分析化学
Print ISSN : 0525-1931
38 巻, 5 号
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  • 細井 康宏, 本水 昌二
    1989 年 38 巻 5 号 p. 205-210
    発行日: 1989/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    非イオン性界面活性剤のTriton X-100(TX-100;0.01%v/v)の存在下,テトラブロモフェノールフタレインエチルエステルの酸型(TBPE・H)とアルキルアンモニウムイオン(第四級アンモニウムイオン:C+)は反応し,イオン会合体,(C+・TBPE-),を生成する.この反応は,TBPE・HとTX-100との混合ミセル(TBPE・H+nTX-100)mから,イオン会合体とTX-100との混合ミセル(C+・TBPE-+nTX-100)mへの変化,すなわちイオン会合体のミセル抽出によるものとした.本ミセル抽出-発色系はアルキルアンモニウムイオンの吸光光度定量に応用でき,FIAに適用すれば,溶媒抽出を用いない簡便な方法となることが分かった.
  • 細井 康宏, 本水 昌二
    1989 年 38 巻 5 号 p. 211-214
    発行日: 1989/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    テトラブロモフェノールフタレインエチルエステル(TBPE・H)はpH4でTritonX-100(TX-100)と混合ミセル(TBPE・H+nTX-100)mを形成している.これに,疎水性の有機オニウムイオン(C+)が加えられると(C+・TBPE-)のイオン会合体が生成され,ミセルに可溶化する(イオン会合体のミセル抽出).ミセル抽出の平衡は式,(TBPE・H+nTX-100)m+C+〓(C+・TBPE-+nTX-100)m+H+,(n〓10)に従うものとし,各種アルキル基を持つアミン,アンモニウムイオン,ホスホニウムイオン,アルソニウムイオンなどのオニウムイオンについて,ミセル抽出平衡を検討した.オニウムイオンのミセル抽出性は水-クロロホルム系における抽出性と良い相関を示すことが分かった.
  • 久保 博昭, 黄 躍生, 木下 俊夫
    1989 年 38 巻 5 号 p. 215-217
    発行日: 1989/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    ニンヒドリン及びフェニルアセトアルデヒドを用いFIA法によるアミノ化合物であるゲンタマイシンの蛍光定量法を確立した.反応試薬溶液としてニンヒドリン及びフェニルアセトアルデヒドの各々20mMを含むエタノール溶液,キャリヤー液として0.2M酢酸ナトリウム水溶液(pH11.5)を用い各々1.0ml/minで送液した.キャリヤー液流中に試料液を注入した後,キャリヤー液と反応試薬溶液を反応コイル(65℃)中で混和し,更に冷却コイル(5℃)を通過させた後,分光蛍光検出器(Ex380nm,Em480nm)を用いてゲンタマイシンを測定した.本法では,第二アミンであるプロリンは発蛍光せず,アンモニアはわずかに蛍光を示した.ゲンタマイシンは0.1~5.5μg/mlの範囲で直線の検量線を示し,相対標準偏差は0.55μg/mlに対して2.3%,5.5μg/mlに対して0.65%であった.
  • 浅井 勝一, 後藤 正志, 渡辺 伸, 石井 大道
    1989 年 38 巻 5 号 p. 218-223
    発行日: 1989/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    液体窒素による冷却オンカラム濃縮とキャピラリーGCを組み合わせた多成分有機溶剤蒸気の同時分析システムを開発し,労働安全衛生法によって測定が義務づけられている作業環境中の18種類の有機溶剤の同時定量に応用した.空気試料(例えば3ml)を1ml/minの流速のキャリヤーガスによって,液体窒素浴中に浸したキャピラリーカラム中に導き,試料成分をカラムの入口部に直接凝縮捕集する.その後液体窒素浴を取り除き,昇温GCを行い,水素フレームイオン化検出器で検出する.分離カラムに極性カラムと微極性カラムを連結して用いることにより,上記18種類の有機溶剤をほぼ安全に分離することができ,そのうちの16成分については各管理濃度の1/100まで検出することができた.本法を大学の有機廃液焼却処理施設の作業環境測定に応用して良好な結果を得た.
  • 中村 靖, 小林 義男
    1989 年 38 巻 5 号 p. 224-227
    発行日: 1989/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ケイ素を過剰のモリブデン酸塩と反応させ,モリブドケイ酸を生成し,この錯体中のモリブデンを誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS法)で測定して間接的にケイ素を定量する方法を検討した.モリブデン酸とモリブドケイ酸との分離は,Sephadex G25 (デキストランをエピクロロヒドリンで三次元的に架橋したゲル)を用いた.このゲルは,モリブドケイ酸をよく吸着するが,モリブデン酸は全く吸着しない.ゲルに吸着したモリブドケイ酸は,アンモニア水で溶離してICP-MS法で測定する.ヘテロポリ酸を生成する元素のうち,ヒ素はゲルクロマトグラフィーで分離除去され,リンはシュウ酸を添加することによって影響を避けることができるが,ゲルマニウムはあらかじめ分離しておく必要がある.本法を用いて高純度銅中のケイ素を定量したが,定量下限は20ppbであった.
