分析化学
Print ISSN : 0525-1931
38 巻, 12 号
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  • 飯田 順子, 高橋 誠二
    1989 年38 巻12 号 p. 659-666
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    マルチディメンジョナルガスクロマトグラフ質量分析法(MDGC/MS)を用い,薬物服用患者の血清からの抽出物及び薬物標準品をコントロール血清に添加した試料からの抽出物を分析した.血清抽出物中の不要高沸点成分を除去し,分析カラムの保護,質量分析計イオン源の汚染防止及び分析時間の短縮を目的として,プレカッティング法を試みた.プレカラムとしてパックドカラムを用いた場合は,市販のキャピラリーGC/MSシステムに六方バルブを加えるだけの簡便な方法により,良好な結果が得られた薬物もあったが,吸着性の高い薬物では,プレカラムであるパックドカラムの充てん剤に吸着されピークの消失が起こった.溶融シリカキャピラリーカラムをプレカラムとして用いるシステムでは良好な結果を得た.薬物のように比較的沸点が高く極性がある化合物に対しても簡単な流路構成でプレカッティングの行えることが分かった.
  • 平井 昭司, 前田 一幸
    1989 年38 巻12 号 p. 667-673
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    近年,数多くの遺跡の発掘調査において種々の鉄遺物が出土している.従来からこれらの試料に含まれる主要元素に着目した考古学的議論は数多くあるが,微量元素となるとほとんどない.そのため本研究では,機器中性子放射化分析(INAA)を鉄遺物に適応する際の基礎的知見を得るために,鉄製錬及び鉄器に関係した鉄遺物を選び,分析試料の削り取り法,削り取り位置,エッチング法,又,検出元素の濃度範囲,分析精度及び妨害核反応などを検討した.更に,鉄遺物中での元素の分布並びに同種遺物間の含有元素の相関性についても検討を行った.その結果,鉄遺物中の38元素が数十%から数十ppbの濃度範囲で定量できた.鉄さい(滓)試料中の多くの元素は,ほぼ均一に分布し,又,異種鉄さい試料間でも濃度に差が見られなかった.鉄塊試料並びに鉄器試料では,金属鉄地相とさびとの間で元素によって濃度に大きな隔たりがあり,さびは埋蔵されていた環境に大きく影響されていることが分かった.そのためこれらの鉄遺物を分析する際,試料を削り取る位置の吟味が重要となってくる.
  • 青木 伊豆男, 由上 康雄, 渡辺 邦洋
    1989 年38 巻12 号 p. 674-680
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    ο-アミノフェノール(OAP)は,弱酸性水溶液中でサリチルアルデヒド及びアルミニウム(III)と反応し,安定な発蛍光性のシッフ塩基錯体(アルミニウム-サリチリデン-ο-アミノフェノール)を生成する.この反応を利用したOAPの簡単かつ選択的な蛍光定量法を確立した.反応の最適pHは5.3,サリチルアルデヒド及びアルミニウムの最適濃度は共に1.0×10-5mol/25mlであり,錯体の補正された励起及び蛍光極大波長はそれぞれ400nm及び520nmにあった.本法により(4×10-9~2×10-7)mol/25mlの範囲でOAPが定量可能であり,検出限界は5×10-10mol/25mlであった.調べた17種のアニリンを母体とする芳香族アミンのうち,本法により蛍光を示したのはOAP関連化合物のみであった.m-及びp-アミノフェノール,及びアニリンはモル比で100倍共存してもOAPの定量を妨害せず,脂肪族アミンは1000倍の共存で妨害を示さなかった.
