁し, 細胞増多を認めた. 培養で血液・尿・髄液からGBSを検出した. 5日目以降覚醒するも, 左眼は開眼せず. 左眼球は外側へ偏位し, 上下内側運動が制限されていた. 内眼筋の障害はなく, 末梢性の動眼神経麻痺と診断した. 抗生剤, 脳圧降下剤, ステロイドを使用し, 第30病日以降は左眼球の内転も可能となった. 画像所見では動眼神経麻痺の病勢に一致して, 左中大脳動脈とその支配領域の血管炎および浮腫を認めた.
    新生児髄膜炎におけるステロイド剤の投与は確立されていないが, 本症例では局所的な血管性浮腫の改善に対して有効であった.
  • 足立 昌夫, 藍 祥子, 前田 衛作
    1999 年 31 巻 6 号 p. 553-557
    発行日: 1999/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 正期産で出生した男児. 母親が学童期に発症したてんかんのため, 妊娠前から妊娠経過中にかけて, バルプロ酸ナトリウムとphenobarbitalを内服していた. 出生後, 著明な筋緊張低下と特徴的な外表奇形が認められ抗てんかん剤内服の事実と併せて, 胎児性バルプロ酸症候群と診断した. その後生後3カ月より感染を契機に難治性喘鳴が出現したため, 生後4カ月に全身麻酔下に気管支鏡を施行し, 声門直下に粘膜下腫瘍を発見した. 気管切開術にて喘鳴は軽減したが, 生後7カ月に原因不明の突然死をきたした. 本症候群に気道の粘膜下腫瘍を合併した報告は検索し得た限りでは世界に例は無く, ここに文献的考察を加え報告する.
  • 伊藤 康, 永木 茂, 久山 登, 平野 浩一, 砂原 真理子, 舟塚 真, 柳垣 繁, 吉田 真, 平野 幸子, 大澤 真木子, 福山 幸 ...
    1999 年 31 巻 6 号 p. 559-564
    発行日: 1999/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は喘息様気管支炎の6カ月女児. 生来精神運動発達は正常であった. Aminophylline持続点滴中に痙攣が出現し, 痙攣重積状態で当科に搬送された. Theophylline血中濃度は最大79μg/mlと異常高値となり, 血漿交換, 血液透析を施行し, 血中濃度の低下をみた. その後快方に向かっていたが, 第4病日に血中濃度が測定感度以下まで低下していたにもかかわらず, 再び痙攣重積がみられた. CT上軽度脳萎縮を残したが, 運動, 知能面においては良好な経過で退院となった. しかし2歳6カ月時の発達テストではDQ55であり, とくに理解・言語面, 社会性の遅れが目立った. また4歳1カ月時のMRIでは, T2強調像にて髄鞘化遅延が認められ, theophylline中毒が不可逆的な脳傷害を残しうることが示唆された.
  • 赤坂 紀幸, 早川 広史, 奥川 敬祥, 笠原 多加幸, 石川 憲夫, 東條 恵, 岡本 浩一郎, 内山 聖
    1999 年 31 巻 6 号 p. 565-570
    発行日: 1999/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    腸管出血性大腸菌O-157感染により溶血性尿毒症症候群を呈した5歳女児例で, 中枢神経病変を合併した. 初期の頭部CTでは異常所見を認めなかったが, その後のCTおよびMRIで両側基底核をはじめとした梗塞性病変と, 広範な大脳白質の病変が明らかとなった. 特に, 基底核の病変は興味深い経過を示した. 腸管出血性大腸菌感染にともなう中枢神経病変の病態を考える上で, 継時的な画像所見の観察が有用と思われた.
  • 河上 千尋, 田辺 卓也, 原 啓太, 山城 国暉, 鈴木 周平, 玉井 浩
    1999 年 31 巻 6 号 p. 571-573
    発行日: 1999/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    病期中に意識障害・けいれん発作を伴わなかった病原性大腸菌O-157による溶血性尿毒症症候群 (HUS) の2例について, 脳波所見の経時的変化を調べた. 2例ともに高振幅徐波が-過性に混入し, 病状の改善とともに消失した. この徐波は, 尿毒症の程度から考えても, また中枢神経症状の程度から考えても著明な所見と思われた.意識障害やけいれん発作を伴わないHUSであっても尿毒症以外の何らかの機序により, 潜在的な大脳皮質機能低下をきたしている可能性があることが示唆された.
  • 中国・四国地方会
    1999 年 31 巻 6 号 p. 579-581
    発行日: 1999/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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