分析化学
Print ISSN : 0525-1931
34 巻, 12 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 藤原 祺多夫
    1985 年 34 巻 12 号 p. 737-756
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    本論交では原子吸光法で用いられるフレーム中での測定元素の原子分布,溶液相での原子吸光スペクトル観測の試み,水素化物発生法とオゾン気相化学発光法,及び吸光光度法の高感度化という四つの研究主題について述べた.
    第2章では空気-アセチレンフレーム及び一酸化二窒素-アセチレンフレーム内における原子分布を調べ,これをバーナーからの高さとアセチレン流量に対してプロットした(response surface plot).この結果,フレーム内の原子分布が,原子化の中間過程で生ずる二原子分子の安定性に依存して変化することを示した.更にクロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅の約50種の錯体を合成し,この水溶液を空気-アセチレンフレームに吹き込んだ際生ずる原子分布を測定し,これらの金属の原子吸光法における配位子の効果を論じた.
    第3章では水溶液中における原子吸光スペクトルの観測の可能性について論じた.金属イオン水溶液を電解する際,陰極の透過スペクトルを測定したが,原子に対応すると思われる吸収は得られなかった.一方,水銀の1価もしくは2価のイオンを還元剤で化学的に還元すると,金属水銀が生成する直前に,254nmを中心に強度比1:2に分裂した吸収スペクトルが測定できた.この吸収が水銀(0)に由来するものであるとすると,励起状態3P1が水の格子振動によって分裂するために生じた二重構造であることを理論的に説明できる.又,このスペクトルが生ずる状況から,水銀の溶液中の原子吸収に対応するものといえる.
    第4章では,ヒ素,アンチモン,スズ,セレンをテトラヒドロホウ酸ナトリウムで還元して水素化物とし,溶液から希ガス中に排除した後,オゾンと混合させると化学発光を生ずることを示し,これを上記元素の定量に応用した.更に還元気化法が定量的に行えないとされているリン酸に対し,石英ボート上でテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液と混合した後40℃で乾燥し,これを430℃に加熱した反応管に挿入することにより可能となること,又,この方法をガスクロマトグラフィーと組み合わせて天然水中のリンの定量ができることを示した.
    第5章では,吸光光度法を高感度化する方法として,レーザー誘起熱レンズ効果をリン酸や亜硝酸の比色法に応用した例を示した.更にLambert-Beerの法則からセルの光路長を延長し,かつ必要試料量を抑える目的で,長光路毛細吸収管(以降LCCと略記,内径1~2mm,長さ1m)を作製し,モリブデンブルー法に適用して高感度なリンの定量法となることを示した.又溶媒として屈折率がセル材質より高いもの(二硫化炭素など)を用いると,ウエーブガイド現象を生じて,セルの形状によらず高い光伝送性のLCCとなることが分かった.更にキャピラリーガスクロマトグラフィー用カラムを利用して50mまでの光ファイバー型LCC(内径250μm)を作製した.これにより必要試料量5cm3以下で吸光度を1cmの光路長の一般の吸光法の104倍以上に増幅できることを示した.
  • 高橋 一暢, 小笠原 一郎, 西川 利男, 大八木 義彦
    1985 年 34 巻 12 号 p. 757-760
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    逆転フレームを用いたスズのフレーム分光分析法について検討した.水素を用いる強還元性フレーム中で形成されるSnH分子が,609.5nmをバンドヘッドとする強い分子発光を示すことが明らかとなり,この測定波長における(1)酸濃度の影響,(2)共存イオンの影響,(3)検量線の直線性について調べた.その結果,試料を王水分解し,1M塩酸溶液で希釈した場合,標準添加法によりスズの定量分析が可能となることが分かった.本法の定量限界は約0.1ppmで水素-空気の多燃料フレームを用いる原子吸光法の感度に匹敵した.本法を用いて船底防汚塗料中のスズの定量を試みたところ,分析値は原子吸光法とよく一致した.
