立位姿勢の調節は, 静的状態を基盤としたダイナミックな現象であると一般に考えられている.今回, 正常人および脳性マヒ児の立位姿勢を研究するために, 4個の大腿部筋および5個の下腿部筋の筋電図と長方形型力板上の重心の時間的空間的変位を同時記録して解析した.1回の試行から得られたデータは, 3分間の実験から得られ, それぞれのケースについて, 9回くりかえされた.くりかえされた試行の記録の間には, 差はないように思われた.
結果を要約すると, 次の通りである.
1) 2人の正常成人と1人の正常幼女の場合には, むしろ数の少ない筋が, 立位を維持するのに活動し, phasic discharge patternをした屈筋とtonic discharge patternをした伸筋の組み合わせが働いているのが充分に考えられた.それに反して, 2人の脳性マヒ児の場合には, 記録されたすべての筋が, 例外なく, 多かれ少なかれtonic activitiesを示していた.これは, 筋の間に, この組み合わせパターンが存在しない可能性を意味する.
2) 安定域とX, Y方向の重心の最大変位が, 近似的に測定され, 脳性マヒ児の場合に, 明らかに拡大していることがわかった.
3) これらの結果は, 立位姿勢調節時の陰性支持反応の役割という観点から, 主として考察された.
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