分析化学
Print ISSN : 0525-1931
10 巻, 2 号
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  • オキシン抽出光度法
    本島 健次, 橋谷 博, 吉田 秀世
    1961 年 10 巻 2 号 p. 79-82
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    オキシンによるウラン中の微量にの銅の抽出光度法につき検討し,迅速かつ正確な定量法を確立しえた.操作はきわめて簡単であり,ウランを酢酸でマスクしてpH 3.1~3.3から銅オキシン錯塩を正確に5mlのクロロホルムで抽出する.ついで抽出液は15%水酸化ナトリウム溶液で洗浄し,同時に抽出されてくる少量のウランおよび他の不純物金属を除去し,410mμにおける吸光度を測定し銅を定量する.
    一般に燃料ウラン中には本法の妨害となる不純物は存在せず,3gのウランを用いれば0.5ppm程度までの銅を正確に定量することができる.
  • ポリビニルアルコール製造工業へのスペクトロメトリーの応用(第3報)
    西野 豊
    1961 年 10 巻 2 号 p. 83-86
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    酢酸ビニル中のアセトアルデヒドおよびアセトンを,個々に定量する必要があるためこの実験をおこなった.従来用いられてきた塩酸ヒドロキシルアミン法によるアセトアルデヒドの分析は,試料にアセトンが含まれていると,この全量がアセトアルデヒドとともに反応して,得られる分析値は正しくないにとを明らかにした.
    紫外吸収スペクトルでこれを分析するには,適当な2ヵ所の波長の吸光度から連立方程式を解けばよく,分析精度は,含量0.05%程度で,いずれも±5%あるいはそれ以下である.定量の限度は約0.002%である.酢酸ビニルのみならず,他のエステル中に含まれる場合も同じ方法,同程度の精度で定量できる.他の機器分析法と比較しても,この分析法は簡単迅速におこなえるから,工程管理分析法として有用である.
  • ポリビニルアルコール製造工業へのスペクトロメトリーの応用(第4報)
    西野 豊
    1961 年 10 巻 2 号 p. 86-89
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    酢酸ビニル製造工程における種々の試薬溶液,とくに酢酸ビニル中の微量のベンゼンおよびトルエンの分析が工程管理上必要なので,この実験をおこなった.
    各種の機器分析について比較したが,紫外吸収スペクトルによる方法がもっとも適していると考えて,分析法,精度,検出の限度について検討した.
    試料を20%以下の濃度にメタノールでうすめて,ベンゼン,トルエンが0.03~0.04%以下になるように調節し,10mmのセルで255~275mμの範囲を測定する.まずトルエンを268.2mμの吸収のベースライン法で定量し,ついでトルエンによる258~267mμの吸収を差引いた残りの吸収曲線から,ベンゼンを260.2mμの吸収のベースライン法で定量する.精度は信頼度95%として,相対誤差で±10%以下である.検出の限度は,両者が共存している場合は各0.005%,どちらかが含まれなければ0.001~0.002%である.精度と迅速度の上から,この分析法は工程管理用分析に有用である.
  • 痕跡金属の吸光光度定量法に関する研究(第1報)
    中島 史登, 酒井 馨
    1961 年 10 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    従来,バソフェナントロリンを用いる鉄の吸光光度定量には溶媒抽出法がおこなわれていたが,筆者らはエタノール-水混合溶媒中で発色させることにより迅速かつ正確に直接定量する方法を検討した.
    第一鉄イオンとバソフェナントロリンは10%エタノール中において可溶性の赤色キレートを生成し,波長533mμに最大吸収を示し,その分子吸光係数は22,400である。この呈色を用いて鉄を定量する場合,呈色はきわめて安定でpH2~6の範囲にわたって一定の吸光度をあたえ,5~100ppbの範囲で鉄の濃度と吸光度との間に比例性がある.本法の感度は溶媒抽出法よりいくぶん劣るけれどもその定量操作はより簡単で迅速である.また本法はCu2+(10倍以上),Co2+(40倍以上),CN-(6倍以上)およびシュウ酸イオン(100倍以上)の妨害をうける.
