分析化学
Print ISSN : 0525-1931
38 巻, 9 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 櫻田 修, 高橋 英明, 多賀 光彦
    1989 年 38 巻 9 号 p. 407-412
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    黒鉛炉AASでPbを定量する際に,マトリックス修飾剤としてPdを添加すると,Pbの吸光度が増大すると共に,Pbの出現温度が上昇し,灰化温度をより高い温度に設定することが可能となる.このPdの効果について,X線光電子分光法(XPS)を用いて検討した.Pbの塩酸溶液の場合,600℃でPbのほとんどがPbCl2として消失するが,これにPdを共存させると,600℃に加熱してもPbは減少しない.又,試料中のPdCl2は,加熱温度の上昇と共に還元されて金属Pdとなり,同時にPbも還元されることが分かった.このXPSの結果から,Pdを添加することによって,Pbは黒鉛炉の昇温過程でPd中に取り込まれるために,原子化段階以前のPbの消失が抑制されると考えられる.
  • 白土 房男, 岡島 義昭, 前小屋 千秋, 高田 芳矩
    1989 年 38 巻 9 号 p. 413-418
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    土壌中の水溶性及び交換性の無機態窒素を迅速に連続測定するFIA法を検討した.亜硝酸及び硝酸態窒素の測定ではジアゾ化-アゾ化合物生成に高温反応(90℃)を適用した.なお,硝酸態窒素の測定では還元カラム(Cu-Cd粒状,φ3×300mm)の活性寿命及び還元効率への流量依存性を評価した.アンモニウム態窒素の測定では多孔質膜分離-インドフェノール法の常温反応における最適条件を検討した.土壌2gを浸出液50mlで振り混ぜ抽出し,その40μlを各成分の測定に供する.本法の繰り返し測定の再現性は相対標準偏差で0.3~0.5%であり,定量範囲は亜硝酸態窒素:0.1~7ppm,硝酸態窒素:1~20ppm,アンモニウム態窒素:1~150 ppmである.なお,3成分連続測定の所要時間は約10分間である.
  • 後藤 正志, 胡 文志, 石井 大道
    1989 年 38 巻 9 号 p. 419-423
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    モリブデンブルー吸光光度分析法に基づく工業用水中の微量ケイ素連続計測法の開発を行った.試料,塩酸酸性のモリブデン酸アンモニウム溶液及びシュウ酸を含む4-アミノ-3-ヒドロキシ-1-ナフタレンスルホン酸溶液をペリスタ型ポンプによって各約75μl/minの流量で連続的に吸引し送液する.まず,試料をモリブデン酸試薬と合流させ,23℃の恒温槽中に設置した反応管中へ導き,モリブドケイ酸を形成させる.次に,還元試薬と合流させて,モリブデンブルーに変換した後,吸光光度計のフローセル中に導き,815nmにおける吸光度を連続記録することによって試料中の微量ケイ素を自動計測する.本法を2~2000ppbの範囲のケイ素を含む試験水の連続モニタリングに応用して良好な結果を得た.
  • 善木 道雄, 斎 圭一郎, 葉 以〓, 桐栄 恭二
    1989 年 38 巻 9 号 p. 424-428
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    アルセナゾIIIのランタン,トリウム及びウラン錯体を用いて,フッ化物イオンを間接吸光光度定量する,FIAについて検討した.検討したアルセナゾIII錯体の中では,ウラン(VI)錯体が一番感度が良好であった.4.8×10-5M濃度のウラン(VI)を含むアルセナゾIII溶液{4.8×10-5M(pH2.8)}を試薬溶液とし,キャリヤー液に蒸留水を用いる2流路系FIAシステムで検討したところ,フッ化物イオン0~1.5ppmの範囲で検量線は直線性を示し,検出限界(S/N=2)は50ppbであった.又,0.5ppmのフッ化物イオン10回の繰り返し実験による相対標準偏差は0.45%であった.カルシウム,鉄などの陽イオンが妨害するが,サンプルインジェクターのすぐ後に陽イオン交換樹脂カラム(Dowex 50WX2, 2mmi.d.×40cm)を取り付け,その妨害を除去することができた.これらの結果を用いて,地下水中のフッ化物イオンの定量に応用し,満足する結果を得た.
