小児神経科医は,多様性を尊重し,弱者に常に寄り添ってきました.さまざまな新しい問題を乗り越えるために,身体面だけでなく,Psychosocialな因子を含めた包括的な支援が一層重要になっており,さらなる進化が求められています.小児神経学を専門とし,今日までの道程をふりかえり,自分にとっての進化が,海外からの留学生や研究者との交流や出会いから始まっていることを認識しました.コミュニケーションの原点は,Face to faceです.COVID-19で途絶えてしまった海外との人的交流を再活性化することを個人的にも学会としても進めていくべきと考えます.
L-2ヒドロキシグルタル酸尿症(L-2-HGA)は,けいれんや小脳失調,知的障害を呈する常染色体劣性遺伝の有機酸代謝異常症である.症例は世界中から報告されているが,本邦の論文での症例報告は4例の成人例のみである.症例は10歳女児,4歳時にけいれんと知的障害,失調性歩行を認めた.頭部MRI検査で両側前頭葉優位の皮質下白質に,T2強調像で高信号域,T1強調像で低信号域の病変を認め,さらに同様の異常信号は両側淡蒼球,歯状核にも認めた.尿中有機酸分析で2-ヒドロキシグルタル酸が上昇,L2HGDH遺伝子解析にて,NM_024884.3:c.829C>T(p.Arg277*)とc.187T>C(p.Ser63Pro)の複合ヘテロ接合変異を認め,L-2-HGAと診断した.治療としてfravin adenine dinucleotide(FAD)を投与したが,画像所見の改善はなく,下肢の痙性と企図振戦が進行した.L-2-HGAで認められる頭部MRI検査における異常所見の分布は非常に特徴的であり,診断に有用である.MRI所見から本疾患を疑うことが,早期診断にとって重要である.
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の運動機能低下の進行抑制として皮下注用免疫グロブリン製剤が使用可能となった.再発時に投与されていた静注用免疫グロブリン製剤に効果はあったが無菌性髄膜炎を認めた患児に対し,安全に皮下注用免疫グロブリン製剤を導入することができた.難治に経過する本疾患では,在宅での継続的な皮下注用免疫グロブリン製剤による再発予防を治療の選択肢として考慮する必要があると考えられた.
不登校を伴う概日リズム睡眠―覚醒障害に対する高照度光療法(BLT)のパイロット研究を行った.12名(年齢:13~15歳)の被験者を3週間の短期入院療法単独群とBLT併用群の2群に無作為に割り付けた.脱落した2名を除いた全症例では起床・入眠時間は有意に改善した.単独群(5例)は退院2週後に起床時間が後退/再燃したが,併用群(5例)は起床時間を維持できた.さらに併用群は,有意に低い不眠重症度質問票得点を示した.以上からBLTの有効性が示唆された.