分析化学
Print ISSN : 0525-1931
10 巻, 11 号
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  • 桃木 弘三
    1961 年10 巻11 号 p. 1191-1194
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    螢光X線分析法において,さきに報告したタングステン補正係数法をさらに検討し,一つの測定条件で求めた補正係数値の測定条件に対する適用性を調べた.この際,著者のノモグラフ法による検量線感度変化の考察を活用して,これらの検量線群の関係を明らかにするとともに,測定条件の変化が検量線感度の非直線的変化をもたらす場合のみ,補正係数値が共通には使用できないことを示した.
    さらにCrKα線に対して求めたタングステン補正係数値を同じ鋼種中のマンガンの定量にそのまま利用して,タングステンを含まない低合金鋼に成功した補正定量法をタングステン含有の場合にも適用できることを見出し,螢光X線分析法の補正係数法に拡張の道を開いた.
  • 銅ニッケル合金の螢光X線分析(第3報)
    深沢 力, 武内 次夫, 一柳 昭加
    1961 年10 巻11 号 p. 1195-1200
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    0.03~1.3%のマンガンを螢光X線記録法によってσ=0.02%程度で迅速簡便に定量できた.この際白銅,洋白とも同一検量線が使用でき,定量下限は約0.01%であった.記録法では十分な精度がえられない0.023%以下のマンガンは定計数法によってσ=0.0007%Mn程度の精度で定量できた.亜鉛,鉛については十分な実験ができなかったが,つぎのような結果がえられた.亜鉛の定量に際してはニッケル含有量が特に異なる場合その含有量に応じた検量線が必要であり,記録法による定量下限は0.05%程度であった.銅含有量によりバックグラウンドの強さ,形などが異なるので微量の亜鉛を精度よく定量することは困難である.記録法による鉛の定量限界は0.1%程度であった.
  • 有機化合物の吸光光度定量法に関する研究(第1報)
    本郷 英太郎
    1961 年10 巻11 号 p. 1200-1203
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    ホウ酸を呈色試薬とした1,1'-ジアントリミド(1,1'-dianthraquinoylamine)の吸光光度定量法を考案した.1,1'-ジアントリミドを濃硫酸に溶かし,ホウ酸を加えて加熱すると安定な青色溶液を得る.呈色液の吸収極大波長とその強度は硫酸中の水量によって少し変化する.水量が10%のとき,吸収強度は最も強く,その極大波長630mμにおける検量線は直線となり,かつ1-クロルアントラキノンや1-アミノアントラキノンなどの共存物質の妨害もないので,630mμにおける吸光度から1,1'-ジァントリミドを定量することができた.
    なお,連続変化法により,1,1'-ジアントリミドーホウ素錯化合物の組成を求め,1:1の比で結合していることを見いだした.
  • 有機化合物の吸光光度定量法に関する研究(第2報)
    本郷 英太郎
    1961 年10 巻11 号 p. 1204-1207
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    塩化第二鉄による2,3-ジオキシナフタリン-6-スルホン酸ナトリウムの吸光光度定量法を考案した.試料を水にとかして0.2mg/mlの濃度とし,その10mlに1%塩化第二鉄水溶液を1ml加えて呈色させ,ゼーレンゼンのグリココル-塩酸緩衝溶液(pH3.4~3.5)で50mlとし,5分後に575mμにおける吸光度を測定し定量する.
    本法によれば,分析操作はきわめて簡単で,かつ共存物質の影響もなく,精度(S.D.として0.70%),正確さとも良好であることを確かめた.
    なお,連続変化法によりpH3.4付近で生成される鉄(III)-2,3-ジオキシナフタリン-6-スルホン酸塩錯化合物の組成は1:1であることを見いだした.
