脳と発達
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47 巻, 5 号
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巻頭言
原著論文
  • 苛原 香, 緒方 朋実, 小沢 浩, 大瀧 潮, 山本 敬一, 石塚 丈広, 有本 潔, 木実谷 哲史, 荒川 浩一, 村松 一洋
    2015 年 47 巻 5 号 p. 343-347
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル フリー
     【目的】先天性中枢性肺胞性低換気症候群 (congenital central hypoventilation syndrome ; CCHS) の精神発達予後を明らかにする. 【方法】学齢以上のCCHS17例について, 臨床経過, 呼吸管理, 精神発達などについて後方視的に検討した. 【結果】15例が出生直後に発症し, 2例が遅発性だった. 出生時の低酸素は8例に認め, これを含む12例が挿管管理をうけた. 全例が生後1カ月~1歳 (中央値5.5カ月) 時に気管切開術を受けた. 挿管例はHirschsprung病などを合併する頻度も高くCCHSとして重症であった. マスク換気5例は発症時の全身状態が比較的良好で合併症も少なかった. 気管切開例のうち4例がマスク換気に, 1例がマスク換気と横隔膜ペーシングの併用に移行した. 気管切開例の精神発達は正常から重度遅滞まで認め, 気管切開の時期が遅いほど遅滞が重度になる傾向にあった. マスク換気例では全例で境界域~中等度までの遅滞を認めた. またマスク換気例ではマスク装着のコンプライアンス等に問題があった. 【結論】CCHSでは低酸素が精神発達に影響している可能性があり, 神経保護の見地から気管切開による確実な呼吸管理を出生後早期から行う必要がある.
  • 佐野 史和, 金村 英秋, 青柳 閣郎, 反頭 智子, 杉田 完爾, 相原 正男
    2015 年 47 巻 5 号 p. 349-353
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル フリー
     【目的】併存障害のない注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) 児のquality of life (QOL) を評価することがAD/HD児への早期支援に有効となりうるか検討した. 【方法】小学生版・中学生版QOL尺度を用いてAD/HD児と対照群のQOLを比較し, AD/HD rating scale-Ⅳ (AD/HD RS-Ⅳ) との相関を解析した. 【結果】AD/HD児22名のQOLは, 対照群に比し自尊感情の項目で高値だった. QOL総得点は学校のAD/HD RS-Ⅳと負の相関を認めた. QOLが低い児は, 親に比し学校生活の項目で低値だった. 【結論】併存障害のないAD/HD児のQOLを評価することは早期支援に有効である.
  • 加藤 竹雄, 中田 昌利, 井手 見名子, 齊藤 景子, 吉田 健司, 粟屋 智就, 平家 俊男
    2015 年 47 巻 5 号 p. 354-359
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル フリー
     【目的】近年, 本邦において新規抗てんかん剤が次々と使用可能となり, てんかん治療の治療戦略の見直しが必要となっている. 広域な発作抑制作用をもつtopiramate (TPM), lamotrigne (LTG), levetiracetam (LEV) の有効性, 忍容性について比較検討した. 【対象・方法】京都大学医学部附属病院, 洛和会音羽病院, 日本赤十字社和歌山医療センターの小児神経外来に通院中の患者のうち, 2007年7月~2012年7月の5年間に, TPM, LTG, LEVの追加治療を新規に開始した小児難治性てんかん症例を対象とし, 後方視的に検討を行った. 【結果】対象症例数はLTGが44例, TPMが55例, LEVが38例であった. 全体の50%発作頻度減少率 (50%RR) はLTG 31.8%, TPM 41.8%, LEV 52.6%であった. 部分てんかんでは, 50%RRはLEV, TPMが同等の有効性を示したのに対し, LTGでは50%RRでは24%と低かった. 全般性てんかんでの50%RRはLTG 28.6%, TPM 26.7%, LEV 44.4%であった. 副作用の頻度はそれぞれ, LTG 9.1%, TPM 43.6%, LEV 15.8%とTPMが最も高かった. 【結論】部分てんかん, 全般性てんかん共にLEVが最も優れた有効性を示した. TPMは発作消失率の点では他2剤と比較して有効性が高く, またLTGは部分てんかん発作より全般性てんかん発作において有効性が高い傾向にあった. これらの新規抗てんかん剤には有効性, 副作用などにおいて各々の特徴があり, 利点・欠点を把握した上で治療を行う必要があると考える.
症例報告
  • 藤岡 智仁, 中野 広輔, 眞庭 聡
    2015 年 47 巻 5 号 p. 360-362
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル フリー
     脊髄性筋萎縮症 (SMA) Ⅰ型では長期生存のために気管切開による人工呼吸管理が必須となるが, 気管切開には単純気管切開術と喉頭気管分離術のような気管切開+誤嚥防止術がある. 今回我々はSMAⅠ型患者に喉頭気管分離術を施行し良好な経過をたどっている3症例を経験した. 3症例の発症時期はそれぞれ日齢14, 2カ月, 1カ月半, 喉頭気管分離術施行時期は5カ月, 7カ月, 15歳5カ月, 診断から手術までの期間は1カ月, 3カ月, 15年であった. 3症例とも手術による合併症はなく術後誤嚥性肺炎は消失した. 喉頭気管分離術はSMAⅠ型に対する誤嚥防止術として有用であり, 患者とその家族のquality of life向上にも寄与していると考えられた.
  • 村松 友佳子, 夏目 淳, 中村 みほ
    2015 年 47 巻 5 号 p. 363-366
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル フリー
     Wechsler Intelligence Scale for Children third editionにおいてverbal intelligence quotient (VIQ) とperformance intelligence quotient (PIQ) に解離を認めた中等度脳室周囲白質軟化症, 痙性両麻痺の13歳男児に対し, その認知処理および言語能力について検討した.
     Das-Naglieri Cognitive Assessment System認知評価システム等の心理検査では継時処理に比し同時処理が苦手であった. また検査項目間の成績に差があり, 読字障害診断手順を用いた検査では流暢性の障害を認めた.
     VIQが比較的高い場合には言語が得意であると理解されることが多いが, 本症例のごとく個別の能力にばらつきが存在する場合を考慮し, 適切な対応を行う必要がある.
  • 柴田 明子, 山本 真梨子, 渡邊 優, 寺嶋 宙, 柏井 洋文, 久保田 雅也, 師田 信人
    2015 年 47 巻 5 号 p. 367-371
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル フリー
     Baclofen持続髄注療法 (intrathecal baclofen therapy ; ITB療法) は重症の痙縮の治療法として, 国内では2007年に小児にも適応が拡大された. 今回, ITB療法の機能不全の原因診断にradioisotope (RI) シンチグラフィが有効だった症例を経験したので報告する. 症例は7歳男児. 裂脳症, 水頭症, 痙性四肢麻痺を合併し, 前医にて脳室腹腔 (VP) シャントを施行されていた. バクロフェンポンプ埋め込み術後1カ月後にbaclofen離脱症状を呈した. 各種検査ではポンプ機能やカテーテルの形態異常, カテーテル通過障害は認められなかった. RIシンチグラフィによりbaclofenが早期に体循環に排出されている可能性が示唆された. 脊椎後弯による髄液通過障害とVPシャントによる髄液排出が原因と考えられた. 再手術により, 脊椎管内のカテーテル位置を尾側に移動させ, 症状の改善を得た. RIシンチグラフィはbaclofen薬液の空間的, 時間的な動態を判別できバクロフェンポンプ機能不全時の検査として有用であった.
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地方会
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