分析化学
Print ISSN : 0525-1931
41 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 代島 茂樹, 飯田 芳男
    1992 年 41 巻 5 号 p. 207-213
    発行日: 1992/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    タウンゼント放電を利用した化学イオン化質量分析法により空気中の微量有機成分を直接検出する方法を検討した.この方法では不活性化したキャピラリーの一端を質量分析計のイオン源に直結し,他の一端を大気圧下に置くことによりキャピラリーの内部を減圧状態とし空気を自動的にイオン化室に導く.空気自身あるいはメタンを添加した空気のタウンゼント放電によって生じる反応イオンが空気中の有機成分を効率的にイオン化する.試料空気のサンプリング方法を使い分けることによりテドラーバッグに採取した空気中のベンゼン,トルエン,キシレン及びクロロカーボン類をppbレベルの感度で再現性よく定量することや,紙や衣服表面の空気中に含まれる種々の有機成分やたばこの副流煙に含まれるニコチンなどを直接検出することが可能になった.
  • 松原 チヨ, 河本 直樹, 高村 喜代子
    1992 年 41 巻 5 号 p. 215-219
    発行日: 1992/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    Ti(IV)-5,10,15,20-テトラ(4-ピリジル)ポルフィン{TiO(tpypH4)4+}の強酸性溶液(Ti-TPyP試薬)をH2O2溶液に加えると,TiO2(tpypH4)4+錯体が生成し,TiO(tpypH4)4+錯体は減少するので,その吸光度(λmax:432nm)は減少する.吸光度の減少分ΔAbsorbanceはH2O2濃度に比例するので,この値を測定することによりH2O2を定量でき,H2O21M当たりのΔAbsorbanceは1.9×105であった.この反応はペルオキソ錯体生成反応に基づいているので,還元性共存物質による影響を受け難い.本反応を,グルコースオキシダーゼによるH2O2生成反応と組み合わせて,血清及び尿中グルコースの定量に応用した.血清中で64.8~249.1mg/dl,尿中で6.54~90.8mg/dlの定量値が得られ,血清への180.2mg/dlのグルコースの添加回収率は98.0~105.3%であった.
  • 渡辺 高志
    1992 年 41 巻 5 号 p. 221-229
    発行日: 1992/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    大気中の多種類の農薬の残留実態を,同時にかつ簡便に調査する方法を開発した.農薬15化合物を対象に,10種類の固体吸着剤による大気中の農薬の捕集率を測定したところ,クロモソルブ102,シリカゲル,セップパックシリカの捕集率が高く,平均して約90%以上を示した.特に,セップパックシリカカートリッジは取り扱いが簡便であるので,破過,保存安定性などの実用性を検討した.農薬をセップパックシリカカートリッジに添加してその安定性を調べたところ,5℃で1日間保存した場合,dichlorvosを除く14化合物には減衰は見られず,7日間保存した場合でも,dichlorvosとedifenphos以外は安定であった.なお,dichlorvosも-15℃以下では安定であった.又,いずれの農薬も破過を示さなかった.稲に農薬を散布した後の気中濃度の測定に本法を応用したところ,実用可能であることが確認された.供試農薬の蒸気圧は,dichlorvosを除くと0.03~620mPaであり,多くの農薬の蒸気圧はこの範囲に入るので,セップパックシリカカートリッジを吸着剤に用いることで,相当数の農薬が同時に捕集できる.
  • 正留 隆, 楊 継光, 今任 稔彦, 石橋 信彦
    1992 年 41 巻 5 号 p. 231-237
    発行日: 1992/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    イオン交換体を加えず,オルトニトロフェニルオクチルエーテル(o-NPOE)で可塑化したポリ塩化ビニル(PVC)膜を感応膜とする電極を作製し,種々の陰イオンに対する応答を調べた.アルキル鎖の炭素数が10以上のアルキル硫酸イオンに対してネルンスト的応答を示した.アルキルスルホン酸,アルキルカルボン酸イオンに対しては,アルキル鎖の炭素数が11以下のイオンに対してネルンスト的応答を示さなかったが,ドデシルベンゼンスルホン酸イオンとジ-2-エチルヘキシル-スルホコハク酸イオンに対してはネルンスト的応答を示した.その他の陰イオンに対する応答性の検討の結果,ナフタレンスルホン酸イオンや過塩素酸イオンに対してはネルンスト的応答を示さなかったが,テトラフェニルホウ酸イオン及び8-アニリノ-1-ナフタレンスルホン酸イオンではネルンスト的応答を示した.電極の陰イオンに対する応答特性と,それらイオンの疎水性とを関連づけるために,イオン交換体として塩化トリオクチルメチルアンモニウムを含むo-NPOE可塑化PVC膜を感応膜とする塩化物イオン電極を用いて,これらイオンの選択係数を測定した.この結果より,イオン交換体を添加しないo-NPOEで可塑化したPVC膜を感応膜とする電極は,塩化物イオン基準で約105.5以上の選択係数値をもつ陰イオンに対してネルンスト的応答を示すことが分かった.
  • 中村 栄子, 斉藤 民雄, 並木 博
    1992 年 41 巻 5 号 p. 239-241
    発行日: 1992/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Nitrate can be reduced to ammonium ion with sodium tetrahydroborate in the presence of nickel ion and determined by the indophenol method. Fifty milliliters of solution containing nitrate is taken into a 200 ml triangular flask. After the addition of a tablet of sodium tetrahydroborate (0.3 g) and 2 ml of nickel chloride solution (10 mgNi/ml), the solution is strirred for 60 min at 45°C. The deposited nickel is removed with a membrane filter. The filtrate is made up to 100 ml with water and ammonium ion is determined by the indophenol method. To determine total nitrogen in water samples, this method was applied to nitrate produced by the alkaline peroxodisulfate digestion. The results obtained by this method were in good agreement with those obtained by the cadmium-column method for the determination of total nitrogen in sea and river water.
