分析化学
Print ISSN : 0525-1931
59 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
年間特集「水」:総合論文
  • 津島 将司, 平井 秀一郎
    原稿種別: 総合論文
    2010 年59 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/15
    ジャーナル フリー
    固体高分子形燃料電池(PEFC)における水の「その場」計測技術として,磁気共鳴イメージング(MRI),原子間力顕微鏡(AFM),ラマン分光,軟X線イメージングを示し,これらを用いた水分輸送解析について述べる.燃料電池発電中における電解質膜内水分濃度分布をMRIにより計測することで,発電条件によって,電気浸透,濃度拡散,圧力駆動,表面物質伝達,のそれぞれが支配因子となり得ることを示した.水分透湿過程の電解質膜表面のナノクラスター構造をAFMにより計測し,親水性クラスターが膜表面に離散的に分布していることが物質伝達抵抗の要因であることを示した.PEFC触媒層,拡散層内の液体水計測技術として,軟X線を用いた可視化手法を開発し,PEFC多孔質内の液体水生成過程の高分解能計測が可能であることを示した.
年間特集「水」:報文
  • 池羽田 晶文
    原稿種別: 報文
    2010 年59 巻1 号 p. 13-21
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/15
    ジャーナル フリー
    水に可溶な1価のアルコールの水和について近赤外分光法を用いて調べた.注目した波数域は7000 cm−1付近に観測される水及びアルコールのO–H伸縮振動に起因するバンドだが,水素結合の影響を反映するため吸光度の増減はBeerの法則には従わない.そこで分子間相互作用の効果が顕な場合のスペクトル解釈のため,モル吸光係数の拡張概念である部分モル吸光係数を提案する.更にそこから非理想成分だけを表す過剰部分モル吸光係数を計算したところ,ブロードなバンドに隠れていた水素結合種を特定することに成功した.結果として,アルコール濃度25 mass% 以下では溶質の水和に伴い水の水素結合は強化されること,またそれ以上の濃度では水と溶質はそれぞれドメインに分離した状態に近いことが示唆された.
報文
  • 米澤 周平, 保倉 明子, 松田 賢士, 紀本 岳志, 中井 泉
    原稿種別: 報文
    2010 年59 巻1 号 p. 23-33
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/15
    ジャーナル フリー
    粉じん捕集機で捕集した大気浮遊粒子状物質(PM2.5)中の微量元素組成について,三次元偏光光学系蛍光X線分析装置による定量法の検討を行った.Gd管球を一次X線とし,Ti,Ge,Moを2次ターゲットとして用いることで,6時間捕集したフィルター(大気量6 m3)から,Al,Si,S,Cl,K,Ca,Mn,Fe,Cu,Zn,Pbの11元素が検出できた.また,各元素を定量するため,多元素混合溶液の液滴をポリカーボネートフィルターへ含浸させてフィルター試料を作成したところ,S,K,Ca,Cr,Mn,Fe,Cu,Zn,Pbの9元素について直線性のよい検量線(相関係数の二乗値R2=0.9491~0.9999)を得ることができた.またこの検量線は,フィルター上の大気粉じん標準物質(NIST SRM 2783)を用いて作成した検量線とほぼ一致した.S,Zn,Pbについては,検出限界が3.6,1.0,3.5 ng cm−2となり,非常に高感度な微量元素定量が可能となった.この手法を,大阪府大阪市鶴橋で2006~2007年の間に4回行われた大気エアロゾル成分連続測定法開発グループ(FECOA)の大気モニタリングへ応用し,6時間ごとに5日間にわたって採取されたPM2.5中の微量元素の定量を行った.その結果,捕集したPM2.5のS,K,Ca,Fe,Cu,Zn,Pb濃度(ng m−3)は日内で変動していることが初めて明らかとなった.特にPM2.5のS濃度と大気中SO2濃度には高い正の相関が認められ,西風が吹く時間帯にS濃度が上昇していた.このことから観測点の西方にSを含むPM2.5の発生源が存在する可能性が示唆された.
  • 井上 友昭
    原稿種別: 報文
    2010 年59 巻1 号 p. 35-41
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/15
    ジャーナル フリー
    アゾ色素へ誘導する亜硝酸イオンの比色分析において,スルファニル酸又はスルファニルアミドとN-(1-ナフチル)エチレンジアミンの混合割合の本分析への影響及び本分析で起きているジアゾ化とカップリング反応を速度論的に検討し,これらを基に本分析への影響について考察した.本分析に広く用いられているザルツマン試薬〔スルファニル酸とN-(1-ナフチル)エチレンジアミンのリン酸酸性溶液〕を用いるよりもこれらの成分試薬を段階的に順次に加える方法の方が感度は23% 向上し,また,スルファニル酸の代わりにスルファニルアミドを用いて段階的に加える方法では41% 向上する.一方,リン酸酸性下における反応速度はジアゾ化,カップリング反応共に二次反応であり,反応速度をR,速度定数をk,各モル濃度を[ ]で表すと,速度式は順にRk[スルファニル酸又はスルファニルアミド][亜硝酸イオン],Rk[ジアゾニウム塩][N-(1-ナフチル)エチレンジアミン]で表される.また,カップリング反応はジアゾ化よりも約10倍速い.
