著者はさきに蒸気クロマトグラフ装置を発表したが,さらに本装置を改良,操作を簡単にし,これを用いて水蒸気気流中の反応の試みとして,ジエチルアミンによる無機酸および有機酸の定量反応について検討した.その結果ジエチルアミンは解離定数5×10
-5より大きい酸とは定量的に反応するものが多いことがわかった.
TableIIの定量値に示すごとく,保温温度100℃において解離定数5×10
-5より大きい酸は,本装置を用いてジエチルアミンによる定量が可能であったが,3×10
-5より解離定数が小さくなるにつれて低い結果を示し,表やには示さないが,蒸気導通時間がながくなるにしたがい,また,導通蒸気が大になるにつれ次第に低い定量値となり,結果は一定しにくい.
多塩基性酸にては酒石酸のごとく,二つの解離定数が5×10
-5より大きいものは2当量として定量され,ヒ酸,リン酸のように強酸側が10
-4より大きく,弱酸側が約1×10
-7より小さいものは1当量として定量される.10
-5を中心とした3価の酸であるクエン酸は解離定数の差が少ないので一定した定量値が得られない.
リン酸が1当量として定量されると同様に,強酸>10
-4,弱酸<10
-7の2種の解離定数の酸が混合しているときは,TableIIIに示すように,強酸が選択的に定量される.
また,マロン酸は保温温度100.5~101℃に調節するとき,解離定数2.1×10
-6の酸からジエチルアミンは定量的にはなれて流出され,強酸側のみを定量することができる.しかし強酸側が安息香酸(6.6×10
-5)のとき,そのジエチルアミン塩は不安定となり,徐々にジエチルアミンは流出される.
抄録全体を表示