  • 海老原 充
    1985 年 34 巻 12 号 p. 761-765
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    10mgサイズのケイ酸塩試料中のppmレベルのカリウム含有量を中性子放射化分析法で精度良く求める方法を述べた.分析した試料はカンラン石巨大班晶,南極いん石及び標準岩石(JB-1,JP-1)であり,標準岩石試料の分析値は文献値と矛盾しない値を得た.放射化学的分離に伴うカリウムの化学収率は再放射化法で求めた.テトラフェニルホウ酸カリウム沈殿による重量法は系統的に高い値を与え,本法には適さないことが分かった.本分析法に伴う各種誤差の種類及びその大きさの程度を考察し,併せて本法による地球化学的試料中のカリウムの分析定量限界値を推定した.
  • 宮川 佳子, 斉藤 和雄, 丹羽 博昭, 石塚 紀夫, 宮川 草児
    1985 年 34 巻 12 号 p. 766-771
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    窒化ケイ素などのように比較的軽いマトリックスでできたセラミック原料粉体中に含まれる,それより重い微量元素の定量に対する粒子励起X線(PIXE)分析法の適用性を調べた.試料としては,入射陽子の最大投影飛程に比べて十分に厚いものを用い,得られたスペクトルの解析は次のようにして行った.一般にセラミック原料粉体の粒径は~1μm程度あり,化学的処理なしに十分に薄い試料を調製するのは困難である.逆に,入射陽子の最大投影飛程に比べて十分に厚いペレット状の試料なら特別な試料調製なしに容易に成形することができる.このような厚い試料から得られるPIXEスペクトルの解析は複雑で,大型電子計算機による処理が一般的であるが,著者らは次のような比較的簡単な方法を考案した.まず大型計算機を用いて,対象とするマトリックス中に,単位量(1ppm)の微量元素が含まれている場合に,単位量(1μC)の陽子を照射して得られるX線強度Yを求めておく.パーソナルコンピューターを用いたオンライン処理においては,データからバックグラウンドX線を差し引いた残りのスペクトル中のピークを探し,このピークに対応する元素のYの値を用いてガウス分布の理論スペクトルを発生させ,これと,データのピーク強度との比較からその元素の含有率を決定する.この方法で窒化ケイ素を分析した結果は,誘導結合プラズマ発光分析法による結果とよく一致した.この方法はセラミック原料のうち,比較的軽い元素の化合物である窒化ケイ素,炭化ケイ素,酸化アルミニウム,酸化マグネシウムなどに含まれる不純物元素の定量分析に適用できる.
  • 八重樫 満, 糸賀 富美男, 杉谷 嘉則
    1985 年 34 巻 12 号 p. 772-776
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
    光音響法によるグルコースの定量を,市販のグルコース分析用多層フィルムを用いて行った.実験は,0~4g/lの濃度範囲のグルコース溶液2.5μlを採取して,フィルム上に滴下し,一定の条件下(37℃,15 分間)で発色させた後,光音響信号の測定を行った.信号強度の変化は0~2g/lの範囲で直線性が見られ,それ以上の濃度では飽和の傾向を示した.更に,本法を人間の血液のグルコース濃度の測定に応用した.得られた結果は,従来より行われているムタロターゼ・GOD法による値よりも幾分か高い値を示したが,血液の前処理が不必要な本法は,迅速かつ簡便に満足のいく結果を与えることが判明した.
  • 奥谷 忠雄, 弓削田 泰弘
    1985 年 34 巻 12 号 p. 777-780
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    電流測定検出器を用いた逆相イオン対クロマトグラフィーによって,多量の塩化物イオン,硝酸イオン及び硫酸イオンなどが共存しても特異的に微量亜硝酸イオンが分離され検出できることを見いだした.硬質ポリスチレン系ゲルを充てんした分離カラムにフタル酸系溶離液(1mMフタル酸,0.35mMテトラ-n-ブチルアンモニウムヒドロキシド,0.5v/v%テトラヒドロフラン,pH3.50)を流速1.2ml/minで流し,検出器の印加電圧を1000mV(vs.Ag/AgCl)とし,試料量100μlで3ng/ml程度の亜硝酸イオンを定量した.100ng/mlの亜硝酸イオンについて電流値より求めた相対標準偏差は2.6%であった.本法で,雪水(35~50ng/ml),雨水(38~100ng/ml)及び井戸水(未検出)の微量亜硝酸イオンを定量した.
