分析化学
Print ISSN : 0525-1931
34 巻, 9 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 尾張 真則, 後藤 誠, 大岩 直登, 福田 昭浩, 武藤 義一, 二瓶 好正
    1985 年 34 巻 9 号 p. 523-528
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    直径0.5~20μmの球形石炭フライアッシュ粒子をX線マイクロアナライザーにより個別に分析した.得られた結果について相関分析及び組成パターンによる類別を行った.組成値並びに粒径の間で特に著しい相関を持つ組み合わせは見いだされなかった.組成パターン類別により,全平均と類似の組成パターンを有する粒子に加え,カルシウム,鉄など特定元素を多く含む粒子が存在することが示された.比重分画試料の組成パターンの検討により,粒子の密度は組成のほかに,粒子内部の空げきにも影響されていることが示された.これらの検討から,粒別組成分析,組成パターン解析の手法の有効性が示された.
  • 樋口 精一郎, 鄭 澤根, 田中 誠之
    1985 年 34 巻 9 号 p. 529-533
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    大気浮遊粒子中に含まれ,有機溶媒可溶成分として抽出される多環芳香族ニトロ化合物は発がん性が極めて強い.本研究では,この種の化合物について前期共鳴ラマン法による微量分析的検討を行った.試料からの強い蛍光によるバックグラウンドについては,四塩化炭素溶液の場合,レーザー光照射による消光が非常に有効であった.各スペクトルは共鳴ラマン効果による強度の増大を受けた強いバンドについて十分な選択性を示す.感度については,10-6Mのオーダー(数百ppb)の検出限界が得られたが,これが更に低い場合も見いだされた.更に,スペクトルは広い濃度範囲で定量性があることが示された.これらの結果は,前期共鳴ラマン法がこの種の化合物の環境科学的検討に十分な有効性をもつことを示唆するものと結論される.
  • 鈴木 義仁, 谷 和江, 宮沢 邦子
    1985 年 34 巻 9 号 p. 534-538
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    芳香族アルデヒドの2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体のメタノール/水移動相における保持挙動を検討した.カラム温度の変化に対しても検討を行い,カラム温度を上昇させることによって,これらの誘導体の分離の選択性を向上させることができた.又,芳香族アルデヒドのオルト体とパラ体の誘導体の溶離特性について,熱力学的パラメーターによる比較を行った.いずれの誘導体もパラ体がオルト体よりも先に溶離するのは,エントロピー効果によるものと考えられる.
  • 山口 茂彦, 横山 伸一
    1985 年 34 巻 9 号 p. 539-543
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    著者らは既にアクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体の熱分解ガスクロマトグラフィー(PGC)による組成分析法について報告している{分化,33,153(1984)}.本報では,更にスチレンが共重合したスチレン-アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル三元共重合体の組成分析法について検討した.三元共重合体のPGCによる組成分析は,構成モノマー単位の結合様式の種類が多いため,境界効果の十分な考慮なしでは難しい.このため,スチレンが共重合した場合には,熱分解によって生成するアクリル酸エステルのモノマー/ダイマー量の比を利用した既報の補正法によってアクリス酸エステル-メタクリル酸エステルの組成比を求めることはできなかった.そこで,組成既知の18種のスチレン(St)-アクリル酸エチル(EA)-メタクリル酸エチル(EMA)共重合体を用い,その熱分解によって生成したEAのモノマー/ダイマー量の比及びSt/EMAのモノマー量の比の両者に対して,EA/EMAのモノマー量の比からEA/EMAの組成比を求めるための補正係数を三次元にプロットし,この図を利用して未知組成の試料のEA/EMAの組成比を求めることを考えた.又,同様にして,St/EMAの組成比を求めることを試みた.検討の結果,本報の組成分析法により,スチレン-アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル三元共重合体の組成を精度よく分析できることが分かった.