  • 分析におけるイオン交換樹脂の利用(第3報)
    桂 鉄雄
    1961 年10 巻11 号 p. 1207-1210
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Na形陽イオン交換樹脂に交換吸着された多量の銅および微量の亜鉛,ニッケルに0.1Mチオ硫酸ナトリウム溶液を通すと銅のみが溶出する.そのあと2M塩化ナトリウム溶液を通すと亜鉛およびニッケルが溶出する.この溶出液をC1形陰イオン交換樹脂に通すと亜鉛は塩素錯イオンを形成して交換吸着されるが,ニッケルはそのまま流出する.亜鉛は1M硫酸溶液を通すことによって溶出する.この分離法を粗銅中の亜鉛,ニッケルの定量に応用して好結果を得た.亜鉛はジチゾン法で,ニッケルはジメチルグリオキシムによる比色法で定量した.
  • 分析におけるイオン交換樹脂の利用(第4報)
    桂 鉄雄
    1961 年10 巻11 号 p. 1211-1213
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    Na形陽イオン交換樹脂に交換吸着された鉛(II),バリウム(II),ストロンチウム(II),カルシウム(II),マグネシウム(II),鉄(III),鉄(II)に0.1Mチオ硫酸ナトリウム溶液を通すと,鉛(II)のみ錯陰イオンを形成して溶出する.そのあと,2.5~3.0M塩化ナトリウム溶液あるいは酢酸ナトリウム溶液を溶離剤とすることによって鉄(III)以外の金属は溶出される.鉄(III)はチオ硫酸ナトリウム溶液を通すことによって赤色の錯陽イオンを形成して吸着され,無機酸を用いることによって溶出される.
  • 後藤 秀弘, 須藤 恵美子
    1961 年10 巻11 号 p. 1213-1217
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    炎光法による金属の微量定量をおこなうのに,妨害元素の除去分離ならびに感度をたかめる目的で有機溶剤抽出法による炎光分光分析法を行なつている.本報ではバナジウムについて,すなわちバナジウムをオキシン錯塩とし,これをメチルイソブチルケトンその他の有機溶剤で抽出し,抽出液を直接噴霧し,酸一水素炎で励起し,528mμで輝度を測定し,バナジウムの微量定量をおこなった.この場合水溶液における励起に比較し約15倍も感度をたかめることができた.各種の溶剤につきそれぞれの抽出液の発光条件がことなるので.これらにつき検討した.
  • 共同沈殿剤として水酸化ベリリウムを応用する研究
    貴田 勝造, 阿部 光伸, 西垣 進, 日下 武
    1961 年10 巻11 号 p. 1217-1221
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ベリリウム銅合金中のスズ,鉛を銅から分離する方法として定電位電解により銅を除くかわりに,アンモニアで銅をアンミン錯塩にして,スズ,鉛を水酸化ベリリウムと共に共沈させ,ロ別して除く方法を用いた.従来法である水酸化第二鉄,水酸化アルミニウム,二酸化マンガンなどによる共沈法に比較して,ベリリウム銅合金中のベリリウムを直接担体として使用できるので迅速性にすぐれ,また,溶液中のベリリウムの濃度が0.01M以上であれば,スズ,鉛は定量的に水酸化ベリリウムと共沈する.ベリリウムはポーラログラフ波を与えず,溶液中に存在してもスズ,鉛の定量を妨害しないので,そのまま支持塩となる.また,銅は水酸化物沈殿の洗浄を十分行なえば妨害となる量は残らないし,ベリリウム銅合金中の他の不純物元素は妨害しなかった.