  • 痕跡金属の吸光光度定量法に関する研究(第2報)
    中島 史登, 酒井 馨
    1961 年 10 巻 2 号 p. 94-98
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    バソフェナントロリンを用いて鉄を定量する際生ずる赤色の錯化合物について,その組成ならびに安定度について検討した.10%エタノール溶液中で発色させ連続変化法および Molland の方法にしたがって組成をしらべた結果,鉄対試薬の結合比は1:3であり,したがって錯化合物は tris-(4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline)-iron(II)であることが認められた.バソフェナントロリンは溶液中では一酸塩基として行動しバソフェナントロリウム・イオンを生成する.その酸解離定数を紫外部における吸収を利用して求め 10-4.80 を得た.また錯化合物の安定度定数を求めたところ,1021.8 であり非常に安定であることが知られた.
  • 高純度物質中の微量不純分の分析方法に関する研究(第5報)
    宮本 益夫
    1961 年 10 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    高純度セレン中のAlが簡単に,感度よく吸光光度定量できる分析方法を確立した.研究の要点はオキシン抽出法でAlを定量したこと,この方法に対する妨害イオンの除去が,外部からの汚染をほとんど受けることなく,ジエチルジチオカルバミン酸による抽出法により容易に達成されたことなどである.
    試料は硝酸に溶かしたのち,硫酸を加えて乾固してSeを揮散除去する.残留物はフッ化水素酸で処理してから酢酸-酢酸アンモニウム緩衝溶液となし,ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムを加えてクロロホルムで抽出する.このあと一定量のオキシンクロロホルム溶液を加えて抽出し,吸光光度法によりAlの含有量を求める.
    十分注意して処理すれば,0.1ppmまで定量することは容易である.分析所要時間は約3時間でよい.
  • 高純度物質中の微量不純分の分析方法に関する研究(第6報)
    宮本 益夫
    1961 年 10 巻 2 号 p. 102-106
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    高純度セレン中のT1の定量法を研究した.そして極微量のT1を分離する方法およびこのT1の定量法について種々検討し,操作が簡単で感度の非常に高い,すぐれた分析操作が確立できた.
    試料に硝酸,硫酸および硫酸カリウムを加えて分解後乾固してSeを除く.残留物を臭化水素酸に溶かしてイソプロピルエーテルでT1のみを抽出し,これをローダミンB溶液と反応させて発色させ吸光光度定量する。分析所要時間は約2時間でよく,試料中の0.1ppmまでのT1の定量は容易である.
  • トリウム中の不純物の定量(第1報)
    向山 朝之, 一瀬 典夫
    1961 年 10 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    核燃料用の高純度酸化トリウム,および中間製品の硝酸トリウム中の微量の銅の定量方法について研究した.EDTAはトリウムと安定度の高いキレート化合物を形成する性質がある。しかし過剰のクエン酸が存在するpH9の溶液では,少量のEDTAは多量のトリウムにほとんど関係なく,共存するニッケル,コバルトなどをしゃへいし,また鉄などの影響もなく,微量の銅をジエチルジチオカルバミン酸錯化合物として有機溶媒に抽出し,光度定量をおこないうることがわかった.本法はトリウム化合物中の銅含有率約0.2ppm(Cu/ThO2)以上の定量に応用できる.
