分析化学
Print ISSN : 0525-1931
37 巻, 11 号
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  • 北田 善三, 佐々木 美智子, 山添 胖, 前田 有美恵, 山本 政利, 中澤 裕之
    1988 年 37 巻 11 号 p. 561-565
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    市販のドリンク剤類似清涼飲料水に繁用される水溶性ビタミン類8種,合成保存料の一つである安息香酸ナトリウム及びカフェインを加えた10成分のHPLCによる同時分析法を検討した.カラムとしてNucleosil 7C 18を,移動相として5mMヘブタンスルホン酸ナトリウムを含むアセトニトリル-水-トリヱチルアミン(9+90.5+0.5)溶液(pH 2.8)を用い,UV 210nm で検出することにより60分以内ですべての成分が溶出した.試料は内部標準物質としてアセトアニリドを加え,移動相で10倍希釈した.各成分のドリンク剤類似清涼飲料水に対する60~600μg/ml添加時の平均回収率は95.8~100.2%であり,相対標準偏差は2.5%以内で良好な再現性を示した.
  • 疋田 興造, 石井 信親, 井上 義政, 大倉 洋甫
    1988 年 37 巻 11 号 p. 566-569
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    塩酸バカンピシリン投与後の血清中の活性代謝物アンピシリンを自動カラムスイッチング法を利用したHPLCにより定量する方法を検討した.試料の除タンパクとアンピシリンの選択的吸着を行うため前処理カラムとして,ODSゲル表面をbovine serum albuminでコーティングしたBSA-ODSカラムを用い,分析カラムにはUltrasphere ODSを用いた.前処理カラムにおける血清中のアンピシリンと血清成分の溶出挙動を調べ,前処理用移動相,分析用移動相,更に流路切り換え時間を設定した.その結果,血清20μlを直接HPLC装置に注入するだけでアンピシリンは再現性よく定量できた.ヒト血清に添加したアンピシリンの回収率はほぼ100%であった.本法は塩酸バカンピシリンを投与したヒト及びイヌ血清中アンピシリンの定量に応用できた.
  • 能田 静穂, 金井 浩子, 大島 俊幸, 相楽 和彦, 吉田 継親
    1988 年 37 巻 11 号 p. 570-574
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    塩化リゾチームのHPLCによる定量分析法を設定し,日本薬局方外医薬品成分規格の溶菌法と比較検討した.カラムに逆相系オクタデシルシリカカラムを用い,移動相に0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル溶液のアセトニトリル濃度10%から50%へのリニアこう配溶離法を採用し,280nmで検出した.この方法により,塩化リゾチームは2ピークが得られ,両ピークとも良好な検量線を示し,溶菌活性も確認された.更に,加熱変性及びペプシン分解させた塩化リゾチーム及び製剤中の塩化リゾチームについて両方法で測定した結果,両者の定量値に良好な相関性が認められ,塩化リゾチーム配合製剤の分析法としてHPLCが有用であることが確認された.
  • 伊藤 裕二, 吉田 一義, 半田 光一, 柚木 伸夫, 吉田 継親
    1988 年 37 巻 11 号 p. 575-579
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    一般用医薬品の品質管理試験の効率化を目的とし,逆相HPLCによる各種製剤の定量法の検討を行った.まず市販オクタデシルシリカ系充てん剤の比較を行った結果,多環芳香族化合物では溶出順序,分離能に差は認められなかったが,中性及び酸性成分での溶出挙動にメーカー並びにロット間での顕著な差が認められ,これら成分を指標として充てん剤を選定することにより,一定品質の充てん剤の入手を可能とした.次に抽出に条件の検討を行った結果,少量のリン酸を添加したメタノールー水混液(7:3)を用いる超音波抽出法により製剤中の溶解性の異なる成分を同時に抽出することができた.又溶離液・検出波長などを検討し,3種のHPLC条件を設定した.本法は,かぜ薬,解熱鎮痛薬,ビタミン剤及び鎮うん(暈)薬へも適用可能であり,特にかぜ薬では9成分を同時に定量することができ,このような試験法の統一は,品質管理試験の効率化に有用であった.
