脳と発達
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11 巻, 2 号
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  • 黒川 徹, 花井 敏男, 高木 誠一郎, 長野 有宏, 名和 顕子, 南部 由美子, 柴田 瑠美子
    1979 年 11 巻 2 号 p. 84-97
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    てんかんは小児の疾患であるといわれている. てんかんの罹病率は1, 000人中3-5人, 10才以下の小児では1, 000人中8人とされている. 目立たないがほとんどの通園施設, 学年毎にいるこのようなてんかん患児をもつ親にとって最大の関心事はその児の将来であることが示されている. このような意味でてんかんの経過を巨視的に知ることは正しい指導と治療を行なう上で重要である. 本研究の目的は小児てんかんの自然歴すなわち発病前の状態, 原因, 発作および精神発達の長期にわたる経過, 予後を明らかにすることにある.
  • 大村 裕
    1979 年 11 巻 2 号 p. 98-108
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    われわれは毎日食物を摂取して, それを消化吸収の後, 活動や代謝のエネルギー源として利用している. 特に小児においては, これに成長のためのエネルギーが必要である.小児早期の栄養障害は, 身体的発育障害だけでなく, 精神的発達にも悪影響を与える.逆に, 摂取カロリーの過剰は肥満を発生させ, 将来の成人病の誘因ともなる. このように, 食物摂取の状態は, われわれの健康に大きな影響を与えている. この摂食行動はどのように調節されているのであろうか.最近多くの動物実験により, 摂食調節機構の解明が進んできており, これは人間の摂食行動理解のためにも有意義と考えられる.
  • 北條 博厚
    1979 年 11 巻 2 号 p. 109-111
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    CTスキャンが開発されて以来6年という短かい年月の間にも拘らず, その普及は目覚しいものがある.現在では臨床神経学における検査法として必要欠くべからざるものとなっている. 脳腫瘍, 血管障害などの器質的障害ではその意義は高いが, 小児神経の対象となるてんかん, 脳性麻痺, 精神薄弱では所見の意味づけ, 対象の選択など, 未だ解決していない問題が多々残されている. 小児における頭部CTスキャンの対象疾患l述べることl通じてその限界, 問題点についてふれた.
  • 小牧 専一郎
    1979 年 11 巻 2 号 p. 112-115
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    小児神経学の領域においては, CTは今や無視できない検査法の一つとなっている. それは, CTが無侵襲性でかつ多量の情報を得ることができるからである. ところがCTの発展は日進月歩で, CTを専攻しているものでさえその進歩の程度はつかみ難いほどである. そこで本稿においては, 日常CT検査を依頼する立場にある小児科医にとって, 最低限度知っていなければならない程度のCTについての基礎的事がらを, 最近の報告と合わせてまとめてみた.
    CTスキャンナーは, イギリスEMI社のHounsfieldによって開発され, 1972年に第一号機が完成した.装置の価格が莫大であるにもかかわらず, その革期的な性能の故にその後の普及はめざましく, 現在少なくとも世界中で18社以上が, 独自の装置の製作・販売をしているといわれている. 日本では日立, 日本電子, 島津, 東芝が製作・販売をしている. 各々の装置は, 発展段階ごとに第一, 二, 三世代と呼ばれている. 第一世代は, せまくしぼったレ線発生装置と1コの検出器の組み合わせより成る装置であり, 第二世代はさらに検出器の数が数コに増やされたものである. これらの装置によるスキャン時間は, おのおの4-5分, 20秒前後である. ところが第三世代となるとレ線は一方向から被写体全体を曝写できるように作られて, それに応ずるように検出器の数も数百コにふやされているため, おのおのの角度からの走査は不要で, 円周運動のみで撮影可能である. そのため撮影時間は2-5秒に短縮されている. ここまでくると, 心臓を除くほとんどの臓器の撮影が可能で, 動きによるartifactも少ないため, 良好な画質がコンスタントに得られる.
