分析化学
Print ISSN : 0525-1931
36 巻, 10 号
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  • ハイブリッド型高選択性イオン交換体に関する研究(第1報)
    相良 文雄, 長友 泰秋, 當瀬 純一, 梁 志成, 吉田 烈, 上野 景平
    1987 年 36 巻 10 号 p. 577-581
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    無機イオン交換体として,リン酸スズ又はリン酸チタン微結晶を分散担持させた架橋ポリアクリルアミド球状粒子(ハイブリッド型イオン交換体)を調製し, Na, Liに対するイオン交換挙動をバッチ法並びにカラム法で調べた.微結晶状無機イオン交換体がカラム実験に応用困難なのに対し,ハイブリッド型イオン交換体は容易にカラム法に応用できることが分かった.そのイオン交換容量はNa,Liに対し,それぞれ6.0, 7.2meq/g SnPで,微結晶状リン酸塩のそれと同程度であり,アクリルアミド担持による吸着容量の低下は認められなかった.又, 0.1M Na-Li等モル混合溶液を用いたカラム実験で,交換吸着後1M塩酸で溶離したところ,溶離液の第3分画ではNa,Liのモル比1:20でLiが回収された.
  • 中井 清, 斎藤 和男
    1987 年 36 巻 10 号 p. 582-586
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    逆相系イオン対クロマトグラフィー(IPC)用の試薬として揮発性の高いジ-n-ブチルアミンの炭酸塩又は酢酸塩を用い,ナフタレン及びアントラキノンスルホン酸類の分離,精製法と精製物の電界脱離(FD)質量スペクトルについて検討した.本試薬は一般にIPC試薬として用いられる第四級アンモニウム塩と同様の分離効果が得られ更に溶出成分の分画液を単に60℃で減圧濃縮するだけで過剰のIPC試薬は揮発し,目的のスルホン酸をジ-n-ブチルアンモニウム(DBAH)塩として単離することができた.本法で単離したスルホン酸DBAH塩は遊離酸とほぼ同一の条件で安定にFD質量スペクトルの測定が可能で,モノスルホン酸ではDBAH付加イオンが,ジ及びトリスルホン酸ではプロトン化分子イオンが観測された.対イオンを第三級アンモニウムに変えても同様のFD質量スペクトルが得られたが,第四級アンモニウムではプロトン化分子イオンは観測されなかった.
  • 柏平 伸幸, 牧野 和夫, 桐田 久和子, 渡部 欣愛
    1987 年 36 巻 10 号 p. 587-591
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    アクロレインに選択的な化学発光検出器(CLD)を開発し,たばこの煙や自動車排ガス中のアクロレインの測定に応用した.GC分離はTCEP(25%)/Shimalite(内径3mm,長さ2m)とTCP(25%)/Chromosorb W(内径3mm,1m)の2本のテフロンカラムを連結し,窒素60ml/min,70℃で行った.CLDの感度は1ng/sであり,GC-CLDの定量限界値は約50ngであった.たばこの煙は1mlを直接GC装置に注入し,測定したが,0.44~1.0μg/ml(たばこ1本当たり平均0.14mg)のアクロレインを定量できた.自動車排ガスでは0.2~0.51をTenax-GCに捕集し加熱導入し,1.5~2.9ppmのアクロレイン濃度を得た.本法は他の炭化水素の妨害を受けず分析時間も誘導体生成法に比べて大幅に短縮できる.
  • 山本 隆彦
    1987 年 36 巻 10 号 p. 592-596
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    塩化物イオン,臭化物イオン及びヨウ化物イオンそれぞれ0.5mg以下を含む溶液50cm3に硝酸銀溶液を加え生成するハロゲン化銀の沈殿を0.45μmメンブランフィルター上に薄膜状に捕集し,蛍光X線分析法による各ハロゲン化物イオンを測定する方法を検討した.約0.9M硝酸酸性溶液中に生成したハロゲン化銀は過剰の銀イオンで溶解せず沈殿は定量的に形成される.沈殿条件を5℃,5分間とした.検量線は塩化物イオンは0.1mg以下で直線性を示すが,0.1~0.5mgでは曲線となった.臭化物イオン及びヨウ化物イオンは0.5mg以下で直線性を示した.検出下限は,塩化物イオンで0.2μg,臭化物イオンで0.1μg及びヨウ化物イオンで0.5μgであった.再現性は各ハロゲン化物イオン80μgで相対標準偏差(n=5)は2%以下で良好であった.これらの3ハロゲン化物イオンが共存した試料に本法を適用したところ±3%の誤差で同時定量が可能であった.本法を雪中のハロゲン化物イオンの測定に適用するに当たって,通常の雨水中に含まれるイオンを対象として共存イオンの効果を検討したが,妨害はほとんどなかった.日本海側の雪中のハロゲン化物イオンを測定し,満足すべき結果を得た.