  • 堀江 正一, 斉藤 貢一, 星野 庸二, 能勢 憲英, 志田 保夫, 中澤 裕之, 藤田 昌彦
    1988 年 37 巻 11 号 p. 580-584
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    HPLCを用いて多成分から構成されているマクロライド系抗生物質スピラマイシン(SPM)の定量法を検討した.SPMの構成成分であるSPM-I,SPM-II,SPM-III及びネオスピラマイシンI(NSPM-I),NSPM-II,NSPM-IIIの標準品は製剤よりHPLCを用いて単離して得た.分離には炭素含量の高いオクタデシルシリカカラムを用い,移動相に0.05Mリン酸二水素ナトリウム(pH2.5)-アセトニトリル(73:27)を使用し,流量0.5ml/min,検出波長232nmで分析した.SPM製剤中の各成分の含量はピーク面積の総和による絶対検量線法により求めた.現在市販されている製剤中における各成分の割合はほぼ同じであり,SPM-Iが約70%含まれていた.本分析法は分析時間が20分以内と短く,分析精度も高いことから動物用医薬品として用いられているSPM製剤の品質管理に適用できるものと考える.
  • 河村 恒夫
    1988 年 37 巻 11 号 p. 585-588
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    超LSI電極材料として有望視されている金属モリブデン中の極微量U及びThの定量法について,誘導結合プラズマ質量分析計を用いて検討した.試料を塩酸と硝酸の混酸に溶解した溶液では,Moのマトリックス効果による負の干渉が認められた.そこで試料を上記の混酸で溶解し,蒸発乾固後1Mフッ化水素酸0.5M塩酸溶液とし,陰イオン交換樹脂でMoを吸着分離した.この流出液を蒸発乾固後,1M硝酸溶液とし,誘導結合プラズマ質量分析計でU及びThを測定した.その結果,高純度金属モリブデン中のU及びThが1ppbレベルで相対標準偏差25%程度で定量できた.
  • 杉本 和巨, 秋吉 孝則, 近藤 隆明
    1988 年 37 巻 11 号 p. 589-594
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    鉄鋼業における銑鉄の工程管理分析方法として,XRF法を検討した.白銑化した試料は,ねずみ銑試料に比べて分析精度が3倍向上した.高周波遠心鋳造法にて作製した試料は,厚い白銑化層を持ち,標準試料などとして適していることが分かった.一方,実溶銑においても白銑化した試料を得るために,ディスク型サンプラーを開発した.XRF法による分析時の誤差要因としては,オイルによる汚染,真空度の増加による強度の増加,試料が高温になると強度は減少することなどが認められたが,これらの誤差要因を最小限とした結果,分析精度は,濃度3.5%~4.7%にて,σM=0.050%,σd=0.083%となり,工程管理の分析法として十分実用化できることが確認された.
  • 吉岡 明, 関根 孝雄, 吉田 秀光, 野村 紘一
    1988 年 37 巻 11 号 p. 595-600
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    合成標準試料を用いた岩石試料のガラスビード/XRF分析法を検討した.日常分析に適用するため,簡便なガラスピードの作製法を考案した.合成標準試料は酸化物や炭酸塩などの高純度試薬を均一に混合し,調製した.XRF測定から合成標準試料のガラスビードの再現性は良好であることを確認した.合成標準試料と岩石標準試料のガラスビードを用いて検量線を作成したところ,両者とも一致した1本の直線関係が得られた.合成標準試料のガラスビードから作成した検量線を用いて,標準岩石中のSi,Ti,Al,Fe,Mn,Mg,Ca,Na,K及びPの定量を行った結果,推奨値と良い一致を示した.又,強熱減量分の多い岩石試料は,強熱処理した試料に対して本法を適用し,得られた分析値を強熱減量率で補正することにより定量が可能であることが分かった.本法は種々の岩石試料の実用分析法として有効であると考えられる.
