分析化学
Print ISSN : 0525-1931
47 巻, 11 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 野村 俊明
    1998 年 47 巻 11 号 p. 751-767
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    水晶発振子は大気中での微量てんびんとして開発され利用されてきた.この原理は,水晶発振子上で生じた質量変化を振動数変化として検出するものである.水晶発振子の振動数変化は,質量のみに依存し,どんな物質による質量変化かには関係しない.従って,水晶発振子を化学分析の検出器として用いる際には,特定の物質のみが付着するようにする必要があり,定量法の重要な課題となる.又,この水晶発振子を液体中での検出器として用いるためには,大気中での振動数特性のほかに,密度,粘度,電気伝導度,誘電率などの液性も考慮する必要があり,より複雑になる.ここでは,水晶発振子を液体中の微量成分分析の検出器として用いるために,これらの振動数を変化させる要因をいかに考慮するか.いかにしたら特定の物質だけが付着するようになるか.又,より簡単に定量するにはどのようにすれば良いか,などについて,読者の研究の参考になればと,液体中における化学分析に関係した論文をまとめてみた.
  • 宮部 寛志
    1998 年 47 巻 11 号 p. 769-782
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    逆相液体クロマトグラフィー系の物質移動現象について解析的研究を行った.様々な分離条件下において測定したピークの一次,二次モーメントを解析し,物質移動平衡や速度及びその熱力学的特性に関する情報を得た.等量吸着熱は試料物質の蒸発熱よりも小さく,これはソルボフォビック理論により説明できた.カラム内における全物質移動抵抗に対する充てん剤粒子内拡散の寄与は重要であり,又表面拡散は粒子内拡散に対して支配的な役割を果たしていた.表面拡散の活性化エネルギーは等量吸着熱よりも大きな値として観測されるが,これは絶対反応速度論に基づく解析により説明できた.逆相液体クロマトグラフィー系の表面拡散現象については,エンタルピー-エントロピー補償効果と直線自由エネルギー関係が分離条件によらず成立した.モーメント解析理論に基づきクロマトグラフィー分離の無次元化速度式を提案した.カラム効率に対する分離パラメーターの影響を数値解析的に検討した.その際,カラム内の各速度過程の寄与を分離して評価した.表面拡散現象の解析により,逆相液体クロマトグラフィー系の分離機構を解明する上で重要な情報が得られた.
  • 上蓑 義則
    1998 年 47 巻 11 号 p. 783-793
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    テフロン容器中での加圧酸分解/ICP-AESによるファインセラミック焼結体中不純物の定量法について,アルミナ,ジルコニア,並びにアルミナ/ジルコニア複合材料を中心に検討した.試料を粉砕すると多量の粉砕容器成分が混入し,微量不純物の正確な定量を行うことはできなかった.アルミナ,ジルコニア焼結体はどちらも約0.3gの塊状試料が,硫酸(1+2)により230℃,16~60時間の加熱で完全に分解できた.しかし両者を複合させた材料の焼結体では必ずしも硫酸(1+2)のみでは分解できず,0.3mlフッ化水素酸+9.7ml硫酸(1+2)を用いることにより,約0.3 gの試料塊が230℃,24時間の加熱で分解できた.ICP-AES測定に際しては,測定試料溶液と酸,アルミニウム,ジルコニウム各濃度を一致させた検量線作成用標準溶液を用いる必要があった.試料中不純物の検出限界はほとんどの元素でμg/gのレベルであり,微量不純物が精度良く定量できた.その他,炭化ケイ素,窒化ケイ素,窒化アルミニウム,窒化ホウ素,酸化亜鉛,チタン酸バリウム,PZT,サイアロン各焼結体の酸分解法についても紹介した.
  • 大野 典子, 酒井 忠雄
    1998 年 47 巻 11 号 p. 795-806
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    医薬品及び生体関連物質を高感度かつ迅速に測定するためのFIAシステムの開発を行った.尿中のクレアチニンの迅速定量,歯科合金中のパラジウム及び血清中の鉄・銅の高感度選択的定量のシステムを構築し,更にシステムの機能を高めるためセルとセパレーターの改良開発を行った.ダブルフローセルにより,血清中の鉄と銅の同時定量が可能となった.ヒーターとサーミスターをセル内部に挿入した温度制御機能付フローセルは,温度制御が要求される試料の測定に有用である.例えば,アミン会合体のサーモクロミズムを応用して,第四級アンモニウム塩であるコリン,アセチルコリン,陽イオン界面活性剤が選択的に定量された.2か所にPTFE膜を挟むダブルメンブランセパレーターは,セグメントから容易に有機相が分離でき,連続1週間安定した回収率が保持された.このセパレーターがベルベリン及び陰イオン界面活性剤の溶媒抽出/FIAシステムに導入され,再現性・選択性の高い分析が可能となった.
