分析化学
Print ISSN : 0525-1931
53 巻, 4 号
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分析化学総説
  • 吉田 善行, 木原 壯林, 藤永 太一郎
    2004 年 53 巻 4 号 p. 195-205
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    カラム電極に試料溶液を流しながら電解すると,溶液中の目的成分はカラム内に滞在する短時間内に迅速かつ定量的に電解され尽くす.また,溶液が電極表面近傍に滞在する間に繰り返し電解されるので,遅い電極反応であっても定量的な電解が達成できる.更にカラム電極を用いる電解法は,自動化や遠隔化に適している.カラム電極電解法はこのような特長のために,流液試料中の目的成分のクーロメトリー定量法として,あるいはクロマトグラフィーの検出器として,更に不安定化学種を含むような複雑な反応機構の解析手段として,幅広く活用され進歩し続けている.本稿では,カラム電極電解法による電解クロマトグラフィー及び電量-電位測定法の基礎的性能を述べるとともに,フローインジェクション分析への利用や,アクチノイドイオンや生体関連物質の酸化還元反応などの解析法としての応用に関する最近の成果を例示し,他法が及ばない優れた特徴を総説する.
総合論文
  • 戸田 敬
    2004 年 53 巻 4 号 p. 207-219
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    フロー分析に応用するデバイスのミニチュア化を試みてきた.小型化は電気化学反応や固定化酵素反応のような表面反応に極めて有利であり,反応捕そく率が100% のリングディスク電極やインキュベーションの不要な酵素反応リアクターの開発につながった.生体試料をマイクロリッター単位で直接フロー系に採取するニードル型のサンプラー/リアクターも開発し,貴重な生体試料への応用が期待される.また,小型化によって熱容量が小さくなるので,反応熱を利用した分析にも有利である.更にガス分析においては,大気成分の捕集器を小型化すると吸収溶液の比表面積を向上した有効な捕集濃縮が可能となり,かつフローインジェクション分析と相性の良い拡散スクラバーとなる.この結果,高感度かつ半連続的な大気成分測定が可能になった.フローインジェクション分析に加えストップトフロー法による新たな大気成分測定デバイスについても報告する.
  • 受田 浩之
    2004 年 53 巻 4 号 p. 221-231
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    生体内で生じる活性酸素種や種々のフリーラジカルが,生活習慣病や老化の成因であることが最近の多くの研究で明らかにされた.そこで,老化や生活習慣病の予防の観点から,それらの高い反応性を有する化学種を消去,又は捕そくする活性,いわゆる抗酸化能を有する薬剤の開発や食品成分の検索が活発に研究されている.本論文では,従来の抗酸化活性評価法に代わる簡易・迅速分析法として著者らが開発した新しいフローインジェクション分析システム,すなわち(1)吸光光度法,並びに化学発光法に基づく酵素スーパーオキシドジスムターゼ活性,及びスーパーオキシドアニオン消去活性測定システム,(2)過酸化水素を分解する酵素カタラーゼの活性評価システム,(3)電子スピン共鳴を検出端に用いた1,1-diphenyl-2-picrylhydrazylラジカル消去活性評価システム,及び(4)吸光光度法による2,2'-azino-bis(3-benzthiazoline-6-sulfonic acid)ラジカル消去活性測定システムについて紹介し,その応用例についても触れる.
  • 大野 典子, 酒井 忠雄
    2004 年 53 巻 4 号 p. 233-244
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    二塩基酸色素とキニーネ又はキニジンとの共抽出,テトラブロモフェノールフタレインエチルエステルやマラカイトグリーンとの会合体抽出を利用して,第四級アンモニウム塩や界面活性剤を定量するための溶媒抽出/フローインジェクション分析システムを検討した.抽出試薬を含む有機溶媒を用い強塩基性下かつ低濃度試薬で抽出することにより第四級アンモニウム塩に対する選択性が向上した.アミン類からの妨害を抑制する目的で温度制御が可能なフローセルを開発した.また有機層を高回収するための相分離器を数種作製し,その機能の高揚を図った.それらの中で優れた相分離機能を有する相分離器を用いて医薬品,環境汚染物質の分析に応用し,高感度で選択的かつ迅速なフローシステムの構築を行った.