  • 塚田 和弘, 池上 卓志, 荒川 秀俊, 前田 昌子, 辻 章夫
    1985 年 34 巻 9 号 p. 544-548
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    乾燥濾紙血液ディスク中又は血清中のサイロキシン(T4)の高感度な蛍光酵素イムノアッセイ法を開発した.T4をグルタールアルデヒド法によりグルコースオキシダーゼと結合させて用いた.免疫反応後の遊離型と結合型の分離は抗T4抗血清又は精製抗ウサギIgG(ヤギ)(第二抗体)をコーティングしたポリスチレンのチューブを用い,酵素活性はグルコースと反応して生成する過酸化水素をp-ヒドロキシフェニル酢酸と西洋ワサビのペルオキシダーゼを用いて蛍光検出した.本法の最小検出量はT45pg/アッセイチューブで日内及び日間変動はそれぞれ,4.0~11.2%,5.1~12.3%であった.本法とラジオイムノアッセイとの相関も良好で,相関係数は0.88~0.90(n=100)であった.
  • 星 座, 井上 貞信, 松原 睦哉
    1985 年 34 巻 9 号 p. 549-553
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2010/05/07
    ジャーナル フリー
    亜鉛(II)-1,10-フェナントロリン(phen)錯体はテトラヨードフルオレセイン(TIF)とイオン対を生成してpH7.5~10.5のアルカリ性領域からクロロホルムによく抽出される.この抽出反応が幾つかのマスキング剤存在下で亜鉛に対してかなり選択的になることを利用してその抽出吸光光度法を開発した.抽出されるイオン対錯体は[Zn(II)-(phen)2](TIF)の組成であり,見掛けのモル吸光係数は1.15×105dm3mol-1cm-1であった.亜鉛0.5μgに対し,ジメチルグリオキシム,ヨウ化カリウム,ジチオカルバミノ酢酸,酒石酸及びトリエタノールアミンの存在下で,ニッケルは1μg,マンガンは7μg,銅は8μg,鉄(II),鉄(III)及びコバルトは30μg,カドミウムは50μg,鉛及び水銀は100μgまで許容された.許容量の低かったニッケル,マンガン及び銅については,強塩基性の陰イオン交換樹脂を用いる前処理法についても検討した.
  • 今枝 一男, 大沢 敬子, 内山 一美, 武藤 章弘
    1985 年 34 巻 9 号 p. 554-558
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    医薬品,化粧品に繁用されているマクロゴール4000に紫外線を照射したときに比較的長時間化学発光することに着目し,紫外線劣化と発光強度との相関性について検討した.極微弱光測定装置は光電子増倍管R-585を用い自製した.又物質の劣化の相対的な指標である極微弱発光強度を,酸化劣化の直接の指標である試料中の酸素含量と比較検討した.マクロゴール4000の発光強度は測定時の温度の上昇とともに増加した.又,マクロゴール4000に紫外線を照射停止後遮光すると急激に発光強度が減少し,約30秒後にその減少率は緩やかとなった.紫外線を照射したときの発光強度の経時的変化を検討したところ,紫外線照射3時間後に発光強度が最大となり以後は減少した.又同時に試料中の酸素含量を酸素直接定量装置を用いて検討した.紫外線未照射のマクロゴールの酸素合量は37.1%であった.紫外線照射約4時間後から酸素含量が増加しはじめ,照射5時間目にその酸素含量は最大(41.5%)となった.しかし紫外線照射6時間以上のものでは酸素含量は減少し,照射8時間目に初期の含量と同程度の値となった.赤外吸収スペクトルでは6~48時間紫外線照射したマクロゴールで,1700cm-1付近にカルボニル基に由来する吸収がわずかに認められた.又1H-核磁気共鳴スペクトルは,紫外線照射の有無にかかわらず変化が認められなかった.マクロゴール水溶液のpHは紫外線照射時間に伴い低下した.
  • 佐藤 太一, 渡辺 〓, 中村 央
    1985 年 34 巻 9 号 p. 559-563
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    キシレン希釈のトリオクチルアミン(TOA,R3N)による乳酸,酒石酸,コハク酸及びクエン酸の抽出について比較検討した.又各酸の抽出物について赤外線吸収スペクトルを測定した.その結果抽出平衡は次のように示されることが分かった.すなわち HnA(aq)+mR3N(org)〓(R3N)mHnA(org)ここで乳酸はn,m=1,酒石酸及びコハク酸はn=2,m=1~2及びクエン酸はn=3,m=1~3が適用される.そして乳酸では水相の酸濃度の高いところで,更に乳酸の付加した化学種[R3NHA]HAが形成される.以上の結果はTOA抽出物の赤外線吸収スペクトルの検討からも支持される.
