ポリ塩化ビフェニル(PCB)迅速分析に有効なクリーンアップ剤であるポリビニルアルコール(PVA)ゲル上でのPCBと絶縁油の分離メカニズムの解明を試みた.アセトン移動相における,脂肪族炭化水素,アルキルベンゼン,多環芳香族炭化水素,及びこれらの各塩素化物の溶出位置を確認した.これより,絶縁油はサイズ排除作用,PCBはサイズ排除作用と分配作用が働いており,検討した化合物の溶出位置と,有機概念図の指標として用いられる無機性/有機性との間に良好な比例関係が確認された.これらの関係から,PVAゲル上では無機性/有機性が大きなPCBでは分配作用が強く働くため,絶縁油との分離が達成されることが分かった.この分離メカニズムは,van't Hoffプロットから求めた熱力学量(Δ
H)から説明することができ,PVAゲル上の分離特性は,無機性/有機性及び熱力学量を用いて評価することが可能となった.
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