  • 渡辺 〓, 栢分 泰志
    1989 年38 巻12 号 p. 681-685
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    ベンゼン希釈の塩化トリオクチルメチルアンモニウム(TOMAC)により,酒石酸を含む水酸化ナトリウム溶液からのAl(III)及びGa(III)の抽出を行い,それらの相互分離について検討した.その結果,Al(III)及びGa(III)を個々に抽出した場合に比べ,両金属が共存する溶液からの抽出のほうがアルミニウムの選択性は増大することが分かった.分離係数は両金属のモル濃度比[Al]/[Ga]=10付近で極大となり,モル濃度比(X=[Al]/[Ga])と分離係数(Y=Sf)はY=Aexp{-B(X-9.38)2}+Cの式で関係づけられた.そして水相のpH変化に対応する変数A,B及びCをそれぞれ決定した.
  • 皆巳 幸也, 林 和彦, 土器屋 由紀子, 別所 進一
    1989 年38 巻12 号 p. 686-690
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    全国的な範囲で統一した方法により同時に降下物試料(降水及び乾性降下物)を採取し,各化学成分降下量の地域特性を調べるための簡易採水法について検討した.その結果,あらかじめ蒸留水を添加すれば,その添加量や設置する高さには左右されずに目的の採水ができることが分かった.特にナトリウムイオン,塩化物イオン,硫酸イオンでは,従来の放射性降下物用採水器での測定値とも十分比較できた.今回の方法を用いて日本各地の22地点で1か月間の全降下物を採取した結果,非海塩硫酸イオン(nss-SO42-)の降下量は人口の過密な地域と火山の近くで多かった.
  • 渡辺 邦洋, 堤 あかね, 小浦 延幸
    1989 年38 巻12 号 p. 691-696
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    アミドブラック10B(AB10)の過酸化水素による退色が,アルカリ性においてコバルトの共存により著しく促進されることから,このことを利用した接触分析法による微量のコバルトの定量法を検討した.AB10の退色による吸光度変化を600nmで測定し,反応開始1分後と6分後の吸光度(A1,A6)の比の対数In(A1/A6)から反応速度に影響を及ぼすコバルト量を評価した.最適定量条件,pH12,タイロン6×10-3M,AB10 5×10-5M,過酸化水素0.25%で,5から30ppbのコバルトが定量でき,再現性は30ppbのコバルトに対し,相対標準偏差2.5%(n=6)であった.本法により,市販ニッケル試薬中に含まれる0.02から0.3%程度のコバルトを,特別な前処理もなく直接定量することができた.
  • 伊藤 浩一, 久保 山繁, 大黒 紘, 中村 精次, 室住 正世
    1989 年38 巻12 号 p. 697-700
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    同位体希釈法を用いる誘導結合プラズマ質量分析法によるPbの精密定量について検討を行った.はじめに,NBSの標準試料を用いて,204Pb/206Pb,207Pb/206Pb及び208Pb/206Pbの同位体比測定の精度を確認した.その結果,Pb濃度が0.1μg/g溶液での同位体比の5回繰り返し測定の相対標準偏差は,それぞれ1.2,0.24及び0.67%であった.測定した同位体比はNBSの保証値及び表面電離質量分析法の結果と誤差0.8%以内で一致した.次に,206Pbスパイクを用いてNBSのNi合金標準試料中のPbを同位体希釈法により定量を行った結果,保証値の誤差の範囲(0.7~24%)内で一致した.
  • 渡辺 邦洋, 村上 裕昭
    1989 年38 巻12 号 p. 701-706
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    多量成分による微量成分の抽出阻害が検討された.共通イオン効果で説明される抽出阻害の現象を利用する金属の分離法が試みられ,多量成分としてカドミウムと亜鉛が選ばれた.カドミウムと亜鉛がそれぞれ0.09Mと0.5Mのとき,3.5Mの塩酸溶液中で最大の抽出阻害効果が観察された.リン酸トリブチル(TBP)が抽出溶媒として使用された.塩酸溶液から抽出された後,亜鉛及びカドミウムはクロロ金属酸として有機相に存在し,酸解離している.微量成分としての金属から得られるクロロ金属酸も有機相中で解離するとき,微量成分は多量成分により抽出を阻害される.一方解離しないものは阻害されない.従って前者は後者より分離される.有機相での金属酸の解離は比電気伝導度の測定により観察された.Sb(III),Ga(III),Mo(VI),Fc(III)は3.0M塩酸溶液から抽出されるときV(V),Cu(II)から分離された.そのとき多量成分としてCd(II)が使用された.又Zr(IV)はCo(II)から7M塩酸で分離された.