  • 蟇目 清一郎, 吉田 仁志, 山本 雅弘
    1961 年 10 巻 2 号 p. 112-115
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    アセトン-水単一相中でのテルル-ジエチルジチオカルバミン酸錯塩の呈色を利用するテルルの迅速光度定量法について検討した.この錯塩はアセトン60%(v/v)溶液中で424mμ付近に吸収極大を示し,pH6.3~9.0の間では一定の吸光度を示した.呈色は光に対して不安定であるが,着色ガラス器を使用し,紫外線をさけて呈色後ただちに測定することにより,簡便にしかも再現性よくテルルを定量することができる.1~20ppmのテルル量について,420mμのフィルターを用いて吸光度を測定して得られた検量線は良好な直線性を示した.この波長での分子吸光係数は約3,200であり,感度は0.04γTe/cm2である.本法では鉄(III),銅(II)およびビスマスの存在は妨害となる.しかし,EDTAが共存するとき,8PPmのテルルに対して40PPmのコバルト,水銀(II),ニッケル,タングステン(VI),200PPmのアルミニウム,バリウムおよび400~1200PPmのヒ素(III),カルシウム,カドミウム,マグネシウム,マンガン(II),モリブデン(VI),鉛,セレン(IV),亜鉛の共存は影響がなかった.
  • 放射性指示作用による分析化学的研究(第23報)
    石橋 雅義, 藤永 太一郎, 小山 睦夫, 内藤 泰二
    1961 年 10 巻 2 号 p. 116-119
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    86Rbと137Csをトレーサーとして,ルビジウムとセシウムのイオン交換分離をバッチ法ならびにカラム法で検討した.陽イオン交換樹脂Dowex 50-X8,200~400メッシュを用い,バッチ法によって0.2~1N塩酸溶液中におけるルビジウムとセシウムの分布率を測定した結果,塩酸濃度が小さいほど分離が良好であることが推定された.カラム法では,それぞれ単独の場合の溶離曲線をレートメーターで自動記録し,塩酸濃度,当該塩存在量などの溶離曲線におよぼす影響を検討し,0.5N塩酸を溶離液として直径0.6cm,長さ25.5cmのカラムを用いて塩化ルビジウム7.0mgと塩化セシウム9.8mgを分離できた.なお他のアルカリ金属およびアンモニウムイオンのセシウム溶離曲線におよぼす影響も検討し,二,三の知見を得た.
  • 金属チタン中のガス分析法の研究(第3報)
    嶋崎 亀治, 小野 主嘉, 進藤 進
    1961 年 10 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    チタンの真空溶融法酸素分析に用いた白金浴からの経済的な白金の回収法はこの分析法を実用的なものにするために第1に確立されなければならない.チタンを含む浴を王水に溶解,加熱してチタンの大部分を加水分解によって沈殿分離したのち溶液を塩酸処理して完全に六塩化白金酸とし,金属マグネシウムを加えて白金を析出させると浴からの白金回収率95%以上が得られた.なお回収された白金の純度は分光分析および実際に浴として使用した結果99%以上のものであることも確認された.
  • 選択吸着樹脂の分析化学への応用(第3報)
    井本 博
    1961 年 10 巻 2 号 p. 124-129
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    濃厚食塩溶液中の微量マンガンを分離濃縮して定量するに際し選択吸着樹脂を用いて実験をこころみた.樹脂は Dowex Chelating Resin A-1 (Na形)を用い,バッチ法でpH6以上のアルカリ性溶液中で交換吸着したのち約1~2N硫酸で溶離し,過ヨウ素酸カリウムで過マンガン酸イオンに酸化し吸光光度法により定量した.この結果は食塩の多量共存下でもマンガンに対して選択的に吸着することがわかり満足な結果をえた.なお本法は原料塩,カセイソーダ(水銀法)中のマンガンの定量にも適用できることを認めた.
  • 立沢 政義
    1961 年 10 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    イソニアジドのヒドラジン基は還元性を有し,銀,銅,水銀などの金属塩の溶液を加えるとそれらの金属を遊離させる性質があるが,パスはこの性質を有しないからこれを利用してパス・イソニアジド混合製剤中のイソニアジドの定量を試みた。すなわち検体に過剰のネスラー試液を加え,生じた水銀の沈殿をロ別し過剰の試液中の水銀塩を硫酸銅を指示薬として0.02Mジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム液で滴定をおこないイソニアジドを定量した.
