マンニット溶液の旋光度がホウ酸により変化することを利用して,ホウ素の定量分析を試みた.すなわち0~25mgのホウ素をホウ酸として含む溶液10mlにマンニット1.0gを溶かし,3時間後に水酸化ナトリウム2.0gを加え,冷却後旋光度を測定する.マンニットのみの旋光度との差はホウ素の量に比例し,液長10cmあたりの旋光角0.01°の変化は,ホウ素の量約0.1mgの変化に相当する.
旋光度差は溶液のpH増加とともにふえる.また他種元素による妨害作用については,1価イオンではほとんど無いが,2価以上のイオンでは作用をうける場合が多い.とくにケイ酸,アルミニウム,タングステン酸の各イオンの影響は大きい.ゆえにケイ素が多量共存している時は蒸留などによる分離が必要である.
旋光度測定を無機分析に応用したことは最初の試みで,妨害元素のない時は,はなはだ簡単な定量法である.この方法は一方には種々の多価アルコール,糖類,またはオキシカルボン酸を,他方にはホウ酸,タングステン酸,モリブデン酸,ゲルマニウム酸,テルル酸,ウラン酸などの組合わせで,今後大いに発展される可能性があると思う.
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