  • 栄 慎也, 寺前 紀夫, 澤田 嗣郎
    1989 年 38 巻 9 号 p. 429-433
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    AASにより,植物試料中の鉄,亜鉛,マンガン,及び銅を分析するときの前処理として,試料を直接アルカリ溶融する方法を検討した.試料の溶融に四ホウ酸リチウムと炭酸ナトリウムの(2+1)の混合物を溶融剤として用いると,720℃,10分程度の操作で溶融が完了した.又溶融成分は4M塩酸に15分程度で溶出した.測定元素は,ピロリジン-N-ジチオカルバミン酸アンモニウムによりメチルイソブチルケトン中に抽出し,抽出溶液を直接フレーム法にて分析した.本法によるNBS-SRM 1571(Orchard Leaves)及び1573(Tomato Leaves)中の測定元素の定量結果は,すべての測定元素が保証値の範囲内にあり,測定元素の揮散などによる損失も認められなかった.植物試料を,本法に従い前処理した溶液の定量値の相対標準偏差は,すべての元素が2.3%以内に収まり,乾式及び湿式灰化法に比較し簡便かつ迅速に定量できた.
  • 鵜澤 惇, 三田 真司, 岩本 葉子, 吉村 坦, 奥谷 忠雄
    1989 年 38 巻 9 号 p. 434-437
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    1,2-シクロヘキサンジオンジオキシム担持活性炭を用いて微量Pdを濃縮しタングステンリボン炉AASで定量した.Pdは1,2-シクロヘキサンジオンジオキシム(DOx)と強酸性でモル比1:2の水に難溶なキレートを生成し,活性炭に容易に吸着するが脱離が非常に困難である.そこでDOx担持活性炭に吸着したPdを水に均一に分散させ,懸濁液を直接タングステンリボン炉上に導入してPd濃度を定量する方法について研究した.Pd0.25μgを含む溶液100cm3を用いた場合の相対標準偏差(n=5)は3.5%であった.検量線は0.05μg~0.4μgの範囲で再現性の良い直線関係が得られ,検出限界(3σ)は,0.012ng/cm3であった.本法は簡易で迅速なことに特長があり,実試料中のPdの定量に適用して満足する結果を得た.
  • 尾崎 武二, 平山 和雄, 宇野原 信行
    1989 年 38 巻 9 号 p. 438-442
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    金作用電極及び白金対極を組み合わせた双極電極を用いて,サイクリックボルタンメトリーによる塩化物イオンの定量法を検討した.支持電解質にpH2.9に調整した0.1M硝酸カリウムを用い,正電位方向に電位走査したとき,+1.0 V(vs. Ag/AgCl)付近で得られるピーク電流値と塩化物イオン濃度との間に良好な比例関係が得られた.定量範囲は2~900mg/lで,検量線の相関係数は0.998であった.+0.5~+1.3Vの狭い範囲を数回電位走査すれば,再現性の良い波形が得られる. Ag及びHg(II)以外の金属イオンはほとんど妨害しない.しかし,ヨウ化物及び臭化物イオンは微量でも妨害するため除去する必要がある.本法はフルオレセインを用いる硝酸銀滴定によるファヤンス法と比較した場合,平均値の相対誤差は+5%,標準偏差は8%でやや大きいが,広い濃度範囲の塩化物イオンを短時間で定量できる利点がある.
  • 吉村 菊子, 芦田 眞優美, 西本 由美, 阪井 朝子, 北出 達也, 北村 桂介, 穂積 啓一郎
    1989 年 38 巻 9 号 p. 443-448
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    シリカゲルの粉末を,2-プロピン-1-オール(PA)又は60%含水PA(PW)のプラズマ重合膜でコーティングしてTLCに用い,アゾ色素,アミノ酸,コレステロール類のRf値を未コーティングあるいは展着した後PAプラズマコーティングしたシリカゲルプレートの場合と比較した.水酸基などの極性基を含む試料でRf値は相対的に増加し,Rf値の変化率は展開溶媒の極性が小さいときのほうが大きくなった.粉体コーティングで得たTLCプレートは,展着後プレートコーティングしたときと類似の展開挙動を与えた.X線光電子分析のスペクトルから,PAコーティングとPWコーティングとの展開挙動の相違は,表面の元素組成比の差によることが示された.表面の組成比や被覆状態は,プラズマ重合条件やモノマーの種類により変えられた.