  • 横田 文昭
    1992 年 41 巻 5 号 p. T59-T63
    発行日: 1992/05/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    アルミニウム及び同合金中のケイ素などの副,微量成分(13元素)を,同一溶液からICP-AESにより迅速に定量するため,テフロン加圧容器によるアルミニウム及び同合金中のケイ素の溶解法を検討した.試料0.20gをテフロンビーカーにはかり取り,蒸留水約10ml,硫酸(1+1)5ml及び過酸化水素水0.5~1.0mlを徐々に加え,ケイ素を除いた成分を砂浴上で加熱分解後,約10mlまで濃縮する.そしてケイ素を溶解するため,この溶液をテフロン加圧容器に移し替え,230℃で2~4時間分解を行い,100ml定容とし,試料溶液を得た.本溶解法により,アルミニウム及び同合金中に約0.5%まで含まれているケイ素を溶解できた.ケイ素含有率約0.5%までのアルミニウム及び同合金標準試料及びアルミニウム合金板を,本溶解法により溶解し,試料溶液とマトリックスマッチングした検量線用標準溶液を用い,シーケンシャル法(多重速度波長掃引法)により13元素を迅速に定量(1試料中13元素の発光強度を測定するのに要する時間は約7分)したところ,各元素の定量値は,保証値又はJIS法による定量値と一致し,かつ精度よく定量できた.又,本試料溶液は数週間は安定であった.
  • 川久保 進, 山本 修司, 岩附 正明, 深沢 力
    1992 年 41 巻 5 号 p. T65-T71
    発行日: 1992/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    高純度酸,水道水,天然水中のng量のアルミニウムの簡便な定量のため,水溶性の8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸(HQS)を用いる蛍光法を検討した.亜鉛,鉄,銅などの妨害はアスコルビン酸や1,10-フェナントロリンなどによるマスキングと吸光度測定による蛍光強度補正により除くことができた.硝酸,塩酸,フッ化水素酸,過酸化水素水は,試料2ml以下をポリテトラフルオロエチレン製容器にとり清浄空気中で乾固近くまで加熱蒸発させ,塩酸と酢酸アンモニアでpH4.5とし,HQSを加えて蛍光錯体を生成させ,1ppbまでの定量ができた.水道水,雨水や雪は,1ml以下の試料をそのままpH4.5としてHQSと反応させ,マスキングと蛍光強度補正を組み合わせ簡便に分析できた.
  • 永長 幸雄, 石田 寿久
    1992 年 41 巻 5 号 p. T73-T76
    発行日: 1992/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    電気化学検出高速液体クロマトグラフィーによる血清中のCu(II)及びFe(III)の定量における除タンパク操作及び試料導入前の試料調製を含めた前処理法について検討した.血清試料の除タンパク処理操作については3種類の方法を実施し,その分析結果と標示量の比較から以下のことが分かった.従来からよく使用されているトリクロロ酢酸・塩酸処理法を用いた場合は,標示量に最も近い定量値が得られ,メタノール・塩酸処理法を用いた場合も,許容範囲内であった.しかし,過塩素酸処理法を用いた場合は,Cu(II)は許容範囲内であったがFe(III)は負の誤差を生じた.又,正確な分析値を得るために,プレカラム誘導体化法であらかじめ錯形成させた後,その試料溶液を注入すべきであることが分かった.
  • 玉利 祐三, 吉田 昌子, 高木 晋, 茶山 健二, 辻 治雄, 日下 譲
    1992 年 41 巻 5 号 p. T77-T81
    発行日: 1992/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    市販されている原子吸光分析装置用水素化物発生装置(日立,HFS-2型)を用いて,セレンの分析条件を検討したところ,セレン(IV)のみが試料中に存在し,セレン(VI)が存在しない条件下にセレン(IV)を測定することにより,全セレンを定量した.生物試料中のセレンを分析するとき,試料を硝酸・過塩素酸で溶解した後塩酸による還元処理を行わなければ,セレンの酸化数をセレン(IV)に整えることができず,試料中の全セレンの分析値に大きな分析誤差を与えることを指摘した.本法をNBS(National Bureau of Standards)及びNIES(National Institute for Environmental Studies)生物標準試料に適用したところ,蛍光分析法及び中性子放射化分析法による全セレンの分析値と良好な一致が見られた.
  • 金井 豊
    1992 年 41 巻 5 号 p. T83-T86
    発行日: 1992/05/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    アルミニウム金属やアルミニウム試薬に含まれる不純物ウランの含有量,及びその234U/238U放射能比について調べた.ウランは,金属アルミニウム換算してそのに数十から数百ppb含234U/238U放射能比の大きいものもあった.従って,硝酸アルミニウムを使用寺る場合には,微量ウランを定最する際のコンタミネーションのみならず,234U/238U放射能比の測定においても,試薬から混入する高放射能比のウランによるコンタミネーションに対する注意が必要である.又,アルミニウムの原料となるボーキサイト中のウラン含有量と234U/238U放射能比は変化に富んでいて,試薬中のウランの多様性はボーキサイトに帰せられるとみられる.
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