脳と発達
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15 巻, 6 号
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  • 竹下 研三
    1983 年 15 巻 6 号 p. 466
    発行日: 1983/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 宍倉 啓子, 梅津 亮二, 青山 正征, 平山 義人, 鈴木 暘子, 大澤 真木子, 福山 幸夫, 鴨下 重彦, 原 正道
    1983 年 15 巻 6 号 p. 467-477
    発行日: 1983/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Lafora型ミオクローヌスてんかんの1例において, 経時的筋生検および肝生検を施行し, 以下の結果が得られた. (1) 初回筋生検 (13歳): 光顕でPAS陽性の点状物質stipplingおよびtype groupingが認められ, 電顕ではグリコーゲン顆粒の増加が認められた. (2) 第2回目筋生検 (18歳): 光顕でPASおよびphosphorylase強陽性の筋線維が認められたが, DAB-peroxidase, acid phosphataseは陰性であつた. 電顕では小粒子の蓄積が認められたが, これらは, methenamine silver染色で陽性であることから, 多糖類であることが証明された. これら粒子は, 通常のグリコーゲン顆粒より微細で, 一部で数珠玉状の配列がみられた. (3) 肝生検 (13歳): 光顕ではPAS強陽性の細胞がみられ, 電顕ではグリコーゲン顆粒の増加および滑面小胞体の拡張がみられた. Lafora小体類似の線維様構造は, 筋, 肝ともに認められなかった. 本症の原因は不明であるが, グリコーゲン合成障害が存在することが推察された.
  • ライソゾーム病に対する酵素補充療法開発の試み
    小野寺 仁至, 高田 五郎, 多田 啓也
    1983 年 15 巻 6 号 p. 478-486
    発行日: 1983/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    ライソゾーム病に対する酵素補充療法では, 今までのところ成功例は報告されていない. 投与酵素の脳・血液関門を通過し難いことがその理由とされている.我々は, これまで, リボソームを担体として用いれば, 酵素を, 活性を持ったまま脳組織へ送り込み得ることを明らかにしてきた. 今回は, リボソーム埋包3H-β-galactosidaseをラットに静注し, 30分後の各臓器について, ミクロオートラジオグラムを作成し, 酵素の各組織・各細胞への分布について, 形態学的な検討を加えた. その結果, リボソーム埋包3H-酵素は, 肝・脾・腎・肺・心・筋・脳など, 調べた総ての臓器へ取り込まれること, 脳をも含めて, 各組織内分布は一様でなく, 細胞の種類により, 取り込み量にかなりの違いのあることが明らかとなつた. 投与酵素の脳への移行を明らかにしたこの実験結果は, 中枢神経系合併症を伴うライソゾーム病に対する. 酵素補充療法の可能性を更に支持するものと考えられる.
  • 原因疾患および水頭症の程度よりみた機能予後
    土田 正, 福田 光典, 市川 昭道, 田中 隆一
    1983 年 15 巻 6 号 p. 487-496
    発行日: 1983/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Shunt tubeが使用され始めた1960年から1976年までに当科で入院治療された小児水頭症129例 (脳腫瘍を除く) の5年から21年の遠隔成績を調査し, 水頭症の原因およびその程度によって分類して, 機能予後を検討した.
    原因別では, I. 先天性単純型 (36例), II. dysraphism合併型 (41例), III. 他の奇形を合併した複雑型 (17例), W. 髄膜炎後 (32例), V.中脳水道狭窄症 (3例) の5型に分類したが, 生命予後ではIII型が最も悪く, V型が最も良好であった. 全体では45.0%が生存していた. 生存例の機能予後では, IV型が最も悪く, 他の型では, 大体生存例の2/3が有意生活を送っていた. 入院時の脳実質の厚さによって予後を分類すると, 3cm以上の軽度水頭症では15例中13例 (87%), 1cm以上3cm未満の中等度水頭症では30例中20例 (66.7%) が有意生活を送っていたが, 1cm未満の高度水頭症12例では有意生活者は1例のみであった. 15年以上生存した17例中7例は職業に就いていた.