  • 煤の識別に関する研究(第3報)
    高津 正久, 山本 忠弘
    1989 年 38 巻 9 号 p. 449-453
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    熱分解GCによる芳香族炭化水素のすすの識別可能性について検討した.8種の芳香族炭化水素の拡散炎に接しない位置ですすを捕集し,熱分解温度358℃と590℃で分析して得たパイログラムを比較したところ,358℃ではもとの燃焼物などの識別に有効なピークはほとんど検出できなかったが,590℃ではそれらのピークの強度は増加し,すす間でのパイログラムの差が認められた.特にキシレンのすすからキシレンが特異的に検出され,又ベンゼンのすすからビフェニルが多く検出されるなどの顕著な特徴も認められることから,すす相互の識別はある程度可能と考えられた.更に生成後一年間放置したすすでは,パイログラムの全体的なパターンは類似してくる傾向にあったが,キシレンなどの特徴ピークは依然として検出することができた.
  • 久保 博昭, 黄 躍生, 木下 俊夫, 中澤 裕之
    1989 年 38 巻 9 号 p. 454-457
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    タンパク質をアルカリ溶液中Cu(II)と反応させ,生じたCu(I)を電量検出器で測定するタンパク質の超微量定量法をFIA法によって確立した.キャリヤー反応試薬溶液として1mMの硫酸銅(II)と20mMのアンモニアを含む0.3Mリン酸緩衝液(pH12.0)を用い1.5ml/minで送液した.試料液5μlをキャリヤー反応試薬溶液と反応コイル(95℃)中で混和させ,更に冷却コイル(10℃)を通過させた後,電量検出器(検出電位0.7V)でタンパク質の量に対応して生じたCu(I)を定量した.本法ではタンパク質(ウシ血清アルブミン,ヒト血清アルブミン,ヒト-γ-グロブリン,卵アルブミン)の10~100ng範囲で直線の検量線を示し,相対標準偏差(n=10)はウシ血清アルブミン10ngに対して3.5%,25ngに対して3.1%であった.又,検出下限(S/N=2)は2.5ngであった.
  • 渡辺 邦洋, 横尾 克己, 青木 伊豆男
    1989 年 38 巻 9 号 p. 458-461
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    2, 2'-Dihydroxazobenzene (DHAB) and 4, 4'-dimethyl derivative (DDAB) react with aluminium(III) in an aqueous solution to form fluorescent 1 : 1(metal-DHAB or DDAB) complexes. We studied the effects of anions and neutral ligands on the extraction/fluorometric determination of aluminium by using these complexes. The aluminium-DHAB complex was extracted with tributyl phosphate (TBP), and with benzene by adding trioctylphosphine oxide (TOPO). A large amount of appropriate anions i.e. acetate, propionate, thiocyanate and perchlorate, was required for the extraction of the complex. Especially the addition of propionate and thiocyanate gave a strong fluorescence. TBP and TOPO acted as neutral adductants and remarkably increased both the extractability and fluorescence quantum yield of the complex. TOPO also acted as a catalyst for the reaction between aluminium and DDAB. The ratio of the composition of the extracted complexes Al-(DHAB or DDAB)-(anion)-(TBP or TOPO) was 1 : 1: 1: 2 in the presence of acetate, and 1 : 1 : 1 : 3 in the presence of perchlorate.
  • 善木 道雄, 小河 博資, 野瀬 和子, 桐栄 恭二
    1989 年 38 巻 9 号 p. T129-T133
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    グリオキサールビス(2-ヒドロキシルアニル)(GBHAと略記)を発色試薬とするカルシウムイオンのFIA法を確立した.FIA装置は,三流路系を用いた.すなわちGBHAのエタノール溶液(0.05w/v%),水酸化ナトリウム溶液(0.20M)及び蒸留水をそれぞれマイクロポンプで送液し,合流後,反応コイル中で混合した.試料(290μl)はループインジェクターより蒸留水中へ注入し,520nmの吸光度変化を測定記録した.本法によれば0~1.2ppmの範囲で検量線は直線を示し,0.4ppm及び1ppmのカルシウムイオンに対する相対標準偏差は,それぞれ1.2,0.22%であった.本法を雨水,河川水,水道水,及び井戸水中のカルシウムイオンの定量に応用し,満足する結果が得られた.