  • 金属ウラン中の微量不純物の定量(第17報)
    藤島 巌, 武内 次夫
    1961 年10 巻11 号 p. 1221-1225
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    鉄鋼中の炭素定量法のJIS中和滴定法では分析時間20分を要し,かつ300γ以下は定量できない.また,精度も±20ppmとあまりよくない.最近の低炭素鋼中の微量炭素の定量の要望により試料中の40γないし500γの微量炭素の定量法を研究し,分析時間10分以内で定量するに適当な方法を発見した.その精度は40γ,430γの炭素量に対し,標準偏差はそれぞれ1.2γおよび2.0γであり,きわめて良好でしかも熟練を全く必要としない.また試料に鉄鋼のみならず金属ウラン,金属チタンなどにも応用できる方法である.すなわち,試料を精製酸素気流中で強く熱して燃焼せしめ,全炭素を完全に酸化させて炭酸ガスとし,これを25mlN/300水酸化バリウム溶液に吸収させて,残ったアルカリをN/120塩酸で滴定し,空試験値との差より炭素量を求めた.特に改良を行なった点は吸収セルの構造を堅ろうで簡単化したこと,生成した炭酸ガスを完全に吸収させるため吸収液には気泡分散剤を加えたこと,したがって,流速を増大することができたことおよび終点の判定に混合指示薬を使用した点である.該混合指示薬の変色は鋭敏であり,照明は太陽光,人工光を問わない.試料量は通常1g以下の少量で足りる.
  • 江頭 暁
    1961 年10 巻11 号 p. 1225-1229
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    アニオン交換樹脂による,有機酸のイオン交換クロマトグラフィーに際しての実験条件と溶出曲線の山の位置および幅との関係について詳細な検討を行なった.溶媒中の陰イオンの種類およびその濃度とクロマトグラフ柱の温度とを一定にした場合,溶出曲線の山の位置は,酸の種類と樹脂の量とによって決定されることが確かめられた.また,対象とする酸が完全に解離しているような条件のもとでは,溶出曲線の山の位置と溶媒濃度どの間には一定の関係が成立することが確認された.クロマトグラフ柱の温度は山の位置に,溶出速度は山の幅にそれぞれ著しい影響を与えることがわかった.
  • 伊沢 正実, 坪田 博行, 笠井 篤
    1961 年10 巻11 号 p. 1230-1235
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    セロソルブによるカルシウムとストロンチウムとの分離法を検討し,特にブチルセロソルブが有用であることを示した.ブチルセロソルブは沸点が高いので脱水精製が容易であり,またカルシウムおよびストロンチウムの硝酸塩をあらかじめ無水塩にする必要はなく,加熱沸騰で脱水が完全である.その方法をさらに拡張して水溶液にブチルセロソルブを加えて,加熱脱水してストロンチウムを析出させる方法も検討した.本法をフォールアウトなどのなかの90Srの分析に適用するときには,常法によりアルカリ土類元素のみを取り出したのち,その相互分離に本法を適用すればよい.これらのことから,ブチルセロソルブによるカルシウムとストロンチウムとの分離法は従来用いられてきた発煙硝酸法にかなりの部分に置きかえうる方法であることがわかった.
  • 錯形成剤を用いるボルタメトリーの研究(第2報)
    北川 豊吉, 中野 克樹
    1961 年10 巻11 号 p. 1235-1239
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    スズ(IV)と鉛(II)の分離波を得るため,支持電解質としてEDTAとNaBrとの合溶液を用い,スズ,鉛のポーラログラフ的挙動を基礎的に検討した.その結果,EDTA5×10-3~1.2×10-2M,NaBr1.5~3M,ゼラチン濃度0.004~0.008%,pH1.3~1.7でスズ(IV)は-0.71V(対SCE)付近に半波電位をもち,拡散電流定数I=4.65(20℃)なるスズ(IV)→スズ(0)への良好な一段波が得られた.この還元波は拡散律速で温度係数約+2.0%であった.これらの条件下でスズ(IV)は8×10-5~2×10-3Mの範囲で拡散電流と濃度との間に良好な比例関係が得られた.一方,鉛イオンは上述の支持電解質中で,pHが1~2では臭素錯イオンとして存在し,半波電位-0.4V(対SCE)に良好な還元波を示す.したがって,3MNaBr,5×10-3M EDTA, 0.008%ゼラチン, pH1.3~1.7の条件でスズ(IV),鉛(II)の同時定量をおこない,10-4~10-3Mの濃度範囲で満足すべき結果を得た.