  • 生川 章, 小田 功
    1988 年 37 巻 11 号 p. 601-606
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    多種類の粉体又は塊状試料の高精度分析が可能な自動分析システムを開発した.粉砕装置による乾式粉砕と粉末成形法によるXRF分析を基本とするが,強熱減量も測定できる自動分析システムであり,多元素同時XRF分析装置,粉砕装置,成形装置,試料ひょう量装置,試料投入装置,試料移送装置,強熱減量測定装置及び全体を統括するミニコンピューターで構成される.フィーダー一体型容器による試料のひょう量,試料ごとに温水とアルコールで洗浄される振動ミル粉砕容器,バッチ式の試料投入装置,空気洗浄が容易な金属容器による粉砕済み試料の移送などによって試料間の汚染を確実に防止して多種類試料の高精度自動分析を実現した.開発した自動分析システムをセラミック用原料,調合物,焼結体の日常分析に適用したときの分析精度は,相対標準偏差(%)として,主成分の分析で±0.15%,副次成分の分析で±0.5%であった.
  • 水上 和実, 笠井 茂夫, 葛西 直樹, 天川 一彦
    1988 年 37 巻 11 号 p. 607-611
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    製鉄所の高炉に装入する,焼結鉱の工程管理分析において,MgO源である蛇紋岩の粒度が,XRF分析値に影響を与えることが判明した.粗粒蛇紋岩(粒径1mm以下が40%程度)を使用すると細粒蛇紋岩(粒径1mm以下が80%以上)を使用した場合と比較して,MgOの分析値が約1割高値を示す.その原因を究明するために,蛇紋岩粒度と焼結工程でのスラグ化反応との関係を考察した結果,配合される蛇紋岩粒度が小さいほど,比表面積が大きく,かつ均一に分散するため,焼結工程においてmagnesioferriteの生成量が多くなることを,試料表面の元素濃度マッピングより明らかにした.このmagnesioferrite生成量の差が焼結鉱のXRF分析値に影響を与えることが判明した.
  • 吉村 忠与志
    1988 年 37 巻 11 号 p. 612-618
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    複数種の半導体ガスセンサーを集合させたシステムを作り,そのセンサー応答を計測し,それらのデータをパターン認識法を用いて解析することにより,化学物質のにおい識別を試みる研究を進めていく中で,計測データの精度管理は重要な研究ポイントである.本報告において,化学物質のガスに対して多少なりとも選択性を有している市販の半導体ガスセンサーを8種類複合させて用いた場合の同時計測データの精度管理とセンサーの対ガス選択性の向上についてその成果を報告する.センサーシステムの雰囲気条件の設定が重要である.個々の設定条件の中で,化学物質のガスを注入した後(サンプリングごとに)に行うセンサーの洗浄には,エアブラシ法を開発し実用化した.この方法により,ガスセンサーのエアレベル(センシング・ベース)を一定に確保することが可能になり,個々の異種センサーを一定の条件下で同時計測に用いるうえで,有効な再現性を実現することができた.その結果,客観視のむずかしいにおいの識別のために有効なパターンベクトルを得ることができるようになった.
  • 藤岡 裕二, 谷川 啓一
    1988 年 37 巻 11 号 p. 619-622
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    赤外分光検出器(IRD)を用いたHPLCにより,冷間圧延油の添加成分の分析を行った.鉱油を基油とした圧延油には,潤滑性を向上させるために,動植物油,合成エステル及び脂肪酸などが添加される.これらの成分は,紫外分光検出器を用いた場合,鉱油に比べて感度が低いため検出することはできず,又示差屈折計を用いた場合も鉱油の影響を受け,各成分を正確に定量することは困難であった.これに対し,IRDを用いると目的とする添加成分を選択的に検出することができ,この方法を実際の圧延油に適用したところ5成分を短時間(30分程度)に分析することができた.又感度が高いため,冷間圧延後の鋼板表面付着油分も分析することができ,その組成は圧延油浴の変化とよく対応することが分かった.
  • 蔵保 浩文, 猪熊 康夫
    1988 年 37 巻 11 号 p. 623-627
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    ボルタンメトリーを用いて,硫酸亜鉛を主成分とする電気めっき浴中0.1~2mg/lのTl,Pb,Cd,In,Sn及びCu,Bi,Sb定量法を検討した.TlはEDTAでPb,Cd,In,Snをマスキングして定量した.Pb,Cdは,H2O2でSnをSn(IV)に酸化した後リン酸溶液系でSn,Inをマスキングして測定を行い,Pb,Cdに対するTlの重なり補正をして定量した.In,Snは,塩酸溶液系で測定を行い,Inに対するTl,Cdの重なり補正,Snに対するTl,Pbの重なり補正をして定量した.又,Cu,BiはH2O2でSbをSb(V)に酸化マスキングして定量した.Sbは,アスコルビン酸でSbをSb(III)に還元して測定を行い,Sbに対するBiの重なり補正をして定量した.オフラインでの分析結果をもとに,めっき液中Pb,Cd,Cuと洗浄水中Niを定量するオンライン分析装置を開発した.支持電解質を窒素でパージすることにより1か月間安定測定が可能であった.なお,分析精度は相対標準偏差で3%程度であった.
