分析化学
Print ISSN : 0525-1931
42 巻, 5 号
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  • 井川 学, 小川 伸, 大河内 博
    1993 年42 巻5 号 p. 259-264
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    金属は地表水中において,様々な形態をとって存在している.本研究では,孔径の異なるメンブランフィルターと限外濾過膜を用いた濾過による,金属を含む化学種のサイズ分布の測定を行う方法を検討すると共に,実際に分布測定を行った.濾過に伴って生成するゲル層は,微量に存在する金属化学種の濾液濃度の減少を招くが,特に鉄について顕著にその影響が見られた.このゲル層の生成を避けるためには,濾過する試料の量を少なくする必要がある.又,試料の保存時間が長くなると,鉄やアルミニウムなどの微量金属の形態が大きく変化する.河川水中の主な金属化学種のサイズ分布を測定した結果,鉄やアルミニウムは粒子状物質として存在しているが,ナトリウムやカルシウムなどの多量に存在する金属は,ほとんどが遊離のイオンの形で存在していることが明らかになった.
  • 柴田 康久, 広田 邦男, 宮城 宏行, 高田 芳矩
    1993 年42 巻5 号 p. 265-271
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    メチルトリドデシルアンモニウム塩を感応物質とする塩化物イオン電極で種々の患者血清を測定したときの特定試料に対する応答挙動に注日し,その現象と原因について検討した.実試料測定の来歴がある上記電極で透析患者血清を測定すると,標準溶液や非透析患者血清を測定したときに比べて応答が遅く,しかもその測定値は実用基準法の電量滴定法で求めた測定値よりも10~58mmol/lほど高い値であった.電極を管理血清に浸漬した前後で選択性を調べたところ,浸漬後は特に安息香酸やチオシアン酸イオンに対する選択性が大幅に低下した.この結果から,電極が透析患者血清中に含まれる有機酸や親油性陰イオンに対して応答しやすくなったことが妨害の一因と考えられた.ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で透析患者血清を分離検出したところ,非透析患者の血清にはない特有の成分が少なくとも5成分以上含まれていることが分かった.これらの成分中の塩化物イオン電極に妨害を与える物質は電極表面を透析膜(分画分子量:1000)で被覆することにより排除できたので,その分子量は1000以上と推定された.
  • 中原 久恵, 衣笠 晋一, 服部 滋, 向山 正治, 林 隆哉
    1993 年42 巻5 号 p. 273-278
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ラジカル重合によって合成されたアクリル酸メチルのオリゴマーについて,分子量分布の狭い試料を得るために大規模分取ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて分取を行い二~十量体のアクリル酸メチルオリゴマー試料を得た.分析用GPCの測定結果からこれらの試料の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比はすべてMw/Mn<1.01で非常に分子量分布が狭い試料であることが示された.更にこれらの試料を水酸化ナトリウム溶液中で加水分解を行い,非常に分子量分布が狭いアクリル酸オリゴマーを得た.アクリル酸メチルオリゴマー及びアクリル酸オリゴマーについて屈折率の濃度こう配の測定,蒸気圧浸透圧測定などを行い,重合度依存性について検討した.
  • 中野 信夫, 原 武生, 竹内 安正, 長島 珍男
    1993 年42 巻5 号 p. 279-283
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    室温における高い銀イオン伝導性と耐湿度性を兼ね備えた固体電解質Ag6I4WO4にポリマーを混合したシート状の電解質を川いて,全固体型の室温作動型長寿命二酸化窒素センサーを開発した.作製した検出素子は20×20mm,厚さ0.4mmの柔軟性に富んだシート状のもので,構造は,作用極:スパッタリング法によるAu/電解質:Ag6I4WO4とポリマーの複合体から成るシート/対極:Ag0.7V2O5とAg6I4WO4とポリマーの複合体から成るシートとして表される.ガルバニセルとして作動させたときの検出素子の二酸化窒素に対する検出限界は0.3ppmであって,8ppmの二酸化窒素に対して200日間にわたって作動可能であった.