  • 有機微量分析の研究(第29報)
    穂積 啓一郎, 迫間 和子
    1961 年10 巻11 号 p. 1240-1243
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(以下DPHと略す)が諸種のカルボニル化合物と容易にヒドラゾンを形成し,水,アルコール類から定量的に沈殿を生ずることを利用し,液相中に残留するDPHを迅速に分極滴定することによってカルボニル基を定量する方法につき検討した.すなわち,試料0.02~0.03mMをメタノールに溶解し,0.005MDPH10mlを加え沈殿を析出させたのち,沈殿の浮遊したままさらに0.02Nヨウ素液10mlを加え液相中の残留DPHを酸化する.残ったヨウ素は0.02Nチオ硫酸ナトリウム液で分極電位差滴定を行なう.電極には長さ1cmの双白金線を用い,分極電流は1μAが適当であった.本法では沈殿の除去操作が不要で,かつデンプン液を指示薬として用いないので有機溶媒の存在下に行なえるほか,カールフィッシャー滴定装置が利用できる長所がある.
  • 春木 達郎
    1961 年10 巻11 号 p. 1244-1248
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    (1)理論段高さを表わす式中の独立変数をキャリヤーガス線速度からモル流量に変更することによって圧力と理論段高さとの関係を正し,これによってカラム出口と入口のキャリヤーガス線速度の比をできるだけ1に近づくように操作すべきであるとする従来の考え方を修正した.そしてモル流量が一定である限り,(1)カラム中の各部ではいかなる場合にも圧力の高い部分が低い部分より理論段高さが小さい.したがって,(2)カラムはいくら長くても,またいくらこまかい充てん剤を使っても,そのために生ずるカラムの圧力降下の増大によって各部の理論段高さが大きくなることはない,などが装置設計上の指針として得られた.また,カラム出口圧を高めると平均理論段高さが小さくなるという事実は,従来考えられていたように,ガス拡散項によるのではなく液相中の拡散項によるものであることが明らかになった.
    (2)平均理論段高さに関する正しい積分式を誘導した.また,KieselbachやLittlewoodの近似はカラム圧力降下の大きい場合にはかなり大きい誤差を伴い,平均理論段高さ全体としても大きい誤差を生ずる場合のあることを示した,
  • 液状アマルガム還元-ハイドロキノン発色法
    斎藤 謙, 武内 次夫, 平野 四蔵
    1961 年10 巻11 号 p. 1248-1252
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    鉄鋼中のチタンの吸光光度定量法として液状亜鉛アマルガム還元一ハイドロキノン発色法による新分析方法を実験した.試料中のチタンは亜セレン酸によって沈殿分離し,ピロ硫酸カリウムを用いて溶融し硫酸でとかした.この溶液に粉末ハイドロキノンを加え液状亜鉛アマルガムによって還元してから,溶液中の硫酸の濃度を20Nに調節して発色させ,吸光光度計によって測定した.発色の場合硫酸の濃度が20N以上では安定であることを確認し,またハイドロキノンは溶液とせず固体のまま加える方法をとった.
    この方法により鉄鉱石,鋳鉄,合金鋼中の微量のチタンを約90分間で定量することができた.
  • 塩原 ヤイ
    1961 年10 巻11 号 p. 1252-1255
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    エレクトログラフ法において妨害イオンの影響をさけるため,支持電解質溶液で局部的にうるおした2×40cmロ紙の一端に,エレクトログラムを線状に印したのち,成分を事実上非破かい的に定性した.
    通常のエレクトログラフ法では支持電解質溶液を含むロ紙に成分を溶出させるが,ここではアルミニウムセルに支持電解質溶液を入れて陰極とし,試料を陽極として,成分を直接支持電解質溶液中に溶出させることをこころみ,特に合金成分と,溶出を完全にするための支持電解質溶液組成との関係を調べた.