  • 久保 いづみ, 軽部 征夫
    1988 年 37 巻 11 号 p. 628-632
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    発酵プロセス中のアルコール濃度をモニターするためのセンサーとして,エタノール資化菌(Trichosporon brassicae)を固定化し,酸素電極に装着してアルコールセンサーを作製した.更にこのセンサーにメンブランサンプラーを組み合わせて,発酵プロセス中のアルコールの測定に適用したところ,発酵液中のエタノールを選択的に連続測定できた.このセンサーは,エタノール濃度2~45mMの範囲で直線性があり,1200回の測定をすることができた.廃水中のアンモニア濃度を測定するためのアンモニアセンサーは,硝化菌を固定化し酸素電極に装着した後,ガス透過性膜で被覆して作製した.このセンサーは,イオンや,揮発アミンの影響がなく,0.1~1.2mMの範囲で廃水中のアンモニアを再現性良く測定することができた.
  • 香取 典子, 青柳 伸男, 武田 寧
    1988 年 37 巻 11 号 p. 633-635
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    A laboratory robot system was applied to content uniformity test and weight variance test of several commercial sugar coated tablets containing 50 mg of ajmaline. The system was composed of robot, balance, stirrer, ultrasonic washer, pipetting module and HPLC system. HPLC was used for determining ajmaline in the tablets and R.S.D.(relative standard deviation) was 0.18%. The system showed good precision; the R.S.D. of weighing tablets was 0.2% and that of dispensing 0.5 and 1.0 ml of water was 0.4 and 0.1%. All samples passed the content uniformity criteria for the Japanese pharmacopoeia, and the variability of the ajmaline contents was from 1.24 to 4.28% of R.S.D. and that of the weights was from 1.30 to 6.05%. In conclusion, the system showed good suitability for these tests.
  • 山崎 光廣, 宮崎 博, 佐藤 宗衛
    1988 年 37 巻 11 号 p. T121-T127
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    シリカゲルを吸着剤とするTLCにより加工食品に含まれる各種糖質類を分離するために,種々の展開液の組成並びに発色方法について検討し,次のような知見が得られた.(1)単糖類,二糖類,三糖類,配糖体の分離条件として,クロロホルムーメタノールー水(30:20:4v/v)が適当であった.(2)フルクトースとグルコースの相互分離は,クロロホルムーメタノールー水(30:15:3v/v)の展開液を用いることにより良好な分離能が得られた.(3)アミノ糖,糖酸の分離条件として,1-ブタノ-ル-酢酸-水(8:3:2,v/v)が適当であった.(4)オリゴ糖の分離条件として,2-プロパノールー酢酸一水(4:1:1v/v)が適当であった.これらの分離条件並びに発色方法を適宜組み合わせることにより,広範囲な糖質の分離同定が可能であることが明らかになった.本法は,輸入加工食品の糖質の分離同定法として有用であり,又食品加工の面での品質管理並びに食品衛生管理における糖質の分離定性法としても用いられるものと考えられる.
  • (I) 混合末中のセファクロルの迅速定量
    大屋 洋, 永井 真澄, 澤田 実, 金谷 〓清
    1988 年 37 巻 11 号 p. T128-T132
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    近赤外分光光度法(NIR法)を医薬品の定量分析に適用することを検討し,セファクロルカプセルの工程管理に適した迅速定量法を確立した.装置にはパシフィックサイエンティフィク製のモデル6250型近赤外分光光度計を用い,粉末セルに入れた試料(カプセル充てん前の混合末)に1100~2500nmの近赤外光を照射し,その反射光を検出して吸光度を測定する.検量線にはセファクロルの粉末の粒度による影響を除くため,二波長の吸光度の二次微分値の比に対するセファクロル含量の単回帰式を用い,第一波長(分子)には1140nm,第二波長(分母)には1198nmを選んだ.本法の正確さはセファクロル含量約80~105%の範囲で,回収率約99~101%,相対標準偏差0.4%であり,実際試料での繰り返し精度は約0.3%である.又,分析所要時間は1検体当たり約2分で,従来法の紫外部吸光光度法に比べて約1/10である.