  • 三浦 潤一郎
    1998 年 47 巻 11 号 p. 807-817
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)において,界面活性剤を含む移動相を用いて固定相及び移動相の機能を制御する方法を提案する.イオン性界面活性剤を用いて固定相表面を動的にコーティングすることにより,金属錯体の分離を損なわず迅速に分離・検出する方法を開発した.ミセル相-水相間での分配平衡を解析し,分配定数とミセルRP-HPLCにおける保持との相関を明らかにした.更に,金属錯体のミセルRP-HPLCにおいて,移動相に用いる非イオン界面活性剤の親水基であるオキシエチレンの鎖長と金属錯体の保持との相関を明らかにした.これらの界面活性剤を用いる移動相を設計するための指針を示し,超微量金属イオンの分離・定量法の開発に適用した.バナジウム,コバルト等の高感度定量法を確立し,工業材料,環境試料,生体試料などの分析に応用した.
  • 江坂 幸宏
    1998 年 47 巻 11 号 p. 819-827
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    水素アクセプター能を有するポリエーテル類を用いて,キャピラリー電気泳動法に水素結合に基づく分離モードを導入した.ポリエチレングリコール(PEG)を含む泳動液を用いてキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)による置換安息香酸の分離を検討したところ,水素ドナー性の置換基を有する試料とPEGエーテル酸素との相互作用が電気泳動移動度に反映されることが示された.又,親水基にポリエーテル部位を有するTween 20,Brij 35などの非イオン界面活性剤とラウリル硫酸ナトリウム(SDS)から成る混合ミセル系を用いたミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)による置換ベンゼン類の分離を検討した結果,水素ドナー性の強い試料のミセルへの取り込みが相対的に促進され,水相からミセル相への分配におけるエーテル酸素と置換基間の水素結合の寄与が示された.本CZEではPEG濃度,本MEKCでは界面活性剤の混合比の変化で分離の最適化ができる.各分離系における分離を支配する相互作用を熱力学的に評価し考察した.
  • 米沢 仲四郎, 黒澤 達也, 松江 秀明
    1998 年 47 巻 11 号 p. 829-834
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    短寿命核種20F(半減期11.00 s)を利用した機器中性子放射化分析法(INAA)による,粉末窒化ケイ素中痕跡Fの非破壊迅速定量法の検討を行った.分析は,JRR-3M放射化分析設備で5秒照射し,7秒後に10秒放射能測定を行う単一照射法と,単一照射法を10分以上の間隔で5回繰り返す,繰り返し照射法により行った.単一照射法では窒化ケイ素中2μg/g以上のFの定量が可能であり,更に,繰り返し照射法では,単一照射法より検出限界が1/3~1/5以下に,又,定量精度も約4倍改善された.照射中のFの蒸発及びNaの妨害核反応の影響についても調べた結果,これらは無視できるほど小さいことが分かった.本法による標準物質Oparl Glass (NIST SRM91)及びOyster Tissue (NIST SRM1566a)中のFの定量値は,その相対標準偏差(5.1~5.9%)の範囲以内でNISTの認証値及び参考値とほぼ一致した.更に,茶葉標準物質(NIES No.7)中のFの定量も行った.又,本法の分析誤差に最も影響するAl含量とFの検出限界との関係も明らかにした.
  • 勝木 富美恵, 保倉 明子, 岩畑 大悟, 生熊 崇人, 小栗 佐知子, 原口 紘〓
    1998 年 47 巻 11 号 p. 835-844
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)及びICP発光分析法(ICP-AES)を用いて,サクラ(桜)試料中の多元素定量を行った.本研究ではまず茶葉標準試料(NIES No.7)を用いて,試料の酸分解法,多原子イオン干渉の補正に関する基礎検討を行い,その上で茶葉標準試料の多元素分析を行った.その結果,植物試料の溶液化には硝酸とフッ化水素酸による酸分解法がケイ酸質による影響を除去するのに有効であった.本法をサクラ試料の分析に適用し,名古屋大学構内を含む名古屋市内9か所で採取されたサクラ葉,花弁,がく中の主成分から超微量成分元素まで41元素の定量値が得られた.更に,サクラ試料における元素分布及びその地域分布についても考察した.