  • 善木 道雄
    2004 年 53 巻 4 号 p. 245-254
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    一流路系のフローシステムを構築して,フローセルを通過した試薬溶液を廃棄することなく,繰り返し試薬溶液として利用する,サイクリックフローインジェクション法について述べた.試薬溶液中において,主反応に対して逆向きに作用する阻害剤(inhibitor)の共存下で検出・定量を行うという,新しいコンセプトを導入して,試薬溶液の繰り返し利用を可能にした.また,イオン交換,あるいはキレート樹脂を充填したカラムを系内に導入して,試料と反応後の試薬再生にも成功した.
    緩衝液の緩衝能を利用した強酸・強塩基の定量,塩化銀沈殿がアンモニア溶液に溶解することを利用した塩化物イオンの定量,エチレンジアミン四酢酸存在下4-(2-ピリジルアゾ)レゾルシノールによる銅(II)イオンの定量,多量の酸化剤存在下,鉄-フェナントロリン錯体の酸化・還元系を利用したアスコルビン酸の定量,イオン交換,キレート樹脂カラムを組み込んだカルシウム,銅(II)イオンの定量について述べた.
    サイクリックフローインジェクション法は,試薬溶液量を最小限に調製できるので,ゼロエミッションの理念に沿った分析法となる.また,単純化されたシステムにより,再現性,精度,耐久性に極めて優れた分析法で,品質・工程管理におけるモニタリングやルーチン分析に適している.
  • 中野 惠文, 手嶋 紀雄, 栗原 誠, 河嶌 拓治
    2004 年 53 巻 4 号 p. 255-269
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    酸化還元反応を指示反応とする極微量元素の接触分析法をフローインジェクション(FI)法に適応し,高感度な分析法を開発した.接触分析法で取り上げた指示反応は,(1)過酸化水素存在下での3-メチル-2-ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと新トリンダー試薬,p-アニシジンとN,N-ジメチルアニリン(DMA)及び4-アミノアンチピリンとDMAの酸化カップリング反応,(2)3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン,N-(3-スルホプロピル)-3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン,N,N'-ビス(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-トリジン及び2,2'-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)の過酸化水素,臭素酸塩あるいは過ヨウ素酸塩による酸化反応,(3)ルミノール,ルシゲニン,ピロガロール及びプルプロガリンの化学発光(CL)反応などである.接触反応の速度を著しく増大させる,つまり活性化効果を示す配位子あるいは界面活性剤の使用により,分析感度を飛躍的に増大させ,10-10~10-8 MのCu(II),Cr(III),Co(II),Fe(III),V(V) などの迅速定量が可能であった.また,活性化剤及び阻害剤の使用によりFI/標準削減法,複数元素の分析法,CL反応に基づく鉄及びバナジウムの酸化状態別分析法についても紹介する.
報文
  • 高橋 浩司, 小谷 明, 大槻 さなえ, 楠 文代
    2004 年 53 巻 4 号 p. 271-274
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    食品pH調整剤の酸度測定のために,キノンの電解還元を利用した電気化学検出フローインジェクション分析法(FIA-ECD)を構築した.電気化学検出の基本を知るためにリニアスイープボルタンメトリーを行った.微量の酸を含むビタミンK3(VK3)の非緩衝溶液のボルタモグラムには,-0.1 V vs. SCE付近にVK3の還元前置波が現れ,そのピーク電流値は酸の当量濃度に比例した.食品pH調整剤の測定例として,乳酸,リン酸,グルコン酸を含む食品pH調整剤のDP-7L(タイショーテクノス製)を使用した.FIA-ECDにおける-0.24 V vs. SCEにおけるフローシグナル強度は,DP-7L濃度0.0012~0.010% の範囲で良い直線関係(r=0.997)を示し,連続測定の相対標準偏差は3.8%(0.0075%•DP-7L,n=5)であった.FIA-ECDのフローシグナル強度と中和滴定におけるNaOH標準溶液の消費量は良い相関性を示した.これよりFIA-ECDによってDP-7Lの酸度測定が可能であることが分かった.本法は,酸度の自動計測ができるので,例えばゆでめんの冷却槽の酸度を一定に維持するためのシステム作製に極めて有用と考えられる.