  • 仁部 晴美, 黒崎 将夫, 笠井 茂夫
    1988 年 37 巻 11 号 p. T133-T137
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    最近ますます多様化・厳格化する品質ニーズに対応し,精錬制御精度を向上させる手段として,オンサイト型発光分光分析装置の製鋼現場への適用を試みた.適用に当たり,投資コストを最少にし,分析の迅速性を確保するために,特に分析室を設けず,分析装置は製鋼の操作室内に設置し,製鋼工場のオペレーターが分析操作を行うことにした.このため,分析装置の設置環境,操作性,及び設置スペースが問題となるが,耐じん・耐震対策を施された小型のオンサイト型分析装置の適用により諸問題点の解決を図ると共に,分析精度についても,分析条件の工夫により,従来のラボ用分析装置に比べほとんどそん色のない精度が得られた.又試料調製は,試料形状を小型ディスク化し,フライス切削方式を採用することにより,作業性・迅速性をより向上させることができた.
  • 白取 久仁雄, 白田 典夫, 田中 昭男, 妹尾 健吾
    1988 年 37 巻 11 号 p. T138-T141
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    モリブデン青吸光光度法を基本とした鋼中リン自動吸光光度分析装置の吸光度測定条件の最適化検討を行った.更に吸光度の経時変化に対するドリフト補正,最小二乗法による一次,二次の検量線処理並びにGrubbs,Dixon検定による異常値の棄却機能を有するデータ処理装置を開発して付加した.本システムによれば,鉄鋼試料を溶液化した後は,順次自動的に分析される.鋼中の0.0001~0.1%のリンを1試料6分以内でしかも40 ppm 以下の微量域でも抽出,濃縮などの前操作なしで分析できる.リン含有率2及び11ppmの日本鉄鋼標準試料において分析した結果は標準値とよく一致し,相対標準偏差はそれぞれ,8.9%及び2.3%と高精度であった.
  • 小野 昭紘, 緑川 正博
    1988 年 37 巻 11 号 p. T142-T147
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Zn-Fe合金めっきラインの浴組成管理を目的に,浴中のFe(II)及びFe(III)イオンのオンライン高精度,迅速分析法を開発した.Fe(II)は過マンガン酸カリウム,Fe(III)は塩化チタン(III)で滴定して定量する.試作した自動滴定分析システムを用い,合成試料で共存成分,滴定温度による影響などを調べて分析条件を定めた.めっき浴試料を連続分析し,定量精度及び分析所要時間を調べ,従来の手操作分析法と比較した.その結果,Fe(II)(76.2g dm-3)及びFe(III)(13.26g dm-3)の定量値は,従来法(75.9gdm-3,13.10gdm-3)と良く一致した.定量精度は,Fe(II)が分析時間120sで相対標準偏差0.7%(従来法:3min,1.0%),Fe(III)は分析時間90s,相対標準偏差0.5%(従来法:5min,1.0%)であり,省力化及び分析時間の短縮と精度の向上が達成された.
  • 嶋貫 孝, 稲本 勇
    1988 年 37 巻 11 号 p. T148-T151
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    フェロシリコン中のC及びS定量方法に関して,特に高周波誘導加熱炉燃焼-赤外線吸収法についてその燃焼条件を共同実験によって検討した.Cについては,JIS法による管状電気抵抗加熱炉燃焼-電量法又は導電率法を基準方法として比較検討し,高周波誘導加熱炉の場合は助燃剤としてFeとW又はFeとWとSnを用いた場合良好な結果が得られた.Sについては,還元蒸留メチレンブルー吸光光度法を基準方法として比較検討した結果,助燃剤としてFeとWとSnを用いた場合良好な結果が得られた.更に,その結果から各方法の分析精度及び定量下限を明らかにした.