  • 浜口 博, 杉下 龍一郎
    1961 年10 巻11 号 p. 1256-1258
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    過レニウム酸タリウム中のタリウムをEDTA滴定することにより,レニウムの間接定量を試みた.過レニウム酸イオンを含む溶液に硝酸タリウム溶液を加え,T1ReO4を沈殿させる.沈殿を遠心分離し,塩酸溶液中で臭素を用いてT1(I)をT1(III)に酸化する.このT1(III)をXOを指示薬に用いてpH5で0.01MEDTAで滴定する.1mg程度のレニウムが,±1%程度の精度で迅速に定量できた.モリブデン酸,過マンガン酸,チオシアン酸,臭素酸,ヨウ素酸,塩素,臭素,ヨウ素などの陰イオンが妨害する.塩素酸と過塩素酸イオンは妨害しない.
  • 勝又 茂
    1961 年10 巻11 号 p. 1259-1262
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    エチレンジァミン四酢酸によるモナズ精鉱中の希土類元素の定量法を確立した.
    指示薬としてエリオクロムブラックTおよびネオトリンをえらび,希土類元素を定量する場合の両者の優劣について検討した結果,ネオトリンの方が不純物の影響を受けることが少なく希土類元素を定量できることがわかった.トリウム,アルミニウムおよび鉄などはこの定量を妨害するので,モナズ精鉱を硫酸で分解し,希土類元素をシュウ酸塩として沈殿させ,アルミニウム,鉄などと分離したのち,トリブチルポスフェート抽出によりトリウムをのぞき,ネオトリンを指示薬としてエチレンジァミン四酢酸標準溶液で滴定した.
    この結果,誤差±2%以内でモナズ精鉱中の希土類元素を迅速に定量することができた.
  • 小田 仲彬, 久保 正二
    1961 年10 巻11 号 p. 1262-1268
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    (I)金属チタン試料を塩酸で分解し,分解ガスの捕集液(アンモニア性塩化カドミウム溶液)の沈殿とロ液および試料溶液中のイオウを別々に定量し,それらの和から全イオウを求める方法を確立した.
    本法の添加実験の回収率は約100%,分析の精度は変動係数で約10%(S 0.003%水準),下限は0.001%である.
    (II)前項の研究過程で,チタンの塩酸溶解の際に共存の亜硫酸塩がH2Sに,硫酸塩がH2SとSO2にそれぞれ還元される現象をみとめたので,各種のイオウ化合物の還元に寄与するチタンの状態や還元に関与する主なる因子の水準などにつき検討し,上記の現象を明確にした.なお,このイオウ化合物の還元現象は金属チタンの特性であり,他の金属ではほとんどおこらないこと,およびチタンを濃硫酸と加熱するとSO2,希硫酸と加熱するとH2Sを生成することをそれぞれ知見した.
  • 藤原 鎮男, 楢崎 久武
    1961 年10 巻11 号 p. 1268-1272
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    発熱量測定に用いる酸素ボンプを利用して,ポリエチレン中の鉄(1,10-フェナントロリンによる),アルミニウム(スチルバゾによる)およびチタン(タイロンによる)の比色定量をおこなった.この方法の要点は,酸素のなかに微量に含まれる窒素の酸化生成物によって,試料が簡単に試料溶液にかえられることであって,高圧ないし中圧法ポリエチレンなど,試料の種類にかかわりなく,分析することができる.分析の結果,高圧および中圧法ポリエチレンでは鉄がやや多く,アルミニウムおよびチタンは非常に少ない.低圧法では,どの試料についても鉄はほぼ一定であり,アルミニウムとチタンはそれよりも多く,しかも両者の割合はほぼ同じ程度である.これらの元素は灰分の多いものに多いが,厳密には両者の相関は得られない.