  • O,O'-ジアルキルジチオリン酸塩の分析化学的応用(第7報)
    佐々木 義明, 田頭 昭二, 村上 良子, 岡田 和彦, 林 謙次郎
    1989 年38 巻12 号 p. 707-711
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    O,O'-ジアルキルジチオリン酸塩(R2dtp-)の亜鉛(II)及びカドミウム(II)錯体について,そのクロロホルムへの抽出挙動を調べた.実験に用いたR2dtp-はアルキル基がメチル,エチル,プロピル,及びブチルの4種類である.温度及びイオン強度一定のもとで,金属イオンの分配比とR2dtp-濃度との関係から抽出錯体の組成,全生成定数,及びクロロホルムへの分配定数を求めた.その結果,いずれの抽出系においても抽出化学種は[M(R2dtp)2](M=Zn,Cd)であり,これら錯体の分配定数及び全生成定数の値は配位子中のアルキル基が大きくなるに従い増加することが分かった.又,カドミウム錯体のほうが対応する亜鉛錯体よりも常に安定であることも分かった.
  • 渡部 健二朗, 木川 寛, 河村 太郎, 宮崎 泰之, 松本 昌雄, 中澤 裕之, 藤田 昌彦
    1989 年38 巻12 号 p. 712-717
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    牛肉中に残留するタンパク同化ホルモン剤のうちフェノール性水酸基を有するゼラノール,17β-エストラジオール,ジエチルスチルベストロールについて,カラムスイッチング及び電気化学検出器を用いたHPLCによる分析法を検討した.試料の前処理は牛肉中のタンパク同化ホルモンをアセトニトリルで抽出後,ジクロロメタンに転溶し,市販のシリカゲル及びアミノプロピルのカートリッジでクリーンアップした.HPLCの分離カラムにはNuclcosil 5C18,移動相には50mMリン酸塩緩衝液-アセトニトリル(50:50)を用いた.電気化学検出器の印加電圧は+0.75V(vs.Ag/AgCl)に設定した.牛肉に対するゼラノール,17β-エストラジオール及びジエチルスチルベストロールの平均添加回収率は10ng/gで,それぞれ92.8,92.6及び80.2%であった.カラムスイッチングを用いることにより,低濃度の分析(検出限界0.5ng/g)が可能であり,極性物質である妨害ピークの除去にも有効であった.
  • 鈴木 義仁, 小泉 均
    1989 年38 巻12 号 p. 718-723
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    不飽和結合の定最に利用されるヨウ素価はウィイス試薬やハヌス試薬を用いて,オレフィン性二重結合へハロゲンを付加させ消費されたハロゲンをヨウ素等に換算して求めている.このような試薬を用いる反応では試料量,反応時間などによりヨウ素価は異なる値を示すことが知られている.本報ではウィイス試薬,ハヌス試薬,及び臭素溶液を用いて付加反応によって得られたハロゲン付加物をHPLCにより分離・定性分析し,これらの試薬との反応によって,どのような付加物が得られるかを明らかにした.スチレンへの付加反応では使用した試薬の違いによるハロゲン付加物はHPLCで分離できた.しかし長鎖不飽和脂肪酸の付加物ではハロゲン種の違いに基づく相互の分離は達成できなかった.保持の近接した付加物ピークについては分取後,酸素フラスコ燃焼法によりハロゲンイオンとしてイオンクロマトグラフィーにより付加したハロゲン種を同定し,そのHPLCによる分離挙動を明らかにした.