  • 岩崎 廉, 日吉 康明
    1988 年 37 巻 11 号 p. T152-T156
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    青銅鋳物のXRF分析における試料前処理に,高周波誘導加熱による再溶解-遠心鋳造法を利用した.標準試料と分析試料にこれを適用することにより,両者の間の組織の違いを解消し,検量線法でCu,Sn,Pbの正確な分析結果を得ることができた.亜鉛については再溶解中に一部が揮散し低い分析値を与えるため,再鋳造を行わないほうが良いことが分かった.再溶解条件の最適化を行い,得られた試料の均一性を確認した.
  • 石橋 耀一, 吉岡 豊, 佐藤 重臣
    1988 年 37 巻 11 号 p. T157-T162
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    最近,鉄鋼製造工程では,省資源,省エネルギー,歩留まり向上,合理化によるコストダウンと製品の多様化,高級化,高付加価値化が指向されている.これらの製造工程の要請を受けて,製鉄所における分析部門では,新分析技術の開発や自動化の推進により対応を図っている.日本鋼管福山製鉄所では,鉄鋼製造工程の連続化,高速化に対応したXRF分析法と発光分析法による銑鉄,鋼の全自動分析システムを開発し,鉄鋼製造の操業管理のレベルアップと品質保証体制の確立を図り,同時に省力化が達成された.本報は,この銑鉄,鋼の全自動化システムの開発と,自動化に伴う技術検討について述べたものである.主な測定対象元素はC,Si,Mn,P,S,Alである.
  • 波戸 利久, 青木 実, 土屋 武久
    1988 年 37 巻 11 号 p. T163-T170
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    八幡製鐵所第三製鋼工場における製鋼プロセスの技術革新に対応して,(1)転炉メタル分析の迅速化,(2)二次精錬及び連鋳メタル分析の自動化を実現した.(1)の迅速化に当たっては,製鋼工場でのサンプリング工程をも含めた全工程を解析し,工程省略及び簡略化を図り,より一層の迅速化システムを完成させた.(2)の自動化に当たっては,分析業務の効率化と分析結果のタイムリーなフィードバックを図ることを目的に,試料搬送から分析までの全工程を連続化すると共に,試料の識別から分析結果の伝送までを確実に実行するトラッキング・マッチングシステムを開発した.このシステムの実現に当たっては,既存の設備・レイアウトを最大限活用し,投資効率を図り,更に,工場生産への影響を完全に回避し完成させた.これらにより,製鋼の操業・品質管理へ大きく貢献すると共に分析の要員効率を向上させることができた.
  • 清水 博司, 村上 学
    1988 年 37 巻 11 号 p. T171-T175
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    生産現場における工程管理用分析には精度よりも迅速性が優先される場合が多い.非鉄金属製錬業の湿式処理工程の管理分析の適用例としてFIAを検討した.従来,現場のオペレーターの手分析に頼っていたものをFIAに置き換えることにより操業が円滑に行われるようになった.定量対象と発色法などを以下に記す.1)湿式煙灰処理工程液中のCu(II)の定量:Cu(II)-2-(2-チアゾリルアゾ)-4-メチル-5-スルホアミノメチル安息香酸錯体の吸光光度法を適用.2)湿式煙灰処理工程液中のFe(II)及びFe(III)の定量:Fe(III)クロロ錯体の吸光光度法を適用.3)排水中のCdの定量:パラニトロジアゾアミノアゾベンゼン吸光光度法を適用.4)Ga工程液中のGaの定量:ルモガリオン蛍光光度法を適用.
  • 川田 邦明, 鈴木 修, 植村 達夫, 白井 文雄
    1988 年 37 巻 11 号 p. T176-T180
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    井戸水,水道水及び河川水中のトリクロロエチレン,テトラクロロエチレン及び1,1,1-トリクロロエタンの定量に関する共同実験を行った.参加機関数は15機関,試料数は4で,分析方法は厚生省が示した溶媒抽出/GC(14機関)とヘッドスペースGC(13機関)を用い,各分析方法で各々5回ずつの平行測定を実施した.その結果について,異常値を棄却して解析したところ,分析精度には機関内よりも機関間の変動の寄与が大きく,数例を除き機関間で分析結果に差が認められた.そして,分析方法により精度が異なる場合があり,その大部分では溶媒抽出/GCの精度がヘッドスペースGCの精度を上回った.しかし,両分析方法による分析結果の平均値には差が認められなかった.又,機関によっては系統的な誤差要因の存在が考えられた.
