脳と発達
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41 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • 新宅 治夫
    2009 年 41 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     バイオプテリンの代謝異常症は, 3種の芳香族アミノ酸水酸化酵素に共通の補酵素であるテトラヒドロビオプテリン (BH4) の欠乏をきたす遺伝性疾患である. BH4欠損症では, フェニルアラニン水酸化酵素の障害による高フェニルアラニン血症と同時に, チロシン水酸化酵素, トリプトファン水酸化酵素の障害による神経伝達物質の欠乏が重篤な中枢神経症状を引き起こす. しかし, 瀬川病とセピアプテリン還元酵素欠損症では, BH4欠乏は認められるが, 中枢神経症状のみで高フェニルアラニン血症を伴わないため, 新生児マス・スクリーニングでは発見できない. ジストニアを伴う小児神経疾患では, バイオプテリンの代謝異常も考慮しなければならない.
原著論文
  • 川谷 正男, 中井 昭夫, 眞弓 光文, 平谷 美智夫
    2009 年 41 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     注意欠陥/多動性障害 (attention-deficit hyperactivity disorder: AD/HD) から広汎性発達障害 (pervasive developmental disorder: PDD) に診断変更された66例の臨床特徴を, 変更のなかった135例と比較し後方視的に検討した. 初診時52例中41例 (79%) で言語発達遅滞や多動を認めた. Methylphenidateを使用した47例中41例 (87%) で有効であった. 診断変更群は不適切診断 (32例), 修正診断 (6例), 併存診断 (28例) に分類された. 加齢に伴いPDDの特徴が明瞭になる例がある一方, PDDとAD/HDの併存と判断せざるを得ない例もあると思われた. 乳幼児期異常行動歴は, 診断変更群では非変更群に比べて陽性項目が多く (5.4±3.7 vs. 2.6±2.6, p<0.001), 言語能力, 周囲への関心や固執に関連した項目の陽性率が有意に高かった. PDDとAD/HDの鑑別には乳幼児期異常行動歴の綿密な聴取が有用と考えられた.
  • 宮嶋 智子, 熊田 知浩, 木村 暢佑, 三國 貴康, 藤井 達哉
    2009 年 41 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     難治性てんかん患者28例にsulthiame (ST) を投与して, 発作に対する効果と副作用を調べた. 対象の年齢は6カ月から34歳 (平均8歳7カ月) で, 26例は18歳未満であった. 対象のうち, 19例は, 大島分類1または2の重症心身障害児であった. 対象の発作は, 全般発作が16例, 部分発作が12例であった. STの投与量は4~14mg/kgで, 1例を除き, 他剤に付加投与した. 28例中, 発作消失が2例 (7%) みられ, いずれも複雑部分発作であった. 発作半減は8例 (29%) みられ, 全般発作6例, 部分発作2例であった. 発作消失・半減をあわせた10例のうち, 6例で耐性が早期 (2~5カ月) にみられた. 副作用は5例において, 遺尿・夜尿・眠気・分泌物増加がみられたが, 副作用のためにSTを中止した例はなかった. STは安全な薬であり, 難治性てんかんに試みてよい薬と考えられた.
  • 三山 佐保子, 有本 潔, 木実谷 哲史
    2009 年 41 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     痙性四肢麻痺児18名の右上下肢筋におけるH波の特徴を検討した. その結果, 母趾外転筋, 短母指外転筋および小指外転筋から高率に明瞭にH波が導出された. 後二者は, 健常成人の安静下では通常H波が得られない筋であるため, 痙性四肢麻痺ではこれらを支配するα運動神経細胞の興奮性が亢進していると考えた. 短趾伸筋のH波が導出された症例はなく, 支配神経により興奮性に差が存在すると推測された. H波導出例の中で, 最大上刺激によるH波の消失がみられない症例が存在した. この知見から, 小児期発症の両側脳病変に基づく痙性四肢麻痺では, H波を生じる機構が健常人と異なっていることが示唆された.
