分析化学
Print ISSN : 0525-1931
44 巻, 12 号
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  • 金 幸夫, 中谷 清治, 八尾 浩史, 喜多村 昇
    1995 年 44 巻 12 号 p. 977-987
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    マイクロメートルサイズの微粒子を非接触・非破壊に自由に操ることのできるレーザー捕そく法と,空間分解能を持つ顕微分光法を組み合わせたレーザー捕そく・顕微分光法を用いることにより,微粒子1粒ごとの分光分析が可能である.これを用い,水中に分散した油滴の油水界面で起こる反応の解析,油滴の融合,マイクロカプセル調製時に生じる内包物質の不均一(濃度)分布,イオン交換過程の直接測定に応用した例について紹介する.微粒子1粒ごとの分光分析を行い,その粒径依存性を検討することにより,従来の分散系や微粒子集合系の測定では知り得なかった粒ごとの濃度の違いや微粒子内での分布状態を明らかにすることができる.空間配置を意識した測定・反応の重要性についても合わせて述べる.
  • 板橋 英之
    1995 年 44 巻 12 号 p. 989-999
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    溶媒抽出を用いた銅(II)錯化容量の測定法の原理と本法を河規水試料に応用した結果,並びにリバースフローインジェクション法を用いた天然水の金属錯化容量の測定法について記述した.まず,溶媒抽出法を用いた方法として,逆抽出法と抽出速度法による銅(II)錯化容量の測定原理について解説した.本法を河川水試料に応用した結果,都市部を通過した試料には,人間活動に起因した配位子が溶存していることが明らかとなった.次に,逆抽出法を用いた銅(II)の錯体の条件安定度定数の測定法と,銅(II)のテノイルトリフルオロアセトン抽出における副反応係数を利用した銅(II)のスペシエーションについて記述し,河川水試料中の銅(II)の溶存状態について考察した.本結果から,試料水中に溶存している遊離の銅(II)濃度は10-13mol dm-3レベルであり,本河川水中の銅(II)は,ほとんどが共存する配位子と結合した錯体として溶存していることが分かった.最後にリバースフローインジェクション法を用いた金属錯化容量の測定法の原理について記述した.本法を用いて河川水と湖水の金属錯化容量を測定したところ,逆抽出法で求めた値と同じオーダーの値が得られ,本法の有用性が示唆された.
  • 勝田 正一
    1995 年 44 巻 12 号 p. 1001-1012
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    種々の金属イオンのキレート抽出系において,フェノール類の添加が抽出を著しく増大させる現象を見いだした.フェノール類の効果は,従来から知られている中性配位子による協同効果とは選択性において全く異なることを示した.分光学的測定により,抽出増大効果は有機相における金属キレートとフェノールの水素結合による会合体生成に起因することを明らかにした.抽出平衡の定量的解析から,種々の金属キレートとフェノール類の会合定数及び熱力学的パラメーターを決定し,得られた定数に基づいて金属キレートの水素結合受容性を支配する因子を考察した.これらの結果より,キレート抽出系における水素結合の重要性を明示した.
  • 本仲 純子, 三島 有二, 池田 早苗, 田中 信行
    1995 年 44 巻 12 号 p. 1013-1019
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    光や空気に対して不安定なビタミンA-β-カロチン混合物に過剰量のヨウ素あるいはN-プロモスクシンイミド(NBS)を作用させると試料溶液濃度に比例して安定なヨウ化物イオンあるいは臭化物イオンを生じるので,生じたハロゲン化物イオンをヨウ化物イオン選択性電極を用いて過塩素酸銀標準溶液で電位差滴定することにより,間接的にビタミンA-β-カロチン混合物を定量する方法を検討した.基礎的な条件設定のために,ビタミンA及びβ-カロチンークロロホルムーメタノール溶液の安定性,ヨウ素及びNBS添加量の影響,温度の影響,pHの影響,有機溶媒の影響並びに共存物の影響について検討した後,最適条件を用いてビタミンA-β-カロチン混合物の定量可能範囲を求めた.本法を用いることによりビタミンA(0.328~32.8mg)-β-カロチン(0.268~26.8mg)混合物を,室温(20℃)でビタミンA-β-カロチン混合物に対して理論的必要量以上のヨウ素あるいはNBS溶液を添加することにより,±7.5%以内の相対誤差と相対標準偏差で定量可能であった.
  • 渡邊 英樹, 佐藤 寿邦
    1995 年 44 巻 12 号 p. 1021-1025
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    カルボキシル基型の固定相充てん剤を使用する陽イオン交換クロマトグラフィーによりアルカリ金属及びアルカリ土類金属イオンの同時定量を行う際に用いる溶離液について検討した.溶離液成分の酸解離定数が小さくなるに従い検出感度が減少することを明らかにした.これは試料イオンの溶出に伴う解離平衡の移動によるためと考え,段理論に基づく計算シミュレーションと,平衡論的取り扱いによるピーク面積の理論式の導出を行った.計算シミュレーションと理論式及び実験結果とを比較したところよい一致を示し,この式によって各試料ピーク面積をあらかじめ予測することができるようになった.検出感度が高い点やマグネシウムイオンとカルシウムイオンの分離度を調節できる点などから,硝酸-ニトリロ三酢酸系が優れていた.