  • 吉川 裕泰, 岩田 英夫, 瀬野 英夫, 三角 武
    1989 年 38 巻 9 号 p. T134-T139
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    水酸化ベリリウム共沈分離/モリブドリン酸青吸光光度法によるタングステン含有合金中のリン定量方法を検討した.ニッケル,クロム,コバルト,ジルコニウムなどを含む合成試料を用いて各元素の影響を調査した.ニッケル,コバルト,はEDTAでマスキングすることで,クロムは二塩化二酸化クロムとして揮散することで良好な結果が得られた.ただし,ジルコニウムが1%以上と同時にタングステンが2%以上存在する場合はその影響を受ける.又,1-ペンタノールを抽出溶媒とする溶媒抽出法も検討した.それぞれの定量下限はモリブドリン酸青吸光光度法では20ppm,溶媒抽出法では1ppmであった.
  • 梅本 雅夫, 谷 渉, 林 浩次, 桑 克彦
    1989 年 38 巻 9 号 p. T140-T142
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    リチウムを内標準とするフレーム光度法による血清中のカリウム定量の正確さを,同位体希釈質量分析法で確定された標準値を有する標準血清により評価した.リチウム(15mmol/l)を含む希釈液で血清及びカリウム標準液を正確に100倍希釈し,日立710型炎光光度計を用いて検量線法で定量を行った.検量線をリチウムを添加したカリウム標準液より作成した場合の測定値は,標準血清の標準値からおおよそ+5%の偏差が認められ,十分な正確さが得られなかった.一方,検量線をリチウムを添加した標準血清により作成した場合,その偏差はわずか-0.4%であり再現精度(0.5%)との比較からも極めて正確な定量法であることが明らかとなった.
  • 本水 昌二, 是近 勝彦
    1989 年 38 巻 9 号 p. T143-T148
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    洗剤(陰イオン界面活性剤)の抽出/FIAについて,実用分析の観点から,装置面と試薬面について再検討した.プランジャー型ポンプを用い,従来の三流路系を二流路系とし,試薬溶液流れに試料を注入した.ポンプについて検討したところ,ダブルプランジャー型ポンプ1台で間に合い,三流路法と比較しても,感度的にはほぼ同程度であることが分かった.内径0.5mm,長さ1m以上のポリテトラフルオロエチレン製チューブを抽出コイルとして用いたとき,長さ25mmと約2mmのセグメントにおいてピーク高さはほとんど同じであった.陰イオン界面活性剤の対イオンとなる染料陽イオンについては,メチレンブルー(MB)(抽出溶媒:ο-ジクロロベンゼン)と1-メチル-4-(4-ジエチルアミノフェニルアゾ)ピリジニウムイオン(MEP)(抽出溶媒:クロロホルム)を比較した.二つの染料陽イオンを比較すると,MB法のほうが感度は高いが,試薬から試験液のピークが負ピークとなり,又ピークのテイリングが大きいため,分析所要時間が若干長い.1×10-6Mラウリル硫酸ナトリウムを10回注入したときのピーク高さ,標準偏差及び相対標準偏差はMB法でそれぞれ,200.6mm,0.8mm及び0.4%,MEP法でそれぞれ,121.1mm,0.3mm及び0.3%であった.S/N=3に相当する検出限界は両法において約1×10-8Mであるが,実際の定量下限は3×10-8M程度となる.分析所要時間は,1サンプル当たりMEP法で2分,MB法で3分(流量0.6ml min-1の場合)及びメチレンブルー法で2分(流量0.8ml min-1の場合)となる.
  • 日置 昭治, 札川 紀子, 久保田 正明, 川瀬 晃
    1989 年 38 巻 9 号 p. T149-T155
    発行日: 1989/09/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    亜鉛,カドミウム,コバルト,銅,鉛,マンガン標準液に関して,高純度亜鉛を基準物質としてEDTAキレート滴定を行って濃度決定した場合の,各金属標準液の調製濃度との関係について実験的に検討した.終点の指示には金属指示薬を用い,光度滴定装置により滴定を行った.滴定曲線の変曲点近傍を三次曲線近似することにより変曲点を求め,そこにおける接線を指示薬の変色率1に外挿した点を終点とした.この終点決定法により終点は指示薬量に依存しないことを実験的に確かめた.各金属標準液の調製濃度と亜鉛を基準にした測定濃度の差はいずれも±0.1%以内であるという結果が得られ,亜鉛を基準とする亜鉛,カドミウム,コバルト,銅,鉛,マンガン標準液間のトレーサビリティがとれていることが確認された.
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