  • 福原 忠雄, 小松 一男, 吉田 誠一, 阪本 興彦, 山本 信也, 高松 翼
    1998 年 47 巻 11 号 p. 845-851
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    セミミクロLCを接続したNMRに,セル容量約50μlのガラス製NMRフローセルを用いた内径3mmのマイクロプローブを組み込んで,セミミクロLC/1H-NMRを構築した.セミミクロ分離カラムに内径1.5mm,長さ25cmのポリマーコートシリカODSを,移動相に重水と重アセトニトリルの混液を流量100μl/minで用いて種々の検討を行った.フローインジェクション測定による感度検討の結果,パラヒドロキシ安息香酸エチルの解析限界は約5μg,検出限界はサブμgであった.又,UV検出器によるクロマトグラムとオンフロースペクトルの時間軸側投影スペクトルを比較することにより,NMRフローセル内での試料の拡散状況を検討した結果,LCで近接して溶出する成分の分離がNMRフローセル内でも良く保たれていることが確認できた.更に,分取が困難なケト-エノール互変異性体へ本法を応用した結果,ケト体及びエノール体それぞれのNMRスペクトルの測定と構造確認ができ,セミミクロLC/1H-NMRの有用性を示すことができた.
  • 西田 正志, 園田 美和子, 石井 大道, 吉田 烈
    1998 年 47 巻 11 号 p. 853-859
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ヒドロキシカリックス[4]アレーン-p-スルホン酸ナトリウム(Na4l4)と塩化トリオクチルメチルアンモニウム(TMA+Cl-)を用いるマンガン(II)の抽出光度定量法の基礎的検討を行った.マンガン(II)はアルカリ水溶液中でマンガン(IV)に酸化されl44-と1:1錯体, MnIV-144-を形成し赤紫色を発する.この発色錯体を水相の10分の1の体積のTMA+Cl-のクロロホルム溶液で抽出濃縮し510nmで吸光度を測定した.この波長における見掛けのモル吸光係数は水相中のマンガン(II)当たり8.46×104M-1cm-1であった.抽出操作を加えることによりマンガン(II)の分析感度はMnIV-l44-錯体水溶液を直接測定する定量法に比べ約10倍に高くなった.又,鉄(III)の影響を除去できるなど選択性も向上した.本法を土壌溶出液中の微量マンガン(II)の分析に応用して良好な結果を得た.
  • 大川 〓一郎, 山崎 和彦, 石川 俊美
    1998 年 47 巻 11 号 p. 861-866
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    2-(2-ベンゾオキサゾリルアゾ)-1-ナフトール(α-BOAN)をポストカラム誘導化試薬として用い,イオンクロマトグラフィーによって銅(II)及び亜鉛(II)の分離定量を試みた.このとき,水に難溶性のα-BOAN及びそれらのキレートを非イオン性界面活性剤を用い水に可溶化した.銅(II)及び亜鉛(II)とα-BOANとのキレート生成のpH値の範囲は,pH 3.0~4.2及び4.6~5.7でほぼ一定の吸光度を示した.ほかにマンガン(II),コバルト(II),ニッケル(II),カドミウム(II)及び鉛(II)がα-BOANとキレートを生成することが分かった.クロマトグラムは移動相(乳酸)のpH値が3.1のとき,定量目的の銅及び亜鉛が良く分離されており同時定量が可能であった.両元素はカラムで分離後,α-BOANと反応させ,565nmで吸光度を測定し,定量を行った.検出限界は銅及び亜鉛それぞれ16,195 ppbであった.又,銅100及び亜鉛800 ppbについて7回の繰り返し実験の相対標準偏差は,それぞれ2.2及び2.0%であった.次いでNIST標準物質SRM1568a (Rice Flour)とSRM1577b(Bovine liver)及び外国産米中の銅及び亜鉛を分離定量し好結果を得た.
