分析化学
Print ISSN : 0525-1931
54 巻, 11 号
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分析化学総説
  • 北川 文彦, 大塚 浩二
    2005 年 54 巻 11 号 p. 1047-1060
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/23
    ジャーナル フリー
    微小基板上に作製した微細な流路内で電気泳動分離を行うマイクロチップ電気泳動(MCE)は,高速分析・微量分析などの特徴を有しており,ハイスループット分析への適用が期待されている.MCEにおける問題点として,検出感度が十分ではないことが指摘されており,様々な高感度検出手法の導入が検討されている.MCEの研究初期においては,蛍光に基づいた検出法を適用した例がほとんどであったが,微細加工技術の進展に伴い微小電極をチップ上に作製することが可能となり,高感度な電気化学検出や試料の適用範囲の広い電気伝導度検出等のMCEへの適用が進んでいる.また,MCEチップと質量分析計との結合を可能にするインターフェースの開発も進展しており,タンパク質のアミノ酸配列や相互作用の解析,糖鎖構造の解析などへの応用が期待されている.本稿では,MCEへの適用が検討されている検出法の原理及び特徴的な技術について,最近の成果を中心に紹介する.
総合論文
  • 奥村 稔, 藤永 薫, 清家 泰
    2005 年 54 巻 11 号 p. 1061-1073
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/23
    ジャーナル フリー
    環境水中の微量化学種を小型カラム(Sep-Pakカートリッジ)を用いて現場で迅速・簡便に捕集・濃縮する方法として現場固相抽出法を開発し,水環境における微量元素のスペシエーションと挙動解明に適用した.この方法は,採水現場で試料水をシリンジに採取後,小型カラムに捕集濃縮するものであり,捕集操作は動力源を用いずに手動のみで迅速・簡便に行える.捕集から溶離までの操作は密閉環境で行われるため,外部の空気との接触や汚染の心配がない.化学種の捕集には疎水性のSep-Pak C18カートリッジ及び捕集・濃縮効率を高めるためにキレート試薬やジルコニウム等を担持したSep-Pakカートリッジを使用した.小型カラムに捕集することにより,試料サイズを小さくでき,このため試料の運搬,長期間の保存が非常に容易になった.本法の適用事例として,汽水環境における酸化・還元化学種であるマンガン(II),硫化水素と鉄(II)及びヒ素(III)とヒ素(V)のスペシエーションと挙動を示す.
報文
  • 齊藤 周平, 熊木 聡志, 長谷川 佑子
    2005 年 54 巻 11 号 p. 1027-1032
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/23
    ジャーナル フリー
    ランタノイド(III)を2-テノイルトリフルオロアセトン(Htta)と電子供与原子として2つの酸素原子と2つの窒素原子をもつN,N '-ビスサリチリデントリメチレンジアミン{H2(saltn)}とで抽出したところ,わずかながら協同効果が観測された.その程度はPrIII>EuIII>YbIIIと軽希土のほうが大きかった.この小さな協同効果の原因を分子内水素結合と考え,H2(saltn) の代わりにCu(saltn) を使ったところ,強いルイス塩基として知られるトリオクチルホスフィンオキシドに匹敵する大きな協同効果を示した.この協同効果の大きさもPrIII>EuIII>YbIIIの順であった.
  • 小田 サチ, 蟻川 芳子
    2005 年 54 巻 11 号 p. 1033-1037
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/23
    ジャーナル フリー
    石炭試料中に数十ppb程度の濃度で含まれるテルルを,密閉容器中高圧酸素下での燃焼による試料分解と,鉄(III)共沈法による濃縮,黒鉛炉原子吸光法による測定を組み合わせて,精度よく定量できる方法を確立した.石炭試料と助燃剤のでんぷんを燃焼ボンブに入れ,3 MPaの酸素下で燃焼する.生成した三酸化テルルは吸収液としてあらかじめボンブ内に入れた水に溶解させてテルル(VI)酸として回収し,加熱により4価の亜テルル酸に還元する.これを水酸化鉄(III)の沈殿に共沈させて濃縮し,沈殿を塩酸で溶解したのち定容とし,原子吸光法でテルルの濃度を測定した.石炭標準試料NIST SRM 1632c中のテルルを標準添加法により定量したところ,0.057±0.004 mg kg-1であり,参考値0.05 mg kg-1とよく一致した.5回測定の相対標準偏差は,7% であった.この方法を実試料に応用し,産出地の異なる20種類の石炭中のテルル濃度を測定した.
  • 松浦 弘明, 藤山 勝二, 池内 義弘
    2005 年 54 巻 11 号 p. 1075-1082
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/23
    ジャーナル フリー
    乳・乳製品や食品中に含まれる硫黄化合物,ジメチルスルフィド(DMS)及びジメチルジスルフィド(DMDS)を熱脱着-ガスクロマトグラフィー/質量分析法(TD-GC/MS)を用いて精度よく高感度に測定する方法を確立した.食品からの抽出法として水質分析用のフリット付き試験管を用い,窒素ガスでバブリングし微極性のポーラスポリマービーズを充填したチューブに捕集後,TD-GC/MS分析に供した.TD-GC/MSの測定条件及び抽出時のバブリング流量及び時間などの最適化を図った.本法におけるDMS及びDMDSの標準水溶液の検量線は0.5~500 ng/mlで直線性を示し,検出限界は試料当たり0.1 ng/g,回収率60~106%,相対標準偏差は4.1~6.8% と良好であった.本法を用いて生乳,低温殺菌乳,Ultra High Temperature殺菌乳,Long Life牛乳を測定した結果,DMSの含有量に顕著な差異が認められた.野菜ジュースではDMS値が殺菌後に約10倍増加をすることが確認された.また,生野菜中のDMS及びDMDSの濃度や抽出後の変動,コーヒー,青のり,一部の発酵食品中の含有量を明らかにすることができた.
  • 倉田 正治, 山口 和隆, 大塚 早紀, 永井 正敏
    2005 年 54 巻 11 号 p. 1083-1090
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/23
    ジャーナル フリー
    500 MHzのプロトン核磁気共鳴分光法(1H-NMR)による迅速,簡便な油脂の識別法を開発した.けん化等の試料の前処理なしに,テトラメチルシランを内部標準物質として重クロロホルムに溶かした11種類(6種類の植物油と5種類の動物油)の油脂の1H-NMRスペクトルをスキャン回数100回で測定した.1H-NMR分析では油脂中のトリアシルグリセロールもステロールも迅速な同時検出が可能であった.1H-NMRスペクトルから得られたトリアシルグリセロールの構成脂肪酸の不飽和度,構成脂肪酸とステロールの種類,トリアシルグリセロールに対するステロールの積分強度比を比較することにより11種類の油脂すべてが識別できた.
技術論文
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