  • 斉 文啓, 林 淑欽, 陳 樹楡, 酒井 馨
    1989 年 38 巻 5 号 p. 228-232
    発行日: 1989/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    タンタル,タングステン,バナジウム,モリブデン,ランタンで処理したグラファイト管を用いて,スズの直接定量のためのAASを比較検討した.グラファイト管をそれぞれの金属溶液に浸し,乾燥後,グラファイト炉に取り付け,2700℃まで加熱して金属炭化物を被覆した.これら処理管の使用により未処理管に比ベスズの測定における感度は著しく改善された.特にランタン処理管では,感度上昇率は11倍以上,1ngスズ,10回測定で相対標準偏差は2.0%であり,約400回の繰り返し測定ができた.この処理管を天然水中のppbレベルのスズの直接定量に適用するため,アスコルビン酸とリン酸一水素二アンモニウムをマトリックス修飾に用い,満足できる結果を得た.又,X線回折装置と走査電子顕微鏡で表面折出物を調査した.
  • 金 萬九, 矢川 一夫, 井上 秀成, 白井 恒雄
    1989 年 38 巻 5 号 p. 233-238
    発行日: 1989/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    硫黄選択性の炎光光度検出器付きの熱分解ガスクロマトグラフを用いて,都市大気粉じん中に存在する自動車のタイヤトレッド摩耗成分の迅速な定量法を検討した.タイヤトレッドに特有な含硫黄熱分解生成物はチオフェン,2-メチルチオフェン,3-メチルチオフェン及び加硫促進剤に由来するベンゾチアゾールであった.ベンゾチアゾールピークには粉じん中に共存するタイヤトレッド以外の物質からの妨害がなかった.そしてその生成率は含硫黄熱分解生成物の中で最も大きく,最大生成率を示す熱分解温度は670℃であり,しかもタイヤトレッドの種類の違いによるばらつきは23.2%でタイヤトレッドの特性ピークの中で最も小さかった.ベンゾチアゾールを特性ピークとした本法では1μgまでのタイヤトレッドが定量可能であり,試料の前処理を必要としないため分析時間も約30分以内であった.又,本法は都市大気中タイヤトレッド粉じん濃度の経時変化の測定に適していることが示された.
  • 大崎 靖彦, 永瀬 誠, 松枝 隆彦
    1989 年 38 巻 5 号 p. 239-244
    発行日: 1989/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    環境水及び工場排水などの水試料中のアルデヒド類を窒素でパージし,2-ジフェニルアセチル-1,3-インダンディオン-1-ヒドラゾン(以下,DAIHと略記)を用いて誘導体化した後,この誘導体をHPLCで測定し,アルデヒド類を定量する方法を確立した.すなわち,水試料200mlを洗気瓶に入れた後,塩化ナトリウム40gを加え溶解し,80℃の湯浴中に入れ,窒素を通じながら(100ml/min)50分間静置しアルデヒド類をパージした.洗気瓶のガスの出口は捕集液(DAIH 15mg,アセトニトリル30ml,塩酸5滴)を入れたインピンジャーをシリコンチューブで連結し,パージされたアルデヒド類を捕集した.捕集液はそのまま,あるいはロータリーエバポレーターを用いて適当な濃度に濃縮し,その20μlをHPLCに注入した.測定したピーク高さとあらかじめ作成した検量線からアルデヒド類の値を算出した.この方法による水試料からの回収率はアセトアルデヒド:92~98%,アクロレイン:82~96%,プロピオンアルデヒド:94~99%,クロトンアルデヒド:79~96%であった.又,検出限界はアセトアルデヒド:1.2μg/l,アクロレイン:0.7μg/l,プロピオンアルデヒド:1.5μg/l,クロトンアルデヒド:0.7μg/lであった.