  • マトリックス修飾剤の検討
    多賀 光彦, 吉田 仁志, 桜田 修
    1987 年 36 巻 10 号 p. 597-600
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    黒鉛炉を用いるSnのAASについて検討した.本報では,5×10-4Mのタングステン酸カリウムを含む試料溶液を黒鉛炉に注入し,原子化することにより,Snの定量を行った。その結果,干渉を抑制し,Snの感度・精度を向上することができた.又,原子化温度の増大と共にピークの形状は鋭くなり,ピークの高さは高くなる.しかし,ピークの面積は温度に関係なく一定であり,しかも,ピークの現れる温度は,いずれも同一であった.標準岩石試料(GSJ JG-1, JB-1),及び市販の果実缶詰について,分離操作をせずにSnを定量することができた.
  • 高見 勝重, 望月 京司, 加茂 智子, 杉前 昭好, 中本 雅雄
    1987 年 36 巻 10 号 p. 601-606
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    ジメチルフェネチルシランを化学結合させたシリカゲルをミニカラムに充てんし,このカラムで環境水中のフェノール類を捕集・濃縮し,HPLC用分析カラムに導入して分離し,蛍光検出器(Ex:275nm,Em:300nm)で定量する方法について検討した.HPLC装置は,試料注入用高圧六方バルブのサンプルループにミニカラムを装着し,バルブの切り換えによって溶離液をミニカラムに通し,濃縮試料を分析カラムへ導入できるようにして使用した.試料をリン酸でpH4に調製し,メンブランフィルター(0.45μm)で濾過して試験溶液とする.この試験溶液0.1~2mlをシリンジで,高圧六方バルブに装着したミニカラムに通してフェノール類を濃縮する.溶離液の流路を切り換え,濃縮試料を分析カラムに導入し,フェノール類を分離,保持時間で同定,ピーク面積で定量した.本法によるフェノール類の検出限界は0.1~0.2ngで,2mlの試料を濃縮した場合の定量限界はフェノール,o-,m-,p-クレゾールで0.05μg/l,キシレノール類で0.1μg/lであった.又,1μg/l濃度となるようにフェノール類を添加した実試料の回収率はそれぞれ90.0~107%で,相対標準偏差(n= 5)は2.0~6.0%であった.
  • 上舘 民夫, 上原 博通
    1987 年 36 巻 10 号 p. 607-611
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    シュタルク掃引マイクロ波空洞アンモニア分析計による煙道排ガス中のアンモニアの測定を行った.その結果,測定値が化学分析値と比較して30%低値となった.この原因は,吸収の飽和のない測定条件であったために,共存ガスの影響によるアンモニアの線幅の広がりが,吸収強度の減少として観測されたためであると説明できた.そこで,吸収セル内のマイクロ波の電界強度を増大させ,より高い試料圧力側まで吸収の飽和が起きるように,吸収セルの長さを80cmから40cmまで短縮した.その結果,実用上十分な感度が得られる試料圧力で共存ガスの影響のないアンモニアの測定ができることが明らかとなった.
  • 森下 富士夫, 児玉 孝徳, 森本 真次, 田中 剛一, 小島 次雄
    1987 年 36 巻 10 号 p. 612-617
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    オクタデシルシリカを固定相とする逆相クロマトグラフィーにおいて,移動相のpHを7.7から4.5に変えたときのアザアレーンの分配比κの減少の大きさはアルキル置換基による超共役効果が働くかどうかに依存した.そのために,κの減少の大きさから置換基の位置に関しての知見が得られた.一方,CN結合型シリカを固定相とする順相クロマトグラフィーにおいては,ほとんどのアザアレーンを芳香族第一及び第二アミンから分離することができた.又,アザアレーンのκは主として,固定相と溶質の窒素原子の相互作用を置換基が妨害する程度によって決定された.こうして,窒素原子の周りの分子内環境についての知見が得られることが分かった.
  • 小南 文四郎, 大川 眞一郎, 鈴木 由香里
    1987 年 36 巻 10 号 p. 618-622
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    10-(2-ベンゾチアゾリルアゾ)-9-フェナントロール(TAPと略記)とその亜鉛キレートを非イオン性界面活性剤を用い水に可溶化し,吸光光度定量の基礎的条件,妨害イオンとその対策について検討した.亜鉛キレートの吸収極大は波長540nmに認められ,pH7.0~8.0の範囲でほぼ一定吸光度を示した.検量線は15.0μg/25mlまではベールの法則に従い,検量線(540nm)から求めたモル吸光係数は約5.7×104dm3mol-1cm-1であった.錯体の組成はモル比法と連続変化法によって調べ,Zn(II)とTAPが1:2モル比の錯体を生成するものと推定した.妨害イオン対策として,チオ硫酸ナトリウムによる妨害イオンの沈殿分離法,マイクログラム単位のZn(II)をチオシアン酸塩としてエーテル相への抽出分離,シアン化カリウム-ホルマリンによるマスキング-デマスキング及びN-(ジチオカルボキシ)サルコシンジアンモニウム塩によるマスキングを検討した.次いで環境標準試料リョウブ中のZn(II)を定量し好結果を得た.