  • 板垣 俊子, 芦野 哲也, 高田 九二雄, 我妻 和明
    原稿種別: 報文
    2010 年59 巻1 号 p. 43-50
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/15
    ジャーナル フリー
    鉄鋼中の微量ヒ素,ビスマス,アンチモン及びスズをICP発光分光分析法により定量するための分離・濃縮法として,酸化マンガン(IV)(MnO2)共沈分離法を検討した.試料溶液中の分析元素をMn(II)とMn(VII)の酸化還元反応によって生成したMnO2沈殿に共沈させ,主成分の鉄から分離した.沈殿はろ過により捕集し,ろ紙と共に硝酸–硫酸で分解後白煙処理により硫酸溶液としICP-OESで分析した.共沈時の酸は,As,Sb,Snに対して0.93 M硝酸溶液が,Bi,Snに対して0.45 M硫酸溶液が最適であった.試料中のクロムはMnO2の生成及び分析元素の共沈を妨害するが,Mn(VII)の添加量を2倍に増やすことでCr 5~7.5mass% 共存まで妨害を抑えることができた.本法により標準試料を分析した結果,認証値とよく一致した.但し,鉄以外の共存元素が合わせて5mass% 程度含む試料に対して行った添加回収実験では,As以外の回収率が90% 前後とやや低めになった.本法の検出限界(3σ)は4元素すべて1 ppm以下で,本法が低合金鋼中の微量(ppmレベル)のAs,Bi,Sb,Snの定量に有効な分析方法であることが分かった.
  • 金 継業, 粂田 宏明, 高橋 史樹, 鈴木 保任
    原稿種別: 報文
    2010 年59 巻1 号 p. 51-56
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/15
    ジャーナル フリー
    水に超音波を照射すると,キャビテーションの作用によりヒドロキシルラジカル( · OH)や過酸化水素(H2O2)などの活性酸素種が生成され,それらが種々の化学作用をもたらす.本研究ではルミノールの電気化学発光反応(electrochemiluminescence ; ECL)を用いて超音波反応場の化学作用を評価する新しいアプローチを提案した.28,45,100,490 kHzの各周波数の超音波を水溶液に照射し,生成したH2O2をECLによって測定した結果,ECLの強度は照射時間に依存して増大し,超音波の周波数が高いほど超音波反応効率(SE値)が大きいことが分かった.超音波反応場で生成した · OHは一般的に反応性が高く,他のラジカル捕捉剤が存在しない場合,ラジカル同士が速やかに再結合し,最終的にはより安定なH2O2となり,ECLにより定量されていると考えられる.ECL法で測定したSE値は,従来のWeissler法(ヨウ化カリウムを用いる方法)の結果と良好な相関関係があり,本法の有用性が認められた.更に,光ファイバーを用いた三電極複合型のECLプローブを開発し,ロックイン検出の手法により490 kHz超音波反応場中における活性酸素種のin situ検出に成功し,キャビテーションの閾値や反応場におけるキャビテーションの空間分布に関する情報を測定できた.
アナリティカルレポート
  • 河村 浩孝, 佐藤 義雄, 木野 健一郎, 渡辺 義史, 相澤 大和, 松浦 正和, 橋田 浩二, 浜口 俊明, 山口 健二郎, 一丸 忠志 ...
    原稿種別: アナリティカルレポート
    2010 年59 巻1 号 p. 57-63
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/15
    ジャーナル フリー
    Boron isotope ratios were analyzed in seven domestic analytical labs for boric acid solutions with various compositions of boron isotope abundances, using an Inductively Coupled Plasma–Quadrupole Mass Spectrometer (ICP-QMS). Five sample solutions with different isotope abundances of 10B were prepared in the range of 10 to 20% by mixing two boric acid solutions containing natural B and enriched 11B, respectively. Then, the 10B isotope abundances of each sample were certified by analyzing with thermal ionization mass spectrometry (TI-MS) according to ASTM-C791-04. Results obtained from each lab have indicated good coincidences with TI-MS results. Also, the relative standard deviations of results with ICP-QMS of seven analytical labs were 0.11 to 0.81%. The measurement precision for ICP-QMS would be sufficient in terms of practical use, while taking into consideration a valid requirement required for verifying a depletion of the 10B isotope abundance in the PWR coolant, while this is greater than a nominal analytical error (relative value : 0.22%) for TI-MS shown in ASTM-C791-04.
  • 岸 慎太郎, 關岡 亮二, 袖山 真学, 志賀 正恩, 瀬戸 康雄
    原稿種別: アナリティカルレポート
    2010 年59 巻1 号 p. 65-76
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/15
    ジャーナル フリー
    The detection performance of a portable 241Am ionization aspiration-type ion mobility spectrometer (M90-D1-C, Environics Oy) was investigated with nerve gases, blister agents, blood agents, choking agents and related compounds. The vapors of nerve gases, sarin, soman, tabun, cyclohexylsarin were recognized as "NERVE" after about several seconds of sampling, and the limits of detection (LOD) were < 0.3 mg m−3. The vapors of blister agents, mustard gas and lewisite 1, and blood agents, hydrogen cyanide and cyanogen chloride were recognized as "BLISTER" with an LOD of < 2.4 mg m−3 and > 415 mg m−3, respectively. The vapor of chlorine was recognized as "BLOOD" with an LOD of 820 mg m−3. The vapors of nitrogen mustard 3 and chlorpicrin were recognized as different alarm classes, depending on their concentrations. The vapors of nitrogen mustard 1, 2 and phosgene did not show any alarm. As for interference, the vapors of nerve gas simulants, dimethylmethylphosphonate, trimethylphosphate, triethylphosphate, diisopropylfluorophosphate, blister agent simulants, 2-chloroethylethylsulfide, 1,4-thioxane, 2-mercaptoethanol, and 20 organic solvents within 38 solvents examined were recognized false-positively. The patterns of detection sensor channel response values of 6 ion mobility cells and semiconductor cell were compared with the situation of the alarm against chemical-warfare agents.
feedback
Top