  • 加藤 優美, 石井 有為, 藤岡 慎司, 石井 幹太, 山田 正昭
    2004 年 53 巻 4 号 p. 275-283
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    福祉支援分析技術開発の一環として,硫黄測定のための溶液化学発光検出/フローインジェクション分析システムを開発した.亜硫酸塩の溶存酸素酸化化学発光反応を用い,増感剤色素ローダミンB及び非イオン性界面活性剤Tween 80による増感効果を活用した.亜硫酸水素ナトリウム試料水溶液の20 μl注入法による本分析システムの検出下限及び定量範囲は,それぞれ2.0×10-6 M及び2.0×10-6~1.5×10-5 Mであった.1.4×10-5 M 亜硫酸水素ナトリウム試料水溶液の20 μl注入法による10回の繰り返し測定の精度は,相対標準偏差で2% であった.分析所用時間は1試料当たり約10秒で迅速であった.本分析システムの選択性は良いが,過マンガン酸カリウムのように,増感剤色素ローダミンBと直接化学発光反応する強酸化性化合物や試料中に酸性化合物が大量に共存する場合には干渉に注意が必要である.本分析システムは最も簡素な一流路から成り,操作が簡便で経済的である.また,溶存酸素酸化化学発光を活用しているため,使用する化学試薬も安全な増感剤2種で,使用量及び使用数において最小限にとどめられているので,安全性や利便性,環境負荷への低減にも配慮されている.
  • 上地 将人, 藤原 照文, 岡本 泰明
    2004 年 53 巻 4 号 p. 285-290
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    農薬として使用されているオキシン銅の選択的な定量法として,水溶液試料をオンラインで抽出後,ルミノールを分散させた逆ミセル溶液と混合させ,その際生じる強い化学発光を検出する方法を開発した.発光試薬を含む逆ミセル溶液は,ルミノールを含む少量の塩基性水溶液をクロロホルム-シクロヘキサン混合溶媒に界面活性剤を用いて分散させることによって調製した.フローシステムを用いて,目的成分であるビス(8-ヒドロキシキノリン)銅(II)錯体{Cu(oxine)2}を,pH 6.0に調節した試料水溶液からクロロホルムにオンライン抽出し,膜セパレーターを使用して相分離する.この抽出液を化学発光検出器中のフローセル内で,ルミノールの逆ミセル溶液と混合する.このとき,Cu(oxine)2はミセル界面で直ちに解離して銅(II)イオンを生じると推測され,これがルミノールの酸化反応を触媒して強い化学発光を生じる.本法によるオキシン銅の検出限界は5.5 μg dm-3で,検量線は少なくとも1.1 mg dm-3までは良好な直線性を示した.種々の共存成分について干渉の影響についても検討した.
  • 田中 美穂, 渡辺 靖之, 大野 慎介, 田丸 貴臣, 手嶋 紀雄, 酒井 忠雄
    2004 年 53 巻 4 号 p. 291-296
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    コバルト(II)による鉄(III)の還元反応は,2-(5-ニトロ-2-ピリジルアゾ)-5-(N-プロピル-N-スルホプロピルアミノ)フェノール(nitro-PAPS)の共存下,pH 3.5の条件で進行する.この反応の生成物である鉄(II)-nitro-PAPSキレートは,790 nmに鉄(II)キレート特有の吸収極大を有する.したがって,この錯体の吸光度を測定することにより,コバルト(II)の吸光光度定量が可能である.この酸化還元反応を2流路のフローシステムに導入したところ,コバルト(II)2.5×10-7~1.0×10-5 Mの範囲で直線性の良い検量線が得られた.コバルト(II)の検出限界(S/N=3)は1.0×10-7 Mであり,2.5×10-6 Mのコバルト(II)を10回繰り返して測定した際の相対標準偏差は0.3% であった.1時間当たり約70検体のサンプル処理が可能である.本法は,コバルト合金(NIST SMR 862; High Temperature Alloy L 605)及びリョウブ(NIES標準試料No. 1)中のコバルトの定量に応用され,良好な結果が得られた.更に本法により市販医薬品中のコバルトを定量し,間接的にビタミンB12を測定することができた.