  • 肥田 宗政, 三井 利幸
    1998 年 47 巻 11 号 p. 867-871
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    従来から行われている無煙火薬中のニトロセルロースを定量する方法は,溶媒を使用して共存成分を分離した後に行っているために,操作が煩雑で分析に長時間を必要とする.そこで,本研究では分離操作を行わずに,試料を赤外分光分析法で測定し,得られたスペクトルを多変量解析法で処理することによりニトロセルロースを短時間で定量する方法を検討した.その結果,再現性(n = 5)は相対標準偏差1%以下で精度良く定量することができた.
  • 飯島 善時, 三好 康介, 斎藤 修一
    1998 年 47 巻 11 号 p. 873-879
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    X線光電子分光法(XPS)は材料表面の化学結合状態分析に対し有効な方法である.しかし,XPSの検出限界は二次イオン質量分析法(SIMS)や全反射蛍光X線分析法(TXRF)などに比べ著しく悪い.全反射XPS(TRXPS)は検出感度向上に対し有効な方法と考えられている.本研究ではTRXPSの検出限界をSiウェハー上の汚染物測定から検討した.Siウェハー上にFeとCuをそれぞれ定量汚染させた試料を用い,X線(AlKα)を試料面に対し1.1°と全反射条件にてXPS測定を行った結果,TRXPSにおける検出限界はFe,Cuともに~9E+10 atoms/cm2で従来のXPS測定法に比べ約40倍向上した.以上の結果よりTRXPSはSiウエハー上の極微量汚染物分析に有効であることが示された.
  • 寺島 滋, 谷口 政碩, 岡井 貴司
    1998 年 47 巻 11 号 p. 881-887
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    地質試料中Bの溶出挙動を明らかにし存在状態を研究するため,逐次溶解法とICP-AESを組み合わせた分析法を確立し,各種標準試料の分析を実施した.本研究では0.1M硝酸カリウム溶液で溶出する部分を交換吸着態,0.05MEDTA溶液でのそれをEDTA可溶態,0.025MEDTA-0.1Mシュウ酸アンモニウム-0.1Mシュウ酸-0.05Mアスコルビン酸-0.005M塩酸混合溶液でのそれを酸化物態,6M硝酸-1M塩酸でのそれを硝酸-塩酸可溶態,炭酸ナトリウム融解でのそれを残留物態とした.本法によれば,0.1gの試料で0.8ppm以上のBが定量可能であり,0.15~5μgのBの定量における相対標準偏差は20~4%であった.確立した逐次溶解法は地質試料中Bの起源や存在状態を把握する方法として有効であり,各種地質標準試料中Bの分析結果によれば,海底堆積物,マンガンノジュール,コールフライアッシュ中のBは他試料に比べて溶出しやすかったが,火山岩,堆積岩,土壌ではいずれも残留物態で最高濃度が得られ,これら試料中のBは主として火山ガラスや難溶性のケイ酸塩鉱物中に含有されると考えられた.
  • 三澤 清, 脇坂 正敏, 道祖尾 保, 穂積 啓一郎
    1998 年 47 巻 11 号 p. 889-894
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    The determination of organic halogens is mostly carried out by the oxygen-flask method, while very few attempts have been reported for automatic instrumentation of the halogen analyzer. A rapid and simple micro analyzer is therefore proposed using the gas-chromatographic technique by which chlorine, bromine and iodine are qualified and quantified, respectively. A sample of 11.5 mg is weighed and ignited instantaneously in a quartz combustion tube at 900°C with a carrier gas comprising helium and oxygen (1 : 1) at a flow rate of 20 ml/min. The combustion gas passes through a Teflon column at 60°C packed with methylsilicone oil as a stationary phase. Halogens coming out of the column are then chemically converted to equimolar iodine by contact with silver iodide at 200°C. The iodine vapor is spectrophotometrically detected in a small gas cell incorporated with a light source of 525 nm and a photo transistor. The retention times of the halogen peaks are 4 min for chlorine, 8 min for bromine and 35 min for iodine, respectively. By raising the column temperature to 80°C, however, iodine comes out at 15 min. Since the detector output is proportional to the light transmittance, a computer program was made to transform the signal every one second to the absorbance scale. The integrator prints out the peak data to 5 figures.
  • 永田 公俊, 冨安 卓滋
    1998 年 47 巻 11 号 p. 895-898
    発行日: 1998/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
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