  • 矩形波ポーラログラフによる市販グルタミン酸ナトリウム中の不純物の微量定量(第1報)
    瀬戸 寿太郎
    1961 年 10 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    市販のグルタミン酸ナトリウム製品を水溶液として,荷電電流消去装置を備えた矩形波交流ポーラログラフ法によりポーラログラムを記録するときに現われるピークは,L-シスチンによるものであることが判明し,標準添加法によりシスチンの含有量を求めたところ,各社の製品では0~0.12%の範囲にあった.グルタミン酸ナトリウム基礎液中でのシスチン波は鉛の波と重複するが,後者の含有量は各社の製品では約2ppm程度であり,シスチンの定量を妨害しない.さらに,グルタミン酸を含有する諸種の支持電解質中でのシスチンとシステインとの交流ポーラログラフ的挙動が検討された.
  • 宇佐美 四郎
    1961 年 10 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    ジフェニルアミンと酢酸第二水銀との反応により生成する4-アセトキシ・メルクリック・ジフェニルアミンが還元波をあたえることを利用してジフェニルアミンを簡易に定量する方法を見出した.すなわち,10vol%酢酸含有メタノール溶液中に3~4mMの酢酸第二水銀およびその濃度を酢酸第二水銀に対して0.6以下のモル比にしたジフェニルアミンを加え,50℃恒温槽中で7.5時間反応することにより定量的にジフェニルアミンの水銀付加化合物を生成する.この水銀付加化合物は0.1M硝酸ナトリウムを支持塩とし,トリトンX-100を極大抑制剤とするポーラログラムは-0.3Vおよび-0.85V付近に2段波を生ずる.このポーラログラムの第1波,第2波の波高は,ジフェニルアミン濃度に正比例する.第2波は第1波より安定であり,定量には第2波を用いる.この第2波の変動係数は1.1~1.8%であった.またジフェニルアミンと酢酸第二水銀との反応時間は酢酸-メタノール溶液中の酢酸濃度を減少させること,およびジフェニルアミンのモル比を小さくすることにより適宜短縮することができる.
  • 宇佐美 四郎
    1961 年 10 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    酢酸ビニルに含有される微量不純物,アセトアルデヒド,クロトンアルデヒド,酢酸メチル,アセトン,メタノール,ベンゼンのガスクロマトグラフ法による定量を検討した.酢酸ビニル中のアセトアルデヒド,メタノール,アセトン,酢酸メチルは固定相担体DM-13Aに85%シリコン油DC-510-15%ステアリン酸を担持したカラムで分離定量できることを認めた.検知限度はアセトアルデヒド0.006,メタノール0.007,アセトン0.015,酢酸メチル0.018vol%であった.この場合メタノールは酢酸ビニル中にアセトアルデヒド,水の含有量が多い時には定量が困難になるが,DM-13Aにグリセリンを担持したカラムにより,メタノールがほかの不純物に影響なく分離されること,および同時にクロトンアルデヒドが分離定量できることを認めた.検知限度はクロトンアルデヒド0.031,メタノール0.013vol%であった.さらにベンゼンはグリセリンカラムと85%シリコン油DC-510-15%ステアリン酸の連結カラムにより定量できることを認めた.検知限度は0.024vol%であった.
  • 矩形波ポーラログラフによる分析方法の研究(第2報)
    田島 信雄, 黒部 森司
    1961 年 10 巻 2 号 p. 146-151
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    アルミニウム合金中の銅,亜鉛,鉄の定量を矩形波ポーラログラフを用いておこなった。今回取り扱った試料中のこれら成分含有率は0.1~数パーセントにおよぶもので,とくに矩形波ポーラログラフによらなくとも定量可能なものであるが,矩形波ポーラログラフによる波形は波高の測定が非常に容易であり,また共存物の妨害を受けないなどの利点があるのでこれを検討してみた.
