鑑識化学は,別名,裁判化学または司法化学ともいわれるように,司法裁判に関係ある事件の解決に応用される化学であるため,きわめて広範囲な物質を対象とする応用化学の一分野である.したがって,その分析内容は,しばしば薬品分析,農薬分析,各種機器分析,その他の各種分析などと関連するので,用に臨んで,それらの総説,報告なども併行して参照していただきたい. 今回は1961年までを記載した前回の総説に続いて 1962~1965年の間に報告された鑑識化学分析関係の文献を集録整理した.鑑識化学分析および法医学的な物体検査法を総合的に集めた定期刊行書として"Methods of Forensic Science"(以下M.F.S.と略記)が1962年より毎年発行されている.これには薬毒物を含む各種物質の化学分析法以外に薄層クロマトグラフィー(TLC),ガスクロマトグラフィー(GC), 赤外線吸収スペクトル (IR),放射化分析(AA)などの方法の鑑識化学分析への応用が述べられている.これらのうちAA, などは鑑識化学分析に最近特に取り上げられつつある.各種有機物質の分析,鑑定が税関検査の立場から述べられた解説がある.
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