分析化学
Print ISSN : 0525-1931
48 巻, 12 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 四ツ柳 隆夫
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1037-1041
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    学問の歴史的な流れの中から,次世紀の主導的学問がテクノロジーとなる必然性を論じ,その本質が合成的,総合的特性を持つこと,更には構成要素の機能の和を越える機能を創発する分子システムの構築について論じ,分析化学とその手法が人類の生き残りをかけた次世代のキーテクノロジーをもたらす可能性について,事例を挙げて論じた.
  • 大塚 浩二, Joselito P. QUIRINO, 寺部 茂
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1043-1061
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ミセル動電クロマトグラフィーの分離原理,分離特性,分離に影響を及ぼす種々の因子について基礎的考察を行った.最近の著者らの研究から,検出感度を上げるためのオンライン試料濃縮法,及び試料についてより多くの情報を得るための質量分析法とのオンライン結合についても述べた.オンライン試料濃縮法では疎水性の強い試料については1000倍以上の感度上昇が可能であった.質量分析法との結合においては泳動液にミセルが存在することが問題となるが,種々の方法により問題の解決が可能となった.
  • 寺前 紀夫, 内田 達也, 山口 央, 能智 公久, 山下 智富, 塩谷 武
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1063-1075
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    液液界面や固液界面に吸着した分子の示す特異的な挙動を解析するには界面に選択的に応答する分析手法が必要不可欠である.そのような方法の例として,電気化学STM,共鳴第二高調波発生分光法,時間分解全反射蛍光分光法を用いた界面吸着分子の解析について述べる.更に液液界面における錯生成反応や分子認識反応の解析を動的表面張力やイオン移動の測定により行い,界面が分析化学反応に対して特異性を示す結果を述べる.
  • 袁 景利, 松本 和子
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1077-1083
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    希土類蛍光錯体は強い蛍光,非常に長い蛍光寿命,大きなストークスシフトなどの有機蛍光物質にない蛍光特性を持ち,蛍光ラベル剤として様々なタンパク質や核酸などの生体分子の高感度時間分解蛍光イムノアッセイやDNAハイブリダイゼーションアッセイなどに用いられている.希土類蛍光錯体をラベルとした時間分解蛍光測定は生体サンプルや測定器具などからのバックグラウンド蛍光と励起光由来の散乱光を有効になくすことができ,ラジオアイソトープをラベルとした測定法より更に高い感度の測定が達成されている.従来用いた希土類蛍光ラベルの欠点を克服するために,近年,数多くの新規希土類蛍光錯体が合成され,蛍光ラベル剤として新しい高感度時間分解蛍光イムノアッセイやDNAハイブリダイゼーションアッセイなどに応用された.本論文では希土類蛍光ラベル剤を用いた時間分解蛍光分析法の最近の進歩及びバイオテクノロジー分野への応用などを中心に議論する.
  • 赤坂 和昭, 今泉 啓一郎, 大類 洋
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1085-1094
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    不斉を有するエタノールアミン骨格と2,3-アントラセンジカルボン酸無水物より,非常に強い蛍光性を有する2,3-アントラセンジカルボキシイミド型の不斉誘導体化試薬を合成した.この試薬によりメチル基の分岐による不斉を有する分岐脂肪酸を誘導体に導いた後,-50℃~室温で,ODSカラムを用いたHPLC分析に供したところ,2~12位の不斉を識別することができた.NMRやCDスペクトルの解析結果より,この試薬による脂肪酸誘導体は,試薬のエタノールアミン部で,試薬の立体化学に依存したゴーシュ/トランス配座を優位にとり不斉の折れ曲がり構造を形成するため,脂肪酸のアルキル鎖が試薬のアントラセンイミド基の真上を規則的なジグザグ構造をとりながら覆いかぶさるような構造をとることにより,遠隔位の不斉識別能が発現したものと考えられた.また,本誘導体は蛍光検出によりfmolレベルの高感度検出が可能であった.
  • 竹中 繁織
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1095-1105
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    縫い込み型インターカレーターは,二本鎖DNAと複合体を形成する際に,重なり合ったDNA塩基対の間をインターカレート部位上のかさばった置換基が通り抜けることが必要なリガンドである.形成された複合体は,かさばった置換基が主溝と副溝に位置するため,リガンドが二本鎖から解離する際に置換基がアンカー(留めいかり)として働く.これにより複合体は,速度論的に極めて安定となる.著者らは,この性質を利用した分子設計により新しい核酸分析試薬を開発してきた.縫い込み型インターカレート部を中心部に有するトリスインターカレーターによって,リガンド鎖がDNA二本鎖に縫い込まれたような構造をとる複合体形成に成功し,これがDNA二本鎖の不安定部位へ優先的に結合することを示した.核酸塩基を側鎖に有するナフタレンジイミド誘導体は,一本鎖の連続アデニン配列に対して選択性を示し,更にこのリガンドがヘアピン構造をバルジ構造へ変換することが明らかとなった(ヘアピンとバルジ二本鎖には元々固有の平衡がある).また,フェロセン基を有するナフタレンジイミドは,DNA修飾電極と組み合わせることによって,高感度な電気化学的遺伝子センシングシステムに用いることができた.この場合に電極上に形成される複合体は,フェロセンによってコーティングされたDNAのミクロ電線となる可能性を有していた.環状ビス縫い込み型インターカレーターは,DNAとカテナン型の複合体を形成すると期待され,新しいDNA分析試薬としての可能性を示唆した.フェロセンとナフタレンジイミドから形成される大環状リガンドは,一本鎖核酸に選択的に結合して電気化学シグナルを与える可能性がある.