    その結果,銅,亜鉛は試料を塩酸および硝酸で分解後蒸発乾固し,残サを塩酸に溶解して1N塩酸酸性としてそのままポーラログラムを求め,また鉄はメチルイソブチルケトン抽出によって主成分および銅などの妨害物質より分離したのち酸性クエン酸塩を支持電解質として定量した.
    このような方法によって1~数%の銅,0.2~1%の亜鉛,0.1~2%の鉄をTable IV および IXに示すような精度で定量することができた.
  • 金属ウラン中の微量不純物の定量(第14報)
    斎藤 謙, 武内 次夫
    1961 年 10 巻 2 号 p. 152-156
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ジチゾン-ベンゼン溶液を用いて核燃料用金属ウラン中の1ppm程度の微量の鉛を抽出し,これを交流ポーラログラフ法および吸光光度法によって定量をおこなった.すなわち試料溶液にシアン化カリウムを加えて共存する他金属を抑えて鉛をジチゾン-ベンゼン溶液に抽出し,希過塩素酸溶液により逆抽出して交流ポーラログラフ法により定量するか,またはベンゼン溶液に抽出された鉛-ジチゾン塩の吸光度を測定して定量した.両方法の結果はよく一致した.
  • 金属ウラン中の微量不純物の定量(第15報)
    吉森 孝良, 富田 与志郎, 武内 次夫
    1961 年 10 巻 2 号 p. 156-160
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    金属ウラン中に含まれる微量の鉄の迅速な定量法として,つぎのような方法を試みた.すなわち試料を塩酸と過酸化水素水とで分解し,塩酸濃度を7.5Nに調節したのち,酢酸ブチルで鉄を抽出し,ほぼ等量のメチルイソブチルケトンを加え,チオシアン酸アンモニウム水溶液(20%)とふりまぜて,鉄を有機溶媒層中で発色させる.この溶媒相の着色を光電比色計で測定し鉄を定量する.またこの場合分液ロートに目盛をつけることによって,溶媒相の容積変化の観察や液量の調節などの操作を容易にした.この方法によって,0.1~1gのウランと共存する1~20γの鉄を定量することができ,また実際の金属ウランの分析に用いて好結果を得た.
  • 交流電流滴定法のこころみ
    高尾 弘也, 武者 宗一郎
    1961 年 10 巻 2 号 p. 160-165
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    チタン(IV)がEDTAとpH=2近傍において定量的に反応しかつチタンEDTAが良好な可逆波(E1/2=-0.22V vs.S.C.E.)を呈することを利用して,EDTA標準溶液でチタンの直接滴定をおこなう方法について検討した.また,本報において,直流加電圧に20mVの正弦波電圧を重塁した交流電流滴定をこころみ,直流電流滴定と比較,検討し,交流法においては10~70ppm,直流法では50~130ppmのチタンを誤差±2%以内で滴定した.
  • 秦 弘, 岡田 清
    1961 年 10 巻 2 号 p. 165-168
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリル中の低濃度(0~0.1%)アセトアルデヒドの定量法を検討し,フクシン試薬による比色定量法で試薬組成を適当にすれば混在不純物の影響なく,測定誤差士0.002%,検知限度0.001%で定量できる. またメチルビニルケトン(0~0.03%)についてはメタフェニレンジアミン法で測定誤差士0.0006%,検知限度0.0003%で定量できることを知った.これらの方法はR.L. Mauteらの方法より精度が高く,合成繊維原料アクリロニトリルの品質検定に利用できる.
  • 有機微量分析に関する研究(第3報)
    小田 仲彬, 土橋 五郎, 小野 成男
    1961 年 10 巻 2 号 p. 168-171
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    炭水素分析の迅速化および簡易化について検討をおこない,あらかじめ強熱された試料焼却部に試料をそう入する試料焼却形式を特徴とする分析法を確立した.従来法に対する本法の主な改良点はつぎのとおりである.(1)試料焼却部は酸化剤と共通に,常時800~850℃に加熱されている.(2)燃焼管キャップには,燃焼管内への酸素導通および試料そう入のための石英製細管が取り付けられている.(3)酸素の流速は,30ml/minである.