  • 田中 俊逸, 高畠 美子, 林田 一良, 吉田 仁志
    1989 年 38 巻 5 号 p. 245-248
    発行日: 1989/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Tellurium(IV) can be easily extracted into nitrobenzene from acid solution containing halide ion and 1, 10-phenanthroline (Phen). It seems to be due to the formation of the ternary complex between Te( IV)-halide complex and protonated 1, 10-phenanthroline. The ternary complexes are quantitatively extractable when the acid concentration is more than 0. 5 M for the iodocomplex and 2 M for the bromocomplex. The procedure for the extraction was as follows. The sample solution containing Te(IV) was introduced into a 100 ml separatory funnel to which potassium iodide or hydrogen bromide were added and the acid concentration was adjusted with sulfuric acid. After 1, 10-phenanthroline solution was added, the volume was made up to 20 ml with water. The mixture was shaken with 4 ml of nitrobenzene. The amount of Te(IV) in the organic phase was measured by AAS. The calibration curves obtained by the above procedure were linear up to 4× 10-5 M for Te(IV) as the iodocomplex and 2 × 10-5 M as the bromocomplex, respectively. The detection limit was 5 × 10-7 M. The influence of coexisting metal ions on the determination of Te(IV) was investigated. By the addition of reducing agent such as sodium hypophosphite and the pre-extraction of metal ions at pH 3. 0 as ternary complex with phenanthroline in the form of [M (Phen) m-Xn], the interferences by many metal ions could be excluded. The composition of the extracted species was investigated by the equilibrium method and elementary analysis. The results showed it to be Te(IV) : halide ion : Phen = 1 : 6 : 2. It could be assumed that Phen would take part in the formation of ion-pairing as the cation (PhenH+).
  • 加藤 弘眞, 石田 知子, 馬場 由佳, 木庭 秀明
    1989 年 38 巻 5 号 p. 249-251
    発行日: 1989/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Direct chromatographic optical resolution of RS-malic acid without pre-derivatization was successfully achieved for the first time on a ligand exchange chiral column, MCI GEL CRS 10W. Addition of organic solvent, particularly acetonitrile, was effective for obtaining a small capacity factor as malic acid was found to be strongly adsorbed on the column. The degree of resolution (Rs) was raised by lowering the column temperature; however, resolution at room temperature was more suitable as column pressure simultaneously increased. Optical resolution of malic acid in commercial apple juice and soft drinks was also effectively carried out, predicting a high possibility for quality control usage.
  • 新井 信正, 南澤 宏明, 奥谷 忠雄
    1989 年 38 巻 5 号 p. 252-254
    発行日: 1989/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    Nickel ( II ) complex with 2, 4, 6-tri-2-pyridyl-1, 3, 5-triazine (TPTZ) and iodide having the composition of Ni : TPTZ : I = 1: 2 : 2 was found to be extracted into nitrobenzene easily. And the nickel could be determined by utilizing this complex formation reaction and flame AAS directly. The optimum pH for the extraction was 9. 0. The complex was stable at least 2 d in the organic phase. Relative standard deviation (n= 10) of this method was 1. 6 and 3. 6% for 10 and 2 ppb of nickel (II) in 500 cm3 aqueous phase. The presence of Co (II), Cu ( II) and Fe (III) ions with 10100 times of nickel interfered the determination, while other diverse ions did not. Fe (III) could be masked with 0.2% potassium tartrate. Trace nickel in water samples was determined.
  • 西岡 利勝, 西川 孜
    1989 年 38 巻 5 号 p. T59-T62
    発行日: 1989/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    高分子同志による接着界面付近における分子間相互作用を,顕微FTIR分光法により観測する方法を開発した.この方法は,接着試料からウルトラミクロトームのガラスナイフで厚さ5~20μm程度の切片を切り出し,切片断面を顕微FTIRにより深さ方向分析するものである.本法により,ポリウレタンとエチレン-アクリル酸エチル共重合体のエチルエステル基を一部加水分解した共重合体(EAA・EEA)との塗装界面付近の分子間相互作用を調べた.その結果,ポリウレタンの第二アミンとEAAのカルボキシル基との分子間相互作用が観測され,EAA・EEA層の90μmの深さにまで及んでいることが分かった.又ナイロン6と無水マレイン酸グラフトポリエチレンとの接着界面付近の分子間相互作用についても検討し,本法の実用性が示された.
  • 江藤 元則
    1989 年 38 巻 5 号 p. T63-T67
    発行日: 1989/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    加圧酸分解/ICP-AESによるアルミナあるいは活性炭を担体とする触媒中のイリジウムの定量について検討した.アルミナを担体とする試料では,テフロン密閉容器中で王水(2+1)を用いて210℃で5時間以上加熱することによって完全に分解できた.活性炭を担体とする試料では,テフロン密閉容器中での直接分解が困難であったため,活性炭担体を硝酸と過塩素酸で加熱分解した後,テフロン密閉容器中180℃で5時間加熱することによって分解した.分解後,イットリウムを内標準としてICP-AESでイリジウムを定量した.なお,アルミナを担体とする試料では測定時にアルミニウムが多量に共存し測定を妨害するため,標準液にも同量のアルミニウムを添加して分析した.本法での分析結果は過酸化ナトリウム融解法のそれとよく一致し,分析精度は相対標準偏差で0.4~0.7%であった.
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