分析化学
Print ISSN : 0525-1931
39 巻, 1 号
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  • 伊藤 裕康, 安原 昭夫, 森田 昌敏, 溝口 次夫, 権田 金治
    1990 年 39 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    多成分のハロゲン化ベンゼン類を同時定量するために,GC/MS分析計を用いたマスクロマトグラフィーでの定量性を検討した.2-フルオロビフェニルの分子イオンM+(m/z172)の単位モル当たりのイオン電流を基準として,多くのハロゲン化ベンゼン類の特徴的な質量スペクトルピークにおけるイオン電流のモル相対強度を求めた.これらのモル相対強度は化合物の性質や質量スペクトルにおけるフラグメンテーションなどによって影響されるが,置換基の数が多いほど値が小さくなる傾向が見られた.ヨウ素などの原子半径の大きな置換基が付いていると,電子によるイオン化の際のイオン化断面積が増大するため,モル相対強度は大きくなる.精度はかなりのばらつきが見られたが,定量性については十分実用に耐えるものであった.
  • 坂本 政臣, 小浦 由紀夫, 畑中 憲児, 石森 富太郎
    1990 年 39 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    カリウム,ルビジウム及びセシウムを含む混合溶液から,これら三者を分離することなく同時定量することを検討した.すなわち,テトラフェニルホウ酸ナトリウム(Na[TPB])及びテトラ(p-フルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム(Na[F4TPB])を沈殿剤に用いて,M[TPB](M=K,Rb,Cs)及びM[F4TPB](M=Rb,Cs)として沈殿させ,それぞれの沈殿の648℃及び380℃での熱分解生成物の初期重量に対する重量パーセント(空気気流中,昇温速度:5.6℃min-1)と沈殿の総重量とから三者の定量を行った.その結果,溶液50cm3中に存在する各アルカリ金属が5mg以上のとき,10%以内の誤差で定量可能であった.
  • 田中 茂, 安江 憲介, 橋本 芳一
    1990 年 39 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    イオン排除クロマトグラフィーを用いて雨水中のギ酸,酢酸,プロピオン酸,イソ酪酸,酪酸を定量する方法について検討した.溶離液及び除去液の組み合わせの異なる4種類の方法について分析感度,検出限界及び分析精度を比較した結果,溶離液に0.05mM硫酸を用い,2.5mM硫酸ナトリウムを除去液とし,電気伝導度検出器を用いる方法が最適であった.本法による各低級カルボン酸の検出限界は,ギ酸0.002μg/ml,酢酸0.001μg/ml,プロピオン酸0.004μg/ml,イソ酪酸0.008μg/ml,酪酸0.007μg/mlであった.本法を用いて1988年6月より11月までの期間,横浜市日吉において雨水中の各低級カルボン酸濃度を測定し,ギ酸0.07~1.98μg/ml,酢酸0.03~0.85μg/ml,プロピオン酸0.02~0.15μg/ml,イソ酪酸0.06~0.44μg/ml,酪酸0.06~0.16μg/mlの結果を得た.
  • 山口 仁志, 小林 剛, 山田 圭, 大河内 春乃
    1990 年 39 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    超LSI材料として用いられる二ケイ化モリブデン中の不純物であるナトリウム,カリウムなどの極微量定量法を確立した.試料をテフロンビーカーに取り,フッ化水素酸及び硝酸で加熱分解後,硫酸を加え白煙が生ずるまで加熱しケイ素を揮散させる.更に,不純物元素を陽イオン交換樹脂に吸着させマトリックスより除去する.次に,硝酸を用いて不純物を溶出させる.これより一定量を分取して,黒鉛炉AAS及びICP-AESにより定量を行う.本法は二ケイ化モリブデン中の19元素(Ca, Mg, TiはICP-AES)を0.0nppmから0.0n%まで精度よく定量できる.高純度モリブデンの分析にも適用可能である.
  • 米沢 仲四郎, 星 三千男
    1990 年 39 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    機器中性子放射化分析(INAA)で,長時間照射の試料容器材として使用する石英管のから試験値に関する検討を行った.から試験値の要因である,1)石英管中の不純物,2)照射前及び照射中の汚染に関してINAAにより調べた.石英管中の不純物の分布を測定し,洗浄及びエッチング法の検討を行うと共に,製造方法の異なる各種石英管中の不純物の定量により,INAA用として最適の石英管を選定した.照射カプセル材及び包装材のAl中の不純物Uの核分裂生成物の汚染及び石英ガラス細工による加工の際のガスバーナーからの汚染についても調べ,その防止策を検討した.確立した方法によるNBS生体標準試料,Bovine Liver及びOrchard Leaves各々0.1gの分析における各種元素のから試験値は,標準試料中の存在量に比べ,Crを除き1%以下であった.Crは石英管中の含量のばらつきが他の元素に比べ大きく,Bovine Liver 0.1gの分析におけるから試験値の最大値は,1.8%であった.