    本法の試料そう入から燃焼ガス追出し完了までの所要時間は5分,全分析所要時間は1試料につき20分であり,窒素,ハロゲン,イオウを含む化合物および昇華性や爆発性の物質などのいずれに対しても,試料焼却に際しての温度制御を必要とすることなく,画一な操作で従来法と同等の精度で分析が可能である.
  • 有機溶剤抽出法による炎光分光分析法の研究(第2報)
    後藤 秀弘, 須藤 恵美子
    1961 年 10 巻 2 号 p. 171-174
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/05/07
    ジャーナル フリー
    炎光法による金属の微量定量のさい妨害元素の除去分離ならびに感度をたかめる目的で有機溶剤抽出法を炎光分析法に取り入れ,この方法によりさきにマグネシウムの微量定量につき報告したがひきつづきカルシウムの微量定量をおこなった.すなわち,カルシウムのオキシン錯塩をメチルイソブチルケトンで抽出し,抽出液を炎光分光分析するさいの測定の諸条件を検討した.554mμまたは622mμの波長で測定しガス圧は水素圧2.01b/in2,酸素圧251b/in2とした.妨害元素の検討をおこなった結果は水溶液の時妨害を示す,マグネシウム,バリウムおよびナトリウムなどは妨害とならず,またカルシウムの定量のさい問題となるリンは水溶液における場合に比しはるかに許容量が大である.
    また本法を鉄鋼中のカルシウムの定量に応用する時は水溶液の場合に比しさらに感度よく0.001%まで定量可能である.
  • 有機溶剤抽出法による炎光分光分析法の研究(第3報)
    後藤 秀弘, 須藤 恵美子
    1961 年 10 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    炎光法による金属の微量定量をおこなうさい妨害元素の除去分離ならびに感度をたかめる目的で有機溶剤抽出による炎光法の研究をおこなっている.本報においては銅およびマンガンにつきオキシン塩を加え,オキシン錯塩としてこれを有機溶剤で抽出し銅およびマンガンの微量定量をおこなった.
    すなわち,銅およびマンガンのオキシン錯塩をメチルイソブチルケトンその他の有機溶剤で抽出し,抽出液を直接噴霧し,酸-水素炎で励起し銅は324.8mμ,マンガンは403.5mμのスペクトル線で輝度を測定し,銅およびマンガンの微量定量をおこなった.この場合水溶液における励起に比し銅は6~8倍,マンガンは20~30倍感度をたかめることができた.共在元素の妨害は抽出pHをかえることによりほとんどさけることができる.各種の溶剤につきそれぞれの抽出液の発光条件がことなるので,これらにつき検討した.
  • 田中 善正, 山本 セツ
    1961 年 10 巻 2 号 p. 182-183
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    著者らはさきにジフェニルカルバジド水銀紙が中性ないしアルカリ性でシアンイオンによって赤変することを知り,これを用いる微量シアンイオンの検出および定量法を発表した.今回は同じ試験紙を用いて空気中の微量のシアン化水素の定量を試み好結果を得たのでここに報告する.
  • 松井 義人
    1961 年 10 巻 2 号 p. 183-185
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
  • 田中 正雄, 河原 美義
    1961 年 10 巻 2 号 p. 185-187
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ローダミンBを用いたアンチモンの定量法には2種類の方法がある.すなわち,アンチモンーローダミンB錯体をベンゼンで抽出してその吸光度を測定する方法とクロロアンチモン酸をイソプロピルエーテルで抽出したのちこれをローダミンBで発色させる方法である.後者は神森,向江脇によって鉄鋼中のアンチモンの迅速定量に用いられて以来,鉄鋼業界はもちろん非鉄金属業界でも広く用いられている.しかしこの方法は安定した発色を得ることがむずかしく,したがって分析値のバラツキも比較的大きい欠点があったので,著者は抽出条件および発色時における試薬の添加方法などについて検討を加え,操作上多少の改良を加えることにより従来法より精度よく微量アンチモンの定量をおこなうことができることを確かめた.