    CT値についてCT装置は, 長い歴史を持っていないためその規格は一定しておらず, CTの本質とされる“CT値”は各社の好みにまかされて設定されている.しかし原則として, 空気を-100%, 水をO%に設定する点においては一定しているため, 各社のCT値を比率に換算することにより相互の比較が可能である.Normanらによると, 水は0%, CSFは+1%, white matter+3%, gray matter+3.6%, blood 5%, fat-7%である.そこでこれにEMIスキャンナーの場合5の倍数をかけることによりEMI値が得られ, 10をかけるとHouns field Unit, delta Unit, acta Unitが得られる. ところが, 絶対的であるはずの“CT値”は, 実際に測定してみると必ずしも信頼性はないことがわかる. これは当然各社のカタログでも0.3-0.5%前者の誤差はあり得ると発表していることからもわかることである. しかしこれは, 一定の大きさの被写体 (ファントーム) を測定した場合であって, 臨床的には被写体には大小不同があり, そのfactorによるCT値をみると大きい変動があることがわかる. すなわち18cmと16cmのwaterファントーム (beanbag1枚) を測定してみると, 0であるはずの水がそれぞれ2.5, 9.1EMI Unitであった. さらにCTの実際にあたっては, かなりの装置においてbeanbagを被写体に着く必要があるわけであるが, 何枚という規定はない.そこで, 0, 1, 2枚と変えて18cmのwaterファントームを測定すると, それぞれ8.5, 3.0, -3.8であった.このように一定条件 (120kvp) でスキャンしても, 被写体の大きさとか巻き方の違いでCT値は変わるわけであり, 電圧を変えた場合, さらに変動することになる(実験によると21cmのwaterファントームを, 100, 120, 140kvpで測定すると, +14, +1.9, -5.6EMI Unitであった). これを小児科領域にあてはめて考えると, 頭の大きさは大人のそれに比べ著明な差があるため, CT値の信頼性は, 非常に低いということがわかる.
  • 運動障害を有する小児のCTを中心に
    奥野 武彦
    1979 年 11 巻 2 号 p. 116-122
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    1976年5月から1978年5月までの過去2年間に経験した14才以下の小児1, 181名, 延べ1, 432スキャンのCTにっいて検討し, 運動障害を有する小児のCTを中心に, 興味ある症例を報告した.
    1. 脳腫瘍のうち, 診断困難であったgerminomaの1例をしめした.
    2. 脳血管障害では, 小児ではまれな, 内包あるいは内包周辺の血管閉塞の5例, および両側視床に小さな低吸収域がみられたReye脳症のCTをしめした.
    3. 巨脳症に一応含めた症例のうち, 軽度側脳室拡大を伴うかあるいは伴わずに, 軽度の蜘網膜下腔あるいは硬膜下腔の低吸収域が, CT上みとめられた14例の大頭症について検討した.
    4. 大脳白質の低吸収値をしめす症例として, 先天性筋ジストロフィー (福山型), 多発性硬化症のCTをしめした.
    5. 脳性麻痺のCTは, すでに報告したので, Vojtaのいわゆる, “中枢性協調障害”のCTについて検討した.
  • 飯沼 一宇, 大沼 晃
    1979 年 11 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    小児てんかんのCT像, CTと脳波の相関, CTの意義, CTの適応などについて述べた.
    小児てんかんでは, 点頭てんかんで異常が高率で, 特に早期に検査を行なうと硬膜下病変を把えるのに有用であった.早期のCT施行が必要と思われた.
    脳波との相関では, 2例の水頭症様脳形成不全症において, 単極導出でごく限られた部位にのみ電気活動が認められ, それらを共通に連結する双極導出では同一パターンを示した. また単極導出で同一パターンを示し, それらの連結で低電位を示したことにより病変を予測し得た.同様に硬膜下水腫の例においても, 脳波から脳表の液貯留の存在を予測し得た.水頭症においては固有の電気的活動があらゆる電極から得られたので皮質の存在を疑わしめた. このように脳波がCT所見を予測したり, 解釈する上で重要な意味をもつと考えられた.
    CTは小児神経学において, きわめて有力な検査法であるが, その適応を選択することにより, 有用度は増し, また種々の検査法, 就中脳波を併用して解釈することによりその価値が増大すると考えられた.
