著者らは,
13C核磁気共鳴スペクトルの解析に有用な図表の作成を試みてきたが,ここでは芳香族,複素芳香族化合物のサブチャートについて述べる.ただしベンゼンはジ置換までとし,縮合多環式芳香族,および含窒素化合物に関しては,基本骨格の化学シフトのみを記載した.
モノ置換ベンゼンでは,すべての環炭素の化学シフトを記載し,ジ置換ベンゼンについては,置換基の結合した環炭素の化学シフトを,他の置換基と関係づけて配列した.モノ置換ベンゼンの場合,置換基の結合した環炭素の化学シフトを高磁場から低磁場側になるよう配列すると,オルト炭素は逆に高磁場シフトし,メタ,パラ炭素ではそのシフトの割合は小さい.特に前者の場合は置換基の種類に関係なくほとんど同じ位置にある.ジ置換ベンゼンとモノ置換ベンゼンの置換基の結合した環炭素の化学シフトは,環炭素に直接結合した原子の種類が,炭素,窒素および酸素原子の順に従って低磁場シフトするという共通の傾向がある.ジ置換ベンゼンの場合は化学シフトの範囲が広くなる.
これらの図表,さらには既報に記載の図表を利用すれば,ベンゼン系化合物の環炭素の化学シフトの範囲の予測ができ,また置換基の種類までも推測が可能となった.その解析例も示した.
非置換芳香族,非置換複素芳香族化合物の環炭素の化学シフトの図表化も行なった.
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