  • 山根 兵, 土本 武文, 吉川 裕泰
    2004 年 53 巻 4 号 p. 297-302
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    フローインジェクション分析(FIA)法による河川水や土壌などの環境試料中のサブppmからppbレベルの鉛及びカドミウムの迅速,簡便な同時定量法を提案した.共存イオンからの鉛とカドミウムの分離,及びこれらの相互分離と濃縮のためにリンゴ酸塩を溶離液とする陽イオン交換分離を導入し,5,10,15,20-tetrakis(N-methyl-pyridynium-4yl)-21H,23H-porphine,tetrakis(p-toluenesulfonate)(TMPyP)を用いた吸光度検出と連続流れシステムでインライン直結した.鉛及びカドミウムとTMPyPの錯体生成反応,及び分散などの流れに関係する諸因子について詳細な検討を行い,最適条件とマニフォールドを設定し,試薬の節約と廃液量を最小限に抑えるためにセミミクロサイズのシステムを構築した.検量線は2.5 m(内径0.5 mm)のサンプルループを用いた場合,鉛及びカドミウム共に0~0.1 mg/lの範囲で直線となった.0.03 mg/lの鉛及びカドミウムを繰り返し分析した変動係数(n=5)はそれぞれ0.6% 及び1.2% であり,定量下限はそれぞれ0.001 mg/l及び0.002 mg/lであった.分析時間は約10分である.種々の土壌からの溶出液から調製した土壌合成試料及び日本分析化学会の河川水標準試料(JAC 0032)の本FIA法による分析結果は誘導結合プラズマ原子発光分析法による結果,又は認証値とよく一致した.
  • 高田 一矢, 内田 哲男, 仲井 洋介
    2004 年 53 巻 4 号 p. 303-308
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    粉末試料25.0 mgを塩酸0.5 mlとフッ化水素酸0.2 mlで室温分解した後,4 w/w% ホウ酸2.4 mlを加え全量25.0 gの試料溶液とする.この溶液からケイ素はモリブデン酸アンモニウム,アルミニウムはスチルバゾ,鉄は1,10-フェナントロリンを発色試薬に用い,共通の2流路フローインジェクション分析システムにより順次定量した.またナトリウムとカリウムは各々のイオン選択性電極を並列接続し定量した.酸化鉄(II)のみは25.0 mgの別試料をバナジウム(V)共存下で過塩素酸0.6 mlとフッ化水素酸0.2 mlで分解後,同様に25.0 gの試料溶液とし,定量には3流路システムを用いた.本法は多数試料の並列処理が容易であり,酸性岩から超塩基性岩にわたる代表的な標準岩石試料の各成分の分析値は認証値とよく一致した.
  • 坪井 知則, 平野 義男, 木下 一次, 大島 光子, 本水 昌二
    2004 年 53 巻 4 号 p. 309-314
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    化学的酸素要求量(COD)の迅速定量についてフローインジェクション/吸光光度定量の検討を行った.過マンガン酸カリウムを酸化剤として用い,この酸化反応の反応時間を促進させ,短縮するため触媒を用いる方法について検討した.その結果,白金チューブを反応コイルとして用いることにより,酸化反応が促進され測定時間を大幅に短縮できることが分かった.白金チューブ反応コイルのフローインジェクション分析(FIA)法への適用について詳細な検討を行った結果,D-グルコースを標準物質としたとき,検量線は0~100 ppmの範囲で良好な直線性を示した.S/N=3に相当する検出限界は0.01 ppmであり,5,10,20,50,100 ppmのD-グルコースに対する相対標準偏差は,それぞれ0.9,0.8,0.8,0.5,1.4% であった.本FIA法は,排水のCOD迅速定量に適用可能であり,またCODモニターとして利用できる.