  • 脳外科の立場から
    中田 義隆, 榎本 貴夫, 牧 豊
    1979 年 11 巻 2 号 p. 132-137
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    I. 15才未満で一般状態良好, 神経学的異常所見なく, CT上も著変のない181例をいわゆる正常群として年齢的に検討した.II.正常小児のCT像の加齢的特徴は1. 乳児では前頭葉前面, 正中部に低吸収帯がみられ, シルビウス裂溝の描出もよい.側脳室前角の型はY型で, 下角の描出もまれではない. 2. 加齢とともに髄液腔は縮小するが, 3. 12才より再び増加傾向をしめす. III. 両側硬膜下液貯留と脳萎縮の鑑別は, 前者は1.脳表低吸収帯の脳実質側が比較的凹凸がすくない. 2. 脳溝が浅い. 3. シルビウス裂溝が正常, 縮小をしめすことがあるのに対し, 後者は1. 脳表低吸収帯の脳実質側が不規則波状で, 2. 脳溝は深く10mm以上のものがある. 3. 正中部低吸収帯が全長に及ぶことがあり, 4. シルビウス裂溝は拡大している.
  • II. 母体の蛋白栄養障害が胎仔脳組織 (主に微細構造) に及ぼす影響
    山野 恒一
    1979 年 11 巻 2 号 p. 138-148
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    妊娠中期および後期の親マウスを低蛋白食飼料で飼育し, 胎仔の大脳皮質の神経細胞の生成や分化におよぼす影響を主に電子顕微鏡により検索し, 以下の結果を得た.
    1. 妊娠第8日目以後, 低蛋白食飼料で飼育し, 妊娠第16日目に屠殺した第1群の胎仔重量は, 全経過中繁殖用飼料で飼育した対照群にくらべ約20%の減少を示した. また, 第1群の胎仔大脳皮質では, 母細胞層および移動層内に変性中の細胞や少数の壊死細胞が観察された.
    2. 妊娠第8日目から15日目まで低蛋白食飼料で飼育し, 第16日目から再び繁殖用飼料にもどした第2群の新生仔マウスでは, 生下時体重や大脳皮質幅は対照群と同程度まで回腹していた.また大脳皮質第2層, 第3層領域の微細構造も対照群との間に差異は認められなかった.
    3. 妊娠第13日目より低蛋白食飼料で飼育した親マウスから生まれた第3群の新生仔は, すべて予定日より1日早く, 妊娠第19日目に出生した. この群の仔マウスの生下時体重は対照群の妊娠第19日目の胎仔と比較しても, 対照群の51%にすぎなかった.また, その大脳皮質幅も対照群の82%であった. 大脳皮質第2, 第3層領域では神経細胞間隙を占める突起の数が著しく減少していた.
    4. 以上の結果から, 妊娠中期および後期の高度な蛋白栄養障害により, 母細胞やきわめて幼若な神経細胞の一部は変性・壊死に陥ることが明らかにされた.また, 栄養障害が神経細胞の生成期以後におよぶと, 神経細胞の突起の萌出や伸展など, 神経細胞の初期の分化が高度に抑制されることが判明した.
  • 橋本 俊顕, 日浦 恭一, 鈴江 純史, 河野 登, 小林 美子, 古川 民夫, 福田 邦明, 遠藤 彰一, 宮尾 益英
    1979 年 11 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    ヒトの睡眠中の体動は内的要因 (中枢神経系) により統制されていると考えられている.睡眠中の体動が中枢神経系の発達によりどのように影響されるか, また睡眠のどの段階に最もよく現われるかを検討した.
    睡眠中の体動は1) BMs/min: 単位睡眠時間当りの体動数, 2) %Epoch: 全睡眠時間を20秒毎のepochに区切り, 全睡眠時間中の総epoch数に対する体動のあるepochの割合, 3) %BMsT: 全睡眠時間に対する体動の占める時間の割合について分析した.全睡眠時間中の体動について, BMs/min, %Epoch, %BMsTの三者とも1ヵ月から3ヵ月の問に急速に減少し, 4ヵ月以後7ヵ月まではほぼ一定となった.7カ月以後10-12ヵ月まで再び減少し, 以後一定となった.睡眠段階別の変化について, REM睡眠では1ヵ月から3ヵ月の間に激減したあと, 4ヵ月以後も年齢の増加とともに漸減した.NREM睡眠ではBMs/min%Epochは7ヵ月までほぼ一定であったが, 以後10~12ヵ月までに急に減少し一定となった.%BMsTは10-12ヵ月まで徐々に減少し, 以後一定となった.REM睡眠での体動の変動がNREM睡眠のそれより著明であった.
    以上の結果より睡眠中の体動は中枢神経系の発達の一示標となり, 中枢神経異常の診断に役立つと考えられた.
  • 福山 幸夫
    1979 年 11 巻 2 号 p. 159-160
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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