  • 田中 龍彦, 渡壁 和彦, 黒岡 和巳, 吉森 孝良
    1989 年38 巻12 号 p. 724-728
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    ヒ化ガリウムの化学量論組成からのずれの正確な評価法として精密電量滴定法を開発した.ガリウムは,純度既知で高均一度のEDTAの一定過剰量を加えて反応させた後,過剰残留部のEDTAを,カドミウムアマルガム陽極から定電流溶出させたカドミウム(II)イオンで電量滴定する手法により精密定量した.ヒ素は亜硫酸ナトリウムを用いて三価に還元してから電量ヨウ素滴定して定量した.市販の高純度金属ヒ素(純度表示値7-nine)の純度測定結果は99.973%,相対標準偏差は0.034%であった.4種類のヒ化ガリウムウエハー試料で得られたガリウムとヒ素の定量値の総和は100%より0.04~0.1%程度低く,化学量論からのわずかなずれが認められた.本法により得られた標準偏差は原子割合で10-4~10-5であり,測定精度は十分満足できるものであった.
  • 中村 栄子, 笹井 るみ, 並木 博
    1989 年38 巻12 号 p. 729-733
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    モリブドケイ酸の生成,モリブドケイ酸の還元,モリブデン酸の還元,及び生じたヘテロポリ青の抽出に対するモリブデン酸及び硫酸の濃度条件を総合的に検討し,ヘテロポリ青の抽出によるケイ酸イオンの吸光光度法を確立した.モリブデン酸アンモニウム濃度0.4%,硫酸濃度0.05Mでモリブドケイ酸を生成させた後,濃度1Mとなるように硫酸を添加し,アスコルビン酸で還元する.この硫酸濃度においては,リン酸イオン及びヒ酸イオンの妨害を受けることなくヘテロポリ青が生成し,これは容易に1-ブタノールに抽出される.試料50ml,1-ブタノール20mlを用いた場合,シリカとして2~40μgのケイ酸イオンが定量できる.
  • 前田 富之, 中谷 美保, 谷本 恭章
    1989 年38 巻12 号 p. 734-736
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    An addition of oxygen gas to graphite furnace during the first ashing stage (20 s, 0.51 min-1) of AAS determination of Cd and Pb greatly decreased the background absorption due to sample matrices such as milk, orange juice and blood. In case of Pb determination, the intensity of background absorption due to blood matrix decreased to one-tenth of that without oxygen gas treatment. The addition of oxygen gas also prevented the signal depression of Cd and Pb by the sample matrices.
  • 井手 俊輔, 原口 俊秀, 畑中 千秋, 西宮 康二
    1989 年38 巻12 号 p. 737-739
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Water-insoluble polyacrylamide (PAAM) was synthesized by plasma-initiated polymerization of acrylamide and methylenebisacrylamide, and was studied for adsorption of Pd(II), Fe(III), Cu(II), Ni(II), Co(II), Zn(II) and Cd(II) from acidic solution. These metal ions were quantitatively adsorbed onto the PAAM. The reproducibility of the adsorption was confirmed by using PAAM of different lots. Ability of adsorption of the PAAM was not decreased even after five repetition of adsorption and desorption. It is expected that the polymers which have the ability of selective adsorption for various metal ions are obtained according to the choice of appropriate monomers in the plasma-initiated polymerization method.
  • 檀崎 祐悦
    1989 年38 巻12 号 p. T191-T195
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ジルコニウム-ニッケル-バナジウム非晶質合金中のバナジウムを吸光光度定量した.試料を硝酸とフッ化水素酸で溶解し,フッ化物イオンをホウ酸でマスキングして,硫酸溶液中で,バナジウム(IV)を過マンガン酸カリウムで酸化,過剰の過マンガン酸カリウムを尿素共存下で亜硝酸ナトリウムで分解後,バナジウム-過酸化水素錯体として450nmで吸光度を測定した.この錯体の吸光度に対する共存元素の妨害は,計算により補正した.
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