  • 19600809
    前川 静弥, 米山 善夫, 鎌田 隆吉
    1961 年 10 巻 2 号 p. 187-188
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
  • 岩本 振武
    1961 年 10 巻 2 号 p. 189-190
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    4-(2-ピリジルアゾ)-レゾルシン(以下PARと略記)は,従来広く用いられている1-(2-ピリジルアゾ)-2-ナフトール(PAN)と同様にキレート滴定の指示薬として有用であるが,水に溶けやすい点でPANより使いやすい利点がある.とくに水溶液中でコバルト,鉛,ウランなどの金属イオンを比色定量する際には試薬と金属イオンとの錯体の水溶性とモル吸光係数がPANのそれと比べて大きいために良好な結果をあたえている.PARはFig.1に示すようにドナー原子(太字)が同一平面上にある三座配位子として金属イオンに作用し,鉄(III),コバルト(II),ニッケル(II)とは金属と試薬のモル比が1:2の錯体を,銅(II),亜鉛(II),カドミウム(II),水銀(II),鉛(II)とは1:1の錯体を生成する.これらのうち,銅(II)イオンはとくに試薬との錯生成が迅速に進み,取扱いが便利なので,PAR溶液自身の濃度を決めたり,逆に濃度が決められたPAR溶液によって銅(II)イオンの濃度を決めたりする目的で,容易に光度滴定をおこなうことができる.
  • 岩本 振武
    1961 年 10 巻 2 号 p. 190
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    鉄(III),アルミニウムなどのいわゆる加水分解を受けやすい金属イオンは微酸性溶液中でもヒドロクソ錯イオンを形成したり,多核多量体を生じてコロイド溶液となったり,さらには水和酸化物として沈殿したりする.これらの現象はそれらの金属イオンのキレート滴定に対して悪影響をあたえ,とくにコロイドや沈殿の生成は実用的には不可逆に作用するので鉄(III),アルミニウムの滴定条件の選定やpHの調節には細心の注意が必要である.Cu-PAN指示薬での鉄(III),アルミニウム合量の直接滴定は,酢酸塩またはモノクロル酢酸塩でpH2~4に緩衝した溶液を加熱ないし煮沸しながらおこなうが,そのため金属EDTA錯イオンの生成速度が増大する一方,金属イオンの加水分解反応が進行するおそれもある.このようなことを防ぐため,筆者はCu-PANおよびPAR[4-(2-ピリジルアゾ)-レゾルシン]指示薬を用いて鉄(III),アルミニウムを滴定するときに酒石酸水素カリウムを加水分解防止の補助キレート化剤ならびに緩衝剤として使用し,好結果を得た.
  • 19600826
    今井 日出夫, 茶木 正吉, 田中 義巳
    1961 年 10 巻 2 号 p. 191-193
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    溶存酸素の定量法としてWinkler法,また最近では比色法,ポーラログラフ法がよく用いられている.しかしいずれの方法も多量の試料溶液を必要とするとか,着色または溷濁溶液に適用できないとか,あるいは易還元性物質や多量の界面活性物質の共存によって妨害されるなどの難点を免れない.それでこれらの難点を避けるため,著者らはキャリヤーガスを通気して溶存酸素を溶液から気相に移したのちこれを捕捉定量する方法を検討した.以下その結果について述べる.
  • 五十嵐 正治
    1961 年 10 巻 2 号 p. 193-194
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    伸銅品の品質管理において,その合金成分の管理は非常に重要な問題である.すでに主成分である銅については迅速分析法が確立され,現場に適用されているが,鉛,スズそのほかの不純物については,満足すべき迅速分析法がないのが現状である.H. WiedmannはEDTAによる丹銅および青銅中の鉛,ニッケルなどの迅速定量法を報告しているが,共存元素の影響,その対策については明らかでない。ここでは二,三の鉛入黄銅中の鉛のEDTA滴定法について検討し,その結果,工場分析法として満足しうることを認めたのでここに報告する.