  • 西田 宏
    1985 年 34 巻 9 号 p. 564-567
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    酸性溶液でバナジウム(V)は8-キノリノールにより黒青色の沈殿を生ずる.しかし,非イオン界面活性剤トリトンX-100を加えると,この沈殿は可溶化され黒赤色の溶液となり,410nm及び530nm付近に吸収極大を示す.そこで,トリトンX-100共存下,pH3.2において60℃に加温してバナジウム(V)-8-キノリノール錯体を生成させ,530nmで吸光度を測定し,0.4~16ppmのバナジウム(V)を吸光光度定量した.鉄(III),銅などの妨害イオンは,Ph10~11で8-キノリノールにより生じた沈殿を濾別して除いた.530nmにおけるモル吸光係数は2.9×103dm3mol-1cm-1で,定量感度はあまり高くないが,水溶液中で発色できるので操作が簡便であった.錯体の組成の検討も行った.
  • 内田 和秀, 友田 正子, 斎藤 眞一
    1985 年 34 巻 9 号 p. 568-572
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    発色剤にヒドロキシナフトールブルー(HNB)を用い,フローインジェクション分析(FIA)を導入した吸光光度法による,マグネシウムのマスキング剤を使用しないカルシウムの迅速,簡便な定量法を開発した.HNB溶液(9.6×10-5mol dm-3),水酸化カリウム溶液(0.6mol dm-3)はそれぞれポンプで送液され,合流後混合コイル中で混合される.試料(50mm3)はこの混合試薬溶液に注入され,反応コイル中を流れて行く過程で発色反応が進行し,455nmの吸光度変化が測定記録される.本法によれば1.2~3.9mg dm-3の範囲で検量線は直線を示し,試料処理能力は約40試料/時間,相対標準偏差は1.12%(n=15)で繰り返し精度は良好であり操作は極めて簡単である.
  • 中埜 邦夫, 一杉 茂
    1985 年 34 巻 9 号 p. 573-575
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    In this paper direct determination of silver collected on ion-exchange filter paper was studied. 50 ml of sample solution of which pH was adjusted to 3.3 with hydrochloric acid was passed through a sheet of ion-exchange filter paper, and after the filter paper was dried, it was punched with a 2.5 mm puncher. The small tablet was put onto a tungsten atomizing furnace and electrothermally heated. The calibration curve was linear at Ag+ concentrations below 0.3 ng/ml, and 1% absorption sensitivity was 1.2×10-3 ng/ml. Coexsisting 104-fold Na+, 103-fold Cu2+, and 103-fold Pb2+ did not affect the absorbance of Ag. Detection limit of this method is considered to lower by increasing the volume of sample solution.
  • 鈴木 義仁, 小泉 均, 平野 直人
    1985 年 34 巻 9 号 p. 575-579
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    Gas chromatographic separation of isomers of mono substituted phenols as their alkyl ether derivatives was studied on liquid crystal stationary phase. Three Schiff's base type liquid crystals such as 4-(p-methylbenzyloxy)benziliden-4'-n-alkylaniline (alkyl; ethyl→MBBE, 1-butyl→MBBB, 1-hexyl→MBBH) were prepared as stationary phases. The temperature ranges of nematic mesophase for MBBE, MBBB, and MBBH were 122140°C, 132147°C, and 132140°C, respectively. A mixture of alkyl ether derivatives from mono-substituted phenols was chromatographed on a column (3 mmφ×2 m or 3 m, stainless steel) packed with 10% liquid crystal at the temperature of nematic mesophase. p-Substituted ether derivatives provided larger retention volume and better selectivity than other isomers. It was found that phenols tested could be quantitatively converted into their ethers with 1-propyl bromide.