  • 小池 祐一, 中口 譲, 平木 敬三
    1993 年42 巻5 号 p. 285-291
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    プランクトン体液中のセレンの状態分析を行うに当たり試料中の目的元素の損失や揮散,状態変化を抑制する前処理及び分析法の基礎検討,各態セレンの濃度を求めた.その結果,セレンの蛍光定量時に影響を及ぼす各種有機化合物の除去を検討し単純希釈法を用いた際,80倍希釈が有効で,又濃硝酸による逆抽出を行えば共存する有機化合物の除去が可能であった.又保存法の検討を行ったところ,保存法によらずセレンの分子種が酸化により分析値が変動するため,解凍,前処理後の迅速な分析の必要性が明らかになった.又一般にプランクトンはその体内,特に体液中に高濃度のセレンを濃縮しており,濃縮係数は約600であった.
  • 西田 宏
    1993 年42 巻5 号 p. 293-298
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    40%v/vピリジン水溶液中で8-キノリノールにより,7成分までの他の妨害陽イオンの存在下で,1~61μgのアルミニウムを選択的に正確に精度よく吸光光度定量した.発色した試料溶液の380nmにおける吸光度を水を対照として測定し,与えられた方程式(A=ax+b,Aは試料溶液の吸光度,bは共存陽イオンの8-キノリノール錯体の吸光度とから試験液の吸光度との和,aは検量線から得られたアルミニウム1.0μgについての吸光度,xはアルミニウムの量μg)をχについて近似的に解いた.bの値が全く未知であっても,xの解を近似的に求めることができた.この方法の分析操作は簡便で迅速である.
  • 金子 紀男, 篠原 直行, 根津 弘幸
    1993 年42 巻5 号 p. 299-304
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    有機カチオンのイオン会合性試薬であるテトラブロモフェノールフタレインエチルエステル(TBPE )を用いて電析スズ中に共析したジシクロヘキシル-18-クラウン-6(クラウンエーテル;CE)の吸光光度定量について検討した.電析スズを陽極溶出させ,溶出液中に存在するCEにカリウムイオンを取り込ませてCEカチオンとした後にTBPEを加えてイオン会合体を生成させる.これをクロロホルムに抽出させた後に波長607nmにおける吸光度を測定する.抽出化学種の組成比を連続変化法により検討したところ,1:1であった.pH8の緩衝溶液から抽出することにより,CEの濃度が2×10-7~2×10-6Mの範囲でベールの法則に従い,モル吸光係数の値は3.1×105lmolcm-1であった.又,CEの濃度が2×10-6Mのときの5回繰り返し実験による相対標準偏差は2.4%であった.
  • 山嵜 賢司, 辻 治雄, 茶山 健二, 玉利 祐三, 日下 譲
    1993 年42 巻5 号 p. 305-309
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ICP-AESを用いて,石灰岩中の微量元素群(Al, Bi, Cd, Co, Cr, Cu, Fe, La, Mn, P, Sb, Ti,V,Y及びZn)を定量する目的で,In2S3を担体とする共沈分離法により主成分であるCaと目的微量元素群とを分離する方法を開発した.共沈分離法で用いられることの多い,Fe,Zr及びInのうち,InはICP-AESによる定量の際分光干渉が少ないので,担体として用いられた例は多い.しかし,多元素同時分析という点では,In(OH)3による微量元素群の濃縮効果はFe,Zrなどの水酸化物に比し劣っている.本法では捕集沈殿をIn(OH)3からIn2S3に変化させることにより,In(OH)3法では回収率の低い元素群についても定量的に回収することが可能となった.更に本法を日本地質調査所 (GSJ)標準試料を主とする種々のたい積岩試料に適用したところ,良好な結果を得た.