  • 石橋 雅義, 山本 勇麓, 轟 理市
    1961 年10 巻11 号 p. 1272-1275
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    アルミニウムの比色試薬として知られているスチルバゾをスズ(IV)の吸光光度定量法に応用し,種々の基礎条件たっいて研究した.スチルバゾはスズに対する感度が非常によく,呈色体も40分間以内では安定であら,定量操作が簡便である.しかし,pHの影響が大きいからpH火の調節には注意が必要である.共存イオンの影響もかなりあるが,これは他の試薬による方法の場合も同程度であると考えてよい.なお,試薬の純度が確定しなかったので,スズと試薬との組成比は明確な値が得られなかったが,ほぼ試薬:スズ=2:1と考えられる.
  • 日色 和夫
    1961 年10 巻11 号 p. 1276-1281
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    ヘマトキシリンの水溶液はpH8.55~8.75において,552mμに吸収極大を示すが,この吸収は微量のホウ素の共存によっていちじるしく減少する.この吸収の減少を利用して微量ホウ素の新しい間接吸光光度定量法をこころみ,満足すべき結果が得られた.試料溶液を対照として試薬ブランクの吸光度を測定する方法を用いた.本報告では最適の定量条件,すなわちヘマトキシリン試薬濃度,pH値,緩衝溶液使用量などについて検討し,さらに温度,共存イオンなどの影響ならびに吸光度の経時変化などについて実験した.本法によって0.00~1.60ppmのホウ素量の範囲内において,3.48%の誤差範囲内でベールの法則にしたがう直線関係が得られた.本法は水溶液中で操作がおこなわれるため,きわめて便利である.
  • 日色 和夫
    1961 年10 巻11 号 p. 1281-1287
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    ホウ素に対する新しい定量法として,スチルバゾを用いる吸光光度法を提案した.最適の定量条件はスチルバゾ試薬濃度0.07%溶液5.0ml/25.0ml,緩衝溶液濃度1M溶液1ml/25.0ml,pH8.9~9.1,測定波長414mμであった.本法によって0.00~2.00PPmのホウ素量の範囲内で,ベールの法則にしたがう直線関係が得られ,誤差は2.02%,もとめられた分子吸光係数はホウ素について1,339であった.本法は水溶液中で呈色反応がおこなわれるため,操作が簡単であり,かつ共存する多くの金属イオンはEDTAを加えていんぺいし,その妨害作用を除きうる長所をもっている.
  • 関口 慶二, 小尾 陞
    1961 年10 巻11 号 p. 1288-1290
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    水分定量法として物理的あるいは化学的方法が数多く提案され実用に供されている1)が,いずれも一長一短を有している.たとえば乾燥法は簡便だが長時間を要し,またカールフィッシャー法はアルデヒド,ケトン化合物には適用できない.誘電率測定による水分定量法は固体試料をそのまま使用する場合,粒度,セル中の充てん度などに著しく影響され,また微量の水分特に吸着水,結晶水に対しては感度が低い.更に多種類の医薬品を対象とする場合には,そのおのおのについて検量曲線を求めなくてはならないし,実用的でない.
    そこで著者らは試料中の水分をジオキサンと共沸留出させ,その留出液の誘電率を測定することにより水分定量を行なった.この方法では固体医薬品中の水分を迅速容易に定量することができ,ほぼ満足できる結果を得た.
  • 塩原 ヤィ
    1961 年10 巻11 号 p. 1290-1292
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    内部電解法は,電池のガルバ起電力が非常に小さいため,電着速度の規制因子として,セル抵抗が大きい影響をもつという難点はあるが,外部からの加電圧を必要としないこと,および一種の定電位電解であるため,しかるべき陽極の選定により最も簡単に定電位電解法の利点を利用しうるという特質がある.したがって,共存イオンの分離定量に本法を適用する可能性は十分考えられるが,実際に分離に応用した例は非常に乏しい.
    本報では,陽極液として従来使用されている陽極金属塩の溶液のほか,塩化カリウム,硝酸カリウム溶液を使用した場合の銀,銅,亜鉛の各個定量および分離定量の結果について述べる.陽極液として塩化カリウム,硝酸カリウム液の使用は,分離定量に際して従来のように陽極液に金属塩溶液を使用する場合におこる陰極液に対する不測の汚染をさける意味でも有用である.
