プロトン性溶媒である一級アルコール(メタノールからヘキサノール)のほかに,二成分混合溶媒であるアセトニトリル-アルコール(MeCN-MeOH, MeCN-EtOH),エタノール-メタノール(EtOH-MeOH)及びメタノール-水(MeOH-H
2O)系において,アルカリ土類金属イオン(Mg
2+, Ca
2+, Ba
2+)と芳香族スルホン酸イオン間の特異な相互作用を紫外・可視吸収スペクトル法によって研究した.ここで,芳香族スルホン酸イオン類とは,
p-トルエンスルホン酸イオン(L
-),1,5-ナフタレンジスルホン酸イオン(L
2-)及び1,3,6-ナフタレントリスルホン酸イオン(L
3-)イオンを指し,いずれもテトラエチルアンモニウム塩である.非プロトン性溶媒ばかりではなくプロトン性溶媒中における,過塩素酸金属塩M(ClO
4)
2濃度の増加に伴う無電荷種の沈殿(例えばML
0)生成に引き続く沈殿の再溶解現象は,正に荷電した化学種すなわち「逆配位」化学種の生成によって説明された.溶解度積(
Ksp=[M
2+] [L
2-])及び「逆配位」生成定数(2M
2++L
2- ↔ M
2L
2+,
K2(-2)=[M
2L
2+]/[M
2+]
2 [L
2-])が見積もられた.エタノール中においては,Ca
2+またはBa
2+について沈殿ML
0及び引き続くM
2L
2+の生成が観測されたがMg
2+については観測されなかった.ブタノール中では,Mg
2+とL
2-間で完全な沈殿MgL
0(p
Ksp=10.39)生成及びMg
2L
2+(log
K2(-2)=8.08)の生成が観測された.
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