  • 吉田 友子, 大川 真一郎
    1993 年42 巻5 号 p. 311-316
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    水に難溶性であるが高感度な発色試薬10-(2-ピリジルアゾ)-9-フェナントロール(PAP)を非イオン界面活性剤で可溶化し,ポストカラム-イオンクロマトグラフィーによってカドミウムを定量する方法を確立した.移動相に乳酸緩衝液を用いた.又,発色時のpH調整にアンモニアを用いず,水酸化ナトリウムを使用したほうが広い範囲でPAP-カドミウムを生成した.更に,その範囲は従来の発色試薬4-(2-ピリジルアゾ)レゾルシノールに比べ広く安定していた.検量は,カドミウム濃度40~200ppbの範囲で原点響を通る直線が得られた.又,80ppbにおける再現性はRSD=1.29%(n=6)であり,検出限界は14.5ppb(S/N=3)であった.本法をOyster Tissuc(NIST 1566a)中のカドミウムの定量に適用し,良好な結果を得た.
  • 馬場 恒孝, 萩谷 弘通, 田村 行人, 米沢 仲四郎
    1993 年42 巻5 号 p. 317-323
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    高レベル放射性廃棄物ガラス固化体中の成分元素の定量法を,模擬廃棄物ガラス固化体試料を用いて検討した.Si及びBは粉末試料を過酸化ナトリウム融解法により分解後,ICP-AESにより定量した.その他の元素(Li,Na,Al,P,Ca,Fe,Zn,Zr)は粉末試料をフッ化水素酸-過塩素酸により分解後,ICP-AES又は原子吸光分析法(AAS)で定量した.本法によるNISTガラス標準試料の定量値は,NISTの保証値と7%以内での一致が得られ,又,定量値の再現精度は6%以下であった.
  • 内海 喩, 松野 茂雄, 磯崎 昭徳
    1993 年42 巻5 号 p. 325-327
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    The present paper deals with a simple method for the indirect determination of chloride ion based on the measurement of silver by AAS. A sample solution (10 ml) containing less than 1×10-4 M (3.6 ppm) chloride ion is placed in a glass tube with a stopper. One milliliter of 0.1 M nitric acid and 1 ml of 1×10-3 M silver nitrate are added, and mixed. After standing for 10 min, the AgCl-precipitate is filtered with suction through a 0.45 p.m membrane filter. The absorption of silver ion in the filtrate is measured at 328.1 nm by an atomic absorption spectrometer. If some interfering ions such as iodide, thiosulfate and sulfide exist in the sample solution, the resulting AgCl-precipitate can be used for the determination of chloride. The precipitate on the filter is washed with water, dissolved completely in aqueous ammonia and the absorption of silver is measured at 328.1 nm. The relative standard deviation obtained from the filtrate method for the determination of 2.3 ppm chloride ion in an underground water sample was 1.9% (n = 10).
  • 藤本 悦子
    1993 年42 巻5 号 p. 329-332
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Polarized attenuated total reflection FT-IR spectra of fibers (silk, nylon 6, 6, cotton and polyester) adsorbed by oily substances (oleic acid and triolein) were measured. In these spectra a new band appeared near 1700 cm-1 which is lower 57 cm-1 than the band assigned to the C=O stretching vibration mode of oily substances, for the cases of silk, nylon and cotton. This band may be due to oily substances adsorbed on fibers. As silk and nylon were adsorbed by oily substances, the relative intensity of the amide II band, which is assigned to the deformation vibration mode of NH oriented perpendicularly to the fiber axis, decreased and the line shape of this band became broad toward the high wavenumber. On the other hand, the relative intensity of the amide II band due to NH oriented at random increased and the peak of this band shifted to the lower wavenumber. These facts show that C=O of oily substances adsorbs on NH of silk and nylon. On these spectral evidences, it may be concluded that a mechanism for the adsorption of oily substances on fibers is the chemical adsorption caused by the hydrogen bonding formed between C=O of oily substances and NH or OH of fibers.