  • 湯浅 輝
    1961 年10 巻11 号 p. 1292-1293
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
  • 木村 幹, 亀谷 富士夫
    1961 年10 巻11 号 p. 1293-1294
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    従来ハロゲンイオンの硝酸銀標準溶液による沈殿滴定には多くの研究があり,すでにMohr,FajansおよびVolhardらの方法は標準分析法として周知のとおりである.しかし,いずれも内部指示薬を使うので,着色試料については直接分析することはむずかしい.また電気的滴定法はこの欠点を除き,ある程度の成功を得ているが,操作がやや複雑である.
    一方,放射滴定は溶液の放射能の変化を指示薬のかわりにするのであるから,試料溶液の形状に関係なく,取り扱うアイソトープの量も微量であり,操作も簡単である.現在まで,ハロゲンイオンの硝酸銀標準溶液による放射滴定についてはLangerが標識した硝酸銀標準溶液で塩素イオン,臭素イオンをそれぞれ独立に分析し,Moellerらは塩素イオンを標識した硝酸銀標準溶液で分析しているのみである.
    著者らはアイソトープで標識した2種の溶液を適当に使うことにより塩素,臭素,ヨウ素の混合イオンの放射滴定を検討し,簡単にそれぞれを分離定量できることを知ったので報告する.
  • 森本 市郎, 古田 克
    1961 年10 巻11 号 p. 1294-1296
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    鉄の吸光光度定量法については,すでに多数の報告がある.しかし,ピリジンカルボン酸を利用した例は,新良らによるピコリン酸を用いた報告のほかには例を知らない.著者らはジピコリン酸を利用する方法を報告した.その後2~3の試料について,従来の方法と比較検討してよい結果を得たので報告する.
  • 川畑 正夫, 望月 平一, 三崎 剛
    1961 年10 巻11 号 p. 1296-1298
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    鉄鋼中のタングステンを過塩素酸酸化法で定量する場合に,鋼中のリン含有量がタングステン酸の沈殿生成をどの程度妨げるか,ならびに鉄鋼中のニオブを加水分解法によってニオブ酸として沈殿する場合に,リン酸の存在はどのような影響を示すかについて実験を行なった.その結果,タングステン酸の損失量は加えたリン酸量に比例し,鉄鋼試料においてもリン含有量に従っていることがわかった.これに対して,ニオブ酸の沈殿率は微量のリン酸が存在することによって増加する傾向を示した.タングステン酸のリン酸による損失はニオブが共存するとき減少し,鉄鋼試料中に含まれる程度のリン量ではその損失量を無視することができた.
  • 内川 浩, 猪股 吉三
    1961 年10 巻11 号 p. 1298-1299
    発行日: 1961/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    粉末試料を螢光X線法により分析する際には,試料板の表面状態が螢光X線強度に大きな影響を与えるため,試料を加圧成形して均一な表面のものを作成し,測定することが行なわれている.しかし,加圧成形した試料板は取扱いの際に破損しやすいという欠点があり,有機樹脂により裏面を補強するなどの工夫が行なわれているが,操作が比較的繁雑であり,適当な試料板作成方法を考案するため,種々の検討が行なわれている模様である.
    著者らは2,3の方法を検討した結果,試料が補強のための型枠付きのままで加圧成形される方法を考案し,実際に使用した結果も良好であったので,以下にこれを紹介する.
    試料成形に用いる金属製成形器および試料板補強用型枠の1例は,Fig.1およびFig.2に示すようなものである.円形の試料を作成する場合にも,断面が円形の成形器を用いて,同様に行なうことができる.
    金属製成形器は(1),(2),(3)および(5)の4コの部品より成り,これらを用いて,試料板補強用型枠(4)に試料を圧入する.以下に試料板作成の手順を示す.
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