分析化学
Print ISSN : 0525-1931
45 巻, 7 号
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  • 遠田 浩司
    1996 年 45 巻 7 号 p. 641-657
    発行日: 1996/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    レーザー光第二高調波発生(SHG)及び分子プローブを用いる新しい手法によって,イオン選択性電極(ISE)液膜界面における電位応答機構を分子レベルで解釈する研究を行った.イオノフォア含有ISE液膜/試料水溶液界面にレーザー光を照射することによりSHGが発生し,その強度が試料水溶液中の目的イオン濃度が増加するに従って増加することを見いだした.この結果は,生成した陽イオン-イオノフォア錯体がISE液膜界面で配向しSHG活性種となっていることを示唆している.又,ISE液膜の目的イオンに対するSHG強度変化と膜電位変化との相関より,膜界面で配向したSHG活性な錯体陽イオン種が主に膜電位を支配していることを明らかにし,SHG強度より見積もった界面電荷密度に基づいて解析した.更に,膜電位と界面電荷密度の関係を定量的に調べるために,光照射によって膜の状態を一切変えることなく,膜中のイオノフォア濃度及びそのイオノフォアに配位するイオンとの間の結合力(錯体安定度定数)を変化させることができる光応答性イオノフォアを分子プローブとして利用し,光で誘起された膜電位の絶対値及び電位応答勾配の変化量を,液膜界面での錯形成平衡を考慮した拡散電気二重層に基づく界面モデルを用いて定量的に説明した.
  • 戸田 敬, 實政 勲, 出口 俊雄
    1996 年 45 巻 7 号 p. 659-665
    発行日: 1996/07/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    金属イオンとポルフィリンが水溶液中で錯形成する際,錯体形成前に両化学種間の会合体が存在していることを疎水性樹脂(Amberlite XAD-2)カラムを用いて確認した.金属イオン溶液の連続的な流れの中にポルフィリン溶液を注入すると,ポルフィリンはインジェクターの下流に設けたXADカラムに吸着する.その際会合及び錯形成した分の金属イオンも伴われて吸着し,その分金属イオン濃度が一時的に減少する.この減少分から算出すると,Cu2+及びZn2+とα,β,γ,δ-tetrakis(4-N-methylpyridyl)porphine(TMPyP)との会合定数は,それぞれ32(10℃)及び57(25℃)M-1蓋であった.ポルフィリンの金属錯体がCu2+と金属置換反応する際も,錯形成時と同様に会合体が生成していることが分かった.亜鉛錯体とCu2+との置換反応の場合,大きな会合定数が得られた.本研究により,配位子あるいはその金属錯体が疎水性樹脂に吸着される現象を利用して,金属イオンと配位子あるいはその金属錯体との間の相互作用を調べることができた.その結果は錯形成の反応速度論の実験より算出した値とほぼ一致した.
  • 杉山 雅人
    1996 年 45 巻 7 号 p. 667-675
    発行日: 1996/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    自然水中の懸濁物質に含まれる主要から微量に至るまでの各種元素の同時分析法を検討した.懸濁物質を捕集したニュクリポアーフィルターをねじふた付きのテフロン瓶に入れ,濃アンモニア水を加え一定時間放置後,加熱して乾固した.残留物に過塩素酸・硝酸・フッ化水素酸の混合物を加えて加熱分解した.分解物を蒸発乾固した後,過塩素酸及び硝酸を加え再び乾固した.残留物を硝酸溶液に溶解し,ICP-AESに供試した.本法によって4種類の標準物質を分析し,AI,Ba,Ca,Cr,Cu,Fe,Mg,Mn,Ni,P,Sr,Ti,V,Znの14元素について,良好な結果を得た.原子吸光法を用いると,同一の試料でKとNaが定量できた.本法は水中懸濁物質に限らず,たい積物,岩石,生物試料,エアロゾルの分析にも広く有用である.
  • 藤森 啓一, 北野 優, 竹中 規訓, 坂東 博, 前田 泰昭
    1996 年 45 巻 7 号 p. 677-682
    発行日: 1996/07/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    酵素を用いた吸光光度法により,メタノール及びホルムアルデヒドの分別定量を試みた.メタノールとホルムアルデヒド混合溶液にアルコールオキシダーゼ(以下AO)を加えてメタノールをホルムアルデヒドに酸化後,クロモトロプ酸あるいは4-アミノ-3-ヒドラジノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール(以下AHMT)で発色させ,吸光光度法によりメタノールとホルムアルデヒドの総量を測定した.又,同時にAOを添加せずにホルムアルデヒドのみの定量を行った.この両分析を行うことでメタノールとホルムアルデヒドの分別定量が可能になった.AHMT法ではメタノールの検出限界は2.08μMであった.又,従来行われていた吸光光度法(過マンガン酸カリウムを用いて酸化)と比べると,約14倍の感度が得られた.クロモトロプ酸法ではメタノールの検出限界は4.06μMであった.
