分析化学
Print ISSN : 0525-1931
67 巻, 5 号
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年間特集「膜」: 総合論文
  • 南木 創, 南 豪
    原稿種別: 年間特集「膜」: 総合論文
    2018 年 67 巻 5 号 p. 229-237
    発行日: 2018/05/05
    公開日: 2018/06/07
    ジャーナル フリー

    π共役分子の高次集合体に基づく有機薄膜デバイスは,有機分子が呈するしなやかさと多彩な機能制御性といった魅力ある特長を有している.とりわけ有機薄膜トランジスタ(OTFT)は,簡便かつ比較的安価な作製プロセスを用いてセンシングシステムを構築することができるため,オンサイト分析デバイスとして魅力的である.著者らはOTFTをプラットフォームとした化学センサの開発にあたり,分子認識能(人工レセプタ)を持つ自己組織化単分子膜をOTFTに導入することで,OTFTを用いた多種多様な化学センシングを試みてきた.これまでに,水溶液中に含まれる生体関連化学種や環境汚染物質を標的とし,OTFTによる分子認識情報の電気的読み出しに成功している.本研究成果は,OTFTを基盤とした化学センサの創出に向けた指針を示すものであり,分析化学と有機薄膜デバイスの融合による新たな発展が期待される.

年間特集「膜」: 報文
  • 遠田 浩司, 細川 直樹, DAO Thi Hong Nhung, 菅野 憲
    原稿種別: 年間特集「膜」: 報文
    2018 年 67 巻 5 号 p. 239-247
    発行日: 2018/05/05
    公開日: 2018/06/07
    ジャーナル フリー

    液膜型イオン選択性電極(液膜ISE)の検出下限を向上させることを目的とし,高選択性かつ高脂溶性のPb2+イオノフォア(ETH5435)に基づくISEを用いたフローシステムを構築した.このシステムでは,試料溶液送液前にエチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid, EDTA)溶液を送液することにより,液膜界面近傍の残存したPb2+を除去することができる.極低濃度のPb2+溶液を送液し,電位応答を測定した結果,従来のISEの検出下限以下である1 × 10−9 mol L−1から1 × 10−6 mol L−1の濃度範囲のPb2+に対して過渡的な電位応答を示すことが分かった.更に,液膜/試料溶液界面のPb2+イオンフラックスに基づいて過渡的な応答電位の解析を行った結果,試料溶液送液直後の膜電位変化の勾配をプロットすることによって,サブppbからppbの希薄なPb2+濃度範囲で直線性の良い検量線を作成できることを見いだした.

分析化学総説
  • 山田 憲幸, 高橋 純一
    原稿種別: 分析化学総説
    2018 年 67 巻 5 号 p. 249-279
    発行日: 2018/05/05
    公開日: 2018/06/07
    ジャーナル フリー

    誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)における主要課題のひとつがスペクトル干渉であることは言を俟たない.この課題に対処するために開発されたコリジョン・リアクションセルは,その登場以来,種々の改良により完成度を高め,現在では四重極型ICP-MSに必須のデバイスとなった.本稿では,コリジョン・リアクションセル技術の最新の状況を概説し,当技術の原理的な限界を明らかにする.そして,その限界の一部をトリプル四重極型ICP-MS(ICP-MS/MS法)によって克服できるメカニズムを議論する.特に,トリプル四重極型ICP-MSによって実用的手法となったマスシフト法は,リアクションセル(リアクションモード)の有用性を高め,それまで未解決だった多くの干渉問題を解決した.このトリプル四重極型ICP-MSによるICP-MS/MS法の原理と応用を詳しく述べる.

技術論文
  • 佐藤 浩昭, 中村 清香
    原稿種別: 技術論文
    2018 年 67 巻 5 号 p. 281-291
    発行日: 2018/05/05
    公開日: 2018/06/07
    ジャーナル フリー

    MALDI-TOF-MSは高分子材料の化学構造解析に有力な手法であるが,ポリエチレンオキシド(PEO)系界面活性剤などのイオン化効率が高い成分が共存していると目的成分のピークが観測されにくくなるという課題があった.そこで水に難溶のトリヒドロキシアセトフェノンをマトリックスに用いて試料/マトリックス混合結晶を調製し,その上に水/メタノール混合液を滴下して速やかに吸引することにより,PEO系成分を選択的に除去できる簡便な前処理法を開発した.この方法を洗髪剤の成分分析に応用し,妨害成分であるPEO系アニオン性界面活性剤(ラウレス硫酸ナトリウム)を除去して,配合成分のピークが観測できるようになった.得られたマススペクトルをKendrick mass defect(KMD)プロットに変換して成分分布を二次元展開したところ,様々なPEO系非イオン性界面活性剤の組成分布やPEO-水添ヒマシ油の共重合組成分布を明らかにすることができた.また,紫外線硬化塗料に含まれるPEO系界面活性剤を除去して,ウレタンアクリル系成分の化学構造情報を得ることができた.本法は,工業製品の配合情報を簡便かつ詳細に得ることができるスクリーニング手法として有効であると思われる.

ノート
  • 星野 陽子, 田中 美穂
    原稿種別: ノート
    2018 年 67 巻 5 号 p. 293-299
    発行日: 2018/05/05
    公開日: 2018/06/07
    ジャーナル フリー

    Aluminium (Al) species in prepared polyaluminium chloride (PAC) solutions and in a commercial PAC coagulant were investigated by Electrospray Ionization Mass Spectrometry (ESI-MS) and Capillary Electrophoresis hyphenated with ESI-MS (CE/ESI-MS) in this study. Al tridecamers (Al13) have seemed to be one of the most important species for coagulant efficiency; however, to date, there is not much “direct evidence” to show which Al species exist precisely in commercial PAC coagulants, and which ones literally work to make flocs in the process of coagulations in wastewater. The main aim in this study was to detect Al13 species and others in a commercial PAC coagulant as a first step to reveal of “what exactly commercial PAC coagulant is composed” in the end. As the results of some experiments, Al monomers were found to be the main species, and Al13 was characterized with CE/ESI-MS, although very small amounts of Al13 species were detected with ESI-MS because of its suppression effect.

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