  • たか村 喜代子, 中道 典宏, 松原 チヨ
    2004 年 53 巻 4 号 p. 315-321
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    著者らは,既に過酸化水素の高感度吸光分析試薬としてTi-TPyP試薬[oxo{5,10,15,20-tetra(4-pyridyl)porphyrinato}titanium(IV) 錯体の強酸性水溶液]を開発した.本試薬は過酸化水素と反応してペルオキソ錯体(モル吸光係数: 1.1×105 M-1 cm-1,450 nm)を生成する.本試薬を検出試薬としてフローインジェクション分析(FIA)系に組み込んだところ,過酸化水素の定量範囲は1×10-8~1×10-5 M(1.0~1000 pmol/test),検出限界は0.5 pmol/test(S/N=3)であった.そこで本報では,生体成分分析におけるこの方法の有効性を確かめるために,FIA系に固定化酸化酵素カラムを設置して,ヒト血清中含有量がそれぞれ異なるグルコース,尿酸及びガラクトースの定量を試みた.グルコース及び尿酸は,それぞれ血清量0.05及び0.5 μlで正常域,異常域試料共に定量可能であり,分析試料の少量化に成功した.また,これらに比して血清中含有量が極めて低いガラクトースも,20 μlの血清量で9 μg/dl(0.5 μM)まで定量することができ,生化学分析における本法の実用性が示唆された.
  • 山田 洋平, 小粥 雅代, 樋口 慶郎, 手嶋 紀雄, 酒井 忠雄
    2004 年 53 巻 4 号 p. 323-329
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    陰イオン会合性試薬のテトラブロモフェノールフタレインエチルエステル(TBPE)は除草剤系農薬で人に対する毒性が極めて高いジクワット(DQ)やパラコート(PQ)と反応して青色のイオン会合体を生成し,1,2-ジクロロエタン(DCE)に抽出される.この反応系は溶媒抽出/吸光光度/フローインジェクション分析への導入が可能であることから,DQ及びPQの迅速・簡便な分析法を開発した.DCE中の青色イオン会合体は,硫酸で水相のpHを3以下に調節・混合するとDCE中で黄色の安定なTBPE•Hが生成する.その反応に伴いDQ及びPQイオンは水相に移る.したがって,回収されたイオン会合性試薬TBPE•H及び抽出溶媒であるDCEを再び利用することが可能となった.検量線は0.25×10-5~2.0×10-5 mol dm-3の範囲で直線となる.再生処理したTBPE•H/DCE溶液を用いた場合,DQでは調製直後の新しい溶液を使用した場合とほぼ同じ傾きの検量線を得ることができた.PQの場合は傾きがわずかに減少したが直線性は良好であった.本法は市販除草剤中のDQ及びPQの定量に応用でき,また,河川水,市販のミネラルウォーター,緑茶について回収試験を行ったところ,ほぼ良好な結果が得られた.
技術論文
  • 岡村 慶, 畑中 弘, 宗林 由樹
    2004 年 53 巻 4 号 p. 331-337
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    ルミノール-過酸化水素系の化学発光法を用いた海底で作動する現場型マンガン分析装置に関して,観測時間を延長する方策として試薬消費量及び消費電力の少量化を図った.試薬の送液にはマイクロダイアフラムポンプを自作した.試薬消費量を少なくするために,すべての配管を従来の1 mmから0.5 mmへと小さく設定し,送液速度を再検討した.その結果,1/4の試薬消費量で従来の装置とほぼ同等の応答速度を確保することに成功した.送液速度が遅くなったため,電力消費量も少なくすることに成功した.単一アルカリ乾電池を用いたとき陸上では198時間,海底では推定110時間程度の連続稼動が可能となった.
  • 渡邊 朋美, 佐々木 憲, 城之園 恵子, 宗 伸明, 今任 稔彦, 今住 則之, 中西 正幸, 八木 純一
    2004 年 53 巻 4 号 p. 339-344
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    著者らが提案したフローインジェクション滴定分析法を酸化試験潤滑油中の全塩基価測定に適用した.本法は,潤滑油中の塩基性添加剤と酸-塩基緩衝液の中和反応によって引き起こされる指示薬の吸光度変化あるいはpHガラス電極の電位変化を測定するものである.吸光度測定法では,吸光光度検出器を備えた3流路のフロー系を構成した.すなわち,非水溶媒から成るキャリヤー,過塩素酸溶液の流れ及び指示薬(メタクレゾールパープル)を含むトリフルオロ酢酸テトラブチルアンモニウム塩溶液の流れである.吸光度の変化は潤滑油中の全塩基試料濃度に比例した.本提案の方法により得られた酸化試験油中の全塩基価は,従来の中和滴定法による値と良い相関性を示した.しかし,酸化によって濃色となった潤滑油試料については,吸光度測定に妨害を与えるため,相関直線からの偏りが見られた.指示薬を含まないトリフルオロ酢酸テトラブチルアンモニウム塩溶液の流れを用いる3流路のフロー系で,ガラス電極を検出器とする電位測定法では,酸化して濃色となった潤滑油についても,得られた全塩基価は従来の中和滴定法によって得られた値と良い相関を示した.