  • 田中 美穂
    1996 年 45 巻 7 号 p. 683-687
    発行日: 1996/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    シリカゲルをアルカリ金属,アルカリ土類金属及び亜鉛イオンの塩化物水溶液に反応させ,シリカの溶解速度を求めた.陽イオンの溶液濃度が高くなるに従ってシリカゲルの溶解速度は高くなり,又同じ電荷を持つイオン同士ではイオン半径が大きくなるに従ってシリカゲルの溶解速度も高くなった.特にCa2+,Sr2+イオンにおけるシリカゲルの溶解速度は著しく高く,アルカリ土類金属及び亜鉛イオン全体では,アルカリ金属イオンのときと比較して溶解速度の変化が大きかった.更に,アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンそれぞれにおいて,各イオン半径とシリカゲルの溶解速度との間には元素グループ独自の直線関係が認められた.今回のアルカリ,アルカリ土類にまたがる系統的実験結果は,シリカの溶解機構は,画一的なものではなく,共存する金属イオンにより差異が存在することを示唆するものであると考えられる.特に,Ca2+,Sr2+のような,イオン半径の大きいアルカリ土類金属イオンの存在下では,Doveら1)が提唱した,一つのイオンが1分子のシアノール基に交換する機構とは異なった溶解メカニズムが作用している可能性も考えられる.
  • 大浦 博樹, 今任 稔彦, 山崎 澄男
    1996 年 45 巻 7 号 p. 689-695
    発行日: 1996/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    Ce(IV)-Ce(III)系電位緩衝液の流れに白金電極と参照電極とからなる流通型の酸化還元電位検出器(ORP検出器)を用いたヒドラジンの迅速で高感度なフロー電位差分析法を開発した.分析の原理は,電位緩衝液とヒドラジンとの酸化還元反応において,反応の初期に生じる過渡的で鋭敏な酸化還元電極の電位変化量がヒドラジン濃度に比例することに基づくものである.過渡的電位変化は,高い酸化還元電位を持つCe(IV)-Ce(III)系電位緩衝液のベース電位から,ヒドラジンに起因する低い酸化還元電位のヒドラジニウムイオン-一窒素系にシフトすることにより生じるものと推測した.電位緩衝液の濃度を低くすることによりヒドラジンに対する検出感度は増大し,電位緩衝液の濃度が2×10-4Mの場合,5×10-7~5×10-6Mの濃度範囲でヒドラジンの定量が可能であった.S/N=3での検出下限濃度は1×10-7M(3.2ppb)であり,分析処理速度は1時間当たり約40試料で,5×10-6Mの定量に対する相対標準偏差は0.9%(n=6)であった.又,本法をボイラー水にヒドラジン標準溶液を添加し,その回収率を測定した結果,5×10-7M(16ppb)ヒドラジンに対して良好な回収率を得た.
  • 高柳 俊夫, 廣井 康子, 本水 昌二
    1996 年 45 巻 7 号 p. 697-699
    発行日: 1996/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    Stacking effect of sulfate ion on the analysis of inorganic anions by capillary zone electrophoresis was examined during the sample injection period. A used silica capillary was dynamically coated with tetradecyltrimethylammonium bromide (TDTMA+Br-) to control the electroosmotic flow. Analyte anions were directly detected by photometry at 214 nm. Five kinds of anions, namely bromide, nitrite, nitrate, molybdate, and tungstate, were detected. Anion separation was developed using 4×10-3 M sodium sulfate in the carrier solution. Peak heights for anions increased along with additional Na2SO4. The stacking effect was more effective for the anions with high mobility than those with low mobility. Calibration graphs for nitrate and nitrite showed good linearity in the concentration range of 10-6 to 10-5 M.