  • 志智 雄之, 井上 靖秀, 有田 雅晴, 国谷 譲治, 芦田 正
    1990 年 39 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    ナイロン66の熱劣化挙動を解析するためX線光電子分光法を主体に各種分析法を用いて分析した.試料は充てん剤や添加剤などを含まないナイロン66を用い80~150℃の間の温度下で熱劣化された試料の表面及び深さ方向分析を行った.その結果,以下の知見が得られた.(1)ナイロン66の熱劣化反応としては,カルボニル基を生成し,結晶化の割合を増加させる反応が起こっており,この傾向は最表面層ほど顕著である.更に,120℃での熱劣化においては,最表面層ではカルボキシル基を生成する反応も同時に起こっていることが確認できた.(2)ナイロン66の熱劣化反応は100~120℃を境に多少異なり,120℃以上ではカルボキシル基の生成を伴う反応が起こっていると推定された.
  • 濱口 聖美, 花井 俊彦, 久保 博昭, 木下 俊夫
    1990 年 39 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    イソニアジド及びアシルイソニアド誘導体(アセチルイソニアジド,プロピオニルイソニアジド,イソブチリルイソニアジド,ブチリルイソニアジド,ベンゾイルイソニアジド)の逆相イオン対LCによる最適分離条件を検討した.イソニアジド,アセチルイソニアジド及びプロピオニルイソニアジドの分離には,対イオン試薬としての脂肪族スルホン酸のうちドデカンスルホン酸が最適であった.イソニアジド及びアシルイソニアジド誘導体は,脂肪族スルホン酸とイオン対を形成することにより,固定相のオクタデシル基に保持されると考えられるが,アシルイソニアジド誘導体のアシル基も保持に影響を与えていることが分かった.イソニアジド及びアシルイソニアジド誘導体の保持比及び分配係数を求めて,Rekkerによる疎水性基定数と比較すると良好な直線関係を示した.
  • 磯崎 昭徳, 佐々木 肇, 古河 麻子, 内海 喩
    1990 年 39 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    ファーネスAASで,ケイ酸塩岩石中の微量の銅を簡易に定量するため,試料を水-グリセリン系溶媒に分散させ,一定微量を黒鉛炉に導入し加熱する方法を検討した.岩石試料(粒径10μm以下)の1mg~10mgを,銅として1.0μg以下含むように精ひょうし,ポリスチレン製沈殿管にとる.10%グリセリン溶液5.0mlを加え,超音波発生器に約1分間入れて試料を分散させる.岩石試料が均一に分散した状態で,この10μlを黒鉛炉に導入し,銅の原子吸収のピーク面積を測定する.一例として,岩石標準試料JB-1(アルカリ玄武岩,銅推薦値56ppm)に対し,7回の連続分析から平均値は56ppm,相対標準偏差は2.7%であった.
  • 原田 芳文, 倉田 奈津子, 古野 義一
    1990 年 39 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    ICP-AESによって窒化ケイ素粉末中の微量不純物を迅速定量するため,試料分解法とマトリックスからの不純物の分離,濃縮法の検討を行った.試料は硝酸ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合融剤を用いて白金るつぼ中で融解した.酸化性融剤で融解することによって,窒化ケイ素中のFeなどの不純物が白金るつぼと合金を形成するのを防止することができ,再現性の良い分析値を得ることができた.目的の不純物(12元素)は水酸化ランタンを用いて融剤及びケイ酸から共沈分離し,沈殿を塩酸に溶解した後,ICP-AESで定量した.本法によると,AlとCrはやや低値を示す傾向があるが,Ca,Fe,Mgなどの窒化ケイ素中の主要な不純物を迅速に同時定量できる.更に高純度窒化ケイ素中の不純物の定量に応用し,良好な結果を得た.
  • 鈴木 章悟, 桂木 夏子, 平井 昭司
    1990 年 39 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    機器中性子放射化分析(INAA)により,地質調査所(GSJ)において作製されたたい積岩試料のJLk-1(湖底たい積物),JLs-1(石灰岩),JDo-1(ドロマイト)と火成岩試料のJP-1(ダナイト)の4種類の標準岩石試料中の微量元素を多元素同時定量する方法を検討した.照射は通常のフィルターなし照射とカドミウムフィルター照射の2種類の方法で武蔵工大炉(MITRR)で行った.測定はGe検出器によるγ線スペクトロメトリーの外にGe検出器とNaI(Tl)検出器とを組み合わせた反同時測定によるγ線スペクトロメトリー及びGe検出器とエネルギー範囲を限定したNal(Tl)検出器との同時測定によるγ線スペクトロメトリーも用いた.52元素の定量を試みてJLk-1で44元素,JLs-1で32元素,JDo-1で35元素及びJP-1で24元素が定量できた.
