分析化学
Print ISSN : 0525-1931
60 巻, 7 号
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総合論文
報文
  • 宮崎 照美, 門上 希和夫, 園田 裕一, 陣矢 大助, 山上 仰, 東房 健一, 尾川 博昭
    原稿種別: 報文
    2011 年60 巻7 号 p. 543-556
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    標準品の測定や検量線の作成をすることなく,化学物質を同定・定量するGC/MS向けの全自動同定・定量データベースシステムの室内併行,室内および室間再現性を検討し,測定値のばらつきを把握するとともに,ばらつきの原因を明らかにした.検討は,GCで測定しにくい物質を含む広範囲の物理化学的性質から構成される114物質を用い,4機関4台のGC/MSで行った.その結果,(A)装置性能を維持すれば47物質(41%)が試料測定時に検量線を作成する従来の手法と同等の再現性で測定でき,(B)42物質(37%)の再現性は従来法から若干劣るものの目的によっては定量可能であった.しかし,(C)25物質(22%)は,採用GC条件では,再現性が悪くスクリーニングとしての使用しかできないことが分かった.また,ばらつきに影響を与える主な要因は,物質の持つ官能基や骨格であり,その度合は,(1) 官能基の種類では,水酸基≧アミノ基>ニトロ基,(2) 官能基の数では,複数>単数,(3) 官能基が複数ある場合の官能基の位置では,各官能基が離れている>各官能基が隣接している,(4) 物質の骨格については,枝別れ炭化水素>直鎖炭化水素>単数のベンゼン環>複数のベンゼン環,であることが確認できた.
  • 渡辺 邦洋, 緑川 裕康, 四反田 功, 板垣 昌幸
    原稿種別: 報文
    2011 年60 巻7 号 p. 557-562
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    鉄鋼分析において最大の妨害成分である鉄マトリックスを利用した,Ni(II)のオンライン予備濃縮法を検討した.本法ではFIAに導入されたテフロン®フィルターチューブで沈殿を捕集し,濃縮するシステムを採用した.鉄鋼のマトリックスである鉄の約99% をクエン酸とジメチルグリオキシム(DMG)を用いることで可溶性錯体としてフィルターチューブを通過させ除去し,残りの鉄を水酸化物としてNi(II)との共沈物を生成させ捕集濃縮した.この沈殿を硝酸で溶離し,Ni(II)に酸化剤を加えた後,DMGを反応させ,生成したNi(III,IV)-DMG錯体の吸光度を535 nmで測定した.濃縮に用いた少量のFe(III)の妨害はクエン酸三ナトリウムを再び加えることによりマスキングされた.濃縮時間40分間で作成した検量線は,Ni(II)濃度0~500 ppbの範囲で直線となり,検出限界は1.2 ppb,定量下限は3.7 ppbであり,濃縮しないものに比べ感度が63倍向上した.また5分間濃縮では,Ni(II)濃度0~4000 ppbが定量可能範囲であり検出限界は8.4 ppb,定量下限は25 ppbであった.本法を鉄鋼標準試料へ適用し,認証値とほぼ一致した良好な結果を得た.
  • 富山 眞吾, 鈴木 彌生子, 中下 留美子, 相川 良雄
    原稿種別: 報文
    2011 年60 巻7 号 p. 563-570
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    近年社会問題化しているコメの産地偽装問題に対し,科学的根拠に基づいた判別技術の確立が求められており,そのためにはコメと生育水の軽元素安定同位体比の相関性を確認する必要がある.本研究は,青森県津軽平野を対象に生育水の酸素・水素安定同位体比及び炭素安定同位体比の空間的分布を明らかにし,その上でコメの安定同位体比との相関性を検討した.津軽平野の中央部では平野縁辺部と比較して生育水の酸素・水素安定同位体比が高い傾向にある.δダイアグラム上における天水線の傾きは4.95であり,蒸発散により平野中央部では同位体比がシフトしている可能性を示している.コメの酸素安定同位体比は生育水と有意な相関を持ち,酸素安定同位体比によるコメの産地判別法の可能性が示唆された.生育水の炭素安定同位体比はpHと相関関係にあり,無機炭酸の化学種の存在比を反映している可能性がある.コメの炭素安定同位体比は生育水との相関が認められず,大気中CO2を起源の大部分とし,土壌の水分条件など水利用環境の違いを反映した同位体比を示しているものと考えられる.