  • 西本 右子, 森下 裕子, 貝塚 美保子
    1996 年 45 巻 7 号 p. 701-706
    発行日: 1996/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    強酸性電解生成水溶液は,消毒・殺菌効果やかいように対する治ゆ効果を有し,病院内で水道水と機器により簡便に生成できるため医療分野で使用され,効果が報告され始めている.生成条件を検討したところ電解電流値や電解助剤濃度の多少の変動では物性値に大きな変化は見られず,使用する医療機関による水質の差異は少ないものと考える.又,5日間程度は保存可能であることも分かった.排水としては,同時に生成する強塩基性生成水溶液を混合することで緩和できることも確認できた.強酸性電解生成水溶液の特徴の一つである高い酸化還元電位には塩素が関与することが明らかとなった.pH・酸化還元電位・有効塩素濃度等に関しては電解によらず試薬の混合のみで同一レベルの水溶液が調製できた.又,17O-NMRによる測定でも特に変わった点は見いだせなかった.強酸性電解生成水溶液の示す特性の多くは電解操作自体ではなく,電解によって生じた条件の再現で説明される.
  • 鈴木 章悟, 平井 昭司
    1996 年 45 巻 7 号 p. 707-710
    発行日: 1996/07/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    国立環境研究所(NIES)がヒ素化合物をはじめ,ほかの元素の全量に関する認証値を定めるべく調製した環境標準試料ヒジキ(NIES No.14)中のヒ素など57元素の機器中性子放射化分析法(INAA)による定量を試みた.試料200~500mgを立教大学原子炉で10秒間及び6時間の照射を行った.γ線測定は通常の同軸型Ge検出器によるγ線スペクトロメトリーのほか,同軸型Ge検出器と井戸型NaI(Tl)検出器とを組み合わせた反同時測定γ線スペクトロメトリーでも行った.ヒ素の66±1μg/gをはじめ36元素が定量できた.
  • 中村 栄子, 井上 順子, 並木 博
    1996 年 45 巻 7 号 p. 711-715
    発行日: 1996/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    分離カラムとして交換容量の大きいTSK gel-SAX(3.7meq/g),溶離液として濃度の高い塩化ナトリウム溶液(0.5M)を用いることにより,海水中の亜硝酸イオン,硝酸イオン,臭化物イオンを塩化物イオンの影響なしに,良好に分離,定量できた.又,海水の全窒素を定量するため,アルカリ性ペルオキソ二硫酸分解,中和の前処理をした海水に本法を適用したところ,カドミウムカラム還元法と同一の結果が得られた.前処理した海水には多量の硫酸イオンが含まれるが,これはカラムに保持されることなく,試料注入後2分間以内に溶出することも分かった.
  • 岡本 利光, 磯崎 昭徳, 長島 潜
    1996 年 45 巻 7 号 p. 717-721
    発行日: 1996/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    カーボン充てんカラムに,あらかじめドデシルベンゼンスルホン酸をコーティングすることによって,有機化合物中のヨウ素を迅速かつ高感度に定量できることを,先に報告した.今回,同カラムを用い,直接経口されることから食品衛生上で重要な,食用色素中のヨウ素の定量に応用した.食用色素赤色3号及び105号を試料とし,試料溶液の直接導入法によって解離型のヨウ化物(I-)及び遊離ヨウ素(I2)を,又酸素フラスコ燃焼法によって総ヨウ素を定量した.解離型のヨウ化物は0.33%以下で,残存するI2は0.006%以下と極めて微量ながら存在し,総ヨウ素量より得られた純色素含量は,公定法による重量法の値とよく一致した.なお,カラムは1年にわたり使用し,溶離挙動全般に変化は認められず,耐久性に優れていることが分かった.
  • 米森 重明
    1996 年 45 巻 7 号 p. 723-724
    発行日: 1996/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    Analytical methods for fluorochemical engineering materials have been investigated using spectroscopic and other techniques. Since almost all fluorochemicals are chemically stable, nondestructive analytical methods such as nuclear magnetic resonance spectroscopy (NMR), Raman spectroscopy, and X-ray fluorescence spectroscopy (XRF) were mainly used. In some cases, the decomposition of the C-F bonds of fluoroorganic compounds to fluoride ion and derivatization to a volatile fluoride were examined to determine fluorine content. Analytical methods have been also studied to determine the structures and quantities for the main and side components of some typical organic and inorganic fluoromaterials such as tetrafluoroethylene copolymers and fluorine doped quartz glasses. Moreover, simple structural determination methods for fluoroorganic compounds such as freons (CFCs) were established using 13C-19F INEPT and 19F-19F COSY NMR where complex couplings are eliminated.
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