  • 穴田 貴久, 北岡 卓也, 太田 英之, 柿沢 雄輔, 秋田 雄大, 諸角 達也, 中村 博
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1107-1114
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    クラウンエーテル類はアルカリ金属やアルカリ土類金属イオンに選択的な配位子として知られている.その類似体である鎖状ポリエーテルは錯形成によるコンポメーション変化が大きく,この両末端に蛍光発色団を導入することにより,金属イオンとの錯形成を光化学的な情報として読み出すことが可能である.そこで著者らはポリエーテルの両末端にアルキル鎖のスペーサーを介しアントラセンを導入した新規蛍光性イオノホアを合成した.これらの化合物は金属イオン不在下ではアントラセンのモノマー発光のみしか示さないが,金属イオンを添加するにつれモノマー発光が減少し,エキシマー発光の増加が見られるようになる.よって金属イオンをスペクトル変化として検出することが確かめられた.今回はこれらの化合物の錯形成と光化学的挙動について検討した.また,ポリエーテル及びアルキル鎖スペーサーの鎖長効果についても比較検討したので報告する.
  • 五十嵐 淑郎, 井出 憲之, 高畑 圭二, 高貝 慶隆
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1115-1121
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    水/ピリジン/クロロ酢酸エチル三成分溶媒系において,pH依存相分離現象を利用した新しい均一液液抽出法を開発した.この三成分溶媒系相分離における最適操作条件は,{ピリジン5cm3 (12.0 vol%),クロロ酢酸エチル1cm3(2.0 vol%)を含む均一水溶液44cm3に塩酸6cm3([HCl]T=1.44mol dm-3)を添加し相分離を行う.最終体積:50cm3}である.また,あらかじめ添加するクロロ酢酸エチルの量を調節すると水相(Vw=50cm3)と析出クロロ酢酸エチル相(Vo=5μl)との体積比を1万倍とすることができる.本法において,抽出可能なキレート試薬としてα,β,γ,δ-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィン(TCPP)を選定した.Vw/Voが500のとき,分配比(D)及び抽出率{E(%)}は,TCPP (14700, 96.7%), Cu-TCPP (7440, 93.7%), Zn-TCPP (22200, 97.8%), Mn-TCPP (1070,68.1%) 及びCo-TCPP (8760, 94.6%)であった.既に報告した金属-TCPP錯体のHPLCにおける前段濃縮法として本法を応用した.各金属イオン(Cu2+, Zn2+, Mn2+, Co2+)の検量線は, 5×10-9~1×10-7mol dm-3 の範囲で直線であった.また本法は, Al3+, Fe3+ の共存を各金属イオンに対して 50倍量まで許容できた.河川水(日本分析化学会JAC0032)中の各金属イオンの同時定量を行ったところ,良好な結果が得られた.
  • 池竹 英人, 山田 明文
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1123-1127
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    フローインジェクション分析用の固体電極セルを試作し,残留塩素を電気化学的に測定する方法の検討を行った.固体電極セルは,交換可能な作用極,対極(白金線)及び参照極(飽和カロメル電極)からなるものを作製した.セルの評価はヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムで行った.作用極に金電極を用いたとき,ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム2×10-7~2×10-4Mで検量線が直線となり,各濃度での相対標準偏差(n=10)はいずれも1%以下であった.次亜塩素酸の電気化学的挙動は,サイクリックボルタンメトリーで測定した.種々の固体電極の中で金電極が最も単純な波を示し,作用極として適当であった.フローインジェクション分析における次亜塩素酸の検量線は,0.05~2.5mg l-1で直線性を示し,1mg l-1での相対標準偏差(n=10)は2.1%であった.本法を水道水中の残留塩素の定量に適用したところ,オルトトリジン吸光光度法と良い一致を示した.