  • 宮本 晶恵, 北畑 歩, 福田 郁江, 岡 隆治, 長 和彦, 田中 肇
    2009 年 41 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     旭川肢体不自由児総合療育センターで療育している患者で誤嚥防止手術を受けた16例において, 術式, 手術時期, 合併症について検討した. 基礎疾患は脳性麻痺6例, 変性疾患5例, 後天性低酸素性脳症4例, 先天性ミオパチー1例であった. 術式は喉頭気管分離術9例, 喉頭摘出術7例, 手術時年齢は前者が7カ月~13歳5カ月, 後者が1歳6カ月~17歳1カ月であった. 全例で呼吸障害は著明に改善した. 合併症は流涎増加6例, 気管内肉芽4例, 静脈性出血, 気管孔狭窄, 気管軟化症が各2例, 縫合不全, 気管内膿瘍が各1例であった. 重度誤嚥を伴う慢性呼吸障害を呈する患者には, 年齢, 基礎疾患などを考慮し時期を失することなく誤嚥防止手術をする必要がある.
症例報告
  • 丸山 幸一, 糸見 世子, 祖父江 文子, 夏目 淳
    2009 年 41 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     けいれん重積ないし群発で発症し, 意識障害の回復後に一過性の不随意運動と異常行動を呈した急性脳炎・脳症の3例を経験した. 不随意運動はジストニア・アテトーゼ・舞踏運動・顔面のミオクロニー・口部ジスキネジアなど多彩な症状を呈した. 異常行動は常同運動および口唇傾向, 視覚失認, 情動変化などで, 大脳辺縁系の関与が疑われた. 99mTc-ECD SPECTで片側基底核と同側前頭葉・側頭葉の集積低下を全例に認めた. 不随意運動は数カ月後に無治療で消失した. 急性期にMRI異常のない2例は予後良好であったが, 広汎な皮質下白質病変を呈した1例は知的障害とてんかんを残し, 口唇傾向が長期に残存した.
  • 石垣 景子, 村上 てるみ, 伊藤 康, 柳澤 暁子, 小平 かやの, 宍倉 啓子, 鈴木 暘子, 平山 義人, 大澤 真木子
    2009 年 41 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     先天性筋無力症候群 (congenital myasthenic syndrome: CMS) は, 神経筋接合部構成分子の欠損/欠乏または機能障害によっておこる稀な疾患群である. アセチルコリン (acetylcholine: ACh) 受容体欠乏症によるCMS患者の診断・治療経過を報告する. 患者は生後5カ月に眼瞼下垂に気付かれ, 1歳6カ月時にテンシロンテスト陽性から重症筋無力症と診断された. 胸腺摘出術, ステロイド薬, taclorimus投与も効果なく, 10歳時には車椅子主体の生活となった. 抗ACh受容体抗体は終始陰性であった. 遺伝子解析でCMSに関する既知の変異は検出されず, 11歳時に神経筋接合部の選択的筋生検にて診断にいたった. 現在, 免疫抑制療法に代えて臭化ジスチグミン, 3, 4-ジアミノピリジンを開始し経過観察中である.
  • 渡邉 誠司, 山倉 慎二, 平野 恵子, 奥村 良法, 愛波 秀男
    2009 年 41 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     自閉性障害の小児 (自閉症児) には極端な拒食がみられることがあり, ビタミンをはじめとする栄養障害を招く危険性がある. 自閉症の3歳男児で幼稚園入園という環境の変化を誘因に摂食を拒否し, ビタミン剤の入らない点滴のみで, 3週間後に意識障害とけいれん群発を来し, MRIで基底核にT2強調画像とFLAIR画像で高信号を認め, ビタミンB1低値よりWernicke脳症と診断した症例を経験した. 小児における急性のWernicke脳症は本来の3主徴を示すことが少なく, 画像も非典型的で, 低酸素性脳症, ミトコンドリア病と類似する大脳基底核病変を示すことが多いので, 摂食障害でこのような症状とMRI所見をみた場合にはWernicke脳症も考えて鑑別が必要である.
