分析化学
Print ISSN : 0525-1931
54 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総合論文
  • 野々村 誠
    2005 年 54 巻 3 号 p. 191-203
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    水中の一般的なイオン種は電気伝導度検出器を用いたイオンクロマトグラフィーで同時定量できるが,酸解離定数(pKa)が7以上のシアン化物イオン,残留塩素や安定度定数の大きい金属シアノ錯体を定量することができない.また,炭酸系の溶離液を用いたサプレッサー型のイオンクロマトグラフィーでは,水中の炭酸イオンを定量できない.一方,空気や排ガス中の水溶性の無機ガス成分は,吸収液に捕集すればイオンクロマトグラフィーで定量できるが,ヘンリー定数の小さい窒素酸化物は定量できず,また,ホルムアルデヒドは水に吸収されてもイオンクロマトグラフィーでは直接定量できない.本稿では,イオンクロマトグラフに内蔵されている電気伝導度検出器では測定できないイオン種を化学反応で測定可能なイオン種に変え,また,吸収されにくいガス成分をアルカノールアミン系の吸収液に捕集した後,電気伝導度検出器を用いたイオンクロマトグラフィーで簡便に定量する方法を開発し,環境分析に応用した.
報文
  • 内田 直子, 高津 章子, 加藤 健次
    2005 年 54 巻 3 号 p. 205-210
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    分光学的分析手法の一つであるスラブ光導波路分光法は,薄い光導波路内のコア層でプローブ光を何度も反射させることにより,導波路表面の試料を高感度に検出する方法である.この手法は内部反射法の一種であり,表面の極近傍の試料を選択的に検出できる.これまで色素やタンパク質などを対象とした研究がなされてきたが,本研究では,工業用ガスとして利用される窒素ガス中の微量水分分析への新規応用を検討するため,スラブ光導波路技術を基にした露点計を試作し,評価を行った.その結果,試作露点計は1)-65℃ 付近までの検出が可能であること,2)厚さ0.1 mmの薄い導波路の利用により高感度化が可能になったこと,3)従来法の一つである静電容量式と比較して非常に速い応答性能を持つことが分かったことにより,スラブ光導波路法を用いたガス中微量水分測定(低露点測定)への実用的な応用の可能性が示された.
  • 上堀 美知子, 石井 善昭, 長谷川 敦子, 吉田 寧子, 鈴木 茂, 今村 清
    2005 年 54 巻 3 号 p. 211-219
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    液体クロマトグラフィー(LC/MS)を用いて化学物質を検索する際に必要なデータベースに取り込むべき基本的な情報として各物質のマススペクトル,保持時間及び分配係数(オクタノール/水)情報について検討した.化学物質管理促進法(PRTR)に指定された物質等から選択した153物質について,4社のLC/MS装置を用い,エレクトロスプレーイオン化(ESI)及び大気圧化学イオン化(APCI)法の2つのイオン化法,また正イオン(positive)及び負イオン(negative)モードの4つのモードで測定したマススペクトル情報を基にマススペクトルデータベースを構築した.マススペクトル情報はESI及びAPCIで得られるマススペクトルの擬分子イオン及びフラグメントイオンに差はほとんど見られないので,両者の区別はしないでpositive及びnegativeモードで構成することとした.保持時間情報については相対保持時間を測定するための標準的な測定方法を定め,o -クロロアニリンを指標物質とした相対保持時間を検索キーの1つとして収録することにした.また,オクタノール/水分配係数を検索キーの1つとして収録することにした.
技術論文
  • 伊藤 宏, 早川 和一, 山本 敦, 村瀬 篤, 星野 邦広, 久野 稔, 早川 和美
    2005 年 54 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    ガスクロマトグラフ(GC)は,大気,室内空気をはじめ環境試料中の悪臭,におい分析など幅広い用途で多用される分析装置である.GC装置は,キャピラリーカラムやマススペクトロメトリー検出器の開発に伴う分離,同定能力の向上後は,成熟した分析装置と見られることが多くなった.しかし,インジェクターのセプタムにシリコンゴムシールが使われている.このため,(1)使用温度に上限がある,(2)セプタムの汚染によるバックグラウンドの上昇や妨害ピークが発生する,(3)加熱脱着,熱分解分析などに専用の装置を必要とする,などの課題が残されている.これらの課題を解決するため,従来のキャリヤーガスライン外側にもう一層のガスラインを設け,このガスでキャリヤーガスシールする方法(セプタムフリーインジェクターと呼称する)を検討した.その結果,複雑なシール機構を必要としたインジェクター部の構造を簡略化でき,前述の課題を解決できることが分かった.
  • 山口 仁志, 伊藤 真二, 五十嵐 淑郎, 小林 剛
    2005 年 54 巻 3 号 p. 227-230
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    均一液液抽出法における弱酸性領域での相分離条件について検討した.相分離剤としてZonyl FSA,キレート剤として1,10-フェナントロリン,水溶性有機溶媒としてアセトンを用いることで,弱酸性領域(pH 2近傍)でのAl,Cu,Tiなど14元素についての相分離が可能となった.50 v/v% Zonyl FSA添加量1 mlに対して相分離した析出相体積は100 μlであった.本法による各元素の回収率は約95% 以上で良好な結果が得られた.弱酸性領域では多種にわたるキレート剤を使用することが可能であり,均一液液抽出法の適用枠の拡大が期待できる.
ノート
アナリティカルレポート
  • 石橋 耀一, 浅田 正三, 井垣 浩侑, 山田 修一, 鶴田 暁, 志村 真, 柿田 和俊, 小野 昭紘, 坂田 衞
    2005 年 54 巻 3 号 p. 235-242
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    The Japan Society for Analytical Chemistry carried out a third proficiency test for the determination of dioxins (polychlorodibenzo-p -dioxins, polychlorodibenzofurans and coplanar polychlorobiphenyls) in marine sediment. Proficiency testing of analytical laboratories is based on ISO/IEC Guide 43-1, “Proficiency testing by interlaboratory comparisons”. This testing was carried out from May ’02 to August ’02, with the participation of 104 laboratories. The test results were: 37.05 pg-TEQ/g of total Dioxin concentration on average; 7% in robust coefficient of variation. A total of 9 labs have been estimated to be unsatisfactory due to their large z score in the robust method, over 3 in absolute value.
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