  • 山田 秀和, 梶山 新, 米林 甲陽
    1995 年 44 巻 12 号 p. 1027-1032
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    ヨウ素の酸化還元反応{Ce(IV)-As(III)}に対する触媒作用を,HPLCのポストカラム反応に利用する微量ヨウ素の定量法を検討した、ヨウ化物イオンを,C18カラムを固定相に,As(III)と対イオンとしてテトラブチルアンモニウムイオンを含む移動相(アセトニトリル/水)で分離した後,Ce(IV)-硫酸溶液と混合しヨウ化物イオンの触媒作用で生成するCe(III)の蛍光強度から定量する方法を確立した.本法によって試料溶液中の0,5~数十μgl-1濃度の微量ヨウ化物イオンを定量でき,共存成分による妨害はほとんど見られなかった.本法を,土壌の水溶性ヨウ素の形態別(有機態ヨウ素,ヨウ化物イオン態,ヨウ素酸イオン態)定量に応用した.風乾土壌の水溶性ヨウ素は,主にヨウ化物イオンの形態で存在すること,又有機物濃度の高い土壌には有機態ヨウ素の存在することが認められた.
  • 柏木 保人, 国府田 悦男, 河嶌 拓治
    1995 年 44 巻 12 号 p. 1033-1039
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    黒鉛炉原子吸光法による複雑組成の高塩濃度廃水中の無機セレン(IV,VI),有機セレン及び懸濁性不溶解セレンを含む全セレン定量のため,過マンガン酸カリウム,ニクロム酸カリウムを用いた予備酸化操作とテルル共沈操作による捕集を検討した.塩酸酸性下で硫酸ヒドラジニウムにより還元析出する25~500μgのテルル沈殿担体に,高濃度の共存金属塩の影響を受けずに,ppbレベルのセレン(IV,VI)を共沈させニトロセルロースメンブランフィルター(孔径0.2μm)を用いて定量的に分離した.有機セレンはテルル共沈分離されず,予備酸化後に定量的に分離することができた.実廃水と環境標準試料(コールフライアッシュ,池底質)を懸濁した水試料に適用し良好な結果を得た.廃水試料250mlについての検出限界(3σ)は,過マンガン酸カリウム予備酸化のとき0.6ppb,ニクロム酸カリウム予備酸化のとき04ppbであった.
  • 本水 昌二, 大島 光子, 松浦 耕司
    1995 年 44 巻 12 号 p. 1041-1048
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    バックグラウンド電気伝導度の低下法(サプレッサー法)の新しい概念を提案し,陰イオンのイオンクロマトグラフィーに適用できることを示した.この原理は,溶離液成分の中和とイオン会合体のミセル抽出による電気伝導度の低下である.溶出液のバックグラウンドの電気伝導度を低下させるために,第四級アンモニウムイオンの水酸化物(Q+・OH-)溶液を溶離液とし,カラム通過後に非イオン性界面活性剤を含むドデシルベンゼンスルホン酸(H・DBS)溶液(サプレッサー液)と混合した.この結果,OH糊イオンは中和され,Q+とDBS-は,イオン会合体Q+・DBS-を形成し,非イオン性界面活性剤と混合ミセルを形成する(この反応をミセル抽出という).中和とミセル抽出により,溶出液の電気伝導度を大幅に低下させることができた.又,この溶離液を二酸化炭素で中和し,溶離イオンの一部をHCO3-とCO32-とすることにより,イオンの溶出の迅速化が達成できた.本法により河川水中の無機陰イオン(Cl-,NO3-,SO42-)の定量を行ったところ,良好な結果が得られた.
  • 河合 範夫, 森重 清利, 西川 泰治
    1995 年 44 巻 12 号 p. 1049-1054
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    10種のクロロフィル誘導体の逆相系高速液体クロマトグラフィー(HPLC)における分離挙動について検討した.このとき,藤田の無機性値(I値)と有機性値(O値)の比I/Oを用いて評価した.その結果,移動相-溶質-固定相間の相互作用に対する双極子間相互作用や分子ふるい効果の寄与の増減により保持比k'の対数はI/O比に無関係に増減した.しかし,分子ふるい効果や双極子間相互作用などの寄与が一定であれば保持比k'の対数は溶質分子のI/O比に対し負の相関性を示し,移動相のI/O比に対しては正の相関性を示した.更に,縦軸にI値,横軸にO値をとった溶質,移動相,固定相の有機概念図を作製することで固定相-溶質-移動相間の極性の大小関係を容易に把握することができた.従って,I/O比は移動相の選択に有効であることが示唆された.