  • 金藤 浩司, 津越 敬寿, 岩瀬 晃盛
    原稿種別: 報文
    2011 年60 巻7 号 p. 571-577
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    技能試験に用いられるzスコアに関連する二つの評価手法の定量的把握を目的として,二つの方法を提案した.初めに,単一試験品目の試験データの分布が正規分布と異なる場合,対数正規分布に基づくzスコアの構成手法を提案した.この手法は正規分布に基づく判断基準が適応できるので,二つの試験物質の試料に基づく試験所間比較においても同様に用いることができる.次に,二つの試験試料を用いた試験では,配付試料の濃度差の大きい試験が存在している.このような状況において,試験所間の偏りと試験所内のばらつきを測る新たな変量間の関係が無相関となるような変量の変換後の直交座標と元の試料の直交座標がなす角度を45度に固定すると,最終的な評価において誤りを生じる.そこで,この角度を推定した後に,無相関となる二つの変量の組を作り評価することが必要であることを指摘し,この角度をデータから推定する方法を提案した.
  • 川久保 進, 小楠 浩未, 岩附 正明
    原稿種別: 報文
    2011 年60 巻7 号 p. 579-584
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    接触分析法は高感度な金属イオンの定量法であるだけでなく,触媒活性を示す反応性金属イオンの化学的結合状態を特定できれば,存在状態についての情報を与えるスペシエーション法となりうるが,このような観点からの応用研究は極めて少ない.本研究では,溶存酸素によるL-アスコルビン酸の酸化反応における銅の触媒作用を利用し,この反応によって生じるデヒドロアスコルビン酸をo-フェニレンジアミンと反応させてキノキサリン化合物(QX)を生成させ(pH 6.9,25℃),反応5分後の吸光度を340 nmで測定することにより,検出限界0.1 μg L−1(酸性試料の場合,0.5 μg L−1)で0~7 μg L−1の反応性銅が定量できる方法を開発した.異なる銅シュウ酸錯体の反応性の違いを利用してCu2+またはCuIILi(配位子Lが単座配位子の場合はi=1または2,二座配位子の場合はi=1)が反応性を示すことを明らかにした.本法を水道水と河川水中の銅のスペシエーションに応用し,本法の有用性を示した.
  • 渡辺 邦洋, 石井 雄, 四反田 功, 板垣 昌幸
    原稿種別: 報文
    2011 年60 巻7 号 p. 585-591
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    クマリン誘導体の中から新規化学発光試薬の探索を行った.実験の結果4-メトキシクマリンがCr(VI)に対して強い発光反応を示したため,これを利用し,フローインジェクション分析法(FIA)を用いた4-メトキシクマリンによるCr(VI)の化学発光定量法を開発した.フローシステムは2流路を用いてクロムの検出を行った.最適条件下リバースFIA法での検量線は,Cr(VI) 0~100 ppbの範囲において直線となり,検出限界は2.1 ppb,定量下限は6.3 ppbとなった.検出試薬にNaOHを加えると発光強度が著しく増大した.アルカリを加えることでクマリン誘導体は分解反応を起こし,その分解生成物が発光反応に大きくかかわっていると推定された.
技術論文
  • 北見 秀明, 石原 良美, ?野 二郎
    原稿種別: 技術論文
    2011 年60 巻7 号 p. 593-597
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    食品中に含まれる脂溶性のビタミンEであるトコフェロール(Tocopherol : Toc)の分析は,溶離液にヘキサンなどを使用する順相系の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が用いられる.そこで,分析対象物質の各Toc(α, β, γ, δ)についてトリアコンチル基結合型シリカ固定相(C30)を用いて,メタノールと水を溶離液とした逆相系の分離条件により,溶離液を混合させる方法の違いによる定量への影響やその再現性について検討を行った.これらの各Tocはメタノール/水をあらかじめポンプで送液する前に98/2で混合し,さらに脱気することにより良好に分離し,分析の所要時間はベースラインの安定時間を含めて約20分であった.このときの定量波長は295 nm,カラム温度は30℃,注入量は20 μLとし,分析対象物質における共通の検量線の直線範囲は10~100 mg L−1で10 mg L−1を3回分析したときの相対標準偏差(RSD)は0.69~0.98% であった.大豆油を用いた添加回収試験では,各Tocにおいて回収率が91.7~98.6%,RSDが2.8~4.8% とそれぞれ優れた回収率とRSDが得られた.
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