溶媒抽出により微量成分を分離濃縮したのち,けい光X線で分析する場合の分離成分の固定法を検討した.
すなわち,抽出分離した有機溶媒層にポリスチレンを混合したのち,マイラーにのせて赤外ランプで乾燥し,マイラー上に分離成分を均一に含むポリスチレンの薄膜を形成させる方法である.
本報は有機試薬として,ジエチルジチオカルバミン酸を用い,pH5.9から四塩化炭素で抽出を行ないポリスチレン10mgを添加して薄膜を作り,銅,コバルト,鉄,マンガン,ニッケル,亜鉛など15元素について行なった結果,100秒計数の場合で3×10
-8~1.5×10
-6gの検出下限を得た.上記6元素については,セレンを内標準に用いて変動率を測定した結果,相対強度比法で3~5%であった.
本法はろ紙法に比べて,成分が均一に分布すること,バックグラウンドが小さいこと,および検出下限が小さい利点を持つことが確認された.
溶媒抽出を分離手段とし,ポリスチレンを用いる薄膜法により定量元素をマイラーの上に固定したのちけい光X線分析法により微量元素の定量法を行ない,じゅうぶん満足すべき方法を確立した.
抽出分離にはジエチルジチオカルバミン酸を用い,酢酸ナトリウム緩衝溶液のpH5.9で四塩化炭素による抽出を行なった.ポリスチレンは四塩化炭素に溶解したものを用いマイラー上に10mgとなるように添加した.溶媒の除去には赤外ランプを用いた.
本法によりコバルト,銅,鉄,マンガン,ニッケル,亜鉛など15元素について検出下限を求めた結果,100秒計数の場合で3×10
-8~1.5×10
-6gを得た.上記6元素については,セレン20μgを内標準元素に用いて定量性を検討した結果,10秒計数の場合で変動率は3~5%,検量線は0~25μgの範囲で良好な直線性を示した。
抽出分離における錯化剤の選択,抽出条件の検討などにより微量不純物の同時定量がけい光X線分析により行なわれるための一つの方法として,今後は実際の試料について検討する予定である.
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