脳と発達
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43 巻, 4 号
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巻頭言
総説
  • 桂木 真司, 池田 智明, 池ノ上 克
    2011 年 43 巻 4 号 p. 265-272
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     新生仔ラットの脳内におけるグリア細胞由来神経栄養因子 (GDNF) の発現量は発達とともに変化する. 低酸素虚血負荷を与えたラットの脳内では結紮側の受傷部位において特にGDNFが増加する. 外因性のGDNFを脳に直接作用させるため, 細胞にGDNFの遺伝子を導入し, 半透膜製カプセル内に充填し, 大脳実質内に移植する方法を開発した. この方法は長期間, 低用量の薬剤を安全に供給できる特徴を持つ. 同方法を低酸素虚血負荷を与えた新生仔ラットに応用した. 梗塞面積は著明に減少し, 神経保護効果を持つことが示された. また, 同方法は低酸素虚血負荷後の記憶と学習障害に関しても長期にわたり優れた改善効果を示した.
原著論文
  • 横山 美奈, 本田 真美, 大越 優美, 益山 龍雄, 岩崎 裕治, 有馬 正高
    2011 年 43 巻 4 号 p. 273-276
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     呼吸, 嚥下障害等を伴う重症心身障害児 (者) の痙性斜頸に対しA型ボツリヌス毒素 (BTX-A) 療法を行った. 対象は17.9±5.6歳 (3~51歳) の11例. 少量漸増にて5.7±2.8回 (2~11回) の施注を行った. 評価はTsui scaleを用いた. 効果と治療期間, 投与量との関係を検討した. 改善度は不変3例, やや改善以上が8例で, 治療期間が長いほど改善傾向を認めた (p<0.05) が, 投与量との相関はなかった. 施注後の呼吸嚥下障害の増強は認めず, 臨床効果として呼吸障害の軽減6/9例, 抗緊張薬の減量5例などを認めた. 呼吸, 嚥下障害を伴う患者でも, 安全かつ効果的なBTX-A療法の導入が可能であった.
  • 當山 真弓, 當山 潤, 粟国 敦男
    2011 年 43 巻 4 号 p. 277-281
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     選択的脊髄後根切断術 (selective dorsal rhizotomy;SDR) は脳性麻痺 (cerebral palsy ; CP) の痙縮を軽減する外科的手段の一つとされている. 今回我々は, CPのため沖縄小児発達センターにて機能訓練を行っている児で, SDRを施行した例について術前後の変化をまとめ検討した.
     Gross Motor Function Measure総合点では, 術後約6カ月, 1年, 2年の各期間で術前に比較して有意な改善が認められた. Ashworth scaleまたはmodified Ashworth scaleにての痙縮の評価でも, 術前に比し術後は有意に痙縮レベルが低下していた. これらの結果からSDRはCPの痙縮を軽減させ, 機能を改善させる有効な手段であると考えられた. また, SDR術後に整形外科的手術が行われた例も47%に認められ, 今後はSDR施行時期などをさらに検討していく必要があると思われた.
  • 辻田 由喜, 松本 浩, 中村 康子, 野々山 恵章
    2011 年 43 巻 4 号 p. 282-284
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     軽症胃腸炎関連けいれん (convulsion with mild gastroenteritis ; CwG) 患者において, 特異的な血液・生化学的変化が生じていないかどうかを検討した. 同時期における同年齢の胃腸炎症状だけの患者を対照群として比較したところ, 男女比, 血清尿酸値, 血清クロールで2群間に有意差を認めた. また, CwG患者群では血清尿酸値は全例で高値であった (平均±SD 10.0±2.2mg/dL). 両群とも同程度の代謝性アシドーシスを伴っていた. CwGでは高尿酸血症と代謝性アシドーシスを伴っており, 病態への関与が考えられた.
  • 栗原 まな, 小萩沢 利孝, 吉橋 学, 飯野 千恵子, 安西 里恵, 井田 博幸
    2011 年 43 巻 4 号 p. 285-290
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     16歳未満で急性脳症を発症し, 当科でリハビリテーションを行った103例の予後を検討した. 対象を(1)群 : 代謝異常に起因する1例, (2)群 : サイトカインストームに起因する24例, (3)群 : けいれん重積型68例, (4)群 : 難治頻回部分発作重積型5例, (5)群 : 意識障害が主体である5例に分類し, 発症年齢, 既往歴, 発症に関連する因子, 後遺症の状況を検討した. 発症年齢は平均3歳であったが, (4)群は平均6歳5カ月と高かった. 既往歴では熱性けいれん, 喘息, theophylline服用が目立ったが, 有意差は得られなかった. 発症に関連する因子としてはインフルエンザ罹患36例, HHV-6罹患7例などがあった. 後遺症は知的障害89.3%, 高次脳機能障害77.7%, てんかん68.9%, 運動障害27.2%の順に多く, 重症度は(1)(2)(3)(4)(5)群の順に軽度になっていた. 高次脳機能障害では注意障害, 視覚認知障害などがみられた.
症例報告
短報
  • 平野 嘉子, 小国 弘量, 大澤 真木子
    2011 年 43 巻 4 号 p. 317-319
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     小児科領域では, 長時間ビデオ脳波を, てんかん発作型の決定と発作性疾患の鑑別目的に施行することが多い. 今回, 当科で本検査を施行した患者の後方視的調査を行い, 有用性についての検討を行った. 対象はてんかん発作を疑い, 2004年1月から2006年12月まで本検査を施行したのべ182例である. 検査にて, 11例 (6%) は別の発作型であり, 50例 (27%) は非てんかん性であると証明された. また, 非てんかん性のうち39例 (78%) に神経・発達障害が併存していた. 的確な診断は, 抗てんかん薬の過剰投与防止, 生活の質の向上, 家族への発作指導へと発展する. 以上より, 長時間ビデオ脳波は発作性疾患に大変有用な検査であると確認された.
報告
地方会
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