水/ピリジン/クロロ酢酸エチル三成分溶媒系において,pH依存相分離現象を利用した新しい均一液液抽出法を開発した.この三成分溶媒系相分離における最適操作条件は,{ピリジン5cm
3 (12.0 vol%),クロロ酢酸エチル1cm
3(2.0 vol%)を含む均一水溶液44cm
3に塩酸6cm
3([HCl]
T=1.44mol dm
-3)を添加し相分離を行う.最終体積:50cm
3}である.また,あらかじめ添加するクロロ酢酸エチルの量を調節すると水相(
Vw=50cm
3)と析出クロロ酢酸エチル相(
Vo=5μl)との体積比を1万倍とすることができる.本法において,抽出可能なキレート試薬としてα,β,γ,δ-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィン(TCPP)を選定した.
Vw/
Voが500のとき,分配比(
D)及び抽出率{
E(%)}は,TCPP (14700, 96.7%), Cu-TCPP (7440, 93.7%), Zn-TCPP (22200, 97.8%), Mn-TCPP (1070,68.1%) 及びCo-TCPP (8760, 94.6%)であった.既に報告した金属-TCPP錯体のHPLCにおける前段濃縮法として本法を応用した.各金属イオン(Cu
2+, Zn
2+, Mn
2+, Co
2+)の検量線は, 5×10
-9~1×10
-7mol dm
-3 の範囲で直線であった.また本法は, Al
3+, Fe
3+ の共存を各金属イオンに対して 50倍量まで許容できた.河川水(日本分析化学会JAC0032)中の各金属イオンの同時定量を行ったところ,良好な結果が得られた.
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