  • 李 貞海, 大島 光子, 本水 昌二
    2004 年 53 巻 4 号 p. 345-351
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    超純水中の極微量ホウ素を定量するために,クロモトロープ酸を用いるホウ素の蛍光検出/フローインジェクション(FIA)法の諸条件を再検討し,検出限界を10分の1の5×10-10 Mに下げることに成功し,大幅な感度向上を達成した.クロモトロープ酸とホウ酸との反応生成物の蛍光を利用するホウ素のFIA法における残存クロモトロープ酸の蛍光強度を低下させるために,アンモニア水を加え,アルカリ性にした.緩衝液としてエチレンジアミン四酢酸を含む酢酸緩衝液を用い,金属のマスキングを兼ねたpH調整を行うことにより,非常に安定なベースラインを得ることに成功した.流量,反応コイル長,試料注入量,試薬濃度等のFIAパラメーターについて感度向上の観点から最適化を行い,ホウ素錯体の蛍光測定(励起波長λex=313 nm,蛍光波長λem=360 nm)により,前処理なしでホウ素10-9 Mの定量が可能となった.S/N=3での検出限界は5×10-10 M(5 ppt)で,現在最も高感度な定量法である.ホウ素6×10-9 Mの10回繰り返し実験の相対標準偏差(RSD)は3.6%(n=10)であり,1時間に40試料の分析が可能であった.河川水,蒸留水,イオン交換水などに存在する程度の金属イオン及び陰イオンは定量を妨害しない.本法により,イオン交換水,蒸留水中に存在するホウ素は直接定量できた.超純水中に存在する微量のホウ素(10-10 Mレベル)は,加熱濃縮操作法を併用することにより,定量可能となった.
  • 関 達也, 小熊 幸一
    2004 年 53 巻 4 号 p. 353-357
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    フローインジェクション前濃縮-誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いる天然水及び高純度アルミニウム中のウランの定量法を確立した.3 mol l-1硝酸溶液とした試料を分析システムに注入し,ウランをホスホン酸エステル担持樹脂U/TEVA™を充填したカラムに捕集する.カラムに吸着したウランを0.1 mol l-1硝酸で溶離,溶出液を直接ICP-MSのネブライザーに導入する.238Uのカウント数を連続的に記録し,ピーク高さを用いて定量する.バックグラウンドノイズの標準偏差の3倍として求めた検出下限は3 pg,1時間当たり10回の測定ができる.本法を日本分析化学会頒布の河川水及び高純度アルミニウムの標準物質に適用したところ,報告値又は認証値によく一致する分析値を得た.また,BCR海水標準物質については,添加回収実験により妥当な分析値であることを確認した.
ノート
  • 田中 秀治
    2004 年 53 巻 4 号 p. 359-362
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/13
    ジャーナル フリー
    A new system of flow ratiometry having UV detection without a phase separator was developed and applied to the determination of the chloroform/water distribution coefficients (KD) of phenol and its derivatives. An aqueous solution of analyte and chloroform was delivered independently and merged at various flow ratios (Rf). The ratio was changed stepwise. Both phases, segmented each other, passed through an extraction coil and were directly led to a flow cell, where the absorbance of each phase was monitored. A wide-bore tubing (2 mm, i.d., 20 cm long) was inserted between the extraction coil and the flow cell in order to coalesce the chloroform segments and/or aqueous segments. Thus formed bigger segments were easily measured. The KD was calculated from the slopes and the intersections of linear plots of A−1 vs. Rf, (ARf)−1 vs. Rf−1, and ARf vs. A, where A is Ao (absorbance of chloroform phase), Aa (absorbance of aqueous phase), ΔA (= AoAa) or ΣA (= Ao + Aa). Among them, the plots using ΣA as A gave the best results, probably due to a cancellation of the intrinsic errors in the Ao and Aa measurements. The method was simple and efficient (< 5 min/determination) with satisfactory precision.
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