量分析計は気体の定量分析装置の一つとして発達してきたが,測定装置の感度,分解能および安定性が改良されると共に物理化学への応用分野が急速に開けてきた.とくに化学反応論の問題を取り扱った報告が多くなりつつあり,質量分析計,分析器本来の装置に関する報告は少なくなりつつある.本装置による分析の対象が低分子化合物より高分子化合物へと移行しており,分析方法ならびに資料データの処理方法の確立など新たな問題が生じてきた.しかしこれらの問題は他の科学分野の強力な援助のもとに次第に解決しつつある状態であり,その一例を示せばディジタル計算機による処理方法の確立であろう.これら分析に関する数多くの報告中,特に分析化学に関係深いもの二,三を記述し,実験装置ならびに物理化学分野の報告は簡単に述べる.質量分析の基礎および全般の応用を紹介しているBeynon
1)の Mass Spectrometry and its Applications to Organic Chemistryは各分野の研究者に広くかつ適切に役立つ参考書である.総説として分子の物理化学
2),炭化水素の反応
3),核化学
4),また分析化学
5)などを対象とした報告がある.
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