ライソゾーム病に対する酵素補充療法では, 今までのところ成功例は報告されていない. 投与酵素の脳・血液関門を通過し難いことがその理由とされている.我々は, これまで, リボソームを担体として用いれば, 酵素を, 活性を持ったまま脳組織へ送り込み得ることを明らかにしてきた. 今回は, リボソーム埋包
3H-β-galactosidaseをラットに静注し, 30分後の各臓器について, ミクロオートラジオグラムを作成し, 酵素の各組織・各細胞への分布について, 形態学的な検討を加えた. その結果, リボソーム埋包
3H-酵素は, 肝・脾・腎・肺・心・筋・脳など, 調べた総ての臓器へ取り込まれること, 脳をも含めて, 各組織内分布は一様でなく, 細胞の種類により, 取り込み量にかなりの違いのあることが明らかとなつた. 投与酵素の脳への移行を明らかにしたこの実験結果は, 中枢神経系合併症を伴うライソゾーム病に対する. 酵素補充療法の可能性を更に支持するものと考えられる.
抄録全体を表示