分析化学
Print ISSN : 0525-1931
60 巻, 11 号
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総合論文
  • 植田 郁生, 齊戸 美弘
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 60 巻 11 号 p. 833-844
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/14
    ジャーナル フリー
    環境問題への関心が一層集まってきている昨今,環境中の揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds : VOCs)を正確かつ迅速に測定することは社会的・学術的にもきわめて重要である.VOCsの分析にはガスクロマトグラフィー(GC)法が最も良く用いられてきている.しかし,環境中の微量VOCsを再現性良く測定するためには,測定前に試料濃縮等の試料前処理操作が必要であることが非常に多い.水試料あるいは気体試料中からのVOCsの抽出・濃縮には,これまでに多種多様な方法が開発されてきている.しかし,それらの方法が煩雑かつ多段階の試料前処理操作を必要としているのが現状である.
    著者らの研究グループでは,迅速かつ簡便に環境試料中のVOCsを抽出することが可能な針型試料前処理デバイスを開発し,種々の環境試料に応用を行ってきた.本稿では,これまでに開発した針型試料前処理デバイスの概略及びそれらの応用例について紹介する.
報文
  • 佐藤 冬樹, 早下 隆士
    原稿種別: 報文
    2011 年 60 巻 11 号 p. 845-852
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/14
    ジャーナル フリー
    水中における両親媒性クラウンエーテル型アゾプローブ-シクロデキストリン(CyD)複合体のアルカリ金属イオン認識とその複合体の構造について,紫外可視吸光光度法および円二色性分光法による検討を行った.紫外可視吸収スペクトルによる評価の結果,γ-CyDはクラウンエーテル型両親媒性アゾプローブ(15C5-Azo-Cn)のH会合体と安定な包接体を形成することが分かった.また,Kイオンに対する見かけの親和性は約10倍に増大し,Naイオンに対しては増大しなかった.Kイオン添加時,γ-CyDは15C5-Azo-Cnのアルキル鎖長がn=4, 6のとき1分子,n=8のとき1~2分子)がH会合体と包接していることが示唆された.円二色性スペクトルによる評価の結果,15C5-Azo-C6にNaイオンを添加した場合はγ-CyDは主にフェニルアゾ部位に包接しており,Kイオンを添加するとフェニルアゾ部位から隣接するアルキル鎖にかけて包接していることが明らかとなった.
技術論文
  • 肥田 宗政, 佐藤 弘康, 奥山 修司
    原稿種別: 技術論文
    2011 年 60 巻 11 号 p. 853-858
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/14
    ジャーナル フリー
    クラフト粘着テープの表面の状態を画像データとしてスキャナで取り込んだ.画像処理ソフトにより,画像データとして256階調の赤(以下R値),緑(以下G値),青(以下B値)それぞれに対する3種類の頻度分布図を得た.得られた3種類の頻度分布図をそれぞれの階調ごとに合算して1つの曲線で表した.この曲線がクラフト粘着テープの特徴を示すいわゆる"スペクトル"に相当するものと考えて,外観上ほとんど差異のない10社41種類のクラフト粘着テープの比較分析を行った.比較分析する前に,合算頻度分布図が滑らかになるように5点の単純移動平均で平滑化した.1試料につき異なる10箇所を測定し,得られた410データを用いてクラスター分析を行ったところ,3つのグループに分類できることが示された.また,41試料のうち28試料については10箇所のデータが1つのクラスターを形成したことから,試料によっては個々の識別ができる可能性が示された.
  • 河邉 亮, 石原 良美, 高野 二郎, 北見 秀明
    原稿種別: 技術論文
    2011 年 60 巻 11 号 p. 859-863
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/14
    ジャーナル フリー
    鶏肉中に含まれるイミダゾールペプチドの中で代表的なアンセリン(ANS : β-アラニル-1-メチルヒスチジン),カルノシン(CARN : β-アラニルヒスチジン)がある.これらアミノ酸の分析では誘導体化/高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が一般的に用いられてきた.本研究では,誘導体化することなく抽出や希釈のみの簡便な操作で鶏肉中のANSとCARNを定量する方法として親水性相互作用を有するアミノプロピル基結合型シリカ固定相(NH2)を用いるHPLC法の検討を行った.溶離液にはアセトニトリルとリン酸二水素ナトリウム溶液(pH 4.5)をイソクラティック条件で用い,検出波長は210 nm,カラム温度は40℃,注入量は5 μLとした.分析の所要時間はベースラインの安定時間を含めて約18分であった.検量線の直線範囲は両者共に10~100 pmol μL-1,また10 pmol μL-1の試料に対する5回の繰り返し測定の相対標準偏差(RSD)はANSに対し1.70%,CARNに対し1.61% であった.鶏のモモ肉とムネ肉を実試料として分析した結果,クロマトグラム上のANSとCARNのピークに対する妨害はなく,再現性に優れた結果が得られた.
ノート
アナリティカルレポート
  • 羽成 修康, 石川 啓一郎, 鎗田 孝, 大塚 聡子, 岩澤 良子, 藤木 直美, 沼田 雅彦
    原稿種別: アナリティカルレポート
    2011 年 60 巻 11 号 p. 877-884
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/14
    ジャーナル フリー
    In the development of organic reference materials, a purity evaluation by the freezing point depression method, which is regarded as one of primary methods of measurement, is used to ensure traceability to the International System of Units (SI). However, because this method is difficult to apply to some organic compounds, a subtraction method based on chromatographic techniques under ISO Guide 35 : 2006 was developed for purity evaluation. The subtraction method was based on subtracting every impurity detected from 1. Since the detection of every impurity is impossible, validation of the subtraction method is necessary. To validate our subtraction method based on chromatographic techniques, the purities of 4-n-nonylphenol, 4-n-heptylphenol, and 2,4-dichlorophenol were determined using both the subtraction and freezing point depression methods, and then compared. The purities obtained by the subtraction method were comparable, within the range of uncertainties, to the purities determined using the freezing point depression method. Moreover, validation of our subtraction method was confirmed using international comparisons, which play an important role in ensuring mutual recognition of national reference materials, related to purity evaluation. Therefore, these data suggest that our subtraction method used for purity evaluation of alkylphenols is a reliable technique.
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