  • 岩知道 正, 田尻 政直, 桐栄 恭二
    1985 年 34 巻 9 号 p. 579-581
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    An extraction-spectrophotometric method for the determination of potassium by means of a new reagent, 4-[(4-(phenylamino)phenyl)azo]-2, 5-dichlorobenzenesulfonic acid (TOOCl2) was proposed. The complexes of potassium ions with dibenzo-18-crown-6 (DB18C6) associate with TOOCl2 anions to give colored ion pairs which can be extracted into benzene. The ion pairs in benzene exhibit a maximum absorption at 430 nm with an apparent molar absorption coefficient of 9300 dm3 mol-1 cm-1. Potassium in river water was determined as follows: To a 50-cm3 vessel with a stopper, 5 cm3 of an aqueous TOOCl2 solution (0.02 mol dm-3), 5 cm3 of an aqueous Li2(EDTA) (0.001 mol dm-3) solution, and 10 cm3 of a water sample were transferred. The resulted solution was shaken with 20 cm3 of a benzene solution of DB18C6 (0.01 mol dm-3) for 30 min at 20°C. After the mixture was allowed to stand for 30 min, the absorbance of the benzene phase was measured at 430 nm against a reagent blank. Interferences from calcium (II) and magnesium (II) were avoided by complexing with EDTA. Sodium ions up to 8 ppm gave virtually no interference. Potassium concentrations determined by means of the proposed method agreed closely with those of atomic absorption spectrophotometry.
  • 奈良 修
    1985 年 34 巻 9 号 p. T117-T122
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    高純度精製法の一つとして極めて有用な自動再結晶法の確立を目指し,同装置の試作研究を行った.結晶化の原理に適合する,再結晶用フラスコの形状と沸騰促進の仕方を検討し,それに伴い,加熱効率の良い再結晶用電熱器を試作した.更に,長時間の連続無人自動運転を十分安全に行えるように,給水と通電の自動安全停止器具を試作利用したが,化合物再結晶における防災と省力化に極めて有用であった.本試作装置により,フェナセチンを水から5回以上繰り返し自動再結晶したところ,国立衛生試験所融点測定用標準品と同等以上の融点を持つ高純度精製品が,煩わしい労力をほとんど要せずに,極めて高収率(各回の平均98%)に作製されたが,主に,密閉系での再結晶,低溶解能溶媒の使用,低い晶出速度,及び熟成の過程により精製効果が上がったと理解された.
  • 大道寺 英弘, 松原 道夫
    1985 年 34 巻 9 号 p. T123-T127
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2010/05/07
    ジャーナル フリー
    誘導結合プラズマ発光分析法によりムラサキイガイ,アカガイ,サンゴなど海生生物中の希土類元素,トリウム,ウランの定量法を検討した.ムラサキイガイについては単に酸分解しただけの試料溶液,鉄共沈法により得た試料溶液について分析値を比較し,良い一致をみた.アカガイやサンゴはカルシウムの干渉を避けるため鉄共沈法により試料溶液を調製した.測定に際してバックグラウンドを一定にするため試料溶液と標準溶液のマトリックスの濃度を同じにして定量した.試料中の測定元素の濃度はジスプロシウムとツリウムが検出限界濃度の5~6倍であった.他の元素は10~100倍であり比較的誤差を小さくすることができた.ムラサキイガイ中の希土類元素,トリウムの濃度は0.001~0.2μg/g,ウランの濃度が0.7μg/g程度であった.これらの濃度は海水に比べ約2000~13000倍濃縮されていることになる.
  • 輿石 一郎, 今成 登志男
    1985 年 34 巻 9 号 p. T128-T132
    発行日: 1985/09/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    モリブデンブルー法として代表的な Fiske-SubbaRow法,Taussky法,Lowry-Lopez法,及びMo(V)-Mo(VI)法について,リンモリブデン酸錯体の還元生成物を高速液体クロマトグラフィーで分析しながら,吸光度の経時変化,不安定有機リン酸の妨害,還元性物質の妨害及び感度を考察した.その結果,次のような知見が得られた.Fiske-SubbaRow法は吸光度が経時的に変化しやすく,還元性物質の妨害を受けやすい.Taussky法は還元性物質の影響は受けにくいが,吸光度が経時的に変化し,定量範囲が狭い.Lowry-Lopez法は反応生成物が2種類であり,又反応に長時間を要する.Mo(V)-Mo(VI)法は高感度ではあるが,有機リン酸の妨害を受けやすい.いずれの方法も一長一短を有しており,生体試料中オルトリン酸の測定には目的に合った方法を選択する必要性が認められた.
feedback
Top