  • 星加 安之, 二瓶 好正, 武蔵 義一
    1995 年 44 巻 12 号 p. 1055-1057
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    Determination of trace amounts of acetone at (sub-ppm level) in air by atmospheric pressure ionization mass spectrometry (API-MS) was studied. Air samples were directly introduced to the ion source of the instrument without pre-concentration. This technique (positive mode) is also used for real-time analysis of air samples with rapid scanning, and has been shown to be highly sensitive for acetone (at sub-ppm levels). The peaks at m/z 19, 37, 55, 73, 91, corresponded to protonated water clusters of (H2O)H+, (H2O)2H+, (H2O)3H+, (H2O)4H+, and (H2O)5H+, respectively. The peak at m/z 47 was due to (C2H5OH)H+, and that at 59 due to ((CH3)2CO)H+ (acetone). They showed good repeatability with a relative standard deviation of less than about 5%. The API-MS voltage response produced a straight line in the approximate range 0.01 to 0.1 ppm of acetone in air.
  • 加藤 弘眞, 田中 満寿子, 片山 尚子, 加茂 年之
    1995 年 44 巻 12 号 p. 1059-1062
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    The measurement of bromine index has been mainly carried out with a volumetric titrator. An apparatus for measuring the bromine index has not been easily available. In the present paper, the bromine index was determined by coulometry, using the coulometric Karl Fischer moisture meter. Adopting a lower polarization current than that of the Karl Fischer moisture meter, the measurement of a low bromine index became possible. And, the observed values of the reformed coulometric moisture meter showed good agreement with those of the volumetric titrator.
  • 佐藤 美紀, 井上 高教, 小川 禎一郎
    1995 年 44 巻 12 号 p. 1063-1065
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    中間に励起状態を経由する多光子イオン化法により溶媒のイオン化を避け,溶液中や溶液表面にある吸光性分子のみを選択的にイオン化することができる.しかし,強いレーザー光を試料に局所的に照射し続けると試料分子の光分解や電荷の蓄積等の影響のため,時間の経過とともに信号量が減少する傾向にある.検出限界の向上のためには信号が時間的に安定であることが必要であり,そのために,新しい光イオン化セルの開発を行った.バルク用の光イオン化セルには2枚のNESAガラスを電極として,両ガラス間を試料溶液で満たし,セル全体を回転できるようにした.又,表面用のセルは溶液で満たしたビーカーの底面,及び水面上に電極を設置し,溶液かきまぜのため,かきまぜ棒を挿入した.どちらの光イオン化セルにおいても,かきまぜ,回転を行うことにより,信号量は時間的に安定となった.
  • 田中 幸雄, 小形 勝
    1995 年 44 巻 12 号 p. 1067-1070
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    環境水中の水田除草剤ベンタゾン(BTZ)及びベンスルフロンメチル(BSM)を溶媒抽出後,フォトダイオードアレイ検出器付きHPLCを用いての同時定量の方法を検討した.試料を塩酸でpHO.5~2.0に調整し,エーテルで3回抽出し,有機相を脱水後,濃縮乾固し,それから残留物をアセトニトリル3mlで溶解し,ミニカートリッジカラム(Accu Bond ODS)を用いてクリーンアップした.そして,HPLCによりBTZ及びBSMを,それぞれ波長224及び234nmで同時定量した.本法の検出限界は,試料1000mlを用いた場合,BTZ及び召SMでそれぞれ0.5及び1.0μg/lであった.精製水にBTZ及びBSM 1.0μgを添加して9回繰り返し実験した場合の分析精度は相対標準偏差でそれぞれ3.6%及び5.0%であった.又,本法を用いてBTZ及びBSMの河川水及び湖沼水からの回収定量を行った.
  • 吉村 坦, 劉 学東, 鵜澤 惇
    1995 年 44 巻 12 号 p. 1071-1076
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    海水,ゆう(湧)水及び河川水中の微量のビスマスを水酸化ジル灘ニウム(IV)共沈法により分離して,微分パルスアノーデイックストリッピングボルタンメトリーによる定量法を検討し,次のような分析法を確立した.試料溶液(常法によって,前処理を行った天然水)それぞれ50mlを採り,ビスマス標準溶液それぞれ一定量を加え,更にジルコニウム塩溶液1 ml(10mg/ml)を加え,アンモニア水(1:2)でpHを9.0に調節し共沈分離させる.これを源過し,4M塩酸25認で溶解し,蒸留水で正確に50mlとする.この溶液の一定量を採り,除酸素(100秒),前電解(100秒)を行う.10秒間静置した後,-0.5Vから0V vs.SCEまで掃引して溶出電流電位曲線を記録し,ピークの高さを測定して定量する.本法では,ppmオーダーの高感度で,迅速にかつ精度よく定量することができる.共存イオンの影響はCu2+イオン0.05mg以下では,ほとんど定量に際して妨害することなく,又Cu2+イオン以外についても影響がみとめられなかった.
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