  • 高山 透, 村田 勝夫, 池田 重良
    1985 年 34 巻 12 号 p. 781-785
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    減圧下誘電放電による窒素アフターグロー生成法を用いた発光分析装置を試作した.タンタル板製の加熱型アトマイザー上で減圧乾燥した溶液試料を加熱によって5Torrの気相に放出し,誘電放電部を流れてきた窒素と混合する.このとき,試料は三重項準安定励起窒素分子N2(A3Σ+u)からエネルギーを受け取り発光する.この装置を用いて,亜鉛,カドミウム,水銀の各溶液についてそれぞれの元素の中性原子線の発光を観測したが,その検出限界はそれぞれ5ng(472.2nm),0.1ng(326.1nm),0.03ng(253.7nm)であった.陰イオンの影響を調べるために,塩化物,硝酸塩,硫酸塩の各溶液について検量線を比較し,又,酸の濃度変化による金属の発光強度変化についても検討した.
  • 武捨 清, 土屋 正彦
    1985 年 34 巻 12 号 p. 786-790
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    陽イオン界面活性剤(脂肪族アミン塩,テトラアルキルアンモニウム塩類,ベンジルアンモニウム塩類,アルキルピリジニウム塩)及び両性界面活性剤(ベタイン型,イミダゾリン型)の液体イオン化(LI)質量分析法について検討した.その結果,分子量に直接関係のあるイオンとして,陽イオン界面活性剤では第四アンモニウムイオンなどが,両性界面活性剤ではプロトン化分子(MH+)がそれぞれ生成した.主なフラグメンテーションは窒素に結合している官能基が脱離して水素付加するというものであり,LIスペクトルから分子量及び構造情報の得られることが分かった.又,試料はマトリックス(エタノールなど)に溶解あるいは分散させて試料ホルダーに付けたが,このマトリックスのpHにより生成するイオンの異なるものがあり,試料とマトリックスの相互作用が観測された.更に,他のソフトなイオン化法での質量スペクトルが報告されているものは,それと比較考察した.
  • 高橋 保夫
    1985 年 34 巻 12 号 p. 791-795
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    従来,ニオブとタンタル標準溶液には加水分解防止のため,多量の錯化剤が添加されたが,誘導結合プラズマ(ICP)発光分析に用いるため,錯化剤濃度が低く,しかも安定な標準溶液の調製を試みた.錯化剤としてシュウ酸アンモニウム,酒石酸,フッ化水素酸,過酸化水素及び硫酸について,安定化作用,ICP発光強度に対する干渉,再現性に対する影響などを比較検討した.その結果,ニオブ1mg ml-1標準溶液の調製には,0.1Mシュウ酸アンモニウム,0.6M酒石酸又は2%過酸化水素,同じくタンタルに対しては,0.1Mシュウ酸アソモニウム,1.2M酒石酸又は0.025Mフッ化水素酸が推奨できることが分かった.このようにして調製された標準溶液は1年以上保存しても沈殿は生じなかった.又,水で10倍に希釈した溶液も同様に安定であった.錯化剤濃度がこのように低くなったため.ニオブとタンタルのICP発光強度に対する錯化剤の干渉は無視できる程度であった.
  • 桐栄 恭二, 大島 光子, 桑木 亨
    1985 年 34 巻 12 号 p. 796-799
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    水溶液でのリソ(オルトリン酸)の吸光光度定量法について検討した.硫酸酸性中でのモリブデン酸との反応生成物のヘテロポリ酸は,陽イオン染料であるギニアグリーンBと反応して鋭敏な発色を示す.吸収極大波長は630nmで,検量線はリン240PPb以下の範囲で直線となり,モル吸光係数は1.3×105 1 mol-1cm-1と高感度である.試薬から試験値は0.08,分析精度も10回繰り返し実験の相対標準偏差0.4%と良好であった.ケイ酸による妨害は試料水を採水時酸を加えてpH2としメンブランフィルターで〓過するという簡単な操作で除くことができた.本法により水道水・河川水中のリンを定量したところ,抽出-吸光光度法による結果とよく一致した.