  • 釜谷 美則, 村上 徹朗
    1987 年 36 巻 10 号 p. 623-625
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    An indirect spectrophotometric method for the determination of sulfate using barium nitranilate has been investigated. The analytical procedure is as follows: Add 30 mg of barium nitranilate to 5 ml of ethanolic solution (1 + 10) containing sulfate (525 μg) in a 10-ml stopped centrifuge tube. Shake for 5 min with mechanical shaker, and centrifuge the precipitate for 10 min at 300 rpm. Measure the absorbance of the supernatant liquid at 300 nm with a 1-cm quartz cell against a reagent blank. Beer's law holds and the present method showed good reproducibility of relative standard deviation of 1.1 %, and the molar absorptivity for sulfate is 1.72 × 104 1mol-1 cm-1. Phosphate, thiosulfate, arsenate, chromate, sulfite, oxalate, calcium and strontium ions interfered with the determination of the analyte. The present method was applied to the determination of sulfate in tap water.
  • 山根 兵, 小川 庸生
    1987 年 36 巻 10 号 p. 625-628
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    A flow injection-spectrophotometric method has been presented for the simple, rapid and sensitive determination of L-ascorbic acid. The method is based on the reduction of Fe(III) by L-ascorbic acid and subsequent formation of coloured Fe(II) complex with 1, 10-phenanthroline which is monitored spectrophotometrically at 510 nm. The calibration curve was rectilinear up to 1.0 × 10-5 M L-ascorbic acid when 5.0 × 10-5 M Fe(III) and 2.5 × 10-4 M 1, 10-phenanthroline solutions were propelled with the flow rates of 0.55 ml/min and 0.25 ml/min, respectively, and 100μl sample was injected into the carrier stream. The method has a limit of detection of 2.5 × 10-7 M and permits ca. 70 determinations per hour with a relative standard deviation of 1.8% for 5.0 × 10-6 M solution. In the analysis of fresh fruit juices and fruit drinks, the samples were filtered and suitably diluted before injection. The results by the proposed method were well agreed with those by the titration method with 2, 6-dichlorophenolindophenol.
  • 山口 整毅, 塚本 務人, 千田 貢
    1987 年 36 巻 10 号 p. 628-631
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    Square wave hydrodynamic modulation voltammetry with a vibrating platinum wire electrode was applied to the determination of thiols in pH 3.0 phosphate buffer solution. The modulation currentpotential curve and the difference modulation currentpotential curve showed a maximum at the potential range between +0.7 V to +0.9 V vs. SCE. The difference modulation current measured at +0.65 V increased linearly with the concentration. Also, the modulation current increased with the number of thiols in a molecule. Thiols except reduced glutathione were determined in the order of 10-6 mol dm-3 with this method. Reduced glutathione gave the unexpectedly small modulation current. The effect of adsorption of protein molecules on the electrode surface was discussed.
  • 柏平 伸幸
    1987 年 36 巻 10 号 p. T103-T107
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    フタル酸エステル類(PAE)を電子捕獲型検出器付きGC(GC-ECD)で定量する際の最適条件を得るため,フタル酸ジ2-エチルヘキシル(DEHP)を用いてECDへの応答を検討した.DEHPのECD感度は分離温度やキャリヤーガス流量などのGC要因の影響を受けるが,特に後者の影響は著しく流量が大きくなると応答は指数関数的に低下し,条件によっては負のピークを与えた.これらの結果を基にしてPAEのECD応答について議論した.PAEのGC-ECDにおいては,キャリヤーガス流量を小さくして感度を上げ,カラム温度を上げてピークをシャープにするようにする.
  • 山本 信也, 保坂 匡哉, 神田 正雄, 横内 未知夫, 山田 純一, 田原 定明
    1987 年 36 巻 10 号 p. T108-T112
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    メタノールこう配溶出法(グラジエント)とフォトダイオードアレイ検出器を使用した逆相HPLCを用い,保持値の標準化法について検討した.内標準物質群はアルキルフェノン9種を選び,凸型グラジエントにおいて,それらの保持時間と側鎖アルキル基炭素数の間に良好な直線関係が生じた.この関係を利用した保持指標と吸光スペクトルの吸収極大波長の2要素から成る検索プログラムをマイクロコンピューターにより作成し,化粧品関連約300試料について入力,データベースを作った.本検索システムは検出ピークの迅速同定に有用であることを示した.
  • 岩佐 靄子, 米本 理, 松原 いく子, 中川 清
    1987 年 36 巻 10 号 p. T113-T117
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    炭素炉AASにより毛髪中のAlを正確に定量するために,試薬,実験室の空気,容器からの汚染を詳細に調べた.硝酸中のAl量は一つのロットについては一定であり,著者らの扱った硝酸,過酸化水素水,フッ化水素酸については,それぞれ40ng ml-1以下,38.5ng ml-1,6.5ng ml-1であった.空気中からのAl汚染は検出されなかった.プラスチック容器と石英容器は,20%硝酸に1昼夜浸すとほとんど清浄になる.試料の加熱分解に用いるテフロン及び石英容器は,12%硝酸中で1時間加熱して汚染を除くことができた.この方法で容器を洗浄することにより,から試験値(Al汚染)を低く抑えることができ,毛髪アルミニウム量をより正確に定量できる.
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