  • 菊田 芳和, 阪本 博
    1990 年 39 巻 1 号 p. T1-T4
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    酸化銅触媒中の金属銅,酸化銅(I),酸化銅(II)の分別定量法について検討した.XRD法を用いて,酸化銅(I)と酸化銅(II)との割合を求め,更に塩酸に対する可溶成分と不可溶成分とから金属銅と酸化銅との割合を求め,両者から3成分の割合を得た.これにより求めた値は,従来の湿式化学分析だけによる方法では得られなかった合理的な値を示した.
  • 江藤 元則
    1990 年 39 巻 1 号 p. T5-T9
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    黒鉛炉AASによる鉱石中の金,銀,白金,パラジウム及びロジウムの分析について検討した.試料をテフロン密閉容器中180℃で5時間加熱して分解した後,テルル共沈法により貴金属を共存元素から分離し,更に陽イオン交換分離法を用いて完全に分離した.又,銀についてはテルル共沈法で完全には捕集できないため,陽イオン交換分離法のみを用いて共存元素から分離した.この分離後の溶液を黒鉛炉原子吸光光度計に導入し,目的元素を定量したところ,分析結果は保証値とよく一致し,分析精度は相対標準偏差で3~5%であった.
  • 佐竹 弘, 池田 早苗
    1990 年 39 巻 1 号 p. T11-T16
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2010/05/07
    ジャーナル フリー
    市販の速硬化エポキシ樹脂接着剤を感応膜としたチオシアン酸イオン選択性電極を開発した.銀線に速硬化エポキシ樹脂接着剤(エポキシ樹脂と硬化剤を1:1で混合したもの)を塗布した被覆線電極,銀線にポリ塩化ビニル系接着判とヨウ化銀(又は0.5%ヨウ化カリウムを含むヨウ化銀)粉末を練り合わせて被覆し,速硬化エポキシ樹脂接着剤を被覆した電極を試作した.これらの電極はチオシアン酸イオン濃度が10-4~10-1M(1M=1 mol dm-3)の範囲でネルンスト応答を示した.10-3~10-1Mのチオシアン酸イオン濃度ではpH4~10の影響はほとんど認められなかった.陰イオンに対する選択係数は試作した3電極ともに0.5以下であった.銀/ヨウ化銀/速硬化エポキシ樹脂接着剤被覆線電極の選択係数はCl-≒ClO4->I->NO3-≒S2-≒Br-≒CN-≒ClO3->CH3COO-≒CO32-≒BF4-≒Fe(CN)64-≒S2O32-≒CrO42-≒C2O42-≒SO42-の順であった.本電極は市販の材料で簡単に作製でき,長期間使用できる利点があり,通常の固体膜電極よりも硫化物イオン,シアン化物イオン及びチオ硫酸イオンなどの影響が少ないという特徴がある.
  • 中村 靖, 福田 隆之
    1990 年 39 巻 1 号 p. T17-T21
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    高純度銅中の極微量のヒ素,アンチモン,ビスマス,スズ及び鉛を定量するために,ICP-MSの検討を行った.定量感度を向上させるため,共沈分離法による前処理を行った.すなわち,試料を硝酸に溶解し,ランタン及びアンモニア水を加えてランタンの水酸化物を生成させて目的元素を分離した後,沈殿を濾過し硝酸で溶解して,ICP-MS装置で測定した.その結果,高純度銅中の上記元素を同一操作で10ppb程度あるいはそれ以下まで定量することができた.
  • 川田 邦明, 白井 文雄
    1990 年 39 巻 1 号 p. T23-T28
    発行日: 1990/01/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    染色工場,化学工場及び金属製品工場の排水中のトリクロロエチレン,テトラクロロエチレン及び1,1,1-トリクロロエタンの定量に関する共同実験を行った.参加機関数は12機関,試料数は3で,JIS K 0125の溶媒抽出/GC(12機関)とヘッドスペースGC(11機関)で各々5回ずつ平行測定を実施し,その分析結果について,異常値を棄却して解析したところ,以下のことが分かった.分析精度には機関内よりも機関間の変動の寄与が大きく,機関間で分析精度に差が認められた.又,試料中の共存物質の影響は特に見られなかった.そして,溶媒抽出/GCの精度がヘッドスペースGCの精度を上回った.更に,両分析方法による分析結果の平均値には差が認められなかったが,機関によっては両分析方法による分析結果がかなり異なっていた.又,系統的な誤差要因の存在が考えられた機関があった.
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