酸および塩類の水溶液の濃度はサーミスターを用いて,イオン交換熱を検出する方法で決定できる.陰イオン交換樹脂は内径8mm,長さ5cmの検出カラム中に充てんしサーミスターをそう入したのち,30℃に保った恒温そう中に入れた.展開液は注入する試料と同種類の陰イオンをもつ酸または塩類水溶液を用いた.
注入する試料溶液の濃度が展開液の濃度と異なるときは,サーモグラムに発熱および吸熱による変化が現われた.このときのピーク高さは,試料の注入量が一定ならば試料溶液の濃度に依存し,ピーク高さより未知濃度溶液の濃度の決定ができた.
陽イオン交換樹脂を用いて,イオン交換熱を検出する前報の結果と比較すると,陰イオン交換樹脂を用いる本報の場合はより高感度であって,酸および塩類水溶液の濃度決定に利用できる.
(1)陰イオン交換樹脂を,サーミスターをそう入した検出カラム中に充てんし,酸および塩類水溶液を展開液として使用し,展開液と濃度の異なる試料溶液をカラム中に注入したときのサーモグラムを明らかにした.
(2)展開液と同種の試料水溶液を用いるとサーモグ
ラムは試料溶液の濃度差による温度変化を示し,そのときのH(ピーク高さ)は試料溶液の濃度と直線関係(検量線)があった.
(3)試料溶液の注入量を一定とすれば,H(ピーク高さ)より濃度決定ができる.(4)使用する樹脂は一般に粒度の細かいほうがよい.
(5)陽イオン交換樹脂を使用するよりも,陰イオン交換樹脂を用いて,酸,塩類水溶液の濃度決定を行なったほうがよい.検出感度は陰イオン検出法で16.5倍程度向上する.
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