  • 間宮 真佐人
    1961 年 10 巻 2 号 p. 194-196
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
  • 界面活性剤の分析法(第1報)
    佐藤 良生, 桃谷 政順
    1961 年 10 巻 2 号 p. 196-198
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    界面活性剤を構成する脂肪酸を分析する目的で,脂肪酸のガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)について再検討した.脂肪酸メチルエステルのGCについてはすでに多くの報告があるが,エステル化の条件は,それが脂肪酸の分析のためには定量的におこなわれなければならないのに,十分の検討がなされていない.われわれは高級脂肪酸5種(カプリン酸,ラウリン酸,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸)の種々の混合物について,硫酸-メタノールによるエステル化が定量的におこなわれることを確認し,さらにそのGCにおいて,熱伝導度セル(タングステンフィラメント型)によるピーク面積比率を重量比率に換算するための補正係数をもとめ,二,三の界面活性剤の脂肪酸部分の分析をおこなったので報告する.
  • 田中 久
    1961 年 10 巻 2 号 p. 199-204
    発行日: 1961/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    従来有機試薬として使用されている化合物は,ほとんどがキレートあるいは錯体生成能を有する化合物であって,金属イオンとキレートあるいは錯体を生成することによって定性,定量,抽出などの目的に用いられている。一般に錯体を生成するための配位原子は窒素,酸素,イオウであり,それらを含む原子団の種類およびその組み合わせにより種々の形の錯体生成剤があるが,そのうち2,2'-ジピリジル,ο-フェナントロリンのようなN,N配位型,オキシンのようなN,O配位型,β-ジケトンのようなO,O配位型のものは多数知られており,錯体の安定度,構造およびそれらと試薬の化学構造との関係などの基礎的研究,分析化学への応用研究が広くおこなわれている.それに比べてイオウを配位原子とする形の化合物については,基礎研究,応用研究とも比較的少なく,かつそのなかでも大部分はS,N配位型のもので,S,O配位型,S,S配位型のものについてはわずかの例を見るにすぎず,組織的な研究もなされていない.しかしながらキレート生成能という点からみて,一般にイオウ化合物は対応する酸素化合物と比較すると,非常に異なった挙動を示すことが予想され,有機試薬としても有用なものがそのなかから見出される可能性が大きい. Schwarzenbach は錯化剤の構造とその錯体の安定度についての総説のなかで,イオウが配位にあずかる有機試薬は一般にかなり選択性が強く,またかれのEDTA誘導体の一連の研究のなかで,メチレン鎖のなかにイオウ,酸素,窒素などの原子を入れると,メチレン鎖の長さが増大するにもかかわらずあまり安定度は低下しないということを記しているし,terminal ligand atomとしても,またlinking ligand atomとしてもイオウを入れるということは,試薬の選択性,鋭敏度,錯体の安定度などの点からみて,非常に興味あることと考えられる.このようにイオウ化合物は有機試薬として,重要な意義を有しているにもかかわらず,その研究が少ないのは,対応する酸素化合物に比べて合成がかなり困難なことにも原因があると思われる.以上のような観点から,従来のイオウ化合物の有機試薬としての応用に関する文献を集め,その現況をみて,将来における発展の動向,可能性などについて考察する資料としてみたいと思う.イオウ化合物のなかでもジチゾン,ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム,チオ尿素というような,詳細に研究されている試薬については多くの文献があり,また種々の成書にも詳しいので,本稿ではこれらのものは除外し,むしろまだそれほどポピュラーでないもの,または将来試薬としての利用が考えられる可能性のあるものなどに重点をおき,イオウ化合物を大体その官能基の種類によって分類して記すこととする.
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