  • 飯沼 一宇, 成沢 邦明, 舘田 拓, 鈴木 喜久男, 多田 啓也, 大沼 晃
    1983 年 15 巻 6 号 p. 497-502
    発行日: 1983/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    生後3ヵ月より低フェニルアラニン (Phe) ミルクによる食餌治療を行って来たフェニルケトン尿症 (PKU) の1例において, 学齢に達し, 学校給食が開始されたため, 摂取Pheが増加し, 血清Pheレベルがしばしば20mg/dlを越えるようになった. この時の脳波で, 左中側頭・中心部に棘波を認め, 制限を強化し, 血清Pheレベルが20mg/dl以下に保つことができたときには脳波は正常化した. 血清Pheレベルが20mg/dlを越えていたとぎには, 落ち着きがない, 集中力に乏しいなどの症状が認められた.以上のことから, この症例においては, 20mg/dlという血清Pheレベルが, 脳波異常を呈するかどうかの上限値と考えられ, 学齢以降もPhe摂取制限を続けるべきことが示唆された. 脳波がPhe摂取制限を続けるべきか否かの重要な一示標になると考えられた
  • 正常乳児における発達
    立花 秀俊
    1983 年 15 巻 6 号 p. 503-506
    発行日: 1983/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    乳児の寝返りには種々の立ち直り反射が関与する. 寝返りの発達と立ち直り反射の関係を知るために, 33名の乳児について1ヵ月ごとに下記の反射をしらべた. 1) 懸垂位, 2) 坐位で左右に約30. ゆっくり傾けたときの頭部の立ち直り反射の有無. 2) が陽性化して1-2ヵ月後に1) が陽性化し, 1) とほぼ同時に寝返りができるようになった.
    寝返り開始時に一側にのみ寝返り可能な時期が2-4ヵ月続いた5例について反射の左右差を調べた. この期間は寝返り可能側 (例えば仰臥位から右側の上下肢が下方になるように寝返る時) とは反対の側 (左側方向) に懸垂位で傾けた場合に頭部の立ち直り反射が陽性に出る傾向を認めた.
    以上の所見から, 懸垂側傾時における頭部の立ち直り反射が寝返りと関係が深いと結論した.
  • 楠目 和代, 長尾 秀夫, 高橋 貢, 森本 武彦, 佐野 のぞみ, 羽原 心治, 松田 博
    1983 年 15 巻 6 号 p. 507-511
    発行日: 1983/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    pseudoachondroplasiaにatlanto-axial dislocationを合併し, myelopathyを呈した14歳男児の症例を報告した. 下肢の運動障害から始まり, 上肢の運動障害, 膀胱直腸障害, 呼吸困難をきたし, 頸部X線断層撮影により, C2の歯状突起の低形成とatlanto-axial dislocationと診断した. dislocationの整復を目的として, 牽引, 固定術を施行したが, 神経学的改善はみられなかった.
    骨系統疾患が, atlanto-axial dislocationの原因となりうることを呈示し, 早期診断の重要性を強調した.
  • 高倉 廣喜, 笠木 重人, 高嶋 幸男
    1983 年 15 巻 6 号 p. 512-518
    発行日: 1983/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    異常眼球運動, 痙性対麻痺, 運動発達遅延を呈した11ヵ月男児を頭部CTスキャンにてschizencephaly (裂脳症) と診断した. けいれんはみられなかったが, 脳波は両側頭頂から後頭部にかけて左右独立して不規則な多棘徐波を認めた. 視覚誘発電位は無反応.聴性脳幹反応のV波潜時は正常, 短潜時体性感覚誘発電位は左右ともN1が低電位の傾向のほかは正常であった. 聴性脳幹反応, 短潜時体性感覚誘発電位より, 上肢から脳幹および視床付近までの知覚伝導路は正常に機能していると考えられた.
    裂脳は側脳室後角の冠状面で視放線を断裂し, 一部の運動領野や感覚領野にも障害が及んでいると考えられた. なお病因としては, 母親の高年初産, 喘息, 薬物の連用が疑われ, 特に薬物については, ステロイドおよび抗ヒスタミン剤の催奇形性との関連が疑われた.
  • 市場 尚文
    1983 年 15 巻 6 号 p. 519-525
    発行日: 1983/11/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    一酸化炭素 (CO) 中毒による無酸素性脳症のため, 特異な半側空間失認のほか多彩な神経心理学的症状を示した9歳の女児例を報告した.
    症例はCO中毒直後昏睡, 呼吸抑制状態におち入ったのち, 2日目に一旦意識レベルが改善したが, 再び3日目より6日間の昏睡におち入る間歇型発症であった. このあと, 回復期症状として半側空間失認, 失書, 失行, 計算障害, 左右障害を示した. もっとも興味深いのは半側空間失認で, 視力・視野障害がないにもかかわらず, 読字に際しては左半側失認を示す一方, 動作模倣の際には逆に右半側失認を示した. 同時期に刺激の内容により半側失認が左右に移る報告は従来みられない.
    半側空間失認の責任病巣はCT・脳波検査で示唆された左右の頭頂葉-後頭葉病変と考えられるが, CO中毒の病巣が脳梁を含む白質の脱髄であることを考慮すると, 言語と空間認知・構成行為の左右それぞれの優位半球が反対側の半球との連絡を断たれたために起こったdisconnexion syndromeによる可能性もあることを指摘した.
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