  • 内山 俊一, 水沼 剛志, 長谷部 靖, 鈴木 周一
    1993 年42 巻5 号 p. 333-335
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    Controlled potential coulometry with carbon felt electrodes has been applied for the absolute determination of reduced nicotinamide-adenine dinucleotide (NADH) using hexacyanoferrate(III) ion and vitamin K3 mediators. The reduced forms of mediators produced by the NADH addition are completely oxidized to original oxidized forms at the working carbon felt electrode impregnated with electrolyte containing mediator. The oxidation of vitamin K3 by NADH takes place rapidly when diaphorase is contained in an electrolyte. But, the reduced form of vitamin K3 undergoes air oxidation during electrolysis and the current efficiency of NADH obtained by using vitamin K3 mediator was then below 90%, consequently, the absolute determination of NADH could not be carried out by using vitamin K3 mediator. On the other hand, an absolute coulometric determination of NADH were possible when hexacyanoferrate(III) ion mediator is used, because the oxidation rate of NADH by high concentration hexacyanoferrate(III) ion ( <0.1 M) is sufficiently high, even when diaphorase is not used. Moreover, the produced hexacyanoferrate(II) ion by the reduction of hexacyanoferrate(III) ion by NADH is stable to air oxidation and the current efficiency of NADH was found to be attained more than 99%.
  • 樋田 行雄, 渡部 和男
    1993 年42 巻5 号 p. T65-T69
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    高純度黒鉛中の微量ホウ素の正確,簡便な定量法を確立するため,黒鉛を灰化後,酢酸に溶解し蒸発乾固後クルクミン発色させる方法を検討した.共存元素による影響を調べた結果,黒鉛の灰化に用いる白金皿の腐食に起因する白金がホウ素定量を妨害することが分かった.高純度黒鉛中のホウ素は,灰化容器としてシリカ皿を用いることにより,蒸留操作なしで定量できた.本法を黒鉛標準試料に適用し,結果が表示値とよく一致することを確認した.繰り返し精度は,2μgg-1レベルのホウ素を含む黒鉛試料に対して相対標準偏差3%であった.
  • 竹中 みゆき, 小塚 祥二, 橋本 芳美
    1993 年42 巻5 号 p. T71-T75
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    アルゴンガス雰囲気の黒鉛炉原子吸光法を用いて,半導体用材料であるホトレジスト中の超微量ナトリウム,カリウム及び鉄の定量方法を検討した.分析方法として,酸分解法(硝酸+過塩素酸),アルカリ分解法(水酸化テトラメチルアンモニウム),有機溶媒希釈法(アセトン)及び各種抽出法{熱水及び塩酸-4-メチル-2-ペンタノン(MIBK)}を用いて比較検討を行った.各分析方法の再現性も良く,又分析法相互の定量値はよい一致を示した.試料前処理法の最適化を図ることにより数ppbレベルのナトリウム,カリウム及び鉄の迅速な定量が可能となった.
  • 小林 章, 高島 良治, 梅田 勲
    1993 年42 巻5 号 p. T77-T81
    発行日: 1993/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    殺虫製剤(エアゾール,蚊取線香,蚊取マット等)中の有効成分を,キャピラリーガスクロマトグラフィーを用いて一斉分析する方法を確立した.今回の検討では,一般に使用されている9種類のピレスロイド系殺虫剤を含む21種類の殺虫成分を選び,分離条件,定量性などについて検討を行い,メガボアカラムDB-17及びDB-23を用いた条件で21種類の殺虫成分を相互に分離し,効率的に一斉分析できる条件を見いだした.
    又,本法により,市販の各種殺虫製剤について分析を行い,再現性など定量性の確認を行ったところ,問題のない結果が得られ,更に,既報(パックドカラム法)での分析結果を比較したところ,いずれもよく一致した.
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