  • 山垣 浩司, 高橋 正, 山田 啓夫, 吉井 道直, 鈴木 俊雄
    1988 年 37 巻 11 号 p. T181-T186
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    浄水場排出汚泥中のCd,Pb,Cu,Zn及びNiをICP-AESで同時定量する場合,キレート抽出剤としてジエチルジチオカルバミン酸塩(DDTC)やピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム(APDC)+ヘキサメチレンアンモニウムヘキサメチレンジチオカルバミン酸塩(HMAHMDC)を用いる方法が優れている.前者を用いた場合,マスキング剤としてクエン酸二アンモニウム溶液を添加しても Fe は平均174mg/lが抽出されたが,後者を用いた場合は,12mg/l程度で少ない.一般に汚泥中のCdは含有量が少ないので,Feの影響を大きく受ける.そこでICP-AESによりCdを波長226.5nmで測定する場合の,Feの影響を補正したところAPDC+HMAHMDC 抽出法が良いことが分かった.見掛けの測定値に対する補正量の割合はこの抽出法を用いた場合約16%であった.
  • 田中 一彦, 黒川 利一, 中島 良三
    1988 年 37 巻 11 号 p. T187-T191
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    回分式活性汚泥法により無機BOD成分(チオ硫酸イオン),有機BOD成分(酢酸イオン)及び窒素成分(アンモニウムイオン)を効率よく同時処理する際に不可欠な好気処理工程におけるばっ気時間の制御と,嫌気処理工程における水素供与体(メタノール)添加量の制御技術を各々確立するために,導電率検出イオンクロマトグラフィー(IC)及び導電率検出イオン排除クロマトグラフィー(IEC)をこれら各成分の生物学的酸化還元過程の解明に各々適用し,その結果と,pH,溶存酸素(DO)及び酸化還元電位(ORP)センサーによって得られた結果との関連性について検討した.IC及びIECの適用結果は,DOとpHセンサーがBOD成分とアンモニウムイオンの好気処理工程におけるばっ気時間を制御するための検出端に,ORPセンサーがアンモニウムイオンの好気処理によって生成した硝酸及び亜硝酸イオンの嫌気処理工程におけるメタノールの添加量を制御するための検出端になり得ることを各々示した.これらの制御パラメーターを用いることにより回分式活性汚泥処理工程が良好に自動制御できた.
  • 松本 源寿, 川守田 正雄, 重藤 明, 加瀬 悦子
    1988 年 37 巻 11 号 p. T192-T195
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    著者らは,作業環境測定基準(昭和51年労働省告示)にのっとった作業環境測定ガイドブック(同省安全衛生部編)に準拠して,有機顔料製造現場の実態を測定しているが,そのうち,特定化学物質のジクロロベンジジン,ジアニシジンに時々異常高値が出現した.この測定は,同ブック2の III 10・1,同10・2 によるが,この原理は共に試薬で発色させ吸光度測定する方法で,光で変化しやくすて再現性悪く,又,浮遊着色粉じん同時吸引による正誤差のおそれあるときは同10・2 によるが,感度は10・1 の1/200と劣り問題の残る方法であった.そこで同基準第10条"…又はこれと同等以上の性能を有する分析方法によること"に着目して,独自のHPLCを活用する手法を開発した.この方法は顔料など着色成分の影響を全く受けず,感度は10・1法と同等,再現性も良好で,常に信頼性高いデータを提供できるので所轄の労働基準監督署へ申請し,認可を得た.
  • 生川 章, 小田 功
    1988 年 37 巻 11 号 p. T196-T201
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    関係型データベースによる分析情報の一元管理システム(LIMS/CA)を開発した.HMS/CAは,スーパーミニコンピューターと各分析機器のリアルタイムコンピューターを接続することにより,分析試料の受付・登録,分析手配,分析データのオンライン転送,分析進ちょく状況管理,分析情報の図表化,分析結果報告書の作成,分析費用処理,分析処理日報・月報の作成などの日常分析業務全体のコンピューター処理を可能にした.日常分析業務は,LIMS/CAの適用によって,無駄が排除されると共に分析者の熟練度や不注意によるエラーが減少して,迅速性,信頼性が向上した.