  • 森下 富士夫, 村北 宏之, 小島 次雄
    1985 年 34 巻 12 号 p. 800-802
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    A method has been proposed to predict the retention indices(RI) of the title compounds under various separation conditions. When the presence of thiols or sulfides was confirmed by the subtraction or the shift of peaks, respectively, by means of the tandem combination of a post column reactor coated with silver nitrate and a flame photometric detector, a certain thiol or sulfide was chosen as the standard compound. The retention characteristics of the stationary phase for the particular type of compound were estimated from the RI of the standard. The RI of these types of compound could be predicted accurately by using the observed RI value of the standard and the RI values of the compound of interest on the couple of the stationary phases (polyethylene glycol 20M at 80°C and silicone oil DC-550 at 70°C). The contribution of the increments due to the atomic groups was added in calculation of the latter RI values.
  • 高橋 靖男, 白井 茂, 中桐 孝志, 岩岡 正視
    1985 年 34 巻 12 号 p. 802-805
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    An organic elemental analyzer with the differential thermal conductivity method for carbon, hydrogen, and nitrogen determination was applied to the analysis of thin films of amorphous silicon. The analytical values were compared with those obtained by gas analysis method for metal as the standards. In the case of hydrogen determination for silicon hydride by this method, (1) the bias was ±0.000.15 wt%, and the relative standard deviation (n=9) was 2.66.7%, both at 0.500.80 wt% hydrogen content, and (2) with 5 mg of samples, the determination limit, namely, 10 times the standard deviation was 0.007 wt%. However, the bias of hydrogen determination for silicon hydride nitride was -0.18 wt% at 1.14 wt% hydrogen content. There were large minus errors in the cases of nitrogen determination for silicon hydride nitride, and of hydrogen and carbon determination for silicon hydride carbide.
  • 加藤 弘眞, 桑田 眞一
    1985 年 34 巻 12 号 p. 805-807
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    Determination of moisture in amines by Karl Fischer coulometric titration was studied. Measurements were carried out in the commercial anolyte to which salicylic acid had been added as a neutralizer. The amines, the moisture in which could not be determined by the present method, were classified into the following groups; 1) aliphatic diamine compounds, 2) aromatic diamine compounds and 3) the compounds in which amino groups bind to benzene neucleus. In case 2), the oxidation of the amines at the anode seems to be the reason why they could not be determined. In cases 1) and 3), the reaction of amines with iodine generated electrolytically may be the reason. For other amines, irrespective of their pKa, values, the moisture contained in them could be determined by the present method. Good agreements were found between the results by the present method and those by the volumetric titration method.
  • 竹田 一郎
    1985 年 34 巻 12 号 p. 808-809
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    Concerning waste water from a laundry machine, use of gas detector tube has been applied to the determination of very small amount of tetrachloroethylene(TCE). In Japan, two kinds of detector tubes for TCE with relatively low sensitivity can be purchased, one is {No. 135S (5300 ppm)} and the other is No. 133 (50250 ppm). However, detector tube for trichloroethylene made by Kitazawa Co. {No. 132L (225 ppm)} is developed to be useful for the determination of TCE with very high sensitivity. For the analysis, 200 ml of water containing TCE is taken in 500 ml stoppered glass bottle. After shaking, 50 ml of the equilibrated air in the head space is passed through the detector tube (No. 132L) by means of a disposal syringe. Concentration of TCE in water is then calculated by using Henry's constant and the calibration curve for TCE obtained by separate experiments. The detection limit of a gas detector tube is 0.3 ppm, while Henry's constant expressed by ppm TCE in air/ppm TCE in water attains the value of about 70. Consequently the limit of detec tion of TCE in water is about 0.01 mg/l.
  • 土器屋 由紀子, 広瀬 勝己, 吉村 悦郎, 戸田 昭三
    1985 年 34 巻 12 号 p. T153-T158
    発行日: 1985/12/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    誘導結合プラズマ発光分析による多元素分析の過程で得られる全リンの値及びイオンクロマトグラフィーによる陰イオン分析の過程で得られる正リン酸イオンの値は吸光光度法に比べて感度は劣るが,他成分の値と同時に簡便に得られる点で実用性が高い.大気浮遊じん試料のリン分析法として両者の測定条件を検討した.又,NBS標準物質,Estuarine Sediment及び Urban Particulate Matterを用いて抽出法を検討した.筑波の大気浮遊じん試料に適用して,そのリン含量の季節変動,粒径分布を調べた.気象観測用鉄塔の175mと地表(1m)の同時サンプリングを行い,リン含量と大気の混合の仕方との関係を調べた.
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