  • 杉山 延喜, 松田 晋一, 清水 美衣, 小原 さおり, 池上 真理子, 横山 淳一, 宮下 好洋, 瀧澤 俊也, 高木 繁治
    2009 年 41 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     症例は5歳男児. 5歳1カ月時に歩行障害を主訴に受診し, MRIにて右視床と左小脳半球に梗塞像を認めた. 脳梗塞の原因精査のため血液凝固能検査, MR angiographyなどを施行したが異常はなく, 特発性脳梗塞の診断でticlopidine hydrochlorideの内服で外来経過観察となった. Ticlopidine hydrochlorideの内服中であったが, 発症4カ月後に再度歩行障害が出現し, MRIにて左右小脳半球に新たな梗塞像を認めた. 再度精査を行うも原因不明であり, 血小板凝集能検査を施行した. Adenosine diphosphate凝集は抑制されていたが, コラーゲン凝集の亢進を示した. そのため, コラーゲン凝集を抑制するとされているaspirinを併用したところ, 血小板凝集能の抑制を認め, 以後4年間にわたり一過性脳虚血発作を含め脳梗塞の再発は認めていない. 抗血小板薬を選択する際には血小板凝集能検査を行い, どの種類の抗血小板薬が血小板の凝集を抑制するかを判断することが必要と考えられた.
  • 犬塚 幹, 太田 穂高, 小川 和則, 吉永 治美, 大塚 頌子
    2009 年 41 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     頭部外傷直後に意識障害, 右片麻痺を呈し, その後右半身けいれんの重積状態と複雑部分発作重積状態 (complex partial status epilepticus; CPSE) を起こした3歳男児を, 後に前額部の小さな淡紅色色素斑および頭部MRI所見からSturge-Weber症候群 (SWS) と診断した. CPSEの治療にはlidocaineの持続点滴が有効であった. その後複雑部分発作を繰り返し, 難治てんかんの様相を呈している. SWSではけいれん重積状態が認められることは知られているが, 頭部打撲後にCPSEをきたしたSWSの報告はなく, CPSEはSWSにおいて注意すべき症状と考えられた.
短報
  • —9歳以上28名での検討—
    橋本 竜作, 柏木 充, 鈴木 周平
    2009 年 41 巻 1 号 p. 57-58
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     発達障害児28名を対象に単語速読検査の信頼性係数を再検査法により推定した. その結果, 読字障害を持つ児童 (読字障害群11名) と, 持たない児童 (非読字障害群17名) のどちらも非単語課題では高い信頼性係数を得られた. しかし, 非読字障害群では, 単語課題の信頼性係数は低かった. 本結果より, 読字障害の有無に関係なく, 安定して音読時間を測定するには非単語課題が有用であることが示唆された.
  • 三山 佐保子, 有本 潔
    2009 年 41 巻 1 号 p. 58-60
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     視放線を含む頭頂部から側頭部にわたる片側大脳半球の広範な欠損をもつ裂脳症患者2例に閃光刺激視覚誘発電位検査を行い, 左右後頭部から導出される波形について検討した. 1例では両側後頭部から主陽性頂点が正常に導出されたが, 他の1例では大脳の欠損と同側の後頭部電極における主陽性頂点の潜時の延長が認められた. 一側の視交叉後病変をもつ同名半盲患者に図形刺激視覚誘発電位検査を行った場合, 病変の反対側の後頭部電極から導出される波形に異常を認めるとされる (paradoxical lateralization). 一側の視交叉後病変をもつ患者では, 閃光刺激により誘発される視覚誘発電位はparadoxical lateralizationとは異なった出現機序をもつことが示唆された.
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