  • 星 座, 小沼 純貴, 千葉 香織, 菅原 一晴, 赤塚 邦彦, 宇都 正幸
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1129-1133
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    弱酸性領域におけるアミノ多糖類キチンのアセチルアミノ基のプロトン化に基づく陰イオン交換体としての機能を利用し,銅をそのバソクプロインジスルホン酸(BCS)錯陰イオンとして濃縮した後,キチン相の反射吸光度を直接測定して銅を定量する方法を検討した.銅はpH5の水溶液20cm3からキチン相20mg上にBCSキレートとして短時間のかくはん時間で迅速に濃縮された.キチン相中の1μgまでの銅と484nmにおける固相吸光度との間に直線関係があった.銅0.5μg,9回測定の相対標準偏差は2.89%であった.VO3-やFe3+の許容量はやや低かったが,金属イオン,還元剤及び一般の無機陰イオンなどは1000~10000倍共存しても影響しなかった.本法により国立環境研究所の生物標準試料中の銅の定量を行った結果,鉄の共存量が比較的少ない試料中の銅の分析値は保証値と良く一致した.
  • 横田 文彦, 遠藤 昌敏, 阿部 重喜
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1135-1140
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    試料水中の微量コバルト(II),ニッケル(II)及び鉄(II,III)の固相濃縮及び色彩化学計測法を確立した.標題金属イオンの2-ニトロソ-5-(N-プロピル-N-スルホプロピルアミノ)フェノール(Nitroso-PSAP)錯体は,陰イオン交換樹脂の懸濁液中で捕集した後に分離し,フィルター上の固相の有色金属錯体をL*a*b*表色系によって評価した.単一金属イオンの検量線は赤色度(+a*値),緑色度(-a*値),黄色度(+b*値),青色度(-b*値)を用いて作製した.上に凸な検量曲線データは,直線化処理が可能であった.また,a*b*平面上に検量面を有するコバルト(II)-ニッケル(II)系,鉄(II)-鉄(III)系の同時定量法を考案した.試料水中に存在するμg量のコバルト(II),ニッケル(II)及び鉄(II,III)を迅速かつ簡便に比色定量できた.
  • 上原 伸夫, 富樫 秀雄, 荒武 幸子, 清水 得夫
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1141-1144
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    A chemical compound (A18CC) with a carbodithioate unit and an aza-crown ring in one intramolecule was synthesized, and reversed phase high performance liquid chromatography of the transition-metal chelates of A18CC was examined. The retention time of these A18CC chelates decreased along with an increase in the methanol fraction in the eluent. The retention time of the chelates decreased along with an increase in the concentration of alkali metal salt added to the eluent. The degree of the effect was Na+ > K+ >> NH4+. Li+ and the alkaline earth metal ions hardly had any influence. Since the chelates had charge by taking in the alkali metal ion in the aza-crown ring, this behavior was generated.
  • 板橋 豊
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1145-1148
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    The HPLC resolution of the enantiomeric sn-1, 2- and sn-2, 3-diacylglycerol (DG) moieties of fish-oil triacylglycerols (TGs) having different fatty acid compositions was carried out on a chiral stationary phase, (R)-1-(1-naphthyl)ethylamine. The DGs were generated from TGs of tuna orbital, pomfret flesh and pacific saury flesh by partial Grignard degradation ; they were chromatographed as 3, 5-dinitrophenylurethanes. By an isocratic elution with n-hexane-1, 2-dichloroethane-ethanol 40 : 30 : 1 (v/v/v) as the mobile phase, the sn-1, 2 (2, 3)-DGs from tuna orbital and pomfret flesh were resolved into two clearly distinguishable enantiomer groups, although some peak overlappings between the enantiomers were observed in the latter sample. On the other hand, no clear enatiomer resolution was obtained for the saury flesh DGs. The poorer resolution was mainly caused by the existence of large amounts of long-chain monounsaturated fatty acids (20 : 1 and 22 : 1) in the molecules.
  • 蒲生 啓司, 坂田 千栄子, 小槻 日吉三
    1999 年 48 巻 12 号 p. 1149-1154
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Three lipases were immobilized on ODS - Sugar, which was prepared by coating sucrose mono-stearate (sugar ester) on octadecyl silica gel (ODS-silica). The enantioselective esterification of (R)- or (S)-1-phenylethanol with aliphatic acid was studied in the presence of immobilized lipase (ODS - Sugar-Lipase) in organic solvents by varying the lipase origin, reaction media and substrate structures. The ODS - Sugar - Lipase (LPL-311) showed both high catalytic activity and enantioselectivity for the esterification of (R)-1- phenylethanol with long-chain aliphatic acid in dry iso-octane. On the other hand, the ODS- Sugar- Lipase (M) showed both a high catalytic activity and enantioselectivity for the esterification of (S)-ibuprofen with hexanol in dry iso-octane. The enzymatic activity of lipases in organic media was remarkably enhanced by immobilization with the sugar ester. The reaction rates of the immobilized lipases were increased by around 100200-fold compared to that of the native lipases. The activity of the immobilized lipases has been retained for at least one month in refrigerator. The ODS- Sugar- Lipase showed greater activity for ester synthesis than other systems, such as the PEG-grafted lipase and the powder dispersion system. We believe that the ODS - Sugar adsorbed enzyme system can be widely applicable to other enzymes whose substrates are lipophilic.
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