  • 林 勝, 遠藤 博
    1988 年 37 巻 11 号 p. T202-T204
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    テフロン加圧容器を用いて窒化アルミニウム粉末試料の組成及び不純物の定量法を検討した.試料を12M塩酸,200℃,3時間の条件で加圧酸分解した後,AlはEDTA滴定法,Nは中和滴定法で,又,不純物はICP-AESで定量した.本分解法を用いた場合の分析精度及び正確さの確認のために,Alはアルカリ融解法との比較を行ったところ,よく一致した結果を得た.Nは,本法に従ってNBS194中のNを定量したところ,標準値とよく一致した.又,不純物の定量においては,マトリックス成分の影響を調べたところ,共存元素の影響は認められなかった.これにより,同一試料溶液から組成及び不純物が高精度かつ,迅速に定量可能となった.
  • 岡田 章, 平手 直之
    1988 年 37 巻 11 号 p. T205-T208
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    半導体材料料中の微量U,Thを高感度で分析するため,イオン交換分離法などの試料前処理法とタングステンボート蒸発気化/ICP-AESを組み合わせて行う方法を検討した.半導体封止材料のエポキシ樹脂,酸化アンチモン,シリカ粉末及びLSI電極材料のMo,Wは,それぞれ化学前処理後,最後は陰イオン交換分離によってマトリックスを完全に除去する.これより一定容分取して,タングステンボート上で蒸発気化させる.蒸発気化温度,ICP-AESにおける分析条件の最適化を図ることにより0.1ppbレベルのU,Thの迅速な分析が可能になった.
  • 久我 和夫, 松野 博光, 細谷 勝幸
    1988 年 37 巻 11 号 p. T209-T214
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    照明用蛍光ランプなどの放電管に用いる熱電子放射電極における基体タングステンの酸化物,基体タングステンとエミッタとしてのアルカリ土類元素との反応生成物(中間層生成物)中のWの定量方法を検討し,実試料への適用を試みた.すなわち,タングステン基体と酸化タングステン,基体と中間層生成物としてのタングステン酸塩との分離条件などの化学的前処理方法,チオシアン酸塩吸光光度法による定量方法を確立し,実際の試料に適用することにより,これらの研究,品質管理並びに管球の製造条件管理に関する有効な知見が得られた.
  • 松永 秀樹, 平手 直之
    1988 年 37 巻 11 号 p. T215-T217
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    気相分解を利用した汚染の少ない試料溶解法と黒鉛炉AASとを組み合わせて,半導体薄膜(SiO2やSi3N4)中のNa,K,Feなどの金属成分を10-13g/cm2レベルまで検出可能とした.試料分解容器はすべてテフロン製で,密閉容器とこれに酸蒸発用ビーカー,ウエハーキャリア,分解液受け皿を入れたもので構成している.Si基板に薄膜を形成させた試料ウエハーをキャリアに立てかけておき,常温で発生するフッ化水素酸蒸気によって薄膜のみを溶解する.その溶解液をマイクロピペットで全量回収した後,黒鉛炉AAS装置で測定する.本法は従来の直接酸分解/黒鉛炉AASと比較して約200倍高感度であり,二次イオン質量分析法や放射化分析法と比較しても高感度である.本法を超大規模集積回路(VLSI)用各種薄膜中の超微量成分分析に応用した.
  • 森川 久, 上蓑 義則, 飯田 康夫, 柘植 明, 石塚 紀夫
    1988 年 37 巻 11 号 p. T218-T221
    発行日: 1988/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    窒化ホウ素粉末試料中の不純物(10元素)のうちSiを除く9元素の定量にはフッ化水素酸-塩酸により加圧酸分解処理した試料溶液を,Siの定量にはメタホウ酸リチウムによって融解処理した試料溶液を対象とした.試料溶液のマトリックス成分であるホウ酸やLiは一部測定元素の測定波長のバックグラウンドを増加させ,すべての元素の発光強度を5~10%減少させた.そのため,試料溶液とマトリックスをマッチングさせた標準溶液を用いて各元素の検量線を作成する必要があった.実試料の分析を行った結果,本法は窒化ホウ素の品質管理のための分析法として有用であることが分かった.
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